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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2018年9月号

2018年9月号 (2018/09/14) 俳句 (鑑賞=吉田しのぶ)


父の日や人参嫌ふ父なりし
透き通る銀の翅つけ蝿生る
ふるさとの亀の形の山笑ふ
幾筋も白き烟立ち山笑ふ
船底に雑魚ばかりいて東風の波
【森川玲子】
(評:有色野菜の一つ人参を嫌いとは、子供の人参嫌いはよくあるけれど、大人で嫌いとは珍しい。父の日の馳走の中に人参が入っていたのをそっと除けてお父さんは頂かれたのでしょう。可笑しみがあって微笑ましい句です。)

マ州富士吾らが名付け山笑ふ
吾が城の窓辺の机日脚伸ふ
山焼きの話などして奥地訪ふ
一番雨雨音聞くは幾月ぞ
双葉では分らぬ種類もの芽出づ
【畠山てるえ】
(評:富士に似た山の形を我々移民は何々富士と名付けて故郷を偲んだ。アサイ富士とかパラナ富士とか、先人が名付けた故郷を恋う移民の郷愁は三世、四世へと受け継がれていくことでしょう。)

ほのぼのと心温もる焚火かな
足元にしのびよりたる寒気かな
スイスイと車線流れる冬休み
水仙の乱れ咲く丘友の里
階段を数えて老爺冬枯るる
【上田ゆづり】
(評:焚火をするとどこからともなく人が寄ってきて大きな焚火の輪が出来る。焼芋を食べながら心の輪を温めた懐かしい思い出がよみがえってきます。犬も加わるほのぼのとした焚火風景です。)

胸えぐる豪雨の被害観る寒夜
かたくなに譲らぬつもり懐手
冬ぬくし仙台平での栄誉賞
初優勝男泣きする大相撲
設置さる義援金箱冬ぬくし
【鈴木文子】
(評:今回の豪雨の被害、被災された方々には慰めの言葉もありません。甚大な被害をもたらした異常気象と地球の温暖化、四十度にもなった灼熱の中でのボランティア活動、熱中症に倒れた人達、地獄を見る思いでした。)

草千里牛の散らばる春浅し
東風吹かば旗ひるがえる展望台
鈍行の高山電車山笑ふ
春寒し就職難の列長し
立春は名のみ冷たき風よぎる
【大原サチ】
(評:草千里といって果てしなく続く広大な牧場の風景を連想します。春まだ浅く風の冷たい牧場に牛が散らばっているようにしか見えないのは、牧場が広大であるからでしょう。草千里がこの句に趣をなしています。)

春そこに苺大福ほほばれば
八月やこぬか雨降る昨日今日
さざれ石ついばむ鳩や春立ちぬ
父の日や負われし父の背の記憶
真子さまの萌黄の和服春立ちぬ
【香山和栄】
(評:苺大福をほほばれば、もうすぐそこに春がきたようだと詠った作者の感性には恐れ入りました。苺大福は早々口には出来ないけれど食べてみたいです。美味しいでしょうね。春そこにで句が座りました。)

父の日や減点さるる酒煙草
浅き春移りし家に落ち着かず
子連れ同志仲良し婚や山笑ふ
去勢豚夕餉に早も蝿生る
ものの芽や早起きするがうれしくて
【猪野みつえ】
(評:父の日を祝う囲んだ食卓で「お酒少々はいいけれど煙草はだめよ」と家族から煙たがられたのかな。大いに減点で父の評価が下がりましたね。家庭の中の一コマを捉えた楽しい句です)

老人会の集団見合いや山笑ふ
芽出しじゃが調理しそこねて飾り物
皇室の孫姫迎え移住祭
父の日やガイゼル髭の写真立て
厚着して春よ春よと待侘びる
【田中保子】
(評:今婚活という言葉が流行っています。晩婚の人も夫や妻を亡くした人達に婚活の場を与えようと、老人会や援協で粋な催しがなされています、カップルが誕生すれば、山笑う春の装いに誠にお目出たいことですね。世相を詠んだ句ですね。)

道の破れおし上げ競いもの目出づ
春朝し日差しひろいつ散歩道
かろやかに東風のわたりて髪乱す
浅き春竹林にきく猿の声
東風受けて朝の光の馥郁と
【田尻瑞穂】
(評:春の息吹を待ってものの芽が一斉に地面を割って競い出てきます。石の割れ目からも芽吹く強い生命力にはただただ脱帽です。生まれる、生きる力というのは人間界に限らず、命あるものすべてに言えることで自然界の命の営みを巧みに詠っています。)

