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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2017年3月号

2017年3月号 (2017/03/10) 俳句 (選者=樋口玄海児)


思ひ出は香水そっとつけて見し
初句会皆で力を合わせねば
初句会新会場でスタートす
七十路の皺も歴史よ初鏡
新年やまずは健康第一に
【鈴木文子】
(評:一句目、香水と言えばまず女性。三十年前よりの知人であるが、三十年前と一つも変わっていない。この句もそれを表しているように思うのである。いつまでもこのまま若くあって欲しいものである。)

出会いたるコチア路をゆく駄馬も肥ゆ
家族みな大好きミーリョのソルベッチ
タピライの里芋うまき候となり
琴もひく尼僧の法話秋彼岸
【香山和栄】
(評:二句目、この句はブラジルの俳句ならでは。これを日本の人が見たら俳句ではないと言われると思うが、ブラジル俳句、移民俳句といえるものではないであろうか。ブラジル俳句として上手にできていると思うし、また、ブラジルの生活が良く出ていると思う。家庭的な食べ物の美味しさだ。このようにブラジルらしい句を私は望んでいる。ミーリョ=とうもろこし、ソルベッチ=アイスクリーム。)

噴水の時には高く虹を生み
忽ちに白衣はりつく滝行者
出目金の王者の風格裳裾かな
嫁ぐ孫に餞一句書始め
【猪野ミツエ】

山荘に小鳥の巣あり卵あり
行く夏を惜しみひとりの茶を淹れる
シュラスコの煙の中でサンバ踏む
【寺田雪恵】

足止めの電車の故障駅残暑
日帰りの旅は身軽にカルナバル
御馳走の塩抜き鰯開拓期
【畠山てるえ】

桜貝からの白く光って朝の海
日本芹ほのかに香る朝の膳
蝸牛人の気配に角おさめ
【井出香哉】

仏飯の干からびている残暑かな
幾度も曲がる坂道秋暑し
ウイスキーの空瓶に挿す秋桜
【森川玲子】

草長けて埋もれる広場秋暑し
コスモスの群れに一すじ風の道
カーニバル一夜の舞の晴れ衣装
コスモスの笑い合うかに揺れてをり
【川井洋子】

園児らのランチのタイムに秋の蝶
約束の駅前広場街残暑
菊日和一泊旅行に誘はるる
【大原サチ】

何もかも忘れてステップ踏むサンバ
墓地残暑亡母の愛したグラジオラス
ツーリストサンバに浮かれ踊りけり
【岩崎ルリカ】

乱舞するヌードの洪水カー二バル
【田中保子】

囀りの畑に父母いぬ淋しさよ
穴出でし蜥蜴に茗荷の芽新しき
ベンチビー声をふるはせ恋をする
行く春の山に椰子樹は花つけし
蜻蛉の前を乱せし椰子の風
【樋口玄海児】


短歌 (選者=新井知里)


ブラジルの大統領のジルマさん弾劾されて職を離れし
韓国の大統領のパク・クネさん弾劾前に辞するだろう
今年は二人の女性大統領が次々続けて職を失う
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:世界で女性大統領が職を次々に追われたことは偶然でしょうか。不思議なことです。)

外国(とつくに)の孫曾孫戻り来る二人目の曾孫初対面なり
クリスマスと正月家族揃ふときこの幸を先祖に感謝
恒例の東洋まつり賑やかき踊りの輪に入りたのしかりけり
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:外国から初対面の曾孫さんが来るとは待たれますね。どの歌も気持ちのよい歌です。)

稀勢の里惜しいおしいと幾場所も運がないのか鶴竜優勝
此の頃は足腰痛みままならぬ老いは早足我に迫れり
ぼろぼろに老いてからが根性と母の生きざま目に浮ぶなり
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:本当に老いは早足で迫って来ますね。負けないで下さい。お元気で。)

物質に身動き取れぬ重きゆえ断捨離実行解き離された様(※断捨離=物を手離す、捨てる事)
断捨離を始めて気づく身の軽さ余分の脂肪消えしごとくに
役目終え新たな門出感謝込め我家の物の行く先探す
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:物を手離すことは大変ですね。身が軽くなることでしょうね。)

