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続木善夫 / 私の科学的有機農業論
     無農薬栽培技術Q&A  (最終更新日 : 2009/07/28)
無農薬栽培技術Q&A

無農薬栽培技術Q&A (2009/07/28) 無農薬栽培技術の基本Q&A
  (適正収量‐高品質‐低コストのために)

なぜ無農薬有機栽培を始めたか
          
Q 続木さんは、1980年頃、野菜やコーヒーの有機栽培の専門家として、テレビや多くの農業雑誌で紹介され、各地の大学農学部や農業団体で講演されていました。
 ところで、続木さんが無農薬栽培を始められたのはいつ頃ですか?

A 1973年です。本格的に野菜栽培を始めたのは1975年からです。8ヘクタールの農地に産卵鶏を3千羽、約3ヘクタールの野菜畑に7~8人が野菜と鶏の管理、別に1ton車2台で、個人の消費者の家や自然食品店に配達していました。

Q  無農薬栽培を始められた動機はなんだったのですか?

A 無農薬栽培をはじめた理由は二つあります。
 一つは、健康の問題です。その頃まで農薬販売のチェーン店を経営していましたが、殺虫剤は粉で撒布する粉剤が多く、店のなかは、殺虫剤の匂いがいつもしていました。そして、農家はパラチオンやBHC、,DDTなどの殺虫剤をかけるので、野菜は食べませんでした。その頃、身体がだるくて元気がでない、休みの日は家で本を読んで過ごすことが多くなっていました。あまりにも体調がわるいので、病院に行って見てもらうと、血液が酸性だ、野菜をウンと食べなさい、と言われたのですが、売られている野菜は農薬づけになっているので食べる気がしない。自分で作るより方法がない、というのが結論でした。それが1972年です。そこで早速サンパウロ近郊の農地を探し、うまい具合に8ヘクタールの農園で、住宅と豚や鳥を飼う設備の整った手ごろは売り物にめぐりあい、買い取って鶏と野菜の栽培を小規模に始めました。そして3年後には13人ほどの従業員を使って2台の1ton車で毎週150家族の町住まいの消費者と五軒の自然食品店に配達し、経営も安定していました。そしてブラジル最初の無農薬野菜農場として、テレビで放映され、農業雑誌でも紹介されました。
 残念ですが、この模範農場は、私個人の問題で続けることができず、今では有機栽培の農家が借地して、4~5人で栽培する小さな農場になってしまいました。

Q もう一つの、農薬の販売をやめ、有機栽培を始められた動機はなんですか?

A 二つ目の動機は、農薬の専門家、というより農薬販売のプロ、としての問題です。
 当時、農薬販売のチェーン店を経営しておりました。ドイツのバイエル社のブラジル支店農薬部の技師として働いていた頃は、農薬の効果を信頼しており、農薬がなければ人類の食料は確保できない、農業を救うは農薬だと考えていました。ただし、バイエル社の農薬だけでは不十分だ、世界の一流農薬会社の製品を組み合わせてはじめて効果の高い農薬の処方箋ができる、そのためにはバイエル社をやめて、販売会社を作ろう、ということになり、チェーン店ができました。ただ売るだけではなく、親切に良く説明し、技師が農家周りをするので評判が良く、2~3年で11店、最終的には7店が活躍してくれました。会社は大変もうかり、1970年頃から農薬販売の大ブームがやってきました。動力噴霧器を輸入していましたが、1万台近くを売るようになりました。
 経営は順調で大もうけをしましたが、一方心の奥底には大きな不安がありました。害虫の農薬に対する抵抗性の問題です。1965年頃から、気づいていたのですが、どんな殺虫剤を使っても死なない害虫が出始めていました。それがだんだん多くなってくると、農薬では害虫が防ぎきれなくなるのではないか、という不安です。
 私は1961年、バイエルの本社に研修に行ったのですが、当時バイエルでは年間約三千の農薬を試作していました。そのなかから、人間や家畜、植物にも害がなく、値も農家が使える程度に安い、となると市場に売り出されるのは毎年一つか二つです。それでも農薬を作る一流の化学会社は世界にたくさんある。つまり世界中で、新農薬の開発に化学の力を結集しているのですが、それでも虫の抵抗力が強くなって農薬を使う量がだんだん増えてくる、一方農家の利益は少なくなる、これでは、農家の経済は苦しくなり、農薬販売店も同じでジリ貧になるだろう、と考えるようになりました。

Q ブラジルでは農薬の売り上げがうなぎのぼりで、会社も順調で、たいへんもうかっていた時に、よく農薬の販売をやめられましたね。その理由は?

