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熟年クラブ連合会
     生活・健康  (最終更新日 : 2018/12/14)
2011年12月号

2011年12月号 (2011/12/11) 心豊かな老年期を生きる(2)「終活」のための三つのステップ

ステップ②「シンプルな暮らし」身軽になろう
(不要品を片付けはじめた高齢者、負の遺産を子どもに残さないために)

 物を大切にと教えられ、〃もったいない〃精神を鍛えられた世代においても、昨今の断捨離ブームに共感する人も少なくないでしょう。溜め込んでいた物を捨て、スッキリとするのは空間だけではありません。これからも続く人生を充実させ、煩うことなく生きるために、身の回りの物の整理する人がいます。
 岐阜県の片田舎に夫婦二人で暮らす長谷川博正さん(仮名)。蔵付きの平屋を購入したのは今は亡き両親で、長男の博正さんが結婚すると、両親は蔵の二階をリフォームし、そこで暮らすようになりました。
 「その両親がなくなったのははるか昔ですが、二人が使っていた家財や衣服、書物、書類など、すべて処分しないまま放置してきました。というのも、蔵は私たち夫婦の普段の生活にまったく関係することはなく、暮らしていく上で支障がないから、とくに気にすることもないまま来てしまったのです」
 いつまでに片付けなければならないという必要性に迫られることがなかったことも放置の原因の一つでした。
 その後、会社勤めを引退した博正さんは、いずれ息子家族と住むことを考え、母屋をリフォームしました。その際に必要のない物は蔵に置き、いつの間にか不要品やガラクタを置く大きな物置と化していったのです。
 博正さんには息子と娘がいましたが、二人とも名古屋で家庭を築いてしまったため、今の時点では同居の話は二人から出てきていません。そうした中、博正さんは昨年九十歳を迎えたのを機に、急に蔵の二階の物が気になりはじめたと言います。身体が動くうちにと、毎日午前中を蔵の二階に上がり、整理処分する作業を続けています。
 遺品整理・事前整理という仕事を専門に行う会社があることをご存知でしょうか。
 その先駆けともいうべき会社が今年設立十年目を迎えたキーパーズ(有)です。社長の吉田太一さんに、事前整理についてお聞きしました。
―おそらく日本で一番遺品整理をしてきたと思いますが、事前整理の依頼も増えてきているのでしょうか?
 件数的に言ったら事前整理の依頼はまだまだ少ないのですが、徐々に増えてきています。でも圧倒的に遺品整理の依頼が多いですね。
―これまで受けた事前整理の例を教えて下さい。
 お子さんはいますが、戸建てに一人で暮らすおばあちゃんからの相談です。以前は二階を自分の部屋にしていましたが、足が悪くなったため仕方なく一階で暮らすようになりました。二階にはもう十年以上上がっていないと言います。
 二階のタンスのどこに何が入っているかさえも、すでにはっきりと覚えていません。「いっぺん下に物を下ろして何があったか見て、必要のないものは自分の判断で整理をしたい」と相談されたのです。
―お子さんに頼んだらよさそうな内容とも言えるのですが…。
 ご本人にしてみれば、娘さんにやっていただくと、まだ置いておきたいものでも「何を言ってるの、こんなの捨てなさい」といわれるのが目に見えているからです。娘さんに怒られながら、時に喧嘩しながら整理するのが嫌なので僕らにお願いされたケースです。 また、一人暮らしのお母さんが検査入院をしている間に、実家をきれいに片付けたいという娘さんからの相談もありました。
―何か問題でもありますか?
 娘さんの実家は子どもの目から見るとゴミ屋敷のようで、不衛生で仕方ないと困っていたのです。少し前までは家の中に入れてくれたのに、今では玄関の戸も開けてくれなくなってしまったという事情がありました。本人がいない問に強制的に片付けてしまうとなると、母親が病院から自宅に帰ってきた時、精神的なショックを与えるかもしれないし、どうしたらいいだろうという内容で、こうした内容の電話相談は結構多くかかってきます。
―遺品整理、事前整理を数多く手がけてきた吉田さんは、整理することに対してどのような考えをお持ちですか?
 長年使ってきたものは、ぺットのようなもので、それがあることによって住まいが癒しの空間になっていることもあります。自分自身が人生を豊かにするために揃えてきたものを、死んだ後のことを考えて無理に捨てる必要はまったくないと私は思います。
 そうではなくて、たまってしまったものを整理して気持ちも空問もスッキリしたいという前向きのものであるなら、捨てるのもいいことだと思います。
また大切なものは奥にしまったり、壊れるからとなるべく使わないようにしている人が多くいますが、それらは生きている間にとことん使うことが、自分にとっても物にとってもいいと思いますよ。(続く)【「百歳万歳」より要約】


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