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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2018年3月号

2018年3月号 (2018/03/13) 俳句 (選者=吉田しのぶ)


手の上で切る新豆腐板につき
朝顔の咲き次いている地蔵前
末の子も嫁がせ寡婦の夏帽子
あの抱擁別れとなりし天の川
朝顔の外何も無きお地蔵さん
【サンパウロ中央老壮会 猪野みつえ】
(評:作りたての新豆腐、手の上で切るその手慣れた仕草が家庭の主婦の技です。二世でも三世でも年季が入ると厨仕事は楽しくなりますね。正に板についた感じ、みそ汁もさぞ美味しいでしょう。)

サンジョアキン魔の坂のぼる残暑かな
測量の杭の打たれし大花野
あさがおの藍の勝りて垣のぼる
秋茄子の虫食いばかり濃むらさき
かなかなやバケツで汲みし風呂の水
【セントロ桜会 森川玲子】
(評:文協からサンジョアキンの駅までのあの坂道、魔の坂とは言い得て妙、とても一気に上るのはお年寄りにはきつい坂、残暑となれば尚更です。汗を拭きふき駅にたどり着けばほっとします。)

ヨガの後残暑ものともせず歩く
白内障残暑の光に涙ぐむ
余命など忘れて仰ぐ天の川
木綿漉し大豆のかおり新豆腐
あらぬ方朝顔の蔓巻き付きぬ
【サンパウロ中央老壮会 田尻瑞穂】
(評:ヨガというのは中国から渡ってきた体操で、健康美容体操の一種ですね。ヨガ体操をすれば、心身共に爽快になります。鍛えた体で残暑をものともせず歩く気構えはさすがです。)

椰子並木さゆらぎもせぬ街残暑
ひぐらしに絣(かすり)織る音はたと止み
新豆腐生姜葱かけ食弾み
かなかなとミンミン山を棲み分けて
蜩に絣織る手をふと休め
【サンパウロ中央老壮会 香山和栄】
(評:南国ブラジルの情景ですね。秋といえども照りつける太陽のもと、街路が残暑に耐えて入る様はさゆらぎもせぬ椰子並木の的確な表現で、この句が動かぬ一句となりました。)

カルナバル野暮は言うまい半ヌード
天の川千古の恋の物語
手作りの味噌に漬け込む鰆かな
カルナバル黄熱病もなんのその
蜩やか細く鳴けば人恋し
【サンパウロ酉年会 田中保子】
(評:カルナバルの時期がやってきました。野暮なことを言っちゃあいけません、半ヌードも陽気な民のお国柄なんです。この句から味わう半ヌードがカルナバルの句として動かないものになりました。)

大雪の祖国テレビで見る酷暑
冷そうめん啜り我が家は恙なく
水羊羹甘味ひかえし抹茶味
初場所や不屈の優勝栃ノ心
紺と白セーラー衿の夏衣
【サンパウロ中央老壮会 鈴木文子】
(評:日本では豪雪のため、千五百台の車が路上で動けなくなったと、酷暑のブラジルでそのニュースを聞くとは、四季が真反対であることをつくづくと感じます。汗を拭きながらそのニュースを見ている作者です。)

秋立ちぬ歳時記一つ買い足しぬ
新豆腐自給自足の頃思ふ
一本の椰子に絡まり野朝顔
高原の空の広さよ天の川
ブラウスとスカート整理秋に入る
【サンパウロ中央老壮会 大原サチ】
(評:読書の秋と云われるように、秋立つ頃、歳時記も一冊買い足したという何気ない言葉のなかに、他の本を買ったついでに歳時記も買ったと言って、俳句を嗜む作者の心意気が読み取れます。)

豪雨止み庭に小さき秋来たる
残業に夜半の帰宅天の川
花野道連れ立つ人等皆ズック
町残暑肩出しモード翻り
市に買ふ温みの残る新豆腐
【サンパウロ酉年会 畠山てるえ】
(評:豪雨の後の我が家の庭に秋の気配を感じたという、庭の片隅に秋の小花が咲いていたのでしょうか。豪雨の後だけに、小さき秋来たると言って、季節の移り変わりが鮮明に読み取れる句となりました。)

刺青のパレードと化す街残暑
石臼で挽きし大豆の新豆腐
露の玉光る朝顔野辺送り
新豆腐の味噌汁好みし祖母は亡き
児に見せしプラネタリウムの天の川
【サンパウロ中央老壮会 岩崎るりか】
(評:近頃の流行りといえばタトウを入れた人が街にあふれ、日本では刺青をした人は特別な目で見られていました。時代が変わればファッション感覚で男女共楽しんでいます異に感じるのは年寄りだけ?)

