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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2016年6月号

2016年6月号 (2016/06/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


シャンソンのショーに招かれ女性の日
ケラ鳴くや深井を汲みし頃想ふ
大農場天地の限りまで刈田
ピラガンサインジオ保護地の入口に
村中にお布令さわぎ手負猪
【猪野ミツエ】
(評:一句目、これはブラジル季題。珍しい題で上手に出来ている。シャンソンのショウに招かれた新しい言葉。詩としても新しみがある。女性の日は世界中にあって良いのではないか。)

自転車の遅乗り競争運動会
育ちざかりは一丁たいらげ新豆腐
海岸の借り別荘や中の闇
稲雀斥候役もいるらしき
【香山和栄】
(評:一句目、コロニアも運動会は盛んである。その中で、この句のごとく自転車の遅乗り競争は珍しい競技である。倒れないように走るのは難しいでしょう。また、それを俳句に詠まれたのは手柄。句は新しみが資本。)

七十の母まだ若し強かりし
寒き日の母の日カレーで祝われし
持寄りし手料理どれも旨かりし
母の日も終り一人の夜にもどる
【矢島みどり】

菜洗う水より秋の始まりし
母の日や牡丹色なる胡蝶蘭
いそいそと汁物作る今朝の秋
故里の野を偲ばせるほたる草
【村松ゆかり】

献句にも心こめて念腹忌
連山のマンチケーラも草青む
展望やマンチケーラの夏の雲
【青木駿浪】

パイネーラ咲く地が故郷二世等は
日本人開きし土地や竹の春
日本人住めば植へしよ竹を伐る
【畠山てるえ】

黄金の稲積むカロッサ通りけり
日光浴したき季節となりにけり
霜柱消す太陽登りけり
【日野隆】

門灯つけ児童バス待つ秋の暮
畦越えて池辺に伸びる今年竹
厨房に居残る一匹秋の蠅
【森川玲子】

良き明日来ると信じ秋茜
メトロホーム茹でしミーリョの匂ふかな
心置き無く厚切の鯖を食ぶ
【田中保子】

色鳥やいつもおしゃれでありし人
同病の相寄るベンチ酔芙蓉
ふくらはぎマッサージ始む健康の日
【猪野ミツエ】

ほろ苦き煎茶に秋を語る孫 
大根の葉飯はうましカルタ会
たっぷりと日を吸う柿と老移民
【寺田雪恵】

夫逝きて早や一ヶ月秋暑し
埋葬の跡形もなく芝生もえ
悲しみはなくただなつかしき墓参る
【矢島みどり】

牛の背の蚤取るアヌー秋の逝く
老いらくの恋の嘘や秋の逝く
ポケット猿ポンカン熟れるを待ちて増え
断食の早や三日目や秋の暮
貧厨に男が作る新豆腐
貧厨を明るうしたる新豆腐
外つ国に男が作る新豆腐
虫の庭月が出ずれば月の庭
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


日本に行く時嬉しい帰りには訣れはつらし涙が先に
鹿児島でまだかと思い桜島白い煙が目の前に見ゆ
指宿は家々にまで温泉が海から来るのか塩からい湯で
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:ご無事の旅、日本のことがよく分かります。一首目の「涙が先に」がいいですね。)

運転の確かさ娘は父親似快適ドライブペットも連れて
冷房の利きし車の気持よさ車さえ無かりし昔思わる
そよ風の涼しさ青い海ながめカイピリーニャ飲む至福のテラス
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:楽しい海旅の様子。こちらまで海風に吹かれているようです。)

竹を伐り割って削いで火にあぶり様々な籠編みいし父の技
農のころ移民青年受け入れてよく世話をせし父偲ぶ日々
嫁さがし仲人役の世話もしてカップル幾組父のアルバム
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:お元気で器用なお父さまだったのですね。)

急逝の夫を送り早一と月日本の従兄弟が悔みのメール
イタリアの息子も孫も帰りたる何やら淋し秋の夕暮
七十年来し方に悔いはなかりしと心慰め余生送らん
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:悔いのない来し方に慰められた余生、ゆっくりお送り下さい。)

地震国とは知りつつも何故に天災と云えあまりに悲し
五年前東日本大震災忘れもしない今日熊本M7
毎日のニュースは続く大地震熊本、大分余震とも九〇〇回
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:地震国とはいえ熊本地震は長びくので大変ですね。)