A 神の啓示という以外にないですね。
 世界中で毎年試作され、販売される新農薬がどんなに良くてもどんなに多くても、病原菌や害虫の抵抗性が強くなり増え続けるだろう、農薬で病気や害虫を減らすことはできない、自分は間違った道を歩いている、農薬の販売をやめなければならない、という気持ちが強くなり、思い切って1971年商売をやめました。やめることにはなんの抵抗もなかったですね。逆に農薬で病気や害虫に対抗することを考えると息苦しくなる、これは農薬をやめろという神の啓示、あるいは命令ではないかと直感しました。
 
 それから私がとりつかれたのは、農薬を使わないでどうして農業を守るのか、ということでした。
  
 自然の原っぱや山をみても、病気や害虫でダメにんることはない。自分のコチア農協の時代を振り返ってみると、原始林を開いて20年くらいはどの作物でもワタの害虫とバレイショ、トマトのベト病以外には農薬を撒布することはなかったのです。ところが、20年以上経って土地がやせ、化学肥料を使うようになると、しだいに病気や害虫が増えてきました。やせ地でよく育ち、30年は無肥料で作れるラッカセイが、有機物が1%以下に下がって化学肥料を使うようになると、カッパン病という病気がでる。ワタでもやせ地では斑点病がでるし、ハダニが物凄くわいてくる。
 とにかく、土がある限度以上にやせると、いろいろな病気がでてくるし、害虫もダニなどが増えてきます。
 病気との関係では、病気がでるから作物がだめになるのではなく、土が悪くなるから新陳代謝が狂って作物がダメになり、病気がでる。それらの病気は、土が良い場合はふつうの微生物です。土が悪くなり、地力が落ちてしまうと、ただの微生物が病原菌に変わる、変身するわけです。
 ダニも同じようなものです。ダニがどんな時に増えてくるかは、大分前から分かっていたのですが、なぜ増えるのか、その理由を教えられたのは、1989年リオデジャネイロでの国際シンポジュウムでのことです。この時、リオグランデ州の有機栽培研究者の一人が私をたづねてきて、フランシス・シャブスーを知っているかというのです。この時まで知らなかったのですが、同氏の唱えたトロフォビオーゼ理論には目を開かれる思いをしました。
 その時まで、各地の大学の講演に招かれて、なぜ私の有機農場には害虫がいないのか、を説明するのに、天敵が多いとか、有機肥料の効果で葉が硬くなるとか、本にも書いてある通り一遍の説明しかできませんでした。それでも実績がものをいうので、アマゾンに近いベレンから南はウルグァイ国境に近いペロッタスの大学にまで招かれて講演に歩いておりました。
 トロフォビオーゼ理論では害虫が増えるのは、植物の汁液の中に遊離アミノ酸が増えるから、というのです。害虫のエサ、エネルギーの元はなにかというと、糖分や澱粉ではない、蛋白や油脂でもない、遊離アミノ酸だというのです。
 この理論を私は直感的に理解できました。こういう経験があります。当時私が開発した生理活性剤アミノンを撒布すると、数日でハダニがいなくなるという報告がいくつもありました。半信半疑だった私は、あるとき、大発生しているワタの農場に行き、畑の一部に1000倍液を散布してもらいました。数日後調べに行くと、一枚の葉に300匹もいたハダニが20匹ほどしかいない、90%以上が死んでいたのです。もう一例。ワタ畑では、曇り日が何日も続くとそのあとシャクトリムシ(クルケレー)が発生する。ある農家での話しです。アミノン液を撒布して、畑の一部が撒布されないままになってしまった。数日後、シャクトリムシが大発生して、撒布していないところは葉脈を残して殆ど食べられてしまった。ところが撒布してあった場所は、葉にポツポツと小さな穴が開いただけだったというのです。その農家が私を呼びにきたので見にいきました。おなじような経験が沢山ありましたので、トロフォビオーセ理論を直感的に理解できたのだと思います。これ以後は講演の時には必ずこの理論を説明するようしていましたが、いまではブラジルの大学でも生徒にトロフォビオーゼ理論を教えるようになりました。
 
