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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2017年11月号

2017年11月号 (2017/11/15) 俳句 (選者=吉田しのぶ)


春一番不覚に転ぶ齢かな
売家の城壁めきて蔦若葉
若芽吹くミナスは寺院多き町
旅を来て広きマ州に秋惜しむ
空港に玻璃戸越し見ゆ朧月
【大原サチ】
(評:春一番とは、冬から春にかけて吹く強い風をいう。大正生れの九十歳を越えた作者には、不覚に転ぶ齢と詠ってつくづく齢には勝てないと、余生を一生懸命生きて行く姿勢がこの句から伺えます。)

滑り台ブランコシーソー母の視野
耕して耕して生活楽にならず
耕しの日本手拭しかと腰
暮鐘草咲いて噂のある小路
ジャボチカバ野飼い鶏豚肥え太り
【猪野みつえ】
(評:公園で子供を遊ばせている母の姿を詠んでいます。母の目の行き届いた所で遊ばせるのは、今も昔も変わりません。遊び道具すべてが母の視野の中にあるとは巧みな凝縮された表現です。)

春泥のパラナ路難渋診療車
土手の草なびかせて蛇穴を出ず
目薬を日に何回も春の塵
「孫は宝」と歌ひご機嫌敬老日
竜宮丸と名付けし漁船春の潮
【香山和栄】
(評:巡回診療で奥地を回る診療車、昔は泥道であった。医師も医療班も車を押してぬかるみを脱出し、診療車を待ち詫びている地域の人達を思へば、必死であった。献身的な医療班の姿を詠ってコロニア社会の絆の深さを感じる。)

耕やさん鍬持つ腕(かいな)衰えし
迷わずに裾たくしあげ春の泥
朝帰りの猫が持ち込む春の泥
バス通りサイアブランカ花盛り
一人居の友誘い出し春うらら
【田中保子】
(評:開拓時代の百姓は、年も若く疲れというものを知らなかった。未来の夢に向かって覇気があった。しかし年をとって鍬を振ってみると、腕に力が入らない。腕衰えしといって、つくづく年を取ったなあと実感のある句です。)

春暁を破り疾走す救急車
綿畑地平線まで耕せり
思い出はテーラロッシャの春の泥
蛇穴を出づれば温き小径かな
山裾に朝餉のけむり春深し
【岩崎るりか】
(評:救急車が朝まだき春の夜明けを警笛を鳴らしながら駆け抜けて行った。思わず他の車も道を譲る現場の緊張感がよく出ています。救急車は人命を守る緊急の場合のみ出動する車であって任務を遂行する責任感まで詠みとれます。)

ミナス平野血の色秋の夕陽かな
鉱脈の探検隊に山笑ふ
風薫る日本の技術者鉄の街
【田中エレーナ】
(評:ミナス平原の彼方に沈む夕日を血の色とみた作者の感性は詩情豊かで素晴らしい。雄大な景色を素直に詠んで二世とは思えない表現力の豊かさを感じさせる句となりました。)

蛇穴を出づれば青空あるばかり
コンクリートの街に縁なし春の泥
春泥に触るるも久し春の泥
【井出香也】
(評:春先になると蛇も冬眠から覚めて穴を出てきます。穴を出てみたら抜けるような青空がそこにあった。蛇もびっくりしたことでしょう。爽やかな気分になりますね。)

耕して耕し子等へバトンタッチ
春暁の相撲放送窓明かり
門照らす木のシャンデリア暮鐘草
春耕のかぐわしき土掌に掬ひ
大鍋に五つ入らぬアルカショフラ
【森川玲子】
(評:耕すということは、百姓にとってまずは土作りから始めるのが仕事、耕して耕していずれは子等にバトンタッチする親の気概が見て取れます。親の背中を見て育った子ども達もきっと跡を継いでくれるでしょうね。)

春の塵置かず日々打つコンピューター
蛇穴を出づれば墾屋建てかけ居
蛇穴を出て餓鬼大将に出くわしぬ
こけし首折れて転がる春の塵
テレビ画面指でなぞれば春の塵
【吉田しのぶ】


短歌 (選者=新井知里)


久し振り雨は静かに振り出でてすべての生きもの息つくごとし
じっくりと地に浸みてゆく静かなる雨にわが身も潤う如く
小気味よくとどろく雷に「春雷だ」と近づく春に心おどりぬ
【サンパウロ中央老壮会 富樫苓子】
(評:三首とも春の雨と雷の歌、よく詠まれています。春は心がおどりますね。)

