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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2019年2月号

2019年2月号 (2019/02/15) 俳句 (鑑賞=吉田しのぶ)


戦争の柵(しがらみ)消えぬ去年今年
テニス仲間笑顔集ひて初試合
月下美人われの命は幾何か
落雷や母娘の命奪ひ去り
アガバンサス見上げる先の青き空
【上田ゆづり】
(評:人は皆、特に一世の人達は父、祖父、祖祖父と戦争に駆り出され、犠牲となった幾百万の人達を想うとき、戦争は二度と起こしてはならないと思うことです。第二次世界大戦を経験した一世は死ぬまでその柵を背負って生きていくことでしょう。)

探検としゃれて乗初め新メトロ
巻きぐせを伸ばしてかける新暦
老醜の遁れがたきや初鏡
年齢相応もろもろ見えて夏の夜
寝そびれて闇の音きく夜半の夏
【田尻瑞穂】
(評:探検とは好奇心旺盛、、サ・クルース駅を基点として五号線が開通しました。新設された地下鉄に自由自在に乗れるように勇気を出して私も乗ってみたい。何も挑戦ですね。その勇気を評価したい。)

スカイツリーはるか海より初日の出
お茶菓子の金平糖や初句会
お屠蘇にとシャンパンを抜く新家庭
旅先の昼過ぎてゆく初詣
二日目の雑煮の餅は一つとり
【森川玲子】
(評:作者はお正月を日本で迎えて、スカイツリーに登り、はるか海より上がる初日の出を拝んだ貴重な体験を訪日吟として披露しました。素晴らしい体験をされましたね。六百余メートルもあるこの塔に私も登ってみましたが、雨の日で何も見えませんでした。)

億年の滴りきざむ洞窟美
磯かおる酒蒸し蟹のみそ美味し
パソコンで賀状を受くる時世かな
感無量形見となりし雑煮椀
水彩の花浮きたちて古暦
【岩崎るりか】
(評:石筍が伸びていくのは億年の歳月を得てあれだけの洞窟美が完成されるのです。億年とは時の流れをきざむ年月の過程を表した言葉で、石筍より滴れる洞窟は幽閉の世に誘ってくれます。億年の滴りで洞窟美が完成されました。)

メモ欄のあるを厨に新暦
歌留多取る伸びる手あまた得意札
集ひたる親族一同初写真
この親族父母に見せたき初写真
年重ねうれしきあの頃お元日
【畠山てるえ】
(評:暦にメモ欄があるととても便利でそれを厨に吊るしてちょっとしたメモを記す主婦の知恵です。今年一年また行事、予定、医者の診察日とあっという間に一年が過ぎ去っていくのでしょう。新暦が新鮮で一年が無事に過ごせますように。)

他目〔よそめ〕には吾も幸せ屠蘇祝ふ
新年や白寿の句友にはげまされ
新年や挨拶口上祖母仕込み
風鈴に入選の句を吊りにけり
玉葱や口惜し涙も刻みけり
【猪野みつえ】
(評:卒寿を過ぎて他目には本当に幸せそうにみえる作者ですが人間誰しも悩みはもって生きています。それを表に出さないだけ、卒寿まで生かされた命に感謝を捧げ屠蘇を祝うことができるのは、人生を前向きに生きている証です。おめでとう。)

初場所や土俵人生つらぬける
餅一斗搗きて嫁御は見直され
三が日明けてお茶漬けさらさらと
除夜の鐘お西の鐘楼真向かいに
正月旅行アステカ土産のペンダント
【香山和栄】
(評:初場所で稀勢ノ里が引退しました。日本人で唯一人の横綱でした。怪我が元で勝星をあげることができず、横綱の重責に耐え切れず引退を余儀なくされました。誠に残念です。土俵人生に悔いはないと、引退会見で見せた涙は感動的でした。)