行く年や来る戌年に夢かけて
足腰の痛み増し居る年の暮れ
意気高揚自転車で行く新年会
【レジストロ春秋会 小野カズオ】
(評:初めて投句されたレジストロの方です。今年の戌年に夢をかけて、年老いても意気盛んな日々が過ごせるのは素晴らしいことです。これからも益々のご健吟を期待しています。)

蜩の鳴いて山門閉まるころ
咲き初めし朝顔に笑み独り言
新豆腐しょう油も要らぬ作り立て
店頭に栗の出回る季となりぬ
食の秋われに鞭打つボケ防止
【吉田しのぶ】


短歌 (選者=新井知里)


鉢巻で杵ふる父に餅返す母いきはぴったりわれ五歳なり
搗たてのお餅をまずは仏壇に合掌まねる小さきわが手
紅白に草餅大きな鏡餅年末行事の父母の時代は
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:日本の十二月暮れの懐かしい風景ですね。本当に懐かしく涙が出そうになりました。草餅はありませんでしたが、懐かしい情景をよく短歌によんでくれました。)

新年や生かされてわれ九十三才お稽古事になおいそしまん
元旦に初日を拝し先祖を拝し家族の健康願いし朝なり
新年に集いし子等のだんらんの笑顔が私の最高の幸
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:新しい年も明けました。家族の笑顔がほんとうに私達にとり幸せだと思います、そして九十三才でお稽古事にいそしめる体力と余裕のあるかおるさんに拍手です。)

親孝行いましなければ後悔とナタールの休み温泉旅行
温泉はポッソデカルダス、バス五時間四日三晩と疲労回復
ケーブルカー何年ぶりの山の上キリスト像に手あわせ祈る
【サンパウロ中央老壮会 大志田良子】
(評:皆さんお元気な方々ですね。良子さんも娘さんと山の上にのぼったりお元気な方であきれるばかりです。)

危険ごとあるかのように年末の商店街の雑踏の中
静かなる空はにわかに風立ちて雲流早む元旦の夕
一病を守りて迎ふる新年の恙なかれと祈りてやまず
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:十二月暮れの商店街の様子。新年の自身の祈りなどよく詠めています。)

列作りサンタさんとの写真撮る子供の姿ホットして見る
カレンダー残りのページ一枚に今年は何をしたのだろうか
年越しのそばは作ろうお雑煮も日本の行事知ってほしくて
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:三首共素直な歌ですね。母国の正月行事を知ってほしい気持ち、よくわかります。押しつけてまでも知ってほしいですね。)

日曜日のリベルダーデは人溢れ年末なれば動きもとれず
定まらぬ天候なれどもこの朝は散歩の道で蝉の声きく
この朝は列なして飛ぶ雁を見て忘れていたる季をしらされる
【サンパウロ中央老壮会 富樫苓子】
(評:蝉の声を聞いたり列なして飛ぶ雁に季節を感じたりする富樫さんは詩人ですね。)

君が代を聞けばこの胸あつくなる昭和ひと桁生れの吾は
横文字の本になじめず頑くなに縦文字文化ただ一と筋に
新しい喜びも古き思い出も秘めていつしか八十路の齢(よわい)
【サンパウロ中央老壮会(ポンペイア市) 須賀得司】
(評:横文字の本になじめぬ生活などよく似ていますね。異国に来てこれではダメだと思うのですが、治りません。老壮の友であちこちの会員と会うのが楽しみです。)

夕光の屋島山上はだ寒し合戦絵巻眼下に迫る
舟唄にひとり酒酌む雨の夜半電話のベルに不安がよぎる
青々とわが身を浸すよもぎの湯野道行くごと心をのばす
【サンパウロ中央老壮会 小林咲子】
(評:どの歌もよく出来ています。一首目の下のよみが特にいいと思います。)