ラッシュ時の車の渋滞おびただし吾も居るなりその流れの中に
ハンドルを握る時だけ歳忘れ八十路現役通勤たのし
ブラジルに生れし幸せイッペー咲き桜も見られサビアさえずる
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:好きな国に住め幸せな珠美さんの様子がよく分かります。)

熟年ク百年地蔵の法要に僧を迎えて焼香の列
サウデ文協総出で祝ぎ五十年祭先駆者偲び感謝捧げる
六人の曾孫すくすく育つ春わが幸せは何時までつづく
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:熟年のお地蔵さまにお願いしても分からないことばかりですね。訪日される由、お元気で。)

夜明け前サビアの声が聞こえ出す冬が終って春が近づく
月一の東洋街での買い物は少しの日本感じながらに
二人の子遠くに暮らすその時も少しの安心インターネットで
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:一連の三首で街の作者の生活がわかります。短歌の題材はどこにでもありますね。この会は教室がありませんので、みなさんの歌が教材です。)

バレットスペオン祭りは盛大で何万人も集いし人々
今年は女の子らが折りかえし荒馬に乗り二百メートル
ペオン達荒牛に乗り何秒も牛はあばれてすぐ落される
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:有名なペオン祭りに招かれたのに、行けなかったのが残念です。)

朝五時の起床の知らせ目ざましは今日も元気とはげまし聞こゆ
卒寿とて現在痛いところなし広場で体操二十年余り
老齢化社会の一員われ思う迷惑かけず余生たのしく
【サンパウロ中央老壮会 大志田良子】
(評:毎朝体操されて、身体をやわらかくしておられる良子さん。余生たのしく生きること、学ぶことばかりです。長生きのコツは自分自身ですね。)

終戦日七十二年目学校で弁当盗まれ泣いた十歳
痛む足大学病院でリハビリー気さくなインターンと冗談とばす
満開の庭のつつじは四米見上ぐ花明り一千ワット
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:終戦日の頃は学校に弁当を持ってこられない子がいましたね。それを盗まれたとは…。三首目のつつじの歌、たのしいです。)

四年前娘と遊びし足摺の岬の椿はほころぶ頃か
旅カバンに衣類つめつつ遠征のアテネの秋をなつかしむ娘
二百三高地の似合う祖母なりしか四十で逝きしと写真に知るのみ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:チェスでアテネに遠征された娘さんのことですね。足摺岬の椿も美しく咲いたことでしょう。)

田舎家の夕暮どきを厨より流るる水はテッポー百合育て
カラオケに佐渡の恋唄ならいつつ地図に見つけし佐渡という島
シュラスコに日本人には握り飯そろそろ手を出す伯人たちと
【サンパウロ 野村康】
(評:シュラスコの美味しさは格別ですね。こんなふうに歌に詠まれると、余計おいしそうです。)

百歳を目ざせと友のこの便り繰り返し読めば胸を打たるる
足わるくしてより四年寝たきりで起きることなく短歌を詠みつぐ
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:百歳を目ざせの歌いいですね。胸を打ちます。お元気で。)

気がつけば指を折りつつ眠りいる「ばあちゃん短歌は出来たの」と孫
【スザノ福栄会 原君子】
(評:原さんのお孫さんも優しいですね。お元気で。)

陽は出ても風が冷たい冬なれば日溜りみつけてしばし温もる
出かけんと歩めば冬の陽燦々と照りてうれしき今朝の散策
冬らしい日々が続きぬ子どもらは暗いうちから勤めの仕度
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:若い時とちがい、冬は陽だまりが恋しいですね。燦々と照りつける陽は宝のように思います。)

ブラジルへ移住するわれ見送りの母に手を振る汽車の窓より
アメリカに住むと別れに来し娘涙は見せず駅まで送る
今は亡き二人で写りたる思い出多い小野政子さん
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:別れの光景は忘れられないものですね。名前までしっかり覚えていられるのですね。)

国運は益ますおとろえドル高となりて落こむブラジル経済
政治家の腐敗はここに極まれりつづく汚職に何とか言わん
インフレを吾は怖るるその上の如きインフレ再びくるな
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:この国の政治家の汚職はいつなくなるのでしょう。ブラジルの経済の安定を願うばかりです。)