訪日し娘二人と温泉の旅せしことは幾年ぶりか
地下鉄の車両の中で若者はスマートホンの操作に夢中
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:幾年ぶりの娘さん達との楽しい温泉旅行。よい思い出になることでしょう。)

カラオケの舞台裏では待つあいだ歌を忘れておろおろとする
プリマベーラ今年も咲いたカラオケの教室から眺めて歌う
また柿の季節がくれば暑くても柿は実りて冬を感じる
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:カラオケ出場の舞台裏のお話、おもしろいですね。)

み仏の欠伸のような仕草みす娘に言いがたき頼みごとあり
踏みゆけば足裏に沈む雪の音妹と通学の日のよみがえる
秋雨の木の間にもつれる小鳥たち水晶のごとき声に鳴きつつ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:昔の妹さんとのこと、情景が甦ってきます。)

あと一年あと一年と言いながら吾が命数は卒寿近し
さりげなく浜辺の風に吹かれきぬ故郷といえど漂泊に似て
友訪えば返事は裏の柚子畑山は今しも時雨るる様子
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:三首目、「山は今しも時雨るる様子」いいですね。末長くお過ごし下さいませ。)

クワレズマも散りて山々朝夕に霧立ちこめて秋に入りたり
仕事終え日本語勉強する孫と吾も休みいしブラジル語学ぶ
古里に手紙も書かぬ年続き伯父は如何にと今日手紙書く
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:お孫さんは日本語、鶴代さんはポ語の勉強と敬服いたします。)

娘や孫の倍の時間はかかるけど独りで身じまい出来るを良しとす
福博の入植八十年祭に「あなただあれ」と聞いて抱き合う
篭り居の窓より眺める夏雲のいつしか消えて秋空となる
【スザノ福栄会 原君子】
(評:二首目、「あなただあれ」と聞いて抱き合う。楽しい祭り日ですね。)

百歳とはおもえぬ声にはげまされ我も歌えり声はりあげて
今日何をしたか食べたか記しておくこの頃忘るること多くして
健康で八十路の夫と短歌をよむこの幸せと感謝に生きる
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:カラオケも歌も出来ること、喜びですね。)

エドワルド歌手の帰伯チャリティショウ文協講堂に立見多し
元旦の日伯旗のもと呉屋会長品格見せて祝辞を述べる
ブラジルは我等の祖国為政者の絶えなき不正にこころ痛めり
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:日本移民が来たことで、この国が良くなったと一般社会から云われたいですね。)

祭壇に法灯一穂ゆらぎいて導師の読経いま始まれり
ありがたき法話なれども如何にせん耳とおき身は声だけ聞こゆ
投稿歌に英語のあれば友のくれし外語辞典を引きて調ぶる
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:一首目、見えるようです。)

熊本をおそいし未曾有の大地震姉よ兄よ我故里よ
返信のメール届いて皆無事と安堵の矢先大地震来たり
NHK地震のニュース揺れ続く二週間過ぎて一千百五以上
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:故里が地震が続き落ち着かない日々でしょう。祈るのみです。)

十二月新年間近に棉の花ちらほら咲いて今年も正月
ファゼンダに着いて昼食ブラジルのあまりの油に進まぬ食事
セルラール買ってもらって掛けるけどままにならない文明の利器
【ツッパン 上村秀雄】
(評:着いたばかりの食事は油が気になったことでしょうね。)

母の日に配られしバラ一輪を毎年飾る大事な花瓶
母の日は皆が集まり大馳走まるで昔の正月のように
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:この国の母の日は本当にお正月が来たようでいいですね。)

一泊の入院だけど旅の宿たまにはこんな休日もいい
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


秋空に喚声響く運動会
風邪流行る予防注射に長い列
大揺れの政界民はもう慣れた
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:揺れに揺れた政界もジルマ大統領の罷免が決まりテーメル副大統領が受け継いだ事でひと段落。でもまだ一寸先は闇の中。この先、何が起こっても国民はもう驚かない。すっかり慣らされているから…。ユニークな発想と表現力。流石です。)