ほろにがき薇(ぜんまい)食みつつ戦時期の食糧難をつくづく思う
餅を着く息子の息のみだるるを今年は聞きぬ手取なしつつ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:戦時期の食糧難を思うと今は天国ですね。餅をつく息子さんの細かな様子よく出来た歌と思います。)

朝早く庭木にさえずる小鳥いて寝坊の吾を起こしてくれる
しわ深き祖母の手の甲つまみつつ首をかしげて曾孫はみつむ
孫たちは国内よりも外遊とインタネットで検索している
【スザノ福栄会 原君子】
(評:幸せなお孫さんたちとの風景いいです。)

ま向いの主婦の明るき声がする久方ぶりに娘が帰り来て
シイトベルトかっちり締めてドライバー「よろしいですか」と息子が振り向く
足弱の吾が手をとりて二千歩を妻とコスモスゆれる道ゆく
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:娘さんが来て息子さんが気持ちよく車に乗せてくれて、気持ちのよい歌です。)

プリマベーラのさかりとなりて一夜この嵐に無惨に花散りつくす
持病の身をいとわず働く弟に姉は毎朝弁当つくる
春の空ぽっかり浮かぶ満月がビルの窓よりわたしを見てる
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:弟さん思いの杉本さんのお弁当、きっとおいしいことでしょう。)

世界中にもめごと絶えねば地球の神おこりたまえり天災しきり
抱擁しベイジョを交わす風習に慣れてしまえば日常茶飯事
留守番にDVDに観る時代もの多少かぢりし歴史が物言う
【サンパウロ 野村康】
(評:今年は天災人災が特別多いような気がします。地球の神は怒り狂っているようですね。悲しいことです。)

老い犬と小鳥さえずり聞きながら日向ぼこする年金暮らし
鮪ずし今日は私の誕生日夫とよろこび祝杯を挙ぐ
いつまでも幸せならん老い夫と歌書きおれば庭に鳥鳴く
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:二首目の歌いいですね。お幸せに。鮪ずしも特別おいしかったことでしょう。)

日本のすぐれた文化見てこいと二人の孫娘に言いて見送る
一年の留学了えし孫春雄今日は恋人つれて来たれり
三両車にユーカリ材を満載しトラック走れり旧街道を
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:お孫さん達のこと嬉しいことですね。藤田さんも今年は御本を出版され、おめでとうございました。)

街路樹のピタンガたわわに実をつけて通りすがりに背伸びしてもぐ
十一日目やっと白星魁聖関南十字の星ふらせたき
戦慄の墜落事故のすさまじさ涙なみだのニュースに観いる
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:ピタンガが特別たくさん実をつけたり、魁聖がふるわなかったり、サッカーの一流選手が七十名も墜落事故のため亡くなったり、一カ月のうちに信じられぬ事故があったこと、上手に歌にしてくれました。ありがとうございました。)

夏の朝涼しい風を感じつつ暑さ忘れて水の音聞く
年忘れ持ち寄り料理それぞれにレシピ交換しつつ楽しむ
寒い夜天の川見て歩いたと娘のたより英国の島
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:一皿持ち寄りもレシピ交換の楽しみ方もありますね。古いと思わず楽しみと思えば心が豊かになりますね。)

町の中銅像立つこと忘れてた杉葉敷きいる公園の道
約束の昼食時にその人は現れなくて一人はじめん
【サンパウロ中央老壮会 武田倶仁子】
(評:約束の食事に現れなくて、みじめな気持ちでしたね。)

ふるさとは遠くにありてと云うけれど目の前にして胸がいっぱい
祖先父母と花を供えてただいまと手を合わせれば思いあふるる
墓参おえ親類知人集りて故里の料理舌づつみつつ
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:遠い故里でさぞ、いろいろと思われたことでしょう。「目の前にして胸がいっぱい」の表現、ぐっときます。)

バラ咲きし小鳥来る庭ありがたく夫はそこで毎日読書
誕生日あまりに速くやって来て歳を取ったと思わぬままに
【新井知里】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


鶏鳴に起こされ拝む初日の出
人間に仕掛けられてる喧嘩鶏
先輩の姿追えども見当たらず
特選三句大会賞胸に抱き
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:大会特選賞、誠におめでとうございます。下句に感動が伝わって来ます。)