 これまでの体験と観察、それに加えトロフォビオーゼ理論を応用して、遊離アミノ酸を減らすにはどうすればよいか、ということがだんだん分かってきました。
 病気の場合もよく似ています。生育環境、つまり生育の6条件といわれている、光、温度、空気、水、栄養素、無害、の一つが間違っていても、新陳代謝が狂って抵抗力がなく
なり、病原菌のエネルギーの元でありエサである、遊離アミノ酸、水溶性の糖分などが増え、どこにでもいる無害の微生物が病原菌に変わるのです。
 以上の体験を理論付けして、実際の栽培にどう役立てるかを書いたのが、「病虫害の生理的防除」です。
これを表にまとめると、次のようになります。















*BIL -生物的許容水準 **EIL-経済的許容水準  10~11ページに後述  
 
生理的防除という言葉は、1989年リオ・デ・ジャネイロでの国際シンポジウムで「農牧における害虫防除と予防」という議題で基調講演を頼まれた時、始めて使いました。農薬防除、生物的防除、総合防除などはよく知られていますが、この時、生理的防除という用語にクレームがなかったので、以後の講演会や研修会では、この言葉を使うようになりました。
 
Q 生理的防除の基本技術について説明してください。

1.生育環境の整備
 生理的防除の理論を、作物を栽培する時にどう使うかを考えると、最初に出てくるのが生育環境を整える、ということです。新陳代謝を狂わす色々なストレスをなくするだけで、ほとんどの病害虫の被害を防ぐことができます。逆にいうと、生育環境の一つが悪くても、新陳代謝が狂い、病気や害虫が発生するということです。
 生育環境というと難しいようですが、生育条件と考えてください。作物生育の6条件というのを頭に入れてください。いろはにほえとや九九(くく)ABCのようなものです。この六つの条件のどれか一つが悪くても作物はうまく育たず、病気や害虫がでてきます。
この6条件というのは➀光 ➁温度 ➂空気 ④水 ➄養分 ➅無害 の六つです。
 
 ➀光。光は強すぎても弱すぎてもいけない。強すぎると、レタスでも黄色くなって生育が悪くなります。熱帯~亜熱帯の光線の強すぎるところでは、遮光ネットで光線を減らすとよく出来ます。また、密植しすぎると、太陽光線が不足してナスやトマトなどの果菜類は葉ばかりで実がならない、果物でも剪定して光を入れないとうまくいきません。

➁温度。これも高すぎても低くすぎてもいけません。レタスは北極や南極では育たず、熱帯でも日陰で水を噴霧して温度を下げないとできません。
 冬では温度をあげるためにハウスの中で育て、夏になるとどうしてハウスの温度を下げるかで勝負が決まります。
 しかし、この二つは自然に頼るのが一番。そのため適地適作が農業の基本となっているのです。

➂空気。大事なのは、土の中の空気です。土中に酸素が不足すると、根は水も養分も吸えなくなります。植物はどうして水や養分を吸うかというと、葉の光合成で作られた砂糖が根に送られてきます。根は、土の中の空気、つまり酸素を吸収して砂糖を分解し、吸収エネルギーを作ります。この吸収エネルギーで水や養分を吸っているのです。
 よく勘違いするのは、作物がうまく育たないと肥料が足りないのではないか、ということです。大抵の場合、土中の空気が足りなくて吸収できないのです。肥料をやる時の一番大きな失敗がこれです。空気が土の中に良く通るか通らないかを通気性といいます。栽培する時に一番大切なのは、どうして通気性の良い土を作るか、施肥よりも大切な技術です。水耕栽培では、空気をふくんだ水溶液を流さないと、肥料を溶かした水溶液だけでは野菜は育ちません。

