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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2018年7月号

2018年7月号 (2018/07/14) 俳句 (鑑賞=吉田しのぶ)


いつの間に家族膨れて移民祭
老いの身に鍬はね返す乾季畑
事多き思いに浸る夜長かな
道の辺にけもの死におりウルブ舞う
冬ぬくし欠かさぬ奉仕清掃日
【大原サチ】
(評:今年は笠戸丸移民から百十周年を迎える節目の年です。百周年のとき六世まで生まれています。死に代り生まれ代り、人生悲喜交々の中で家族が増えそして移民祭を迎えるのです。歴史の重みを感じさせる佳句となりました。)

冬ぬくし主婦機嫌よく水仕事
竹筒に開き初めたるびわの花
街角にマンジョカ売の猫車
禅寺にカレー待つ列冬ぬくし
首長きガラスの花瓶冬薔薇
【森川玲子】
(評:冬の寒い季節主婦の仕事は厨仕事、家の掃除洗濯と水を使わないことには仕事になりません。冬ぬくしと言ってそんな日は、鼻歌も出て水仕事も捗りますね。暖かい冬は主婦にとってありがたいです。)

日本人捨てる気はなし根深汁
快方に向かひし句友小春句座
シュラスコは男の料理と決めて待つ
母の日やまこと親しきカーネーション
母の日やいつしか子等に支えられ
【鈴木文子】
(評:寒い冬の季節葱を主材とした根深汁を家族で食卓を囲み啜る一杯は幸せですね。作者は一世、日本人の気概を持ってこの地に生き、食文化を継承して行こうとする心意気が伺えます。)

水洟や涙もろくてお人よし
庭を守る七人小人に冬のバラ
うたた寝に昼夜たがえて暮早し
買収の近づく狭庭枇杷の花
狐火や狐狸つきと云ふ面輪かな 
【猪野みつえ】
(評:この一句作者そのものの実感です。涙もろくお人好しで真っ直ぐな道を歩んできた人生の達人です。水洟で句が生きています。人情味あふるる佳句となりました。)

子沢山夫婦相和し木藷摺る
月代にわが影法師踏む家路
狐火は恋の合図と古老云ふ
児童寄る村の図書館ふくろう鳴く
日は西に牛影も無き牧乾季
【香山和栄】
(評:移民初期食の糧として木藷を植え飢えをしのいだ時期を思い出します。子沢山の中にも、夫婦相和して木藷を摺っている情景は家族の絆を感じさせる温かい句となりました。)

トラックスト捨て菜の山に村冴ゆる
移住祭祖国二つや準二世
幼き日着きし港にウルブー舞ふ
冬雲のこぼす日溜まり鳩群れて
空にごり埃の匂ふ冬旱
【畠山てるえ】
(評:たかがトラックストというなかれ国の経済が麻痺する程の深刻な問題でしたね。生産と供給がストップした今回のスト、出荷が出来なくて捨てられた葉野菜の山に、生産者の心情が思いやられます。村冴ゆるで句が生きました。)

人生は千差万別枯尾花
カンジカとケントンがあり夜更けまで
空っ風背を押されて地下鉄に
紫蘇の実のふりかけご飯なつかしや
梟の鳴き変わす声午前二時
【田中保子】
(評:人の世はまことに千差万別であります。そしていつかは命を終えていく運命(さだめ)を持って生きています。尾花はススキのこと、いつか枯れて枯尾花となり果てていく、尾花にたとへた人生の悲哀を詠った佳句となりました。)

シルバー席いつもゆずられ冬ぬくし
手捻りのつぼにひともと冬そうび
賢人の言の葉ありて寒ぬくし
木漏れ日をあびて坂道寒ぬくし
冬の日に端紅(つばべに)冴えてばら一輪
【田尻瑞穂】
(評:六十五歳以上の方には無料パスを頂きその上シルバー席が設けられていて、至れり尽くせりです。若い人達も気持ちよく席を譲ってくれます。でもそれを当たり前と思ってはいけません。感謝、感謝です。)

静かなる秋の落陽余生今
足元に潮の満ち来る秋の暮
秋夕焼影黒ぐろとビルの嶺
テニスコートの頭上五月の空は秋
西日背に我の影追ふ秋の帰路
【上田ゆづり】
(評:作者は今自分の来し方これかの余生を秋陽の落ちていく静かなひとときの中に思いを巡らせているのです。人生にはこういう時間も大切ですね。新しく投句された方ご健吟下さい。)

