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続木善夫 / 私の科学的有機農業論
     無農薬栽培技術 3  (最終更新日 : 2009/08/02)
無農薬栽培技術 3 生理活性剤

無農薬栽培技術 3 生理活性剤 (2009/08/02) 高度技術 その1:生理活性剤

生理活性物質とは何かと言うと、「ある化合物を生物に与えたときに何らかのレスポンスが見られる物質と定義できよう」(山下恭平)。一般に生理活性物質の作用は、それを対象生物に与えた時に起こるレスポンスによって判断される。しかし、なぜそのようなレスポンスが結果として現れるのかという分子レベルでの機構は不明なものが多い(山下恭平)。
植物、動物、微生物、の中に含まれ、またはこれらが生産する生理活性物質には、生長促進物質、生長抑制物質、発根促進物質、花芽誘導物質、成熟促進物質、植物ホルモン、昆虫ホルモン、他感作用物質、各種のフェロモン、防御物質(フィトアレキシンなど)、抗生物質、有毒成分(外敵に対しての)、など数多く発見され研究されてきた。
植物生産に有利な結果をもたらす生理活性剤は、数多く民間の研究者で開発されてきた。
植物抽出液、岩石抽出液、微生物発酵液、特殊構造水、など。

 1975年頃より、私は天然物質を原料とした生理活性剤の研究と実用化を考えて実験を重ね、1980年に発表したのが葉面散布剤アミノンである。その後も日本とブラジル、スペイン、イタリア、メキシコなどで市販されている葉面散布剤の中でも著名な製剤(植物抽出液、動物蛋白分解物、微生物及びその醗酵液、岩石抽出液、などを原料とする)と比較検討してきたが、研究対象としての生理活性剤ではアミノンがその代表として適切であると考え、植物が生理活性剤アミノンに対してどのようなレスポンスを示すのかを中心に、さらに実用化を目標にした研究結果を以下に記述した。
 アミノンの実用化には、①農業生産に有利なレスポンス(最終的には品質向上、収量増加、コスト軽減)のあること②安価であること③使い方が簡単であること④大面積でも小面積でも使えること、を前提として開発した。
アミノ酸は周知のように、施用量が多いと有機肥料の働きをするが、肥料としてではなく生理活性剤としてどの程度の散布量が適量かというと、下記のような植物体の反応が顕著に現れ、かつ経済効果の高い散布量は、1年生作物永年作物を問わず、アミノ酸総量で、葉面散布の場合、200g~1,200g(10ア-ル)であろう。
このごく少量の総合アミノ酸が光合成を促進し、新陳代謝を狂わす汁液中に停滞している過剰な遊離アミノ酸を蛋白質に合成して、後述のように病害虫の繁殖を抑えるのであるが、「なぜそのようなレスポンスが結果としてあらわれるのか、という分子レベルの説明」は山下恭平氏と同様、筆者にはなし得ないものである。
アミノンのアミノ酸原料としては、1975年より、10年間はカツオなど赤身の魚由来のものであったが、その後はコラーゲン由来のものに移っていった。その後さらに種子の胚芽由来のアミノ酸がすぐれていることが分かり、現在では作物別用途別に仕様が変わるが、何れも下記のような反応を示している