初競りや三億余円のクロマグロ
平成の御代も見納め去年今年
馴染みなき紅白の歌去年今年
お雑煮や夫の故郷は味噌仕立て
三が日煮染に飽きて箸つけず
【鈴木文子】
(評:豊洲市場の初競りでクロマグロに三億余円の値がついたとテレビの報道をみて、一体誰がこのマグロを食べるのだろうと想像を難くしたことでした。桁外れの値がつくのも初競りらしく日本の市場ならではの感を強くしました。)

ひまわりはゴッホと共に永久に咲く
この暑さラーメンよりは心太〔ところてん〕
したたりて線香花火の有終美
雷やへそを押さえて十字切る
ひぐらしの鳴いて夕闇迫る刻
【坂田武則】
(評:ゴッホの絵ひまわりは有名です。ひまわりをゴッホの絵と重ね合わせた詩情豊かな鑑賞眼を称えます。他の句に季重なりの句が多く見られました。一句の中に季語が重ならないよう推敲して句を作ってみてください。)

黒雲の早くも雷雨連れて来し
年玉を入れし巾着祖母に見せ
トマト畑赤きを選び盗み食ひ
表裏なき南の国に雑煮食ぶ
涼風の入り來る窓を明け放つ
【坂野不二子】
(評:風雲急の前兆はまさに「黒雲早くも雷雨連れて来し」ですね。氷雨連れて来しとありましたが、氷雨は冬の季語になりますので添削してみました。ご参考にして下さい。嵐の前触れがこの句そのものです。)

今年こそ猪突猛進屠蘇を干す
買い初めや青葉まつりで葱選ぶ
初電話心もはずむ君のこと
独り身のまさに極楽寝正月
宝舟なすの夢見しめでたくも
【小林咲子】
(評:今年の干支は猪です。猪は脇目も振らず真っ直ぐに突進することで、猪の性格を猪突猛進と諺にあります。その勢いで屠蘇を一気に飲み干したとは勇ましい句です。新しく句会に入会されました。これからもご健吟ください。)

夏の雨心ゆたかになり眠むる
藤の花友の狭庭は花盛り
通り雨焼石に水もっと降れ
一年中咲いて朝顔句にならず
【寺田幸恵】
(評:久々にご投句いただきました。なかなか句が出来ないとのことですが俳句はひねるのではなく授かるものです。見たものを心に浮かんだ言葉を素直に表現してみましょう。ご健吟を。)

クリスマス商店街は人の波
往診の絶えぬ齢や去年今年
しみじみと亡き友偲び年送る
買いすぎし餅に思案の若き妻
【小野浮雲】
(評:少し添削いたしました。ご参考になさってください。出来るだけ五・七・五の中に納まるように工夫して詠んでみてください。)

七度目の干支を迎えて年明くる
吾が干支は猪突猛進年新た
借景の湖一人占め夏館
ブラジルに老ひて悔いなき雑煮餅
皇室の弥栄祈る年はじめ
【吉田しのぶ】


短歌 (選者=梅崎嘉明)


雨あがり久しぶりに見る夕焼けは夜のとばりにうすめられゆく
函館の駅に二人で降りたてば白き山脈旅情あふるる
何げなく見ていし壁の落書きにしだいに心魅せられてゆく
【サンパウロ中央老壮会 坂田栄子】
(評:第一首、「夜のとばりにうすめられゆく」とてもよい表現です。第三首、絵手紙とは壁に書いた絵のようですから「落書き」としてみました。この方が作品として生きて引き締まります。)

高齢には当然といわれしこの眩暈杖じゃまなれど馴染まんとする
釣りに行くと食べざかりなる孫は早くよりおにぎり作る手を赤くして
いちじくの青き実熟すを喜ぶに悲しき電話友は逝きたり
【サンパウロ中央老壮会 寺田幸恵】
(評:この度は純粋写実としてよく詠めています。第二首の下句、「手を赤くして」など対象をよく見て具体的に表現されているのがいいです。)

