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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2017年9月号

2017年9月号 (2017/09/15) 俳句 (選者=吉田しのぶ)


涸滝の上は青空あるばかり
茎漬けの手揉み加減は母ゆずり
寝たきりの父の寝床の隙間風
冬の窓日差しに委ね眠気さす
【川井洋子】
(評:澄み渡った青空の下に岩をむき出しにした涸滝、冬の景そのものです。涸滝と青空のコントラストが見事です。)

涸滝の下を潜って散歩道
冬ざれや隣家も遠き一軒家
一年中カシコ編む友指太し
見よう見真似茎漬け作る移民妻
【田中保子】
(評:川辺の散歩道、涸れ果てた滝の下を潜れるほど水が涸れている、涸滝の景がよく出ています。)

石段に焼け付く人影原爆忌
内職の封筒貼りや隙間風
子を寝かす母のほつれ毛隙間風
七段の滝涸れ細る旧街道
【香山和栄】
(評:広島の原爆写真展に残された貴重な記録の一頁である。閃光の一瞬人影が敷石に焼き付けられるほどの原爆の凄まじさをもの語っている。)

意地悪になりたくはなし着ぶくれて
顔ぶれの毎日同じ日向ぼこ
祖母伯母と受けつがれ来し茎の石
椰子壁を泥で塞ぎし隙間風
【猪野みつえ】
(評:人間年を取るほど意固地になると言います。着ぶくれた意地悪婆さんにはなりたくないですね。年はとっても可愛いいおばあちゃんでありたいものです。)

裏山に茎石探す昼下がり
涸滝の岩黒々と月明り
たまご焼き上手に焼く子春隣り
山男帽子に挿すや雉の羽
【森川玲子】
(評:裏山に漬物の石を探す、もちろん自分の家の農地内にある裏山であろう。のどかな昼下がり作者の姿を想像する。昔河原で手ごろな漬物石を拾った記憶がある。その石は今でも我が家にある。)

郷土祭抹茶の香る裏千家
どこからかともなくバスの隙間風
カトレアや流派競える華道展
百姓の仕事にもなれ茎漬ける
【大原幸】
(評:毎年日本祭りの茶道コーナーは会場の入り口に設けられ、ブラジル人の人達がお点前を楽しんでおられましたね。茶道の伝統文化がブラジルにもすっかり根付いた感じです。)

隙間風星空見ゆる椰子の壁
隙間風懐かし祖母の童話かな
相合傘なれど心の隙間風
それぞれの茎漬け持ち寄り野良弁当
【岩崎るりか】
(評:昔の開拓時代を思い出します。星空の見えるほどの隙間から、音を立てて刺すような風が入ってきて、まんじりともせず夜を明かした時代が懐かしい。)

電線を巡らす街路虎落笛
乗換えの郊外電車隙間風
小川涸れ小魚群れる水溜り
川の辺にさがす手頃な茎の石
【畠山てるえ】
(評:街路に張り巡らされた電線に寒風が触れてひゅうひゅうと音を立てて鳴っている。電線に凧がふらさがっていたり、冬場よく目にする光景である。ブラジルらしい情景をよく捉えている。)

二世等もすき焼き大好き豆腐買う
甘さ増すリンゴのジャムの匂う冬
スーパーで手袋片方失えり
もらっても贈ってもうれし冬の蘭
【寺田雪恵】
(評:すき焼き鍋を囲んで一家団欒のひととき、すき焼きという日本人の嗜好を親から受け継いで、すき焼き大好きとは日本人の血は争えないものですね。)

隙間風防ぐよしなし古家屋
寝つく間の鼻の上過ぐ隙間風
帰り花何を忘れて戻りしか
茎漬の茶づけで済ます昼一人
【坂野不二子】
(評:家が古くなると、がたが来てどこからともなく隙間風が入ってくる。昔住んでいた板壁、椰子壁の家など防ぎようもない開拓時代の懐かしい思い出ですね。)

亀のごと首をちぢめむ隙間風
隙間風心の中まで忍び寄る
【井出香哉】

吊り橋も一景となり滝涸るる
一千の短冊を書くうら盆会
山里の雉の鳴き声野良に聞く
椰子壁の今は懐かし隙間風
【吉田しのぶ】


短歌 (選者=新井知里)


日本祭七夕祭りと七月は好天つづきの最高の祝賀
二週間大相撲観戦早起きすファンならでは寒さ気にせず
名古屋場所横綱の稀勢の里休場さびし早癒祈る
【サンパウロ中央老壮会 大志田良子】
(評:昔の移民と比べられないほど楽しみが増え、特にNHKが観られる世の中になったことは一番のよろこびですね。それも同時に見られる相撲はうれしいことです。)