アマリリス背筋伸ばして四方に花はるだ春だよと告げてるように
庭に咲く六色ありしつつじ花丈夫で長生き鉢植えなれど
【新井知里】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


支え合う人との絆宝(たから)物
政界の混乱続くどの国も
人生の最後は笑って大往生
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:掛けがえのない貴重な絆です。「宝もの」とは言い得て妙。)

道端の名もなき花にもある命
鬼になる仏にもなる親ごころ
家族いて友いて今日の我の幸
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:路ばたに咲く花への作者の温かい思い遣りが伝わってきます。)

温泉で乙女になりし老婆たち
老いぼれとあなどるなかれまだ出来る
自撮りしたわが顔誰かと首かしげ
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:皺の袂が少し気になりますが、水着姿の老婆達の姿は乙女のようでした。)

ビンゴの日財布もバッグも空で行く
句作りに頭ひねりつ歩く日も
句会では周囲にのまれ貝になる
【JICAシニアボランティア 鈴木京子】
(評:バッグも財布も一杯になりますように―。)

弟背に鍬を引いてた母憶う
雨雲に洪水気にして急ぎ足
ブラジルの国花イペーの美しさ
【セントロ桜会 中山実】
(評:開拓期の厳しい時代を生きた母の姿は生涯心の中に生きつづける。中句に胸を打たれました。)

寄り添った相手は女掏摸(すり)だった
ガランチード賛辞にあらず揶揄と知れ
お若いと言われ旅来て転倒し
【サンパウロ市 野沢亮】
(評:財布を掏られたことに気付いた時は後の祭りでした。)

趣味を抱き余生の灯消えるまで
生き甲斐を趣味に任せてさわやかに
朝市に試食楽しむ客の列
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:自ら選び自ら育て終わりのないのが趣味だと言えよう。下句の「灯消えるまで」に感動しました。)

真っ直ぐな道より回り道が好き
朝のバス臆せず化粧する女性
無事帰宅緊張とけて眠くなる
【サンパウロ市 渡辺文子】
(評:回り道して真っ直ぐな道にない物を見たり聞いたりして感動する事が多い。)

義理を欠くことも一つの老い支度く
住みたいな鍵のいらない世の中に
鉛筆も死語となる日がやがて来る
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:義理を重んじ過ぎて無理に出しゃばるよりも、老いを理由につつましくしている方がむしろ好感を持たれます。)

甘かった考えゼロからやり直し
出来上り味見したとは思えない
世渡りは二人三脚妻思い
【オザスコ市 井上風車】
(評:諦めずゼロ再起する作者の心意気にエールを送ります。)

変化する時代の波に逆えず
世の変化ついてゆけずに呆け始め
焼き肉にカイピリニャだけそれでよし
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:世はIT時代、逆う術もない。)

丈縮み胴膨れゆく老いサイズ
老いの身に友の親切眼がうるむ
速足で八十路の峠目の前に
【サンパウロ市 秋吉寿子】

決断は速いが実行伴わず
夫の髪切る手も老いてジグザグに
真っ直ぐに背中伸ばして若返り
【サンパウロ市 毬井べる】

人は何故己にないもの欲しがるの
人生路真っ直ぐだけでは生きられず
貸家ビラ取れないように板に替え
【サンパウロ市 堀井渚】

幸不幸思わぬ時にやって来る
自己自慢する人皆に煙たがれ
年とればいずれ熟して落ちてゆく
【スザノ市 飛松信雄】

出稼ぎで速くの言葉まず覚え
妻の顔忖度(そんたく)しつつ生きる日々
真っ直ぐな竹にも深い節のあと
【ソロカバ市 早川量通】

寒い日は老いは厚着で座るだけ
落ちこんで又思い直し暮らす日々
愛犬と日光浴も又楽し
【オザスコ市 太田孝江】

◎席題「道」(ふみ出題)
ここ迄の道ふり返り感謝する【清子】
人の道真っ直ぐ歩めと母の訓【清子】
この齢でまださまよう人の道【博】
遠き道重荷を負って辿りつき【博】
年とれば下り道には杖がいる【実】
登りより下りがきつい老いの足【実】
茶道華道習い家族の世話はせず【ふみ】
人生に外してならぬ人の道【ふみ】

素顔では生きてゆけない人生路【柿嶋さだ子】


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