生かされてありがたき命この朝は先祖に謝して初日おがみぬ
年明けて卒寿四歳わが願いボケずに短歌を詠みつづけたし
元旦や生まれ故郷は早や二日思いだしては電話をかける
【サンパウロサウデ老壮会 山田かおる】
(評:年が明けて真摯な気持ちで朝を迎えられた。その様子をよくとらえられています。いつわりのない詠風が魅力です。)

十年前亡き夫のくれしブレデントの時計はいまも正しく動く
友達と逢えば十年前のこと懐かしく話す笑いあいつつ
年毎に吾の動作はにぶりつつ反比例して世間は豊か
【サンパウロ中央老壮会 大志田良子】
(評:ある年齢になると当然として動作はにぶる。しかし世間はおかまいなしに栄えてゆく。自分と世間のありかたをよく観察されている。)

大木の花は樹の葉の蔭に咲くビルより見れば百花爛漫
豪雨中あふるる水に泳ぐ子ら注意すべきか吾は戸惑う
公園の雑草のなかより大トカゲこんなところも彼らの住所
【サンパウロ中央老壮会 金藤泰子】
(評:ある種類の花は葉の陰にかくれて見えないが屋上から見ればすはらしく咲いていた。とよく観察されています。また濁流の中で泳いでいる子供たち、汚いからやめなさいと止めるべきか、楽しそうなのでそのままにしていいのか、迷う心がよん表現されています。)

雑用に明け暮れる吾も日によりてすぐに疲るる齢となりたり
坂あれば朝の散歩もひと苦労なれど歩けとわれを励ます
酷暑にもめげず街路樹はとりどりの花を咲かせる風土ブラジル
【サンパウロ中央老壮会 富樫苓子】
(評:いつもながらよくまとまっています。この調子で励んでください。)

気がつけば冬期は過ぎていまは夏日本との違い吾はたのしき
いつ来ても微笑みいます地蔵尊手を合わせつつ安泰祈る
ブラジルのコーヒーの濃さにいつか慣れアメリカコーヒーに満足できず
【JICAシニアボランティア 岡田みどり】
(評:ブラジルのコーヒーと他の国とのコーヒーの比較ははよく言われます。住めば何とかで、知らず知らずにその国に順応していくものなのでしょう。日頃の生活を素直に表現されていて、好ましい一連です。この調子で続けてください。)

指立ててロツクンロールを踊る孫「パパイノエルは何時来るの」
行儀よく並びて咲けるサルスベリ亡き父母を偲ばせる色
移りきて八年は過ぎし空青くよき国なれど泥棒の多し
【サンベルナルド松寿会 片田甲子己】
(評:素材はいいのですが、作歌に慣れておられないようで、少し添削しました。参考になさってください。)

旅の途路海を眺める夫といて言葉なけれどひととき楽し
遠き日に母と食みたる富有柿目の前にあり母よみがえる
幾日を卓上にあるアバカドは人に見らるるを恥ずごと並ぶ
【サンパウロ 野口民恵】
(評:短歌に熱心な作者、上達も早い。第三首「人に見らるるを恥ずごと並ぶ」といった独特な発想がいい。つづけて励んでください。)

二十(はたち)には二十の思い八十となれば八十路のよろこびがあり
時々は衝動買いや無駄使い気分すっきりストレス解消
戦なき世に生かされし生命なり父母の齢をはるかに超えて
【サンパウロ外山安津子】
(評:こせこせしていない、女性にしては線のふとい作者。「衝動買いをしてストレス解消」なんて男性には思いつかない発想、この持ち味をいかしておおいに頑張ってください。)

候補者の名を胸に選挙券しっかり握りて長き列に並びし
選挙終え静かなる街いっせいに映えて彩る黄のシビピルーナ
ブラジルの明日を願いて外国で投票する列テレビで見たり
【サンパウロ 阿部玲子】
(評:二世の方だが若いころから短歌にあこがれ、父親が教師であったから、日本語をしっかり習得されて、立派な歌人に成長された。以上の作品も日系二世としての感懐をよくとらえておられる。)

