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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2016年4月号

2016年4月号 (2016/04/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


午後からは大雨ニュース町残暑
予定表にメモ走らせて夜の秋
植樹せしチエテの森や大地の日
初秋やそぞろに歩く新駅舎
新しと和語で客呼ぶ鰯売り
【畠山てるえ】
(評:一句目。ブラジルの夏の終り頃は急な雨が来る時期。毎日のようだと、それをうまく表現している句。毎日暑さを耐えている老人にはありがたい。五句目。日本人の多く住む所では、この句のように日本語を使う鰯売りがいます。)

山迫りボテコが終点花野バス
出会いたる白寿の句友の栗赤飯
思い出は鎮守のおはやし母の鮨
南天に似し実をつけし百日紅
【香山和栄】
(評:一句目。ピクニックか何かで遊んだ一日。終点が一つの山のボテコ。いかにもピクニックらしい。終点の山の景もよくでている句。)

路地深く一人住む友花芭蕉
玄関に犬伸び伸びと秋の風
謝肉祭終れば秋と云ふ古老
【田中保子】
(評:一句目。一人住まいの古老。見る人は一人住まいは寂しいだろうと思いをかけられるが、他人が思うほど寂しくなく、花また野菜などを作って寂しさは吹っ飛んでしまう。人それぞれに思うようである。)

さわやかや日語で話せる若き女医
カー二バル済んで教師の顔となる
台風の最中に生れて名は猛
【猪野ミツエ】
(評:二句目。この句は娘のことか、友人の娘か。カー二バル済んだら元の顔となり、仕事に励んでいるという句。出来上がりが良い。)

老人の足を迷わす秋夕立
サフランの御飯も有りし秋の宿
弔ひの丘に二三蜻蛉舞ふ
【村松ゆかり】

仲秋の月を見たくて旅に出る
秋さびし眠れぬままに経を読む
秋うらら皆で体操カミニャーダ
【原口貴美子】

天と地の解け合ふ所脂草
果しなく大地の闇に銀河濃し
遠景の一筋町に秋の虹
【青木駿浪】

サンバ踏む女王はスポーツ選手とか
サンバ踏むベイジャフロールは奴隷の裔
島横切る運河の風は秋めきて
【清水もと子】

夏の雨雷鳴残し去りにけり
秋風にさそわれ老の杖散歩
ファベーラの子ラッタ叩いてカー二バル
【矢島みどり】

ガジュマルの幹の貫禄台風裡
タツーの穴にヒヨコ咥えて蛇は入る
台風の最中に元気な子が生れ
【猪野ミツエ】

白き葉はインバウーバと云ふ夏木
夏山に蛇サボテンの花を見る
夏山の蛇サボテンの花は大
外灯に蟇一族の揃いたる
蝶々の空に蜻蛉現われし
鍋洗ふ音に敏感土間の蟇
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


休日も働きものの吾が夫は朝からトントン店内修理
仕方なく見て見ぬふりも出来もせず吾も手伝う休日なれど
修理終え夫の揚げたるエビフライ少し豪華な遅い昼食
【サンパウロ中央老壮会 山城みどり】
(評:夫と一生懸命休日でも働いている様子がよく出ています。)

早朝に昨夜の雨に洗われて清々しきよいつもの散歩
アカシヤの花咲きし後あちこちに長き実サヤのたれ下がる道
猛暑にも夕立雨に救われて今日も終りぬ夜風に憩う
【サンパウロ中央老壮会 武田伹仁子】
(評:雨に洗われた夏の朝の情景がよく出ています。)

うららかな秋の日浴びて老友らと集い楽しき食事会かな
一年ぶり逢いし友等は変りなく白寿近き身を集い来たりぬ
われ卒寿むかえる身なれどまだ若いと云われて恥いる吾が身なりけり
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:卒寿の身を若いと言われ恥いるみどりさん、いい歌ですね。)

待ちに待つ日本の力士優勝すあまり長くて疲れた思い
熟連が四十周年お目出とう五十周年吾れには遠し
今年は我が寿楽会九月には四十周年迎えて祝う
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:四十周年お目出たいですね。お元気で。)

