移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2016年2月号

2016年2月号 (2016/02/18) 俳句 (選者=樋口玄海児)


新年や米寿の祝い夫元年
元旦やお茶で乾杯老二人
遠く来て山の彼方の初日の出
初日の出一日多い猿の年
娘等と山の日の出を拝みけり
【原口貴美子】
(評:一句、二句。ご主人の米寿お目出とうございます。なかなか米寿まで長生きするのは難しいでしょう。まして移民として来られ、苦労の末の長生きは、さぞ大変だったでしょう。サンパウロ近郊では暑さ寒さも少なく、大事にこの先も百寿までも生きてください。)

アルバイトに明け暮れ無事に卒業す
炎天に原色似合ふ黒き肌
鈴成りのジャカ見上げて朝体操
初鶏や住めば都となりし土地
【香山和榮】
(評:一句目。この句から見ると苦学した卒業生の様子である。いろいろの事情で苦学、また家庭の事情などで卒業される若者もいる。まずはおめでたい。)

初句会ちんばの足に時雨けり
エルニーニョがこの頃の雷音のせず
葱坊主ハイカラ頭となっていし
初時雨三日続きとなりしとは
【三原春風】
(評:一句目の「時雨けり」。時雨の句では珍しいベテランらしい句。これが夏の雨では面白くない。「ちんばの足に」で句が生きている。)

歩こう会オールメンバー風かほる
スポットライト浴びたる如し女王花
女手に研ぎし包丁年用意
炭焼きがランプの火屋拭く年用意
【猪野ミツエ】
(評:一句目。歩こう会、今ではどこでも日の昇る前に見かける風景。足を丈夫にすることだそうで、老いは足からと言われています。四句目。今頃では珍しい風景。おそらく、思い出の句でしょうか。ランプの生活、懐かしいです。)

三ヶ日心おきなく休みけり
移民当初はれの休日三ヶ日
次々とメモ増えて行く初暦
足止めの電車の故障駅暑し
【畠山てるえ】

マナウスの暑さの中に聖市恋ふ
昼酷暑夜は涼風聖市かな
鏡見る如くの年賀タブレット
外国にインターネットで年賀かな
【村松ゆかり】

演劇のうまさにびっくり孫卒業
パソコンの卒業名ばかり三ヶ日
石垣の源平カヅラ咲きつづけ
【原野初子】

大掃除暮れ行く年の竹箒
年賀状メールで送る新時代
年金で妻は早々暮れ支度
【小野浮雲】

ささやかに米寿祝はる十二月
ひでりに泣き水害に泣く年暮るる
娘の新居日本朝顔咲きほこり
降りつづく雨にこもりし年初め
幼子の母にむづかる雨季続く
吾が米寿子が祝いくれ年初め
【矢島みどり】

家どこに居てもサビアの声きこゆ
囀の声のこぼれし畑かな
夏月の下の牧場の美しき
夏月の下の吾が家もよからずや
南回帰線の畑の初日の出
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


七十年共に歩みし人生の思い出胸に明日も生きたし
貧しくも健やかに子等育ち四人の子それぞれ良き店を持ち
明日の米小銭集めて買いし日も夫を信じてひたすら生き来し
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:今年も良き年でありますようにお祈り致します。)

「UTI」から病室に移動、体調が少々快復家に帰ろうと
夫婦ならどちらか先に天国に旅立つことは自然のおきて
納骨や四十九日の忌も終えて夫は無事に冥土の旅へ
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:謹んで御冥福をお祈り致します。)

長野県諏訪神社に諏訪湖も諏訪温泉の千人風呂も
歌にある草津温泉良いけれどマンジュウ売りが道に沢山
テロリスト向う目的人殺し難民あふれ餓死する人も
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:いろいろな場所が良く分かります。日本の賀状、ありがたく頂きました。)

行く年や母亡き故郷遠かりき昭和も見えず移民老いたり
新年会国歌斉唱目出度さよ笑顔弾ける祝賀の宴
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:移民は老いても新しい芽が育つのは目出度いことでしょうね。)

イブの夜プレゼント交換和やかにふと口ずさむ清しこの夜
初日の出拝みて願うまた一年家族の健康一途に願う
快適な仕事始めの一日を渋滞なき街はればれ運転
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:一連の歌みなよく出来ています。)