妻亡くし夫うしないしお二人が昔を語る楽しからずや
【梅崎嘉明】
 こんな作品はどうですか。昔は人生五十年と言われましたが、いまは百年と伸びました。夫を亡くす、また妻を失う人々も多くなるかも知れません。「女ヤモメには花が咲き、男ヤモメにゃウジが湧く」などと言われましたが、そういうことが無いように、男性も家に燻ぶっていないで、カラオケなり、ダンスなり、また文芸など、自分の好きな趣味を見つけて、おおいにエンジョイしましょう。次の短歌締切りは二月二十日。


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


― 年頭吟 ―
私には猪突猛進似合わない
しなやかに焦らず驕らずぶつからず
―― ☆ ――
権威すぎゴーン(日産自動車元会長)の功績地に堕ちる
人の世に欲しいモラルと云う宝
初句会いつもの顔が揃う幸
初競りに豊洲市場に湧く活気
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:二七八キロの大間産マグロの三億三六〇万円での落札は、初競りと云う事もあって我々にも活気を湧かせてくれました。)

― 年頭吟 ―
炎天の新年祝う爆竹か
新年の誓うことあり神だのみ
―― ☆ ――
新年を祝う気持ちも五十まで
過ぎ去りし青春戻らず皺が増え
歳かさね今の一刻(ひととき)いとほしい
雀(じゃん)好きはボケ防止と言いわけし
年金日今日は焼き肉上頼む
老いてなお負けじと意地はる馬鹿な奴
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:「馬鹿な奴」にカンパイ!その意気込みで今年も頑張って下さい。)

年末は何もせぬのに忙しい
今年又歳ひとつ貰います
窓開けて心うきうき初日の出
外見れば木の葉もゆれぬこの暑さ
【サンパウロ中央老壮会 沖野エリーゼ】
(評:炎暑の厳しい様子が巧く表現されました。)

搗く人の汗が輝く餅まつり
外国(とつくに)に雑煮で祝うお正月
お正月又新しい望み湧く
ブラジルに桜を植えて恋う祖国
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:この地に桜を植えるのは移民の郷愁のあらわれにほかならない。「ブラジルを故郷にするなら桜を植えよう」最近のニッケイ新聞でそんなスローガンを見ました。)

あじさいがわれも来たれり日本から
この国に猪おらず豚ばかり
【サンパウロ中央老壮会 坂田三吉】
(評:「あじさい」が日本からオランダに渡り、オランダからブラジルに来たとの話、初めて聞かせて頂きました。初めてのご投句ですね。川柳詩を数多く読まれますように―。何よりの上達法です。)

爪切ってもらう息子に手を合わせ
小銭入れ薬入れにして老いの旅
貰いしが胸に重たい首飾り
多人数に一人揃わぬ手拍子が
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:優しい息子さんがあってお幸せですね。温かい親子の絆に感動しました。)

成人となりし曾孫にビール買う
パソコンに孫等どんどん進化する
当てもなくボツボツ歩く病み上がり
天災とテロに不安増すばかり
ボウソナロ(新大統領)期待背負って船出する
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:旗じるしの「秩序と進歩」に向かっての船出となって欲しいですね。)

◎席題「呆け」(ふみ出題)
頭からっぽこれも呆けの始まりか【エリーゼ】
自分では気付かぬ呆けが尚恐い【エリーゼ】
ボケ防止子等に迷惑かけぬ為【清子】
カラオケマージャンどれもみんな呆け防止【清子】
川柳に頭ひねるも呆け防止【三吉】
ボケボケと言われながら七十路行く【三吉】
ボケ者と言われて怒った若い頃【博】
君も呆け僕も呆けて世は平和【博】
ちょっとだけ呆けて可愛いいおばあちゃん【ふみ】
都合よく呆けた振りして生きてゆく【ふみ】
(編集部の都合で十二月と一月の投句が同時発表となりました。ご了承下さい。)


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