④水。説明の必要はないと思います。生育中、いつも適当な範囲内にあればよいのです。多すぎても少なすぎてもうまく育ってくれません。

➄養分。これもあまり説明しなくてもよいのですが、土での栽培でも、水耕栽培でも、養分の濃度とバランスが大事で、これが狂っているとうまく育たず、病気や害虫に頭をいためることになります。

➅無害。当たり前のことですが、生育を阻害する要因があれば、作物は育ってくれません。
 一番多いのが塩害です。とくにハウス栽培では、休まず肥料をやり続けるので、肥料のカスである塩分がたまり、塩害を起こします。露地栽培でもトマトやキュウリなど、肥料のやりすぎでうねの表面に塩が吹きでて白くなっているのを時々見受けます。
 工場廃水の汚染や、防風雨の時に塩水が風で飛んできて、ミカンの葉が焼けたということもあります。
 一番おおきいのはアルミニュームの害です。国際的な問題となるのがアルミニュームの多い酸性土壌です。アルミニュームがなければ、酸性土壌でも小麦は育ちます。酸性の害よりもアルミの害が大きいのです。
 ブラジルの穀物生産は現在世界で2番目に成長しました。それは、ブラジルのセラードという何を植えても育たないアルミニュームの多い土を下層土まで改良し、無害にする技術が開発されたからです。
こうして、ブラジルのセラードは世界一の穀物の生産地帯になりました。

 以上、六つの生育条件をいつも適性範囲の中に整えておくのが、質が良く生産性も良い、しかも無農薬か超減農薬で健康にも良い、こういった作物を育てる第一歩です。生育環境の整備、これができていないと、どんなすぐれた技術をつかっても成功しません。

 この作物別の種類に応じた生育環境の整備と適地適作、輪作、が栽培技術の基本といえます。ところが、これがなかなかできない。優秀な農家や農協の農業技師でも忘れている人が多いのには驚きます。これらをいい加減にしておいて病気や害虫を増やし、これでもかこれでもかと農薬の量を増やしていっているのが現状です。

Q 半永久的に農業を続けるには土作りが一番大事なのはよく分かるのですが、このことを具体的に説明してくださいい。

2.土作り
1)長年良い地力を維持するのに一番大事なのは輪作です。
 輪作の必要がなく、何十年連作しても収量が落ちないのは水田くらいのもです。
 穀物では一作か二作つくると、他の作物を植える、何作が作ると緑肥を植えて地力を回復させる。こうすることで半永久的に農業を続けることができるのです。
 高い技術を持った農家でトマトやレタスを8作以上連作する農家がありますが、2つか4つまでの作物を選んで輪作するほうが良いでしょう。輪作と言っても2回か3回続けても良い作物もあります。例えばニンジンは2回続けて植えると、あとの方がよくできます。大豆も2年連作してもほとんど収量は落ちません。3年目からは収量が落ちてきます。
 野菜のように肥料を多くやる作物を続けて植えると、塩分が溜まってきて塩害がでる、そのときにはトウモロコシのような肥料を吸う力の強い作物を作るなど、輪作を考えてください。

Q 土壌分析は必要なのでしょうか? 

A 植え付け前に、土の状態を知るにはどうするか?それには土壌分析をお勧めします。
 ブラジルでは中程度以上の農家は、たいてい少なくとも3年以内に土壌分析をしています。できれば、作物を植える前に、毎回分析した方が良いと思います。ブラジルでは専門のラボが沢山あります。日本ではどの農協でもラボに送って分析をしてくれます。
 普通の化学分析では、酸度、アルミニューム、石灰、マグネシューム、カリ,燐酸、腐植、の7成分が標準です。微量要素として、ホウ素、亜鉛、マンガン,銅、鉄の5成分、更にイオウとナトリュームを加え、17成分の分析がブラジルのラボの標準です。経費は約15ドル位だと思います。