ピタンガの木でひとしきりさえずって小鳥は赤い実くわえ飛び立つ
木もれ日のゆれるベンチにかけて待つお盆の墓地は人でにぎわう
そのことが記憶の中にかすんでるわが脳裏から遠ざかりゆく
【サンパウロ中央老壮会 小久保鈴子】
(評:あまり昔の思い出はかすんでしまいますね。熟年クラブに飾られた立派なお雛様を見た時、私もそう思いました。よい歌です。かすんでいる脳裏から引き戻してくれました。)

新年の天気さだまること知らず一日のうち雨降るならい
こんな時は花を蒔こうと思いたち咲くを夢みてあちこちに蒔く
習い事いつまでたってもダメだけど下手な横好きそれでも良しと
【新井知里】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


安物の服着て闊歩夏の街
買い食いも楽しきものよ夏の街
四十年住めば都のサンパウロ
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:バーゲンセールで買った服を着て颯爽と闊歩出来るのも夏になればこそ――。)

世の中がどう変わろうと脳天気
苛立たす何度言っても立たぬ夫
恥なきを知る人ぞ知るルーラ捕縄
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:今日は今日、明日は明日、吹く風にまかせて日々好日。)

郷土食涙して食ぶ老移民
過ぐる日の早さに我の齢知る
幸不幸思い一つで変わるもの
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:一口、一口お美味そうに郷土食を味わう老移民の姿が見えるようです。)

猿が死に予防注射に長い列
老い哀し手足にぶくなるばかり
耳遠くなれば惚けも早くなる
【セントロ桜会 中山実】
(評:猿が死んだ事で黄熱病への恐怖から予防ワクチンを受ける人の列は後をたたない。)

十字架に阿弥陀教読む慰霊の葬
椰子の実を振って水音聞かせ売る
苗木売る鉢植え蜜柑に実が三個
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:親が仏教でも子供等がカトリック教となれば止むを得ない事かも――。)

闇だけでないから生きる自信湧く
明と暗交互に巡る世のならい
褒められてやる気出ましたありがとう
【サンパウロ市 渡辺文子】
(評:神様は明と暗交互に与えて下さいます。)

暴きたい汚職事件闇の中
よしやろう力出てくる褒め言葉
褒め言葉何より嬉しいプレゼント
【サンパウロ市 堀井渚】
(評:政界の汚職事件は闇から闇に葬られる事が多い。)

手をつなぎ足をそろえて添い歩き
哀しみが静かに闇を越えてくる
緑内障夫の闇の深さ知る
【サンパウロ市 毬井べる】
(評:労り合いながら寄り添って――。美しいですね。)

年金で賄う薬ちとにがい
先人の蒔きし拓魂今も生き
死語となる言葉今も使い切る
【サンパウロ市 大塚弥】
(評:にがくても年金で薬代が賄えるうちは良しとしましょう。)

戦時知り戦後を知りて思慮深む
褒められて聞こえぬ振りの照れかくし
連れ合いを真面目に褒める純な夫
【抒情歌の集い 秋吉寿子】
(評:戦前戦後を生きた尊い体験を活かして更にご活躍下さいますように――。)

政界は光と闇のボス社会
暗闇に一灯ともりて希望湧き
褒め六分叱り四分で子は育ち
【ソロカバ市 早川量通】
(評:政界は伏魔殿と言われる所以ですね。)

税金が政治の闇に消えて行く
楽しみも取っておけない記憶力
旅すれば見知らぬ世界肌で知り
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:この国の社会情勢は悪くなるばかり、庶民が払う高い税金はどこへ流れて行くのでしょうか。)

子育ては褒めと叱りの調和から
褒められて苦労の甲斐が軽くなる
楽しみも気がかりもある老いぐらし
【オザスコ市 井上風車】
(評:飴と鞭を巧みに使い分ける事が大事ですね。)

思うより行動すれば実りあり
病んでみて人の苦しみ分かるもの
闇夜でも一夜明ければ陽が昇る
【スザノ市 飛松信雄】
(評:あれこれ案ずるより行動に移すこと。「案ずるより産むが易い」と言います。)


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