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笹井宏次朗のアリクイの目
     サッカー  (最終更新日 : 2014/01/12)
2014年W杯・日本は必ず調整不良で全敗する(上)

2014年W杯・日本は必ず調整不良で全敗する(上) (2014/01/12) 最初から決まっていた合宿地イトゥー

 昨年の十一月二十日、共同や時事通信、スポニチアネックスといったネット情報に「日本代表チームのキャンプ地の有力候補先として聖州イトゥー市が挙がっている」との報道が一斉に流れた。
 これを受け日系新聞では、W杯の組合せ抽選会が行われる前日の昨十二月五日に「近づくサッカーW杯!=なぜ日本代表はイトゥーへ?=同市役所『知らない』のチグハグ」として次のような記事を掲載した。
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マリンガー、モジなども日本代表誘致に名乗りを挙げていると言われる中、なぜイトゥーなのか。W杯出場32カ国が8グループに分かれる「組み合わせ抽選会」がバイーア州サウイッペ海岸で6日に行われる機会に、その謎を追った。
 地元日系団体が中心になって招致活動をしたのかと、イトゥー日系文化体育協会の久保パウロ会長に聞くと、「市役所から話があるのは聞いていて、決まった際には手助けを頼まれている。ただ、今のところ具体的な話は何も…」とのこと。
 久保会長は「すでに福嶌教輝在聖総領事が『その際はよろしく』と11月頭に挨拶にこられた」とも話した。
 在聖総領事館の中山雄亮副領事に確認すると、「11月1日に総領事がイトゥー文協を訪問したのは事実だが、総領事館に日本協会から連絡等があったわけではない。元々聖南西方面への視察の予定がある中で候補地として挙げられているという〃噂〃を聞いていたので、訪問させてもらい、話題としてあげたということ」と説明した。
 スポニチ記事では日本協会は現地にスタッフを派遣し、使用可能な83の候補地のうち50カ所を視察。ヴィラ・コッポス空港まで車で30分という交通の便の良さ、日系人が多く日本食の調達などが比較的容易で、日本人が住みやすい環境が整備されていることが評価されたと報じられた。
 つまり、FIFAに申し込みがあった候補地の中から、日本サッカー協会が予備調査をしてイトゥーを希望した。だから同市役所側は「市としては各国代表の出方を待っているところ」とし、「日本代表のキャンプに関して知らない」との回答に終始したようだ。また「市」が立候補したのでなく、同市のリゾート施設がFIFAに申し込んだ可能性がある。ならば市としては直接関知しないだろう。
 6日の抽選会の結果次第で、日本がどのグループに入るかが分かる。日本代表が北伯で試合をする可能性すらあり、であれば聖州を拠点にする意味はない。どこを〃希望〃しても、まったく未定なのが現状のよう。
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 ここで指摘しているように「日本代表が北伯で試合をする可能性すらあり、であれば聖州を拠点にする意味はない」のである。
 そして抽選の結果、日本代表はC組に入り、試合日程は6月14日対コートジボアール(レシフェ)、6月19日対ギリシャ(ナタール)、6月25日対コロンビア(クイアバ)となった。レシフェとナタールは北東部の熱帯圏、クイアバは中西部で6月には古い移民がアンデス颪(おろし)と呼んだ冷涼な風が吹くことがたまにあるが暑いことでは熱帯圏と変わらない。確かに「聖州を拠点にする意味はな」くなった。
 ところが、それから二週間近くたった昨12月19日になると、やはりイトゥーに決まったと日本サッカー協会の原博実技術委員長が発表した。
 選考理由は「グループリーグ3試合を戦うために、集中して練習して、リラックスして滞在できること」「ホテルを新しく建築する段階にあり、日本側の要望を汲んでくれる」「(各部屋に)バスタブが欲しい。日本と違って向こうのホテルだと、シャワーだけというところが多い」というのが日本での報道だ。
他にも「敷地内に練習場があり、移動の負担がないこと」「室内プールが併設されていること」「散歩できるような場所があること」「新しく建設されるホテルの建物を貸し切りに近い状態で使用できること」「サンパウロ市が近く、日本食も調達できるし、困ったときに現地の人にお願いできること」などを挙げている。
 デメリットとしてグループリーグの各会場から距離があり、「移動は確かに遠い」が、「カンピーナス空港まで車で30分と近く、しかも小さい空港なので利便性が高い」ことを挙げ、移動距離はあっても実質的な移動負荷はそれほどでもないとして、何とイトゥーをベース・キャンプとすることが明らかになった。
