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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2016年7月号

2016年7月号 (2016/07/13) 俳句 (選者=樋口玄海児)


白菜の太きも話題朝の市
白菜を見れば大原女想ひ出す
朱の鳥居朱の欄干よ虫の宿
末枯に孔雀の羽根をひろげたり
【猪野ミツエ】
(評:一句目。朝の買い物女性らしい句。男の買い物であれば、この句のようにはいかないでしょう。二句目。京都地方の朝市の様子を想い出しながら良く句にされて、これも女性らしさが出ていると思います。)

一と雨に空気の旨さよ路地小春
初時雨埃の匂ひ立てて止み
ある物で工夫で料理町時雨
ホーム混み電車待ち居る息白し
【畠山てるえ】
(評:二句目。今のサンパウロ、十日雨が降らないとすごい埃が出る路地。その埃が時雨によって消えたのはありがたいこと。その埃で悪い喉の病気など、サンパウロ市民を苦しめている。気分的に良くなったありがたい時雨であった。)

母の日も母はいつもの割烹着
着ぶくれて達磨のごとく転びたり
移民祭骨身削りし人偲ぶ
移民妻の「茶の花」句集今もなお
【香山和栄】

青空をあおぎ見れば飛行雲
ランの花散り忘れたように咲き続け
母の日に花屋に行けどクラボなし
【日野隆】

甘酒の湯気に浮かぶ母の顔
ケントンと熱きぶどう酒サンジョン祭
甘酒を木杓で混ぜる酔心地
【森川玲子】

ジョンアマドの生家の火祭なるかしむ
あやかしの手品の様に降る落葉
【田中保子】

長女夫婦と新居で雑煮祝いける
シャカラの日焼顔で孫等戻る
明日からは仕事はじめよ雨上る
降りつづく雨に初日も顔見せず
身にしみる集う家族のサンジョン祭
移民祭行きたし楽しみ父母なくも
【矢島みどり】

よく切れる包丁で冬の南瓜切る
ときめきを忘れず冬越す九十才
一期一会の友と腕くむサンジョン祭
【寺田雪恵】

アリアンサは俳句の聖地移民の日
移住地が移民のふるさと移民の日
河の鰐南瓜畑を荒らしけり
ポンカンの熟れるを待ちて猿来たる
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


慌しさ町の暮しに倦みはてて山を恋しむ齢となりけり
世話好きといわれし吾の性なれど悔いなく生きて余生愉快に
哀しみの友逝く今日のローソクの灯激しく秋風にゆれ
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:久し振りの歌、余生の思いよく歌に出ています。)

母の日は子孫らが祝ぎうれしい日わたしは母に何しただろう
県人会毎年母の日祝ぎ呉れる老の身にしむこのありがたさ
歌を詠み一年過ぎてかえりみる歌はわが友命のささえ
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:歌を詠まれて丁度一年。日本の賞も取られ嬉しいです。)

考える気力も落ちし空しさにペンは取れども文字は進まず
張りあいし夫有りし日のなつかしさ思い出胸に強く生きたし
吾が机の前に亡夫の写真あり見守る如き優しき目差
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:いつもご主人が見守っていらっしゃると思います。)

吾が娘外出すれば犬コロは帰りを待ちてポルトンを見る
毎年に五月になれば子供らは母を忘れず集まって来る
母の日は遠い処は電話くれ都合の良い日大勢で来る
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:一首目のコロちゃんは可愛いですね。)

相撲ファン朝四時起床二週間わが予相通り白鵬優勝
戦時中戦後平和を生きたえて余生はげしい電波の時代
毎日のこと乍ら絶対忘れるな娘の説教ガス、戸閉りを
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:電波時代を生きぬく暮らしは大変ですね。)

大地震大災害に寸時さえ取乱すことなき民の敬服
ブラジルの国旗の色のまわし〆め新小結の魁聖頑張れ
何を着て外出すべきか迷う朝春夏秋冬なべてひと日に
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:魁聖はえらいですね。応援しなくては。)

もう寒い朝の日課のウォーキング初冬の風が二人をよぎる
裏庭に一輪咲きし八重椿つぼみ一杯開花希なり
浅草の観音御守りお出掛けに孫のみやげに心安らぐ
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:一首目、お二人そろってウォーキング、いいですね。)

執着心捨てれば悩み捨てられると心得てより心身軽き
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:悩みのもとは執着心。捨てるのは、なかなか大変ですね。)

弘前城まわり一面桜散る堀に小雨が降りしきるよう
飛行機で見た富士山は夕方の光を浴びて銀色に輝り
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:日本の想い出は懐かしいですね。)

南蛮と言われた国を訪れて岬に立つと大西洋が
坂道と階段の町ポルトガル青いタイルの教会の壁
ケイタイで息子に送るメッセージこれにはいつも返事が返る
【サンパウロ中央老 尾身千枝子】
(評:ポルトガルもなんとなく懐かしい場所ですね。)

新幹線の車窓の景の日本を見る孫達は瞬きもせず
アブダビは何処にありや空港に娘孫を送りて地図に探せり
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:私達もアブダビ空港を地図で探しました。ここから十四時間の場所ですね。)

朝夕は二十四、五度の気温なり老いの起き伏し心地よき朝
亡き友の幾人この夜偲びつつ今ある身をば感謝で生きん
吾が卒寿集いて祝う家族らにただ手を合わす有難うと
【スザノ福栄会 原君子】
(評:感謝で過ごす日々。お幸せなことと、こちらまで嬉しくなります。)

