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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2017年5月号

2017年5月号 (2017/05/12) 俳句 (選者=樋口玄海児)


遊園地は台地にありて吾亦紅
目印の斜面にカペーラ吾亦紅
色鳥や釣り堀囲む木立かな
お隣は娘三人鳳仙花
【畠山てるえ】
(評:四句目。移住者の物語りめく句。隣のにぎやかさが分かる句。また、その賑やかさをうらやんでるようである。)

リベロンの豊饒の地に虚子祀る
句碑磨きし句友今亡き椿寿の忌
湖渡り来し三日月の句碑親し
豊作に仲人話もちらほらと
【香山和栄】
(評:リベロンの公園での作。四、五年前までは百人近い句友がリベロンの虚子忌に集ったものですが、句友も老いて今では少なくなったと聞いている。私も体の調子が悪く、行けなかった。三句はその作。よく出来ている。その虚子も冥界で喜んでいるでしょう。)

秋まつり寒波に嬉しフェジョアーダ
水の日や姉達掘りし井戸ありぬ
迷いゐる小鳩を放つ秋の窓
お揃の僧衣紫アレルイヤ
【清水もと子】
(評:二句目。この句はブラジル歳時記には無いので、二世に聞いてみたところ、水の日は三月二十二とありました。句の出来も良く、また評するにも楽しみである。このような季語は大事にしたいものである。この句は移民初期に移民が苦労した句でもあり、また秋の美しい水のありがたさを表している。)

鰯やく大根おろしあれば足る
四月バカ週末来ないバスを待つ
インジオ住む鳥の名の街秋日和
【猪野ミツエ】

葉鶏頭花といふには面妖な
農捨てて都会生活の夜学生
句を詠むも小さき幸せ吾亦紅
【川井洋子】

老人会ずいき料理がいでて和む
冬支度亀の棲家の手入かな
絵図鑑引いて学ぶや吾亦紅
【田中保子】

落ちゆくにまかせて溜る落葉かな
塗り替えて落書消えし秋の部屋
葉鶏頭きそうかに繁る墓地の昼
【寺田雪恵】

ひとつづつ忘れ老ひゆく吾亦紅
夕空に紅き点々吾亦紅
色鳥や日曜市のひよこ売り
【森川玲子】

朝寒やコーヒーの香に目覚めけり
もてなしの無花果のサラダに友想う
一人旅月夜に光るはアスファルト
【岩崎るりか】

ふる里に繋がる心鳥渡る
柿熟れて庭の景色も山家めき
友訪へば道程長し吾亦紅
【大原サチ】

砂浜に餌をさがして鳩群れる
波ひいて夏の名残りの貝の殻
【井出香哉】

金鱗の魚を背負ひサンバ踏む
花の精彩どるサンバカルナバル
秋天に六ケの太鼓鳴りひびく
【青木駿浪】

海近き里に増えたる秋つばめ
アバカテにサビヤが群れて夏の果て
盗人蜘蛛今日も現れ秋暑し
盗人蜘蛛に噛まれ地団太踏んでおり
【樋口玄海児】


短歌 (選者=新井知里)


年毎に増える天災絶え間なく人災激し猛威をふるう
故郷の山川道は変らねど変り果てるは人の定めか
朝食の膳にくすりを並べ置き間違はずに飲む吾も老いたり
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:人が老いるのはあたり前ですが、八十歳過ぎると薬を飲んだり大変ですね。お元気で。)

夏空は朝は晴天天気よし午後は忘れずスコール続く
アパートの窓多くして閉め急ぐ風雨は待たず東から西と
夏時間やっと終りて一時間損得なしに正常となる
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:夏は朝と夕方は変りが激しいですね。夏時間が終って私もほっとしています。)