 分析結果を見て、最初に注意しなければならないのは、酸度と可溶性アルミニュームです。水に溶けているアルミニュームがあると、作物の根は生長しません。溶けない不溶性の形にするためには、石灰を散布攪拌します。この処置と酸度の矯正に必要な量は、ラボか農業技師が計算してくれます。

 次に大事なのは、Ca、Mg、Kのバランスと量です。人間の食事にたとえれば、米やパンなどの炭水化物と、蛋白質、ビタミンとミネラル、のバランスが必要なように、植物にはこの3つのバランスが必要なのです。大まかに言って、CaとMgの比率が5ないし3対1、Mg とKの比率が3~2対1です。
また量については、人の胃袋を想像してください。胃袋の大きさに相当するのが、塩基置換容量(CTC)です。この中にどれほどのCa+Mg+kがはいっているかが問題なのです。それを示しているのが塩基飽和度%(S%)です。日本では、健康に良いのは腹八分目といいますが、土ではこの数値は、60~70%です。野菜や園芸作物、和歌山県のウメなど、100~120%になっていることが珍しくありません。つまり胃袋の上まで食べ物でが一杯つまっている状態です。これでは病気になってしまいます。作物でも病気や害虫の発生につながります。

 微量要素について説明しますと、人間の場合では、ミネルラルとビタミンに相当します。植物はビタミンやホルモンは自分でつくるので、ミネラル補給、微量要素の補給だけを考えればよいのです。
微量要素が不足すると、最初の兆候は、病気や害虫にたいする抵抗力がなくなり、病虫害が増えてきます。欠乏の症状が葉に現れる前に病気や害虫が増えてくるのです。病虫害を防ぐための含有量は農務局やラボが決めているレベルよりもずっと高く、次のようになります。
Zn 8~10ppm,  B 2~3ppm, Cu 2ppm, Mn 8~10ppm, Fé 30ppm  

 土壌分析を頼むと以上の化学分析だけで、物理性の分析はしてくれません。
分析結果には出てきませんが、化学分析以前に土壌の物理性、つまり空気の通り‐通気性、と水はけ‐両方を合わせて通気・透水性と言いますが、これが悪いとどんなに分析に基づいてよい肥料設計をしても、効果は上がりません。

 この通気・透水性をよくするのが腐植ですが、普通これは有機物として表示されています。土のなかでは作物の残渣やワラなどの有機物が分解して腐植になりますが、分析値で1,5%以下になると、どんなに化学肥料を上手に使っても、うまく生育してくれません。砂地でも最低1,2%、壌土で2%、粘質の土では2,5%以上必要です。
腐植が不足すると、通気性・透水性が悪くなり、さきに説明しましたように、いくら肥料を上手に使っても養分や水分は吸収されず、生育が悪くなります。
この問題を解決するためには、輪作のなかに緑肥を組み込んだり、堆肥をすきこんだり、土壌改良剤を散布したりします。

Q 土壌分析で化学成分のことや、通気・透水性が大事なのは分かりましたが、この通気-透水性をよくするのにはどうすればよいのでしょうか?

 昔から世界中で行われてきたのが、堆厩肥の施用です。これが一番良いのです。ヘクタール当り最低20トン、これだけ使うと地力は落ちないと言われていますが、ブラジルのような亜熱帯では不十分です。毎年20トンの堆厩肥を20年間使った農場の土を分析してみても腐植は増えていないので、驚いたことがあります。野菜では鶏糞堆肥を40トン使うと養分も相当な量が補給され、収量品質共によいものが取れます。野菜の栽培には、鶏糞堆肥を元肥として栽培し、追肥として足りない成分を化学肥料で補うのが一番よいでしょう。
 ところが堆厩肥では量が多いので、運搬や散布に時間がかかる、遠くから運んでくるのでは経費がかかりすぎて経済的ではない、そこで発明されたのが土壌改良剤です。

3)土壌改良
私は、1,974年頃から悪くなった土をどうして回復するかを研究してきましたが、現在でも一番良いのは、腐植酸石灰を主体とする土壌改良剤だと思います。
完熟堆肥の20倍から30倍以上の効果があり、人件費の節約にもなります。ヘクタール当り1トン、2作目からは半分を施用します。

