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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2017年6月号

2017年6月号 (2017/06/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


簡単で好きで草梅漬けにけり
対岸の灯は横に伸び島の秋
みそ付けてそれが一品新生姜
木朝顔旧街道を九十九折れ
【畠山てるえ】
(評:三句目。お酒を飲むお客さんが来た時、何にもさかなが無い時に最高。しかも、この客、いつもの客で、話もざっくばらん。これが句になったとはうれしい。句は、気をつけておればいつでもできる。また、どこにでも転がっている。)

親は和語子は葡語で詠む秋灯火
招かれて新屋の庭に鯉幟
垣に添ふ木立朝顔紫に
【大原サチ】
(評:三句目。この句、木立朝顔は立木に花が朝顔そっくりで咲いています。それでも昼も夕べも咲いているので、日本人が付けた花の名ですが違っているようです。)

甘酒のおかわりもして句座和む
水澄める奴隷の砂金掘りしあと
母の日に抹茶の香りのケーキ食ぶ
【香山和栄】
(評:一句目。甘酒の句、面白く出来ております。日本人の多い句会であったことでしょう。)

児を宿し茹でたミーリョが欲しくなる
プチプチと弾けて甘きスイートピー
粕汁の季節になりて急く家路
【岩崎るりか】
(評:一句目。児を初めて宿した時の句で面白い。出来上がりも上々で、その上ブラジルのミーリョ〔トウモロコシ〕と詠んだところも上々。)

母の日の祖母と母親主賓席
白椿一輪開き虚子忌かな
工場の塀に顔出す木朝顔
【森川玲子】

旅の宿波の音聞く夜寒かな
秋の浜波は静かに岸を打ち
鴎追ふ犬はよろこび浜辺かな
【井出香哉】

日本より届きしメール鰯雲
ブラジル食美味しと思ふ食の秋
味噌の色少し変りて芋茎汁
【鈴木文子】

出稼の絆は今も栗の飯
法話聞く昼寝の癖をこらえつつ
干芋茎玉子人参田舎ずし
【猪野ミツエ】

朝寒や老人体操三十分
朝寒や犬のチョッキは赤い縞
朝寒や成り振かまわぬ老い二人
【田中保子】

風の出て喜んでいる今年竹
椰子風より竹林の風涼しかり
秋晴の畑を愛し老二人
登る日に棒サボテンの花明り
牡丹の花の明りに一山家
【樋口玄海児】


短歌 (選者=新井知里)


朝四時の目ざまし時計がなりひびく眠気をとばせ大相撲観戦
稀勢の里かたの痛みをのりこえてファンにこたえ遂に優勝
待ちわびし日本出身横綱が十九年ぶり大感激なり
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:素晴らしい横綱の誕生でしたね。三首共ともよく出来ています。)

大相撲新横綱の稀勢の里優勝決定戦勝す
けがしても不屈の気力稀勢の里よく頑張った奇跡の優勝
けがをした十六年前の貴の花決勝戦で武蔵丸制して
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:本当に稀勢の里の不屈の気力には驚きました。横綱になるのは大変なことです。)

稀勢の里十三日目に敗北し肩胸痛め病院直行
千秋楽けがをかかえて稀勢の里二戦二勝し歓声の嵐
良くやった逆転優勝稀勢の里横綱の意地男泣きする
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:このたびは相撲の歌が並びましたが、それだけ感動が強かったのでしょうね。私はどんなことにも懸命にやっていれば、最後は神の力が加わる気が致します。どうでしょうか?)

もう一年あっと言う間に花だより頭の中がピンクでそまる
三十年前に一緒に写る両親の年をかぞえて自分を思う
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:三十年前の自分と今の自分、なぜか同じような感じなのでは…。そうやって続いていくのでしょうか。)

補聴器を外せばしずかな秋の夜目覚めさわやか今日も健康
熟年のビンゴ大会大当り賞品たくさん家路も軽く
秋一日県人会のピクニックモジの蘭園たのしかりけり
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:さわやかに目覚められて、ビンゴに大当り。蘭園に県人会で行かれたり、素晴らしい余生ですね。お幸せにお暮らし下さいませ。)

満月に招かるる如逝きたりし母は常世のかぐや姫かも
絶滅の危機にあるとう赤目魚四万十川の生魚気づかう
冬眠の熊になりたい雪国の子育て終えし妹の手紙(ふみ)
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:お母さんのことを常世のかぐや姫と考えられるなんてお幸せなことですね。ふる里のことをいろいろと思っていらっしゃるのですね。)

ラバジャットもろに被りし国の不況に鎧戸閉ざすか軒並にして
屋上に身を乗り出して落書きの命知らずが放映さるる
カンブキーラたまには食べてみたくなりカボチャ畑の中に分け入る
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:現在のブラジルの世相がよく出ている歌ですね。よく出来た歌です。)

一月中降りし大雨二月にはビタリと止みて暑い日つづく
子供らも皆それぞれ忙しく日曜までも仕事している
久しぶり帰りしスザノは変わりなく見なれし町をアパートより見る
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:子供さん達が日曜日まで働いているのはそれだけの気力と体力があるのですね。とにかく親はいろいろと心配するものですね。)

予期もせぬ友の逝きしを知らされて信じかねたり四月一日
老人会を熟年会と変えるとも年をとりゆく若さかえらず
色あせし百日紅の花実をもてど吾はこの頃なす無く過ごす
【スザノ福栄会 原君子】
(評:四月一日のことは本当のことではなかったのでしょうか。それならいいのですが。どんなに会の名を変えようと、いつまでも若さを保つことは出来ませんね。歌に作った努力をかいます。)