父の日に集うてくれる子等も老い
心痛を慰めくれるものの芽ぞ
慰めてくれる友あり笑ふ山
好物のボーロを陰膳父の日に
ものの芽や原っぱはだしで馬子駆ける
【岩崎るりか】
(評:父の日に集うてくれたブラジル生まれの子供たちも移住百十年もたつと老いて孫、ひ孫の顔をみる歳月の流れを否応なしに感じる年になるまで生きて きた証である。父の日に思う作者の感慨である。)

春の野辺晩年夫婦手をつなぎ
ものの芽のわきだすごとき昨日今日
春寒しサイレン響く夜の街
春浅し萌黄色した芽の出づる
父の日は祈りの日なり夫なくば
【坂野不二子】
(評:仲むつましく手をつなぎ春の野辺を行く晩年夫婦の微笑ましい光景です。一世は手をつなぐことに気恥ずかしい思いがありますが、ここブラジルでは自然な振る舞いですね。末永く幸せなカップルでありますように。)

頓智効く人の情あり山笑ふ
帯着物はたき春窮堪えし日も
千灯の短冊を書く盂蘭盆会
位牌書く筆捗らず冴え返る
病状は快癒に向かひ冬ぬくし
【吉田しのぶ】


短歌 (選者=梅崎嘉明)


地蔵祭経読む尼僧の声澄みて数珠持つ指にあわきマニキュア
地蔵尊冬陽をあびて穏やかに集う老い等の願いはつきず
ペットボトル両手に持ちて筋トレとこの意気込みで日々励む
【サンパウロ中央老壮会 金藤泰子】
(評:よく詠めています。二首目、情景描写を上にして作者の思いを後にして作晶を引き締めてみました。三首目「いつまで続く」と老いぼれないで「日々励む」としました。)

ピーマンのとりどりの色ないまぜて鶏肉妙めてこよなく旨し
プロツコリの青き茎をも丁寧にむきて食ぶるも健康のため
わが身をば庇いて日々を過ごしつつ何時までつづく吾の命か
【サンパウロ中央老壮会 富樫苓子】
(評:炊事仕事をこなしながら、ふとふりかえってみると、もう自分も若くないんだと日々の生活をよくとらえています。)

人生は楽より苦労多けれど吾は気力で卒寿を生きる
わが友も吾とおなじく卒寿にて杖をたよりに日々励みおり
朝ぎりにうっすら浮かぶ月見えてしばし見とれし体操やめて
【サンパウロ中央老壮会 大志田良子】
(評:自分の半生には苦労も多かったが、何とか乗り切って卒寿まで生きる事ができた。また体操にもはげんでいて、ふと空にかかる月にしばし見とれる、といった感傷は詩人の目として若々しい。)

人生の夢と希望を一筋の日舞にかける明日をたのみて
落ち葉掃く朝の日課もおつくうになりつつ見上ぐ病葉大樹
父の日に集いし子らは父に似てありし日の夫思い出さるる
【サンパウロ鶴亀会 玉井須美子】
(評:日舞にかけるけなげな姿、だが落ち葉を掃くのは億劫だ、この木は何とかならないだろうかと、見上げている作者。また、集まった子供たちは父親によく似ていて、亡くなった夫を思い出させる、などなどと生活がよくにじんでいます。)

宇和島に災害のあり学友を思いて少し義援金贈る
梅の木にかかる凧見ゆ高きゆえ梯子を使うことをためらう
さりげなくトイレに活けし花ありてこの会館のつねにゆかしき
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:一首の中に写実と心象が併合されていて、その融合がなかなかうまくいかないようです。二首目の原作「梯子かけ切らねばならぬ梅の木が」とあって、つづいて「枯れにし枝に凧のかかれり」と客観描写になっていますが、素材が上下よくマッチしていないので、作品として生きていません。梅を切りたいのであれば「凧」など要はないでしょうし、凧を取りのどきたいのでしたら、掲載作品、二首目のようにすれば、梯子をを使いたいけれど、危ないからやめておきましょう。という気持ちがよく伝わります。)

少女らのひそひそ話は何なのか笑いつつ去る冬の夕暮れ
久々に逢いたる友のすこやかに歳月ふるも若やぎて見ゆ
とうとつに逝きたる友をかなしみて夕暮れの道をふらふら帰る
【サンパウロ中央老壮会 小久保鈴子】
(評:第三首目、突然に逝つてしまった友を悲しんでいるのですから、「明るい陽ざしのな中をただよう」、というより、夕暮れとか、雨の日とか、秋とか、さびしい感じを詠む方が、悲しむ心がよく伝わります。事実は明るい日であっても、作品をより良く詠ませる為には少しは変えてもいいのです。)