また、この改良剤が堆厩肥より優れている点は、通気・透水性の改善が堆厩肥よりすぐれていることです。そして、亜熱帯では、堆厩肥では下層土の改良はできませんが、腐食酸石灰はこの問題も解決し、年々根が深く入るようになります。
特に、細い根や毛細根を増やし、養分と水の吸収力が大きくなりますので、大抵の場合、肥料を20~30%減らすことができます。
野菜では、特徴を生かしてビックリするような効果をあげている人がいます。例えば、ブロッコリー。苗を植えつけて、リブミンという改良剤を約100g頭から振りまき、水をかけます。肥料は2,3週間してからやります。これだけで質の良いブロッコリーを6ヶ月も収穫している人がいます。
 多くの果樹では、3年以上続けると、肥料は半分以下になることが多いようです。ブラジルではオレンジとコーヒーに一番多く使われています。堆肥を使わず、これだけを20年続けても、より少ない肥料で高い生産性を続けるられることが証明されています。
 
 一番よいのは、堆肥が安く手に入るところでは使う。そうでないところでは、土壌改良剤を使う。また、輪作のなかに、緑肥栽培を組み入れるなど、総合的に地力の維持を考えてください。

Q  基本技術の三番目が適正施肥となっていますが、どういうことでしょうか?

3. 適正施肥
 必要な時に必要な量の肥料をやることです。
作物の生育が悪いと、大抵の人は肥料が足りないのではないかと勘違いします。今までと同じ作り方で、同じ肥料をやっていれば、成育が悪くなったのは肥料のためではない。頭で分かっていてもついつい肥料を増やしてしまう。
 また、肥料を多くやった方が良い、と勘違いする人も多いのです。
例えば、日本のリンゴ。適量はヘクタール当りチッソ成分で12キロですが、戦後の景気の良い時期、量がだんだん増えて20キロ以上になってしまった。こうなると、味もまずくなり、売れ行きが大きく落ち込んでしまった。数年もたってからこの間違いに気づき、今では12キロから15キロまでに落ち着いています。
和歌山県の有名な南高(なんこう)ウメも同じようなものです。ヘクタール当りチッソ成分12キロでよいのに2倍もやるようになってしまった。そのために肥料のやりすぎで生理障害や病気、害虫が増え、大騒ぎになったことがありました。1990年頃です。結果的に15キロから18キロになりましたが、私は基本技術3点を実行すれば、12キロで充分と考えています。

 施肥量は、普通作物が吸収する量の2倍もやれば良いのですが、大抵はそれ以上にやってしまいます。おおまかに言って、チッソは吸収量の最高2倍、基本技術4点を使った場合は1,2倍ないし1,5倍でよい。リン酸は普通、吸収量の5倍以上施肥しますが、基本技術を使うと2ないし3倍で充分。カリも同じように0,8ないし1,2倍でよいのです。
この問題は作物別に検討しなければなりませんが、チッソ、リン酸、カリの慣行施肥量をざっと30%減らせるといってよいでしょう。

Q  四番目の光合成の促進する技術、というのはあまり聞いたことのない技術ですが、どのような技術でしょうか?
4.光合成促進
 収量と品質を良くする元は光合成の速度を高めることです。私は1975年頃からこの技術を研究して、それにはアミノ酸の葉面散布と土壌潅注が一番よいという結論となり、製品を作りました。これが30年以上も改良を重ねながら販売を続け、ブラジル全土、どこでも篤農家の間で知られているアミノンです。
 始めは品質と収量を良くすることが目標でしたが、間もなく、ある種の病気や害虫に対しては農薬以上の効果を発揮することが分かりました。

 私が1975年頃に研究して作ったアミノンと言う製品の効果を幾つか紹介します。
光合成が促進されると植物体に何が起こるか、どのような症状がでるのか?