夏時間終りて息づく間もあらず猛暑は続くブラジルの夏
カルナバルとなればたちまち吹く風も涼しくなりて秋は近づく
ひとり生えの紫蘇は茂りて吹く風に所せましとさゆらぎており
【サンパウロ中央老壮会 富樫苓子】
(評:季節のない国と思われていますがサンパウロにも四季はありますね。よく表現しています。)

吾足は大腿骨折無理できぬ手術プラチナ金属物あり
新しき吾が子の家は二階建て下にある寝屋(へや)父母の寝屋
ブラジルは四季の寒暖あまり無くそれでも感じる骨折の足は
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:足の手術、大変なことだったと思います。くれぐれもお大切に。)

六十の手習いどころか卒寿より歌詠み初めて励む日々なり
愛孫に女児さずかりて一ヵ月人形のように服着せ替えおり
白い服赤い服頭にリボン大事な玩具になってる曾孫
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:曾孫さんの可愛さ、そして前向きなかおるさんの姿がよく表れたいい歌ですね。)

ばあちゃんの焼そば美味いと云う孫に腕によりかけ目を細くして
蜜柑むく皮くるくると乾かして焚き付けにせし田舎こいしき
沢庵でしまいの一口白御飯日本人ならではわからぬこの味
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:焼そばをおいしいおいしいと言って食べてくれる孫さん。ますます目を細めるおばあさん。可愛い歌ですね。)

熱帯夜冷え切らぬまま朝が来る暑い暑いと合う人ごとに
夏時間終れば秋も遠からじカルナバルも過ぎ馬肥ゆる秋が
お出かけはMADE、IN、CHINAのブルーザを手さげに時計日傘もCHINA
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:三首目の歌、楽しい歌ですね。心がなごみます。)

亡き義姉の面影に似てアガパンサスの真白き花は清々と咲く
日本より電話を呼ばれ冷えし身を沈めしばかりの湯舟とび出す
今年まだ新渡戸菊は咲き初めて時雨に寒き心ほぐさる
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:日本からの電話の話、楽しく面白い歌ですね。ユーモアがあります。)

日がな降る小雨に雫たらしつつ色もあせずに咲く百日紅
それぞれの孫らの好みも覚えつつ料理をつくる好きおばあちゃん
娘の作る今夜の献立何かしら鼻唄まじりに野菜を刻む
【スザノ福栄会 原君子】
(評:お孫さんに喜ばれて料理する姿、楽しいですね。)

正月に一族集い賑わいてみんなの成長ぶりに驚く
雨の日が続けば気になる妹達のぬれつつ花切る姿が浮かぶ
ひと月を降りつづきたる大雨に道はガタガタ樹木は倒れ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:お孫さんや妹さん達の日常を気になさる暮らし、優しいですね。)

けんかしたことも遠い日となりてたより合いつつ夫と暮らせり
コーヒーの香りを賞でつつ夫と飲むこの幸せをしみじみ思う
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:頼りたよられた生活をいつまでも続けられますように。)

五キロ余のチラピアさっとから揚げしをどんと出したり手間借えの日に
ポ語さえも解らぬものを邦字紙の行間の外語人困らせる
【サンパウロ 野村康】
(評:五キロのチラピアのから揚げ、びっくりしました。気が大きいですね。)

ブラジルに居て歌作る身の幸よ飛行便にて届く「まひる野」
亭々と伸びゆくユーカリ丈高く木肌が白く陽にかがやけり
禿頭を光らせながら歩みくる黒人に夏の陽カンカンと照る
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:ブラジルにいて短歌を作っていられる身は本当に幸せだと私も思います。)

陸橋の上に突然クヮレズマが雅の世界にしばし遊びぬ
【新井知里】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


師先輩見えない姿追う感謝
一言を減らして平和な灯をともし
高くして眠れる枕待つ庶民
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:終戦から七十年。庶民の枕は高くなったと云えるだろうか。まだ高くならないと思うのは欲ばり過ぎでしょうか。)