移民して苦労かさねしと語りつぐ友なれど頬のつね若若し
夕風に病葉土にこぼれ落つかすかな音の淋しこの道
【サンパウロ中央老壮会 猪野ミツエ】
(評:二首目の原作。「夕されば」と出発して下句でまた「夕暮れの道」と「夕」の字がかさなっています。短かい詩なので、同じ言葉か重なると作品が弱くなるので注意なさってください。)

地球儀をくるりとまわしてやってきた遠い大地のブラジル恋いて
【JICAシニアボランティア 岡田みどり】
(評:はるか彼方より来た歌人、今後たゆまず続けてください。一首投稿でなく三首、または五首投稿なさってください。)

移民船に肩を並べていつの日か富士山見むと言いし姉亡し
【サンパウロ鶴亀会 内山秀子】
(評:悲しい移民史ですが、こちらも一首投稿、横書きでなく縦書きにして、前の作者と、同じく五首ぐらい作られて締切りまでに送ってください。)

※ 前選者の新井知里先生の急逝によって、また私(梅崎)がまい戻ってきました。一緒に勉強しましょう。作品は三首なり五首を毎月締め切りの二十日までに届くようにお送り願います。


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


卒寿越え百才人生目指そうか
子等集い九十人生祝いくれ
幾山河耐ええて卒寿確と生き
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:ご卒寿お目出度うございます。百才を目指して心身共におすこやかにお過ごし下さいますように――。)

真子さまの気品に涙老移民
陽溜まりを求めて群れる冬景色
ケントンで浮かれて踊る日本祭
ふる里の味をさがして日本祭
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:眞子さまの気品に感涙する老移民の姿が印象的でした。)

先人の努力に感謝の移民祭
愛犬と朝の散歩が病除け
孫の手をとれば温もりいとおしく
腹いっぱい食べれば人生それでよし
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:百十周年の移民祭に当たって先駆移民への感謝の念を深める作者に感銘しました。)

眞子さまの気品なほほえみ民癒し
駆け巡る皇室外交百十年
父の日や勤勉誠実貫いて
父の日でレストランにも長い列
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:眞子さまの気品な温かいまなざしに長年の移民の苦労が癒されました。)

願いごと多過ぎ笹竹腰を曲げ(たなばた祭り)
青竹が黄色に染まる星まつり
天の川地球汚染で遠くなり
老いの坂越すにあなたの手が欲しい
【サンパウロ中央老壮会 原一平】
(評:牽牛星と織女星に万人の願い事が届きますように――。)

むずかしい止めておこうか川柳は
川柳をはじめて指がよく動き
メトロ中一句出来たが駅はどこ
寒い風頬をなでゆくカミニャーダ
【サンパウロ中央老壮会 沖石エリーゼ】
(評:どの句からも川柳への熱意がうかがわれます。「止めないで頑張って続けて下さい」との句会仲間からのエールがありました。)

迷ったら自分に聞いて答え出す
思い出す終戦直後の闇市を
選挙権ないが気になる次期統領
ベテランも句作に頭痛いと言う
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:究極は自分の答えが決め手となるもの。)

油断して病気に気づく時逃がし
枯れ葉散る季節が見せる衣替え
儚さを肌で感じる老いの日々
スト騒ぎ社会不安増すばかり
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:難病も早期治療すれば治せる時代です。定期的に検診を心がけたいものですね。)

山谷の風景似合う人生路
幸せをつかむ心に余裕もち
若き日の力衰え悟る老い
【オザスコ市 井上風車】
(評:人生旅路の厳しさを巧みに描写、お見事です。)

油断して転ぶと老いの命とり
油断して猫に好物もち去られ
旅に出て三日も立つと帰りたく
高らかに君が代歌う運動会
【オザスコ市 太田孝江】
(評:転倒がもとで寝たきりになる老人が多いと聞く。足下に気をつけて急がないように心がけましょう。)

◎席題「夢」(一平出題)
夢を追い夢に流され人生路【清子】
人生は夢があるから輝ける【清子】
夢を成し百十年の移民祭【ふみ】
夢追う人いつまでたっても若々し【ふみ】
川柳を夢にまで見て苦労する【エリーゼ】
夢に見た良い川柳は目覚めまで【エリーゼ】
あれも夢これも夢かと指を折る【博】
夢ばかり追いかけ過ぎて歳をとり【博】
夢を追い続けて人生八十年【一平】
八十路越し今だに甘い夢を見る【一平】


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