疲るれば横になるべし悲しくば楽しかりしを思い出すべし
長男は休暇をとるから小旅行へ共に行こうと誘いてくるる
犬、猫とあらゆる雑用あとにして息子の家族と共に歩く
【サンパウロ中央老壮会 富樫苓子】
(評:息子さんのご家族と共に出られてよかったですね。さぞ、楽しかったことでしょう。)

北九州記録的なる大降雨浸水被害何百棟も
東北も大雨被害記録的土砂災害で多くの流木
大雨で住宅浸水避難指示何万人も我が胸痛む
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:祖国ではこのところ大雨受難がつづき、本当に胸が痛みますね。自然災害は自然の恐ろしさを実感します。)

名古屋場所白鵬優勝三十九回偉業勝星一千五十勝
気に掛る二場所休場稀勢の里あせらず養生全治するまで
大風五号九州巻き込み四国向け各地で避難今日は和歌山へ
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:自然の恐ろしさを知る大風。毎年テレビで映し出される光景ですが、胸が痛みますね。ここで居ながら相撲を観られるのはうれしいことです。)

たのしかり友等揃って芸能祭齢忘れて舞台に立てり
老一人留守居はつらきものなりき瓶のふた取れずガス替え重く
久しぶり県人会の運動会老いも若きも一と日楽しむ
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:芸能祭で友達と踊ったり、県人会の運動会で走ったり、大拍手です。そんな山田さんだから九月に日本に行かれるパスポートを取られたのでしょう。お元気で。)

ゆきあいの空仰ぎつつ近づける宴によそおう服の色思う
末の子のバイヤ土産のロザリオはパウブラジルの赤き実の玉
常若き友の生活(くらし)を垣間見ゆ大きな鏡とピンクの浴室
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:宴に装う服の色を思われたり、常に若い友の浴室をそっとのぞかれて大きな鏡とピンクの浴室を見られたこと、ワクワクします。)

若々しい栃沢先生見ておれば吾もぼんやりと日を送られず
百歳と見えぬ若さで先生は皆の歌の批評をさるる
アパートのベランダに陽うけ蘭の花不景気などを知らず咲きおり
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:自分より年上の方が若々しくいるのはいいですね。本当にぼんやりとしておられません。ベランダの蘭の花を不景気知らずに咲くと歌ったのはハッとしました。)

バーに行く事もなくなり八十路の夫テレビ観ながら吾と茶を飲む
寝ながらにテレビ観ている夫と吾どの子を頼ると言うこともなく
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:そばにいてお茶を飲むだけでお互いの温かさが伝わってくる夫と妻。不思議な二人ですね。)

火鉢番昭和の歌を口ずさみ西空染めて今日も暮れゆく
独り身のそれなりにある年用意山はおぼろに暮れてゆくなり
湯に浸かり旅の想練る春日なか長湯もなんと楽しきものか
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:長湯の旅は楽しかったことでしょうね。)

日本の四季の移ろい鮮やかに載る「ニポニカ」誌繰る飽きもせで
ポ語のみの子等への手紙の代書をば頼める友の思いや如何に
国々の変った料理が食べられるブラジルは良し吾には極楽
【サンパウロ 野村康】
(評:美しい日本国外務省発行の「ニポニカ」、私も見ています。でも各国の料理が楽しめるブラジルは最高ですね。珍しい題材、ありがとうございます。)

環状道を目の前に見て大いなるプロパガンダの看板が建つ
頑丈な足場を組みて建てたりし看板は大風にびくともせざり
欠詠せず歌の投稿つづけたし九十三歳の身に鞭うちて
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:年を重ねられても作歌を続けられる姿に敬服いたします。)

食文化競う番組多くしてシェフの腕前達人の技
穴開きのジーンズ脛出し膝を出しなんら屈託もなき若き等はしゃぐ
流行のファション髪形さりげなく取入れて過しし吾が青春
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:流行はどんどん変り、今の若者のファションはジーンズを穴を開けはしゃいでいます。髪もおしとやかな吾々の青春でなく、風に長い髪をなびかせて闊歩しています。よい題材に気づいてくれました。)

イッペーと沖縄桜同じ色青空の下共に色どる
南国で冬の寒さの楽しみは道を色どる街路樹の花
訪伯の若い友との食事会日本の話時を忘れて
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:本当にブラジルの街路樹の花は美しいですね。時を忘れて聞く日本の話、楽しかったでしょう。)