三十回夏の正月迎えても今だ懐かし冬の正月
新年のお屠蘇と雑煮を頂ける恵みに感謝できる今年も
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:お正月から感謝あるのみですね。)

コーラスに加わり歌える友は今日は乙女のごと若やぎて見ゆ
デコポンの題詠にひと時にぎわいて今日のつどいも終りとなりぬ
十六階に住む身の幸かベランダに立ちて見放くるスザノ全景
【スザノ福栄会 藤田朝日子】
(評:「乙女のごと若やぎて見ゆ」。いいですね。)

新しき年迎うがに門の辺に蕾太りつひまわり並ぶ
花好きの友の開きし玩具店ボビーと書かれし幟はためく
生家にもありしと友がなつかしむわが家を囲む槙の生垣
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:立派な木の生垣ですね。)

去年よりも若返りして健やかな歌友の誕生日祝ぎて安らぐ
新聞やテレビニュースの不況など除夜の花火と共に散りゆけ
元旦を雑煮で祝わず屠蘇酌まず二世の孫らとガラナで乾杯
【スザノ福栄会 原君子】
(評:所変わればガラナで乾杯ですね。)

ブラタモリ富士に登りて御来光おがみておりぬ新年の朝
ひとりばえのミニトマト咲き実が成れり狭きベランダひとり占めにし
冬涸れの池にあぶくは上がりいてまるで生きものの如くつぶやく
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:あぶくが「つぶやく」とはお上手ですね。)

久方の天の遥けく朗かに今日は晴れイタペチの山
脈をとる看護婦さんのふっくら手ほれぼれと見る年老ゆるとも
「若者の瞳の中に未来がある」わが胸を打つ首相の言葉
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:「ほれぼれと見る年老ゆるとも」。いいですね。)

世界中に平和を願う人々の心おびやかすテロリストの暴挙
若者の心はどこにテロに走る平和に慣れし心が怖い
孫たちは吾れらと異なる世を生きて反抗心になやむ息子等
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:テロリストの心の内はどんななのでしょう。)

吾が父の性に似る子と暮らしいて叱られても嬉しい時あり
朝あさに瓶のめだかに餌をやり金魚になる日を待ちいし弟
掛り来し受話器を取れば振り込め詐欺その巧妙な語り口きく
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:三首共いろいろで楽しいです。)

あじさいの青葉のみどり輝いて花は小さく葉影に咲きて
雨にぬれ紫陽花の花うめつくす寺を訪ねた日々は遠くに
新年のあいさつポ語が口に出る真夏の正月いつしか慣れて
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:紫陽花は歌になる花ですね。おかげで私もいろいろ思い出しました。)

ブラジルに八十八年初日拝す健康を謝し余生歩まん
子も孫も異国に旅し娘と二人のんびり読書の正月なりし
旅の子等日々送り来るメール見て一緒に旅をしている心地
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:子供さんと世界を一緒に旅してよい年の始まりですね。)

夏時間予定の番組見そこない残念な日がありて困りぬ
カラオケの教室から見るプリマベーラその美しさに見とれてしまう
道端の名も知らぬ花けんめいに風にも雨にも耐えて生きてる
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:私達に道端の花が教えてくれているようですね。)

音もなく振り出している夏の雨いつものことよ此頃の雨
おてんばと言われながらに柿の木に登り眺めしふるさとの村
【サンパウロ中央老壮会 武田伹仁子】
(評:懐かしい思い出ですね。)

年明けて逝きたる姉とすぎし日の句会の席の想い出深む
米寿を迎える吾に老病の少なし暮し祝福される
咲き誇る五色のダリアまばゆきて根元に生える小草引抜く
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:「根元に生える小草引抜く」。優しい歌でいいですね。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


小将力士横綱たおす大勝負
雑煮食べヨーカン食べて寝正月
穏やかに又しなやかに生きたしと
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:その心がけがあれば、今年もきっと良い年となります。)

初日の出祈る今年の皆の幸
お正月親孫曾孫勢ぞろい
襟正し年の初めを祝う酒
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:お屠蘇〔とそ〕ともなると身心ともに引きしまる。)

酌み交す友情の酒のあたたかさ
お互いに出会えば血圧たずね合い
屠蘇に酔い限界悟る共白髪
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:まだまだ後何回もお屠蘇が頂けるよう頑張って下さい。)

リベルダーデ年末餅つき盛り上がる
餅貰う人の長い長い列
雑煮まで頂くもてなしありがとう
【セントロ桜会 中山実】
(評:大晦日の餅つきがリベルダーデの恒例行事となってから久しい。ACALをはじめ共済団体に感謝!)