増えるのはお腹の脂庭の草
TV論戦蜂のうなりのポ語音痴
大群の大物蟻が国を喰う
【サンパウロ中央老壮会 中西えみ】
(評:政界の大物が犯す多大な汚職に依る国の損害は莫大なもの。連邦地裁によるラバ・ジャット作戦はまだまだ続きそうですね。)

せめてもの心届けん義援金
今日も又同じリズムに乗れる幸
母の日や元気でいるのも役目です
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:元気なお母さんを囲んで母の日を祝える事が家族にとっては何よりの幸せなのです。下語に感動しました。)

年ふれば口唇(くちびる)さびし秋の風
大相撲懸賞金にみる景況感
酒好きの友一人欠け二人欠け
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:心置きなく酌み交した友人たちが一人、二人と欠けていく淋しさが伝わって来ます。)

政治家は嘘を言うのが当たり前
花祭りは甘茶注いで手を合わす
政治家は息を吐くよに嘘を吐く
【セントロ桜会 中山実】
(評:「政治家にはなれぬ嘘がつけぬから」どこかでそんな句を見たような気がします。嘘は政治家の持ち前と言えそうですね。)

右回り左回りもある浮世
浅学で非才な吾にも歩む道
大望の二字欲望に踊らされ
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:大望が欲望に変わって踊り出すと怖い。巻き込まれぬ心構えが大事です。)

無気力と丸くなったは大違い
解釈を変えてうそぶく平和主義
花吹雪わたしもいつかひとひらに
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:人の命の儚さを花吹雪に託した表現力、流石です。精一杯に咲き切って、心置きなく舞って行きましょうね。)

得得としゃべって人をけむに巻き
吹きだまり作って風は通り過ぎ
簡単に予約は出来ぬ裏がある
【サンパウロ市 渡辺文子】
(評:うかうかと予約したばかりに後で苦い水を飲まされる事もある。)

あやまちを寛恕で包む深き愛
やる気ありまだまだ若いと自惚れる
春を呼ぶ人になりたし我が余生
【サンパウロ 彭鄭美智】
(評:「春を呼ぶ」に感銘しました。周囲の人達へのあなたの優しい思い遣りが溢れています。)

求むより頼りにされる人となれ
徳いっぱい受けて和の今があり
以心伝心夫より早いうちの犬
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:首をかしげて主の表情を見守る愛犬の動作を以心伝心と見る作者。)

したたかさ姑子姑にきたえられ
日系の血は親見て子は育ち
世話好きで何でも引き受け嫌われる
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:軽がると引き受けておいて、後は音沙汰無しといった無責任な行為は嫌い者にされます。)

悟り切る心構えで生きる日々
迷い気味気使い過ぎて又迷い
盛り上がるゴールの歓声秋空に
【オザスコ市 原幸雄】

ああ無情次々バスを焼く人よ
山小屋の学びで日語読める幸
笑顔の友いつも誰かが寄って来る
【サントス伯寿会 大矢のぶ子】

禍も福も忘れた頃にやって来る
憚りながら恩着せ言葉ついもらす
思っても言わなきゃ誰も分からない
【スザノ市 飛松信雄】

人の世の因果は回る風しだい
行きずりの出会いと別れ一人旅
裏表見せぬ飾りのうまい人
【オザスコ市 斉藤晃伯】

◎席題「嘘」 実出題
好きな人嘘でもいいから尽くしたい【ふみ】
傷つけぬ優しい嘘に涙ぐむ【ふみ】
嘘つくとお尻ぶたれた幼き日【清子】
政治家に嘘はつくなは通じない【清子】
大物は流石見事な嘘をつく【えみ】
損な性質(たち)嘘がつけずに叱られる【えみ】
嘘ついてバレた後の恥ずかしさ【博】
嘘つきは世渡り上手のかくし技【博】
ほら吹きも嘘のうち碌でなし【実】
嘘も方便だから時々嘘も言い【実】





「一世の限界」

異国での老人会は 砂漠のオアシスと同じ
母国語で心置きなく語れる
家庭以外では そこだけだから
老夫婦で病に取りつかれたら限界だ
ましてや一世の孤老には悲劇だ
友の手はこちらから取りに行かなければ
捕まらない
年を取ったらまず子や身内と
よりを戻せ
たとえ子供移民でも
二世とは別世界であり
限界がある事を早く知る事だ


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