頂きしももいろの濃き胡蝶蘭かぞえて見れば二十輪あり
胡蝶蘭ベランダにおき朝ごとに見るが楽しみ家族みんなで
バラの花桃色赤黄のよせ植えは暑き夏の日うけて咲きおり
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:花はいいですね。家族みんなで見ている様子が見えます。)

朝起きてコップ一杯水をのむ忘るるなかれ吾が健康法
申年が七回めぐり健やかに齢かさねてブラジルに生く
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:お元気で何よりです。)

かなしみが濾過されてゆく過程にて母の遺影に両手を合わす
八十路過ぎ衰えしるき下半身若き日の健脚偲びつついる
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:「かなしみが濾過されてゆく過程」お上手ですね。)

命日にパパイと呼びかけ香たきて息子は遺影に孫を見せおり
貧すれど貧せぬ心いつの日もまわりの人に感謝で暮らす
冷蔵庫のなき頃母は鶏肉を醤油と砂糖で味つけ煮つめし
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:親孝行な息子さんですね。)

仲良きことこの上もなしいつ見てもつがいのガンソは一緒に歩く
人くればガンソは首をさし伸べて空へ向って告ぐるがに啼く
剣道と俳句短歌で名をあげし多士済々の福博の村
入院し夫や子供に甘えきり健康大事とつくづく思う
病い癒え夜もゆっくり休む今メトロに乗るも楽しくなりぬ
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:ガンソはあいらしいですね。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


先輩の励まし己の胸に燃え
川柳の一筋道が吾に見え
師の恩へ感謝の句作七十年
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:柳歴七〇年と言うブラジル川柳の草分けのお一人であられる作者に敬意を表します。今後ともご健康第一にご健吟をお寄せ下さいますよう祈念しております。)

わが町もみるみる高層ビルが増え
社会悪多い町にも丸い月
罷免受けジウマさんの影うすれ
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:ジウマ大統領の復帰も望みうすくなっていくようです。)

物忘れ自覚なければ認知症
自分史で記憶たどれば恥多し
言い過ぎた覆水盆に返らない
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:言い過ぎぬよう程々に―。言い足りない分は後でプラスできます。)

日向ぼこ仲良く寄り添う犬と猫
スマートな美女も寒さに着膨れて
貯水池に潤い雨よありがとう
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:水飢饉を思うと「雨々降れ降れもっと降れ」と言いたいところ。下句が良いですね。)

例会日集える幸をしみじみと
政治家の庶民感覚ズレにズレ
炊き立ての御飯寒さに温か味
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:出来たてのホカホカ御飯は身も心も暖めてくれます。)

文化祭リベルダーデ湧きかえる
オバマさんの献花さわやか原爆碑
【セントロ桜会 中山実】
(評:広島の原爆慰霊碑へのオバマ大統領の献花は実に感動のひと時でした。)

天災の鍵にぎってる温暖化
隠すから覗いてみたい胸の内
散り急ぐ花の本音を聞けぬまま
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:花の本音は聞かぬが花。咲いて散る、それだけで美しいのですから―。)

渡し場に話のはずむ人がいる
美しい包紙手芸で再生す
句にたくす思いは同じ高齢者
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:表現法は違っていても老境を句に託す心境に変わりない。ユニークな発想をいただきます。)

老いて今記憶を辿り偲ぶ日々
これと言う事もなしに暮れる日々
お帰りと迎える家族のいる至福
【オザスコ市 太田孝江】
(評:ほのぼのとした家庭の温か味が伝わってきます。)

目が弱りだんだん書く字でかくなり
名案の一句捻るも惚け防止
善良な民を追い出す国怖し
【サントス伯寿会 大矢のぶ子】
(評:一命をかけて他国に避難する移民の先行きが思い遣られます。)

我が家は猿年天下で日々安泰
涙あり微笑みもあるわが川柳
川柳に会えてよかったありがとう
【サンパウロ 彭鄭美智】

夢つめて来し茶箱捨てがたし
小言より一つ爆弾効き目あり
老いる今スタートゼロに戻りたい
【サンパウロ市 大塚弥生】

指くわえ黙っていない意地っぱり
長雨に嬉しがる人困る人
反対も多数決に押しやられ
【スザノ市 飛松信雄】

まずほめて小言ちょっぴりそれでよい
冗談か本意かじっと顔を見る
天災に今だに勝てぬ科学の世
【サンパウロ 渡辺文子】

出航の記憶うすれる八十年
もう迷うことないわたし九十才
漢字減り平仮名多い手紙書く
【オザスコ市 林久美】

日系人出稼ぎ先で差別され
せっせえと働く者に小言なし
良い事を予感しつつ楽しもう
【オザスコ市 井上風車】

良いよりも悪い予感がよく当たる
薬飲み人生伸ばすもどかしさ
記憶のみ残して歳月過ぎて行く
【オザスコ市 斉藤晃伯】

線香の煙の揺らぎ良い予感
骨董品見抜く力が物を言い
日の出見ず星しか見えぬビル谷間
【オザスコ市 原幸雄】

したたかに生きて悔なしこの余生
回し飲みして雰囲気盛り上げる
【オザスコ市 斉藤立穂】

◎席題「汗」(博出題)
思い切り間違え冷や汗どっと出し【ふみ】
開拓の汗と涙のしむ大地【ふみ】
汗流した甲斐あり今のこの至福【清子】
若き日にかいた冷や汗なつかしむ【清子】
席題に汗する思いまとまらず【実】
汗顔の至りと深々頭下げ【実】
汗跡が見せる男の土根性【博】
汗臭い男が好きと云うあの娘【博】


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