したたかなトランプ世界を振り回す
清貧は死語か汚職が幅きかす
子の臑(すね)をかじり続けて老いすすむ 
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:齧られて細くなった臑です。これからはお子さんの臑に支えられながら気楽に過ごされますように―。)

ほどほどに頑張り後は昼寝する
マイペース気付いた時は後がない
横綱の重さこれより茨道
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:十九年振りの日本出身横綱とあって新横綱稀勢の里へのファンの期待は大きい。春場所からの激しい闘いが思い遣られる。)

カルナバル孫と一緒にサンバ踏む
老いたれどサンバを聞けば胸弾む
適当に馬鹿で人生楽に生き
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:楽な生き方の真髄をついてお見事。)

おとぼけは年古る者の特技なり
聞いてない覚えていない解らない
トランプの暴れ政治に世界の目
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:トランプの無謀政治はいつ迄続くのか先行きが思いやられますね。)

どの医者も老人診れば加齢と言う
老いパワー言われたくない齢(とし)のせい
知ってれば迎えに行きたし福の神
【JICAシニアボランティア 鈴木京子】
(評:福の神は何処に在〔お〕わすのか誰にも分からない。ひたすらお待ちするのみ―。)

年末の幟でうき立つリベルダーデ
餅つきもリベルダーデの名物に
リベルダーデ何処にも多い東洋人
【セントロ桜会 中山実】
(評:東洋街と言われる所以ですね。)

看護婦が美人で注射も痛くない
立ち話よくも話題の尽きぬこと
返らない北方領土どうする気
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:北方領土論議が始まってから久しい。領土返還への望みも次第にうすらいで行く。)

バランスを保つ余命の貯金帳
自分史に数えきれない人の愛
言い勝って老いを見せたくない背中
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:言い勝っても背中の老いはかくせない。中句に老いの悲哀が漂う。)

金しだい裏から楽にすべり込み
上下なく気分さわやか良い仲間
無口でも愛はいっぱい秘めてある
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:愛情は言葉にしなくても動作で相手に伝わるものです。)

冬空に枯れ葉も寒げに舞い落ちる
伴奏が後ついてくる迷歌手
生き延びるために次々修理して
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:健康維持に体の修理は欠かせない。頑張って下さい。)

みな元気熟年組のバス旅行
今日も又前向き姿勢で頑張ろう
熟年者バランス欠ける男女数
【サンパウロ市 秋吉寿子】
(評:熟年層の集会にはどこも女性が多いようです。男女のアンバランスが目立ちますね。)

沈黙もやすらぎ君と笑み交す
たそがれのときめき楽し夢を見る
八十才美人薄命ウソと知る
【サンパウロ市 毬井べる】
(評:「わたしもう八十才。でもまだこの通り元気で生きてますのよ。おホホー」。川柳ならではのこの一句。恐れ入りました。)

金銭は貸すも借りるも楽じゃない
早耳で時流乗り越え八十路坂
ゼロゼロのバランスシートの人生譜
【ソロカバ市 早川量通】
(評:ゼロで始まってゼロで終る人生のバランスシート。究極は人生譜のシートだけ―。)

初日の出柏手打って合掌す
一人減り又一人減る句座さびし
出航の記憶うすれる八十年
【オザスコ市 林久美】
(評:生涯忘れることのない出航の日も年経る毎に記憶はうすれていく。八十年の年輪の重みが伝わってきます。)

◎席題「声」(笑出題)
バ声浴び恥をかいても厚い面(つら)【博】
弁士消え無声映画懐かしい【博】
母の声今だ聞こえる耳朶の奥【清子】
老いどちのコーラス元気に声高く【清子】
大声でワハハと笑う健康美【ふみ】
猫撫で声男をだますテクニック【ふみ】
手話二人声なき人生楽しそう【笑】
声なき声靖国神社は鎮まりぬ【笑】
声は出るされど一句が出て来ない【笑】

◎選者よりお知らせ
北米在住の娘宅滞在中、十二月、一月と休ませて頂きました。二月からは平常通りですので、ご投句をお寄せ下さい。


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