平凡な暮らし何より秋日和
先読めぬトランプ政治風雲児
仕事趣味テキパキ済ます人若し
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:どんな仕事も手際よく片付けていく人には若さを感じる。仕事趣味とは言い得て妙。)

初夢はラスベーガスの大当たり
隠しひき俺の弱みを君知るや
発注しますワイロの額の順番で
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:ラヴァジャットにより益々拡大化する汚職の根拠を突いてお見事。ユニークな発想を頂きます。)

秋晴れに句会楽しく柳友(とも)集う
秋日和今日もお出かけおしゃれして
ゴミ捨てず我らの町を美しく
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:ゴミは町を汚くし、雨期には洪水ともとになる。)

自転車道走ってみたい老いの夢
花まつりエスコテイロ花配る
サンパウロ降雨の洪水さけられず
【セントロ桜会 中山実】
(評:毎年の事で市民も慣らされ別に驚きもしない。)

楽しいね笑顔作れば心晴れ
一ヶ月ポ語聞かれずちと淋し
一ヶ月あっと云う間の帰国です
【JICAシニアボランティア 鈴木京子】
(評:暫くぶりのご帰国を楽しく過され、無事に熟連へのお帰りの日を待っています。)

飛び乗ったバスに未来を賭けてみる
闇を裂き命の果てを飛ぶ蛍
羽ばたけば飛べる翼とまだ思う
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:まだまだ羽ばたけます。その心意で頑張って下さい。)

飛ぶ鳥を落とすに届かぬマニフェスト
飛び込みで入試見事合格す
呼べばすぐ飛んで来る人ほしい老い
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:一人暮らしの老人の切実な心境を詠んだ一句に感銘しました。)

空気水平和安全ただじゃない
国益を主張し合えば平和なし
新世代漢字は書けず目で覚え
【ソロカバ市 早川量通】
(評:目で見て書くのはコンピューターと云う時代です。)

和食での軽い食事で長く生き
やはり和製何年たつも役に立ち
句友逝き話の続き闇の中
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:話の続きは来世でゆっくりしましょう。)

安倍総理試行錯誤で和解策
安物も探し回れば高くつき
アメリカの新政権にわく不安
【オザスコ市 井上風車】
(評:トランプの飛躍した政策に不安はつのるばかりです。)

テロ銃声人の集まる場所目がけ
逃げまどう群集テロの恐ろしさ
二の足を踏んで買物行きしぶる
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:日常生活にも一々気を使う不安な世の中になりました。)

人の事云う前己をかえり見て
よく来たと言われて受ける温かみ
口に泡出した物言い不和のもと
【スザノ市 飛松信雄】
(評:口角から泡を飛ばす状況から和は望めない。)

スラムの子飛躍夢みてボール蹴る
味競うおふくろ出番遠くなる
ロボットの介護温みも伝えてね
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:身のまわりを気遣って優しく語りかけてくれるロボットが欲しい…。そんな人が増えてきました。)

飛ぶよりは踏ん張っていたい我が居場所
雨期に入り傘の同伴忘れずに
やはりダメ餅は餅屋に任せましょ
【サンパウロ市 秋吉寿子】
(評:やはり専門家には任せるのがいちばん。同じ餅でも出来上がりが違います。)

飛ぶ鳥は後をにごさず消えて行き
人に抜かれ足元ゆらぐ老いの坂
明日を追い明日に追われてひと日暮れ
【サンパウロ市 毬井べる】
(評:人はみな明日に生かされているのですね。)

◎席題「秋」(ふみ出題)
秋ながら残暑きびしく木陰見ゆ【博】
ブラジルの季節感じる柿の味【博】
これで秋?へそ出しルックあちこちに【清子】
園散歩落ちる木の葉に秋を知る【清子】
種なしの柿がおいしい秋まつり【実】
やはり秋木の葉ぼちぼち落ちはじめ【実】
しのびよる秋かぜに似し夫婦仲【ふみ】
芸術か食欲かしら秋忙(せわ)し【ふみ】


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