 先ず第一に、根の量が増えます。特に毛細根や細根、細い根が増えます。
また、根が老化しない、弱らないので作物の寿命が伸びます。
花粉の量が増えるので、実どまりが良くなる。
果物では糖度が高くなり、色付きや色艶も大変良くなるので、収穫が10日前後早くなる。
大きな利点は、旱魃にも強くなる。霜の害も少なくなることです。

 果物でも野菜でも収量や品質が良くなるので、売り上げの差は大変大きくなります。小麦はPH(比重)で値が決まり、アミノンを3回散布した小麦はいつも高い値で売れています。
 私の本ではアミノン散布の効果として、観察された項目が21書かれています。

 害虫や病害にも大きな効果があります。
害虫の場合、例えば、ミカンのカイガラムシやハダニ。2~3回の散布でダニ剤や殺虫剤はいらなくなる。落葉果樹のカイガラムシも同じです。
イチゴでは収穫の終わりごろからハダニが第発生しますが、これも発生を一ヶ月遅らせると収量に大きな差がつきます。モモなどの落葉果樹では、落葉時期をおくらせ一斉に落葉します。遅れた分だけ貯蔵養分が多くなり、翌年大きな花芽がいっせいに開花します。
ダニ剤なしには作れないといわれるワタでもダニ剤はいらない、他の害虫についても殺虫剤の散布回数は半分以下になります。
病気ではピーマンやナスビの炭素病や、豆類の発芽はじめに出るフザリュームには、効果が高い。そのほか色々な病害予防や病気にかかった木の回復には、農薬以上に効果のあることが多いのです。詳しく知りたい人は、私の本「病虫害の生理的防除」 の作物別の効果と使い方を読んでください。

Q 生理的防除の基本技術五番目は、IBL, EILに基づく農薬散布となっていますが、分かりやすく説明してください。
A IBL は、英語の生物的許容水準のことです。
これは害虫の数がどの程度まで増えたとき、農薬散布に踏み切るかを決めた基準のことです。
 害虫がいないのに予防のために農薬を散布するのは意味がないだけではなく経費の無駄使いです。作物にも農薬ストレスを与えることになります。
 オレンジを例にとると、10枚の葉に1~10匹のダニがいても被害がない。30匹以上になると、収量、品質にも影響が出始めるので、30匹に達したときに農薬散布をはじめます。サビダニでは、実をルーペで調べ、1センチ平方にジュース用の場合は70匹、生食用の場合は30匹見つかった時に散布します。
私がバイエルに入社した1959年には、アメリカでは既にこのBIL法を使って農薬散布をしていました。例えば、ラガルタ・ダ・マサンという蛾の幼虫の場合、卵をワタの頂点の新芽を植えつける。そこで発生時期に入ると、毎週ワタ畑で100本のワタの新芽を調べ、5つの卵が幼が見つかった時に農薬散布を始めます。

 病気の場合は少し違います。トマトやバレイショに一番被害を与えるベト病の発生時期は湿度や温度に左右され、気温が20度、湿度が80%以上の条件が続いた時に殺菌剤の散布を始め、それ以後は定期的に散布します。
コーヒーの代表的な病気、サビ病では一枝の葉で見つかった病班の数がBILの基準で決められた数になった時から散布を始めます。

 EILは、経済的許容水準です。
 農薬を散布した方が得か損かの判断は、その時の農産物の値と農薬散布の経費で決まります。これ以上病気や害虫が増えて収量が減ると損をする、或いは品質が悪くなって損をする、これを決める水準です。
 これは、非常に流動的で普通は使われておりません。
 実用的には、EILの考えを取り入れながら、BILの水準を少し変えた自分なりの防除基準を決めるのが良いと思います。

以上で大まかな説明を終わりますが、大事なことは
1.すべての植物は、本来病気や害虫に対する抵抗力を持っていることを信じる。
2.以上5点の基本技術を小面積からでもよい、実践する。

やってみて、問題が出た時は、日本語で下記に問い合わせてください。


続木善夫
e-mail ; yoshio @technes.com.br
Tel ; 0055-11-3021-6920
Fax ; 0055-11-3832-4475

2009-07-09



  


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