 筆者は、イトゥーを最初のキャンプ地として環境に慣れ、それから各地のキャンプ地を転々とするものと思っていたが、ご苦労なことにイトゥーを拠点としてレシフェ、ナタール、クイアバへそのたびに往復するという。
「日本人にとっては、移動に時間がかかっても静かにリラックスして過ごせる時間を確保できることが大事だと思う。(南アフリカW杯のキャンプ地だった)ジョージがそうだった」(原委員長)と、4年前の経験を踏まえて、気候や移動などよりも何より「キャンプ地での日常」が平穏で、選手がリラックスできる環境であることを重視したキャンプ地選考だったことを、あらためて強調したという。
 どうもブラジルを全く判っていないようだ。
 6月のイトゥーといえば平均気温16・6度のサンパウロ市と変わらず、夜間はサンパウロより寒い。乾季であり雨はほとんど降らない。いわば冬である。レシフェの6月は平均気温24・5度で雨量は月間400mmと年間を通じて最も多い時期で、同地では一番寒い季節の到来となる。だが、日本人の感覚では真夏以外の何物でもない。ナタールやクイアバも似たようなもの。
レシフェまでイトゥーから直線距離で2151キロ、ナタールまで2338キロ。東京から台湾まで2247キロだから、これでは冷え込みが厳しくなる晩秋の東京(11月初旬頃か)から亜熱帯の台湾へ毎回、試合に出かけるのと変わらない。
 選手は、試合どころかカゼで寝込むのが関の山である。
 こんなことは、ブラジルに住み北伯や北東伯を旅行したことのある人間ならば、誰もが気付くことである。だからこそ日系新聞の記事でも「聖州を拠点にする意味はない」と指摘したのであろう。
 では何故、イトゥーがベース・キャンプに選ばれたのであろう。
 イトゥーといえば、なんでもデカイことで全国的に知られている。超巨大な公衆電話や高くそびえ立つ信号機、食料品店では2メートルもあるチーズが売られ、巨大なホットドックも名物となっている。1968年にサンパウロ市と州内の奥地を結ぶカステロ・ブランコ街道が開通し、大都市サンパウロまでわずか100キロという立地条件に恵まれ、ブラジル内外から多くの工場が進出した。
 イトゥーを本拠にする工場の一つに、ブラジル第二のシェアーを持つビール会社、『スキンカリオール』社があり、2011年に『キリン・ホールディングス』によって買収され、正式名称は『キリン・ブラジル』となった。日本代表の公式スポンサーのキリンのグループ会社である。
 キリン・ホールディングスのホームページを開くと「新しい日本を見せよう」とのタイトルで日本代表の写真が最初に登場する。「社会課題の解決」に貢献することを目指した企業のCSV活動ではサッカー支援を数多く行っている。『キリン・カップ』は昔から有名であるし「SAMURAI BLUE(日本代表)」の公式スポンサーとして日本サッカー協会へのリンクも張られ、緊密な関係であることが伺える。
 隣町のインダイアトゥーバ市には、これまたサッカー支援では昔から伝統のあるトヨタ自動車の工場もあり、1998年からはカローラの生産を開始した。イトゥーには、ここに自動車部品を納めるアイシン精機も進出している。
あらゆる活動を継続する場合、スポンサーの意向は最大限に尊重しなければならない。日本サッカー協会にとっても同じこと。最初っからイトゥーが合宿地として決められていたのではないか。
同市に住む「summereyes」という人のブログ、『伯剌西爾(ブラジル)移住日記』には「イトゥー、インダイアツーバ、カンピーナス、サウト、ソロカバ、辺りに住んでいらっしゃる日本人の皆様には朗報です!W杯サッカー日本代表選手のキャンプ地としてイトゥーに正式決定しました!6月中はイトゥーをウロウロしなければ。公開練習も見に行けるから嬉しい!しかも日本戦が開催される東北地方への遠征はインダイアツーバから15分のカンピーナス、ヴィラコポス空港を利用する可能性大。おー、これも見送りに行かなければ」と喜びを伝えている。
そして「6月はブラジルは冬。サンパウロ郊外のこのあたりは普通に寒いです。日本戦が行われる年中暑い東北地方との温度差があるので日本選手団の皆さんは体調に気をつけて頑張って欲しいですね」とも記されている。
この広いブラジルに住んでいる日本人であれば、あまりにも違い過ぎる気候の変化と移動距離の長さに、誰もが心配することなのだ。このままでは日本代表の全敗は避けられない。(続く)


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