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たこ焼きマンが行く
     たこ焼き「旅日記」  (最終更新日 : 2009/05/25)
ニッケイ新聞男子寮(番外篇) [全画像を表示]

ニッケイ新聞男子寮(番外篇) (2005/04/25) 2005年4月23日(土)。曇りのち雷雨、のち曇り。

 「地獄谷」の異名を取るサンパウロの危険地区グリセリオ街にあったニッケイ新聞男子寮が、文協裏のビラ(村、地区などの意味)に場所を移すことになった。その住人であるホリエモン(堀江くん、広島県出身)と谷口康史くん(岐阜県出身の24歳)の二人がイナウグラソンのフェスタ(開所式パーティー)をすると言う。「それなら、料理の一品にタコヤキも加えようか」ということになり、1号(松本)が担当した。
 
 最近は公の場所でタコヤキを焼く機会が少なかったが、翌週の4月30日に老人クラブ連合会でのビンゴ大会に参加を表明しているため、鉄板を馴らす意味でもちょうど良かった。ただ、今回は経費や手間暇の問題もあり、「タコ」の代わりにサウシッシャ(ソーセージ)やケイジョ(チーズ)を入れることで誤魔化し、ホンマモン(ホリエモンやおまへんで)のタコヤキとは言えなかったのだった。まあ、そこはご愛嬌。メリケン溶かし汁の下味を濃くしてその場をしのいだ。

 開所式を開くために、ホリエモンと谷口くんの二人は一週間前から、その準備をしていたという。芸術家を目指し奮闘中の谷口くんが、部屋の中に自分の作品を飾るとして、「松本さんも良かったら、写真を飾りませんか」と誘ってくれた。この男子寮は前の住人の趣味か、一階中央の壁がショッキング・ピンクと賑やか、この上ない。二階建ての家だが、空間全体がアート的な雰囲気に包まれている。

 
谷口くん.jpg
若き芸術家の谷口くん(後ろは作品)
谷口くんの作品は、ノコギリ、鉈(なた)や包丁などに裸婦姿などを描いている。「ノコギリなどの工具は一般的に汗臭い労働者が使うもので、その金属質的なものとのコントラストとして柔らかい女性の肌を描きました」と谷口くん。それにかける思いは熱い。前々日の21日は、ブラジルでは「チラデンチスの日」という祝日。谷口くんは作品の飾り付けに余念がなかった。一方のホリエモンは、愛車フスカ(カブト虫)をカッ飛ばしてホームセンターで木材などを買い込み、自分の部屋や入口の電気周りをきれいにするなど、それぞれが思い思いの装飾を施していた。

 1号も22日に買い込んだタコヤキの具にする、サウシッシャ、ネギ、紅ショウガなどを切り刻み、鉄板を丁寧に洗って焼き、油を染み込ませるなど、翌日の本番に向けて着々と準備を進めていったのだった。
 
 そして開所式の当日。なぜかホリエモンの顔が冴えない。聞けば、少し風邪気味だという。奥の台所からは一日かけて煮込んだという豆腐入り「筋肉(すじにく)」の良い匂いが漂う。フェスタに参加する人数は20人ほど。午後過ぎから始まると聞いていたが、参加者はなかなか現れない。ニッケイ新聞の記者・古杉くん(広島出身)がアルコールとツマミの差し入れを持って登場。しばし雑談したが、すぐに帰らなくてはならないという。仕方ないので、寮の近くに住む1号は一度家に帰り、仮眠を取ることにした。ドクターストップで3か月ほどはアルコール類を飲んでいなかった1号だが、1、2か月ほど前から「解禁」となり、この日の「飲み過ぎ」が懸念されていた。

 小一時間、仮眠を取った1号にホリエモンから連絡があり、「カズミさんが来た」とのこと。日ポ両語が得意なカズミさんは、成長著しい娘さんと息子さんを連れてきていた。「そろそろ、タコヤキの準備をしょうか」と1号。セルベージャ(ビール)を飲みながら、粉を溶いたり支度をしていると、今年9歳になるカズミさんの息子さんも「セルベージャ(ビール)をエスペリメンタ(試飲)したい」という。カズミさんが「ちょっとだけよ」とアンタルチカ(ビールの銘柄)を飲ませると、「ボヘミア(アンタルチカより値段が高いビール)の方が旨い」とのたまう。「おいおい、10年早いで」と突っ込む1号。「この子は大物になるで」と密かに期待したのだった。

 それにしても人が来ない。おまけに雷を伴う大雨が降り出した。道は川の流れのように雨水が溢れている。思わず「あ~あ~、川の流れのよ~に」と口ずさむ1号(歌っとる場合か)。と、谷口くんが「誰か来ましたよ。知ってますか?」と玄関にズブ濡れになった男性を指差している。午前中の取材を終えてきた、サンパウロ新聞のニューフェイス(ニューハーフと違いますよ)ヤマモトくん(大阪府出身の20歳)だった。「いやー、エライ雨ですわ。近くでナンブさん(ニッケイ新聞の新人女性、兵庫県出身の21歳)が雨宿りしてるんで、ちょっと傘借りて迎えに行ってきますわ」と再び、表に飛び出した。

 しばらくして、ヤマモトくんとナンブさんが入ってきた。それぞれ自己紹介したあと、関西出身の二人に早速、タコヤキをひっくり返すのを手伝ってもらう。ナンブさんは兵庫出身だけに「明石焼き」にも馴染みがあるという。「明石焼き言うたら、俺はガキの頃、天王寺のステーションビルの『たこ八』いう店で、よう食うたなあ」とローカルな話をしながら1号は懐かしむが、二人は目が点になっている様子。そんな昔の話など、知る由もない。よく考えれば、彼らとは20歳近い年齢の差がある。「下手したら(下手せんでも)、俺は君らの親の年やな」ということに気付く。

 
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カイピリンニャを作るブラジル人女性
そうこうしているうちに、近所のブラジル人の女性が特性カイピリンニャ(ブラジル風焼酎カクテル)を作りに来たり、夕方近くになって参加者が増え出した。ニッケイ新聞デスク兼記者のコバヤシくん夫妻、同編集長兼記者の深沢くん夫妻、同じく記者の下薗くん夫妻などがそれぞれに手作り料理を持ってきた。さらに、近所のブラジル人女性の家族や娘、その恋人、ホリエモンたちの友人でUSP(サンパウロ大学)で学問に励むペルーの人などがどんどん入ってきて、国際色豊かなイベントになってきた。

 日本語とポルトガル語が飛び交う中(私はポ語は苦手ですが)、ヤマモトくんが「ブラジル人て、濃いですねー」と感心している。その前方では、近所のブラジル人の色気づいた娘と山男のような恋人が、人目もはばからず、熱烈なベイジョ(キス、接吻)をしている。「羨ましいなあ」と思う反面、「俺らはやっぱり、日本人やで」とその光景を見ながら、「とても真似はできませんわな」と感じた1号だった。
団欒.jpg
国際色豊かな集いに

 その後、文協広報担当理事の小川彰夫さんが来て、今後の文協への熱い思いを語ったり、それぞれが好き勝手な話をしてお開きとなった時には、すでに夜中の12時を回っていた。主役の一人、ホリエモンの姿が見えないと思ったら、風邪でダウンしたという。本当にお疲れ様でした。

 結局、この日焼いたタコヤキは、わずかに4面(1面24個)ほどだった。(おわり)

[今日の教訓]
 ブラジル人には「タコ」でなく、サウシッシャの方が喜ばれる。飲み過ぎ注意。


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