生きている証あちこち痛み出し
整理する心に思い出よみがえり
簡単に指切り出来ぬ歳となり
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:明日知れぬ命とはいえ、年を取るとつい自分の歳を意識してしまう。その時はその時と割り切って頑張りましょう。)

年金を片手に枠を組む余生
追従の心明るい世が明け
吾が歩幅知って平和の道を行く
他人を見る目玉己に当てて見る
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:人の振り見て我が振り直せという。中句の「目玉」が光っている。今回の秀吟として頂きます。)

天国へのパスポート今から考えて
腹八分これも薬と守ってる
八十路坂眼鏡と鍵の場所を決め
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:良い心がけです。「直ぐに使うから」とうっかり置いた場所を忘れ、探すのに時間を取られることが多い。)

人の道時には脱線骨休め
今日も無事終えたひと日に手を合わせ
絵手紙に心を託す一言を
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:絵手紙の一言にいつも励ましを頂いて感謝しています。)

朝の汽車押して押されて命がけ
アスファルト押し上げ伸びる木の根っこ
老木となって盆栽値打ち出て
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:人もそうありたいもの。)

インフレ―油断は出来ぬ懐手
しんがりで励ます声はいつも母
手伝いになる範囲で思いやり
【オザスコ市】
(評:押し付けにならぬようにとの心遣いに共感しました。)

死ぬまでは生きていますぞと力む老
白黒の写真の吾に皺見えず
待つ事に馴らされ長い列にいる
【オザスコ市 原幸雄】
(評:この国では待つのが当たり前。素直に待つしかない。)

政治家に民の声聞く耳がない
声だけで赤子泣き止む母の愛
思い出を生きた証に詩に残す
【オザスコ市 斉藤晃伯】

大金を夢追いはるばる来た移民
聞き慣れぬ声の電話いぶかって
酸い甘い噛み分け人生終着へ
【オザスコ市 林久美】

水加減良くてふっくら炊き上がり
水害で苦しむ人見て胸いたむ
清らかな流れも時には水害に
【オザスコ市 太田孝江】

年頭吟
新年にプラス思考で一歩ずつ
寝たきりの目線で活ける花一枝
過去みんな美化したようないい笑顔


シルバー川柳 ㊦


人生に迷いはないが道迷う
【片上映正(男性/愛媛県/47歳/公務員)】
お互いにボケかトボケか気がつかず
【小田島忠彦(男性/神奈川県/74歳/自由業)】
脳トレで信じたくない老いを知り
【かまぼこ★(女性/愛媛県/67歳/無職)】
ハイタッチ腕が上がらず老タッチ
【春十八番★(男性/北海道/48歳/会社員)】
浪花節何のだしかと嫁が聞き
【日比野勉(男性/岐阜県/74歳/無職)】
もったいない気づけば我が家はゴミ屋敷
【シニアリアン★(女性/東京都/63歳/無職)】
アルバムに遺影用との付箋あり
【鈴木冨士夫(男性/埼玉県/65歳/自営業)】
俺だって死ねば弔辞で褒められる
【山口義雄(男性/千葉県/72歳/自営業)】
老犬とこぼしたおかず奪い合い
【食い意地張る子★(女性/熊本県/68歳/主婦)】
うす味を愛だと知った四十年
【中村和雄(男性/千葉県/80歳/無職)】

★はペンネーム
第十五回入選作品 (社)全国有料老人ホーム協会ホームページより




ブドウの実

ブドウの実が色付き香りを放香す
やがてナタールそして新年
イタリア系人はブドウなくして年は明けない
日系人は餅なくして正月はない
二百年、一百年の違いはあっても
お互いの祖国(おくに)癖はなおらない
多民族が祖国自慢をもちよって
移民国ブラジルにどんな新種の
果実が色づき香りを放つ時がくるだろう
明日が楽しみだ


前のページへ / 上へ / 次のページへ

熟年クラブ連合会 :  
Rua. Dr.Siqueira Campos, 134, Liberdade, S?o Paulo, Cep:01509-020, São Paulo, Brasil
Tel: 11-3209-5935, Fax: 11-3208-0981, E-mail: Click here
© Copyright 2024 熟年クラブ連合会. All rights reserved.