旅行好き年をとっても健康の許す限りは温泉や海へ
先月はイタニャエンの海へ行き数年ぶりの海に見とれる
潮風と寄せ来る波の音を聞き娘と手をとり砂浜散歩
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:娘さんと憩う時を大切になさって下さい。)

鉢植のピタンガいつか実をつけて小鳥と分け合い食べるを夢見る
一日中見とれて居たき朝顔の二十に余る花数えつつ
水色の朝顔一と日咲きつづけ夕はピンクに変りてしぼむ
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:三首共優しい歌でほのぼのとします。)

わが短歌読みくる友いて嬉しかりただ一言が励みとなりて
旅好きの孫も子の親となりし今生まれしばかりの子に余念なき
出迎えし従姉妹は無言の白木箱異国で逝きし霊やすらかに
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:色々なことがありますね。お元気で。)

JICAより与那覇氏見えて講話あり遊びに御馳走熟年天国
与那覇氏とボケます小唄合唱する仲間と爆笑ボケの特効薬
雨足を聞いて朝寝の日曜日どっと降り去り今日もまた雨
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:笑いはボケの特効薬ですね。仲間と笑い合いましょう。)

母に聞く復員船で我子のため蝋燭の火で粥を炊きしと
あざやかな四枚の紙がたちまちに七夕の大輪の花と咲く
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:七夕の花に変わる紙、まるで手品ですね。)

九才の我が家の犬のガン告知どれがこの子に良い道なのか
大雨が今年はやっと解消か給水時間気にする日々は
水不足解消されたニュースには浸水の町うつる写真も
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:愛犬のガン告知、つらいですね。よく伝わってきます。)

年寄の年金ぐらしいつも又ドローンのように消えてなくなる
日本ではリオ、オリンピック盛り上がり開催国は盛り上がりなし
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:この国と日本ではオリンピックに対する熱が全然ちがいますね。)

思いがけぬ国ゆ招かれギリシャへと孫はチェスの大会に発つ
草野心平作詞の校歌思い出て声高く唄う晴れたる庭に
お見舞いの友の電話の励ましに持薬利くごと力湧き来ぬ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:友の励ましの電話は何より利きますね。)

ぼける日のくるやも知れず古里の竹馬の友がたちくる夕べ
十年ぶりに故郷の駅に降り立てば目に展けたり群青の海
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:移民には古里はいつもついてきますね。)

八十になっても変わらぬ幸せは夫あり子あり短歌の友あり
体操やカラオケに行き友らと話す年は取るまい捨てるものぞと
八十路越えまだ年寄りと思わぬに一人バスでは行くなと言う子
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:八十になっても夫あり子あり短歌の友あり、幸せですね。)

曾孫らと笑わすよりも笑われる時代となれり卒寿の吾は
髪染めて鏡を見れば若がえり卒寿の顔もまんざらでなし
記念にと「長寿の心得」記されし湯呑み使えど実行出来ぬ
【スザノ福栄会 原君子】
(評:卒寿の顔も実のある顔だと思いますが。)

この年はやや肌さむきお正月ここちの良さに夫もよろこぶ
一斉に咲きそろいたるクワレズマの鮮やかな色見つつ通れり
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:夫のよろこびを自分もと優しい歌ですね。)

出稼ぎに行きし息子が孫つれて帰伯す隣家の賑わいきこゆ
老いたれば隣家の喜こび垣間見て吾もうれしく泪を拭う
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:うれしい光景ですね。)

吾が庭の点景となりこの朝椰子の花房黄にかがやけり
家づとにデコポン二つ頂きし友の笑顔が忘らえなくに
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:黄に輝く椰子の花を見た時、作者は至福の時を持ったことでしょう。)

同じ趣味もちたる友と語り合い長居となるも話題尽きなん
老いる吾世のいとなみも無きゆえに心気ままに朝庭巡り
見かえれば農家を放れて三十年曲折多岐の人生行路
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:長い人生のうちには様々なことがありますね。)

歌謡曲の「ああ上野駅」を聴くたびに「横浜港」を思い出させる
回転ドアわたしのために開くたびなぜか心が躍ってしまう
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


わが事のように嬉しい他人(ひと)の幸
浅学も非才も越えて組み立てる
老いの智恵若さが燃える日の進歩
核の無い地球造れと言う平和
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:口で平和を唱えながら裏で核を積むヒト科のおろかさ。)