「水森かおりショー」
父の日の前日夫とアニェンビーへ二昔前出たのど自慢
日本から水森かおりがやって来た若き同伴四人も連れて
華やかな舞台は楽しこんな日もたまには外に出るのもいいね
【新井知里】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


父盛装仙台平の音さやか
健康が自慢の友が又一人
アルバムを見れば悲しい齢となり
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:父の厳然とした盛装姿を思い浮かべる作者。仙台平の絹ずれの音が聞こえるようです。)

亡き母の言葉いつでも耳朶の奥
人生は地獄もあれば天国も
冬晴れに心うきうきカラオケに
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:母の言葉はいたわり、励ましとなって心の中に生涯生きつづけます。)

春よ来い背すじ伸ばしてお洒落しよう
熟年のパワー全開芸能祭
大統領保身の為の金をまき
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:春はもう間近かです。若々しい心意気にパワーを頂きました。)

楽しみと苦しみ混じる習い事
この寒さ頭こごえて何も出ず
ひと月の早さ何してたのと吾に問う
【JICAシニアボランティア 鈴木京子】
(評:楽しみあり苦しみあり。何事もその道に入ると容易ではありませんね。)

若者はスマホ奴隷になりました
ケータイもパソコン無き頃なつかしむ
十二才孫の背丈は我を越し
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:「一番大切なものは?」と聞けば、「スマホです」と答える世代になりました。)

老い仲間ゲートの話しに花咲かせ
リベルダデ七夕祭で盛り上がる
県連の日本祭板につき
【セントロ桜会 中山実】
(評:いつまでも元気でゲートにお励み下さいますように―。)

おふくろの自慢の味好まれず
あちこちの綻び治し生きてます
苦労して熟した人に気品あり
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:味の好みは人それぞれに違うもの。余り気になさらないように―。)

思うより行動すれば実りあり
待ち合わせ遅れるよりも先で待つ
病んでみて人の苦しみ分かるもの
【スザノ市 飛松信雄】
(評:思案に止まらず行動に移せば道は開けるもの―。)

遅い足時間たっぷり取って出る
イッペーの黄じゅうたんよけて行く
真心が親密度合深くする
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:中句の「たっぷり」に共鳴しました。)

いつか着る細めサイズの服を買う
別居して仲良くなった老夫婦
花明かり去りてきらきら星明かり
【サンパウロ市 堀江渚】
(評:いつか着ると決めて買った服。後少しダイエットすればきっと着れます。)

ムリ通れば道理引っ込む浮世です
下ばかり上は向けない老いの道
雨の夜はなぜかあの夜の君思う
【サンパウロ市 毬井べる】
(評:多数決でOK、後はパチパチと手を叩いて―。)

誇り持ち頑張り抜いた旧移民
冗談が通じる友は真の友
美しい朝焼け夕焼け故郷(くに)偲ぶ
【サンパウロ市 秋吉寿子】
(評:「君が代」と日の丸を誇りとした時代でした。)

君が代を異国で歌う祖国愛
夢一つ異国に耐えた幾星霜
力誇示し合えば平和遠くなり
【ソロカバ市 早川量通】
(評:「君が代を歌うと胸が熱くなるのです」と言った人がありました。)

旅に出て楽し想い出一つ増え
親密な友に色々教えられ
鏡見てニッコリ笑顔今日のため
【サントス市 大矢のぶ子】

齢いくと金と命がより所
自然界息するものに無駄はない
飛ぶ力ないと知りつつ見栄を張り
【オザスコ市 斉藤晃伯】

民の声耳を筒抜け風化する
真実もまともに聞けないデマ多く
止めどない悪循環の世の怖さ
【オザスコ市 井上風車】

味見して又味見して来客に
手を取られ坂道上がる齢となり
幼き日坂すべりした日なつかしむ
【オザスコ市 太田孝江】

◎席題「敗戦」(笑出題)
終戦を敗戦と呼ぶ友のいて【ふみ】
敗戦の爪痕深く老いし友【ふみ】
戦争は負けても勝っても民泣かせ【京子】
金持ちは戦い負けても金儲け【京子】
負け戦昔は落命今懺悔(ざんげ)【博】
敗戦日祝うブラジル憎んだ日【博】
敗戦の苦しみ越えて築く幸【清子】
若者は敗戦知らずのノーテンキ【清子】
敗戦は記憶の底に閉じ込める【笑】
敗戦を知らず動員で汗流し【笑】


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