枝豆をつまみ晩酌友と酌む
秋の風机上の句稿飛ばしけり
母の日や子等がねぎらふお茶の会
孫帰り五月連休終わりたる
【小野浮雲】
(評:季語のない句もありましたので少し添削いたしました。ご参考にして下さい。郵便事情が悪く句稿が遅れて着きました。悪しからず、ご健吟ください。)

発散すケントン飲んで世を忘れ
霜月や鍋焼うどんの日曜日
霜枯れや土鍋が当たるビンゴかな
味噌仕立て土鍋に牡蠣が行儀よく
かじかむ手息を吹きかけ取る箒
【田中エレーナ】
(評:原句「焚火してケントン飲んで世を忘れ」焚火、ケントン、冬の季語で季重なりです。添削してみました。ご参考にしてください。ケントン飲んで酔いがまわりましたね。若い頃はこんな事もあります。)

教会の鐘の音さびし秋の暮
敬虔に祈りを捧ぐ移民の日
風船割り孫は六月誕生日
老いの日々余暇を楽しみカシコ編む
裸木となりたる景や秋はいく
【井出香哉】
(評:季重なり、季語なしの句がありました。少し添削いたしました。ご参考にしてください。第一句秋の感じがよく出ています。ご健吟下さい。)

愛猫のはかなき命露と消ゆ
塩桶の干乾びており牧乾季
梟の鳴いて墾家の仕舞風呂
皇室を迎ふ節目の移住祭
コロニアの史実勝ち負け移民の日
【吉田しのぶ】


短歌 (選者=新井知里)


受けとりし友の母堂の年賀状文字は少々みだれし九十八才
絵手紙の絵をながめて遂つられ思わず声が出てしまうほど
一年中笑って暮せ若くなるされど老後が長すぎるやも
【サンパウロ中央老壮会 大志田良子】
(評:一年中笑って暮らせたらと思いますが…。良子さんの歌は楽しいですね。)

天皇の生前退位後一年来年二月の新元号を待つ
逝きし友住所消す時ふと思う何か借りある様な気がして
自分では後期高令感せずで写真で見ればやはり老人
【サンパウロ中央老壮会(ポンペイヤ市) 須賀得司】
(評:天皇も退位され、何か身が引きしまる思いです。写真の中だけでも若くありたいと思うのですが…。)

ある時は筋を通してある時は無理を通すも老いの身勝手
悪口を言うひと人に嫌われる言わねば言わぬで煙たがられる
ひたすらに齢を重ねて老けてゆくされど気概は衰え知らず
【サンパウロ中央老壮会 水野昌之】
(評:老いの気持を良く表していると思います。気概だけは強く持ちつづけたいものですね。)

流感の予防接種に急ぐ道もう秋だねとポストに向う
洗濯物一杯干して空見上ぐ腹一杯に秋を吸うなり
親和会馳走にビンゴ遊びあり爆笑爆笑で皆ボケません
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:流感の予防もして秋の空気を一杯吸ってごちそうも食べて安心ですね。良い歌です。)

毎朝を夫と歩きし道のりを一人となれど共にいるかに
夫逝きてすべてのことのなつかしく共にへし世は長くよかれし
今われはあらゆる樹々に「おはよう」と声をかけつつ犬と散歩す 
【サンパウロ中央老壮会 富樫苓子】

山荘で誕生日の宴はるえさん終始笑顔で幸せいっぱい
ジャラグワの山のふもとの山荘に山の空気と花に囲まれ
山のない町住いのわれ行く先のピッコデジャラグヮー壮大なりや
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:山荘の空気に囲まれて、さぞ楽しい宴だったことでしょうね。命の洗たくですね。)

移りきて百十年のときながれさくら恋いつつイペに染まれり
かえりみる百十年のいさおしを空みあぐればココ椰子そびゆ
満開のさくらのビデオながしつつ花見たのしむブラジルの秋
【サンパウロ中央老壮会 小林咲子】
(評:今年は日本人がブラジルに移民してから百十年になりますね。そのときの流れを上手にサクラとイペーで表現していますね。)

雨雲の空一面にひろがりて気持は急(せ)くも家路は遠し
色あせた日本人形遠き日の想い失せてもいまだ捨てがたし
挿し木せしゼラニウムの鉢十にふえとりどりの色咲きみだれおり
サンパウロ中央老壮会 三宅珠美
ワールド杯間近にせまる国中が緑と黄色にふくらむ期待
あどけなき花嫁花婿ジュニナ祭少しはにかみ腕組おどる
何事もインターネットで済ます世におぼえるすべなく取残されて
【サンパウロ中央老壮会 小久保鈴子】
(評:二世の三宅さんはブラジルの世の中を、よく知っていてよい歌を作ってくださってありがたいです。)