日本の扇子を開きそよそよと咲いた桜の風を受けいる
ソファより目覚めて昼か夜かとふと戸惑どえり昼の十二時
百歳の友の唄える声ききて元気をもらいぬ今日のカラオケ
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:扇子を開いて日本の桜の風を受けていると連想できる心は可愛らしいですね。カラオケ頑張って下さい。)

タンポポの絮毛とばしを追いかける幼のつぶらな瞳がかがやく
読書にもテレビにも飽きて道行けばクワレズマの花いま盛りなり
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:読書にもテレビにも飽きて外に出て、歩いてふと見ると今を盛りとクワレズマが咲いていた。上手な歌だと思います。)

コロニアの論客と領事に言はしめし大浦文雄五歳で渡伯
犀星を論じその詩に傾倒す大浦文雄は学者で詩人
大浦家の庭に歌碑あり自然石父も偲べる文雄の歌が
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:大浦文雄さんは確かに学者で詩人ですね。庭のお父さまに送られた歌碑を見たくなります。)

好天の秋日の中をバンに乗りピッコデジャラグヮ目指して行く
山裾の娘さんのシチオ開放し卒寿の宴をその場所でする
親戚多く百人以上塔の下ごちそうぜめの祝いの宴は
サントスに行って買ったという海老やサラダにマンガほとんど自家製
親戚と歓談している御主人は九十五才で健やかそのもの
【新井知里】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


原発禍いつまで続くぬかるみぞ
北鮮の強気日韓正念場
薬代月十レアイスですと自慢する
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:果て知れないぬかるみの中で生きる幾多の被害者を思うと胸がいたみますね。)

フランスの民穏当な選挙戦
止められぬ買物おしゃべりつまみ食い
バザーへのはしご又も散財す
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:穏当な選挙戦を経て当選したEUの統合を推進する中道系のマクロン新大統領への期待は大きい。)

自らを信ずる心天を突く
声枯らし絶叫マシーンで生き返り
見つかった隠しヘソクリ誰のもの
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:「天は自ら助ける者を助く」と言われる所以ですね。)

そこそこで逝けたら人生それでよし
風邪流行りマスクでかくす顔の皺
風邪なんぞものともせずにカラオケへ
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:「それで良し」の心がまえが人生をより豊かにします。)

時差ボケで今日の句会も忘れかけ
いつまでも言ってはいられぬ時差のボケ
言霊で今日に感謝の笑顔です
【JICAシニアボランティア 鈴木京子】
(評:今回は無事帰聖された京子先生の歓迎句会となりました。パラベンス!)

政治家に光当てれば膿だらけ
ありがたい無料で乗れるバス、メトロ
上下なく気分さわやか良い仲間
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:膿だらけのブラジル政界の現状を突いてお見事。)

バランスを保って大樹凛と立ち
花に樹木小鳥さえずる山の幸
和する友好みも似てるなぜかしら
【サンパウロ市 堀江渚】
(評:自然現象に巧みに対応しながら立ち抜く樹木の精を見事に描写。流石です。)

転倒して一寸先闇知らされる
これからは己可愛と生きていく
死ぬ時は空手バイバイ天国へ
【サンパウロ市 彭鄭美智】
(評:いつ何が起こるか一寸先も予測出来ない。転ばぬ先の杖に心しながら、ひたすら歩くのみ。)

老いて今スタートゼロに戻りたい
子を思う親の言葉にある重み
やける愛今は助ける愛となり
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:ゼロからのスタートには未来への夢がありました。)

身の丈に合わせて歩く本通り
早耳で時流乗り越え八十路坂
前向きのプラス思考が夢かなえ
【ソロカバ市 早川量通】
(評:表通りを堂々と歩く姿が見えて来ます。)

許し合う心が友情深くする
苦も楽も二人で越えた夫婦坂
孫と対話ときどき日語プラスして
【スザノ市 飛松信雄】
(評:互いにゆずり合う心がなければ友情は続かない。)

味見させお客呼び込む露天商
咲く花に種蒔く季節教えられ
風に舞う花の命に目を向ける
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:味に自信があっての商法。売れ行き万点です。)

父母の躾及ばず非行族
流れ弾飛び交う街路命がけ
玩具でもあってはならぬ飛び道具
【オザスコ市 井上風車】
(評:家庭での躾も空しく社会悪に汚染されていく未成年者は増えるばかりです。)

もの忘れ昔からだと苦笑する
日進月歩早瀬の如き世の流れ
ポ語が通じなくても生ける国
【サンパウロ市 毬井べる】
(評:老化現象とせず昔からの続きだと割り切る前向き思考がいいですね。)

お互いに和を願えども噛み合わず
メトロ内柳句にはまり乗りすごし
片言のポ語で親しい友となり
【サンパウロ市 秋吉寿子】
(評:人それぞれに意見は異なるもの。噛み合わぬ歯車からトラブルが起き易い。)

◎席題「母」(ふみ出題)
父よりも母の記憶を語る子等【博】
父と母どっちが強いかはかりかね【博】
母の霊いつも付き添うわが人生【清子】
年とってボケても忘れぬ母の顔【清子】
義理の母苦労分かるよ嫁に泣き【京子】
母がいずふる里遠く父に詫び【京子】
自助努力母の生きざま目にうかぶ【笑】
パパ、ママと呼ばせて日本語教師です【笑】
たらちねの母は今なし若作り【ふみ】
慈母賢母そうでなくても母は母【ふみ】


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