膝まくら遠い記憶の物語
老犬の食事作りが仕事なり
もったいない孫等納得むつかしい
【サンパウロ中央老壮会 中西えみ】
(評:世は使い捨て時代。「もったいない」の言葉も死語に等しい。)

爽やかな笑顔で今日も過ごしたい
秋風や国営企業国を食う
多様性お手本示せリオ五輪
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:リオ五輪まで後半年足らずとなった。世界へのお手本となるような五輪は望めないにしても無事に終わってほしいもの。)

ころころと変わる天気に人は駆け
もったいない母の教えも現在(いま)は死語
バスに乗り席を譲られ齢知る
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:嬉しさと淋しさを味わされたひと時でした。)

はひふへほ幸せを呼ぶ合い言葉
カーニバル終われば秋がしのびより
「もう」でなくまだこれからと腰のばす
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:「もう」は断念的、まだには未来性がある。)

サウバ蟻羽を出して飛び回る
流石モジ古里祭りも多様性
泣き乍ら鍬を引いた少年期
【セントロ桜会 中山実】
(評:開拓期に育った準二世たちにとって辛苦の時代でした。)

置き忘れ探す日増える老い二人
生きている証(あかし)あちこち痛み出し
トップにはなれぬ謝罪が下手だから
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:机上につかんばかりに深々と頭を下げるテクニックもリーダーには欠かせない。)

したたかに夫の遺言守る寡婦
そよ風ときれいな空気に惚れた旅
エスカレータ行き交う途中でウインクされ
【サンパウロ 彭鄭美智】
(評:日常の煩雑を忘れさせてくれた一瞬のウインクでした。)

得難きは良き師良き友良き伴侶
さりげなく己刷り込むしたたかさ
結婚も秤にかける金と愛
【ソロカバ市 早川量通】
(評:「手鍋下げても」という時代もありましたが――。)

行きずりの出会いと別れ一人旅
鏡見て老いを気にする夢の果て
風評に動く心も弱さゆえ
【オザスコ市 斉藤晃伯】

老いたなと思いながらの探し物
句作にふける窓をのぞいた弥生月
来し方を文字にこめて一行詩
【オザスコ市 おちば光子】

希望校合格通知に泣き笑い
老いの身も少し飾って過したい
気をつけて出る度毎に出る言葉
【オザスコ市 太田孝江】

望む事いっぱいあった若き日よ
世の流れ進む早さに追いつけず
口だけはまだ達者ですお陰さま
【オザスコ市 林久美】

損得を知らない母が子に賭ける
損得があって人間欲も出る
うたかたの命ひたすら詩にたくし
【サンパウロ市 高田早波】

酔い覚めの水のうまさ下戸知らず
回し呑みして雰囲気盛り上がる
座布団が出番待ってる横綱戦
【オザスコ市 斉藤立穂】

回る金自分に向いて来て欲しい
前向きの並みの歩調で今がある
望む月メルヘンは消え宇宙熱
【オザスコ市 原幸雄】

育てれば何でもみんな可愛いもの
出稼ぎで心身共にきたえられ
法律に正義だけでは通れない
【オザスコ市 井上風車】

悪いくせ齢とる程に数が増え
遠い耳己を知らず人の所為
ある時機に才能生かして役はたす
【スザノ市 飛松信雄】

蓮根の穴を覗いて未来問う
ゼロからのスタートゼロに戻す今
引き返し出来ない線路に乗せられて
【サンパウロ市 大塚弥生】

冗談か誠かじっと顔覗く
アスファルト押し上げ伸びる木の根っこ
覗きたい立派な家の門がまえ
【サンパウロ市 渡辺文子】

◎席題「夢」 清子出題
コロコロと変わる子の夢青春期【ふみ】
堅実な夢に向かって一歩ずつ【ふみ】
夢多き青春時代に戻りたい【博】
妻恐(こわ)し夢の中でウサ晴らし【博】
ブラジルに夢をえがいて海渡る【実】
もう一度若返る夢大き夢【えみ】
ブラジルに夢を託して来た移民【えみ】
あれこれと夢見た若き遠い日々【清子】
夢持てば生きる力も湧いてくる【清子】


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