ちょっとした誉められた事うれしくて心の雲がすっと晴れゆき
青い空白い雲見る冬の日は雪の男体(なんたい)心に浮かぶ
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:誉められることは誰でもうれしいものです。素直な歌です。)

「舞台で踊る」
二昔前カラオケ歌った文協で団体踊り不安でならず
なにごとも体験しないと解らない眩し過ぎるね舞台の上は
高齢者表彰の九十七才溌剌として元気に踊る
【新井知里】
※ 新井先生の突然のご逝去、心よりお悔み申し上げます。つきましては、投句は熟連本部宛にお願い致します(係)。


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


北鮮の微笑外交当ては何
民主主義最後は金力優先し
年金の目減りを愚痴てまだ呆けず
【ポンペイヤ市 須賀とくじ】
(評:終始笑顔で首脳会議に臨んだ金正恩の腹の底には何があるのか、完全非核化が実現あるまで誰にも見通せない。時事吟として風刺満点、流石です。)

恋人の日そんな昔もありました
今でよしだけども少し若ければ
したたかに米朝首脳初デート
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:「恋人の日」と聞いて思わず自分の青春期を振り返る作者。)

この世よりあの世に友が多くなり
トラックスト排ガス減って空青し
物流が止まって庶民の知恵を知り
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:だんだんと寂しくなるばかりですね。)

若い気が席譲られて歳気づき
老人と分けられる歳みな違い
思い出となりし学びの友達よ
【JICAシニアボランティア 鈴木京子】
(評:若作りで出かけたのに「やはり歳なんだわ」と気付かされた時の気持ちは微妙なもの。素直に受け入れて席を譲ってくれた若者に「ムイト、オブリガード」を忘れずに――。)

青い目の江差追分堂に入り
カラオケを唄う至福の声高く
停年は人生至福の出発点
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:民謡特有の節回し。着付け等日系をしのぐ妙技を見せてくれました。)

父母の言語たしなむ吾が誇り
愛すると素面(しらふ)で云えぬ歳となり
金あるも愛なき心貧しすぎ
【サンパウロ中央老壮会 原満腹】
(評:掛け替えのない貴重なプライドです。心おきなく発揮されますように――。)

頭と体だんだん遠くなる怖さ
手のふるえ母の気持ちが今分かる
うらめしい余る一文字(ひともじ)その行方
【サンパウロ中央老壮会 佐藤エリゼ】
(評:思うように動作しない体への苛立ちはお年寄りには誰れもあるもの。余り気にしないことです。)

いち早く時代の波に乗れば勝ち
大波もくぐり抜ければ嘘のよう
子育てに親のヒントが役に立ち
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:時代の波に乗れない者は置き去りになって生き難い余生を送ることになります。)

真剣な日々の努力がヒント生む
大波を小波に変えた内助の功
男なら波乱万丈つきものさ
【ソロカバ市 早川量通】
(評:日々の努力から得たヒント、先ずは間違いありませんね。)

今年こそ的確選挙望みたい
後ろ向き安全法も水面下
語らいがつづく絆の敬老会
【オザスコ市 井上風車】
(評:今年十月に行われる選挙では現政界情勢を改革出来る骨のある政治家に出て欲しいものですね。)

行く手には大波小波つきまとう
語らいに集う仲間は話好き
度忘れは誰にもある気にしない
【スザノ市 飛松信雄】
(評:立つ瀬あり、沈む瀬あり人生航路は常に厳しいもの。)

財産は波立つ前に処分する
方言で気楽に話す長電話
親子孫やはり受け継ぐ山口弁
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:最も理想的な処理法と言えそうですね。)

◎席題「なんでだろ」(博出題)
寡婦になり三十年なんでだろ【清子】
なんでだろどこで人生間違えた【清子】
なんでだろインスピレーション浮かばない【エリゼ】
なんでだろテレビのテツがなんでだろ【エリゼ】
なんでだろルーラの人気まだ続く【満腹】
なんでだろ俺が川柳作るとは【満腹】
なんでだろ衣食足りて礼知らず【ふみ】
なんでだろ体重減ってもたるむ腹【ふみ】
なんでだろわけなく怒る妻の乱【博】
なんでだろ運動してもやせられず【博】


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