植物体の反応
 アミノンの効果を一言で言えば、飛躍的に光合成能力を高めることである。そして、植物体には次のような現象がはっきりとあらわれる。
1-チッソ過剰の解消。日本のレタス生産で有名な或る農協の試験では、普通1,100ppm~1,500ppmもある硝酸態チッソが、散布区では800ppm前後に減少した。対象区に比べて苦みがなくなり、味にうまみがでた。
2-発根の促進と根量の増大。とくに、ハウス育苗では、さし芽、挿し木、種子からの育苗で、対照区と比べて根の質と量の大きな差を観察しやすい。地上部の発育もよいが、茎が太く、葉も厚みがでる。ホルモン剤よりも発根は少しおそいが、連続的に根の発育が進むので、育苗後期では追い越してしまう。
 本圃の作物でも細根、毛細根が増える。
3-根の老化が少ない。そのため、トマトやキュウリなど収穫期間が延長され、増収となる。
4-発芽促進。この場合も発根の場合と同じく、落葉果樹ではホルモン剤よりも発芽そのものは少し遅れるが、展葉期までに追い越してしまう(ブドウ)ことが観察されている。
5-葉の色が鮮やかになり光沢を増す。厚くなり、やや小さく、葉辺はトユ型に反り気味となる。
6-成葉、葉柄が立ち上がり気味、開張型となる。露地栽培のスイカやメロンでは散布数時間後には茎先端の立ち上がりが認められる。大豆でも、そのため太陽光線が内部まで浸透し、照射を直接受ける葉の面積が増えるのが、多くの生産者によって観察されている。
7-節間がつまり、開張型となるためか、草丈がやや低くなる傾向がある。ブドウでは茎の角度が稲妻型となる。
8-花弁、がく、共に大きく、反り返る。コ-ヒ-では開化直前の1回散布でも花の大きさが違う。
9-花粉の量が増える。種子会社Agroflora社では、トマト交配種で花粉の採取量が100%増え、種の生産量は70%増加した。香りもいっそう強くなる。
種子の数が増えると、実は大きくなり、形が良くなる。
10-受精率が良くなるので、落果が減る。
11-トマトやナスでは、成長点の毛が多く、固くなる。キュウリの巻きひげが強くしっかりと支柱に巻き付くようになる。
12-炭素率を高める。数回散布された場合、茎葉のチッソ過剰の症状がでない。生食用ブドウの場合、通常はチッソ肥料を減らすことによって炭素率を調節しているが、アミノン散布では炭酸同化作用によって炭素と酸素の吸収を高めて炭素率を調節する。両者の差は大きく、前者では糖度の高い高品質を保つには、収量を押さえることになるが、後者ではチッソを減らさず高収量を維持しながら、糖度の高いものを収穫できる。
13-貯蔵養分の増加
13.1.-特に澱粉含量の増加が大きい。トウモロコシの栽培では、子実収量が増えただけではなく、澱粉含有量が対照区に対し散布区は増加したとの報告がある。バレイショ、小麦では澱粉含量が増え、比重が重くなる。ダイズでも比重が大きくなる。
13.2-糖分や有機酸の含有量が増す。そのためか、果物だけでなく、野菜、果菜、根菜にも旨味が増す。
13.3.-接ぎ木の際、台木、つぎ穂とも澱粉ヨ-ド反応が高くなり、活着しやすくなる。
14-貯蔵性の向上。葉野菜だけでなくトマト、キュウリやニンジンなど、長時日萎れない。最も効果の高いのは、桃や熱帯性リンゴ(アンナ種)で腐敗が始まるまでの期間が2倍となった。中生、晩生のリンゴでは1ヶ月貯蔵期間が延長された。ブラジルで常食されるフェイジョン(いんげん豆の一種)では1年貯蔵したものでも、ニュ-クロップと同じようにすぐ柔らかく煮える。 
15-果実の色が鮮明に出る。特に、赤色が強くなり、着色期も早くなる。
16-収穫期が7~10日早くなる。
17-完熟するまで落果しないので、収穫期が延長される。杏では通常の収穫期より1ヶ月延長された報告がある。
18-耐乾性が増す。雨不足の時、最初に萎れるのは無散布区である。4ヶ月の長期旱魃のあった年、熱帯小麦の収量が1/4に減収したが散布区では30%の減収にとどまった。
19-耐寒性を増す。軽い降霜の時は、散布区では被害を免れる。春先の生育初期、急に気温が下がると発育がピタっととまることがある。こんな時に散布すると、すぐに立ち直って生育を始める。開花始めに急な低温が続いても、散布区は正常に開花することが多い。
20-生育の均一性。生育ムラが少なくなる。棉は一本一本の草丈の揃わない作物であるが、散布区はみごとに草だけが揃い、車で走りながら見てもその差がわかる。バレイショでは特大イモや小さな小イモが減り、大きさのバラツキが減る。また芽の窪みが浅くなる。バレイショ、ニンジンなど、根の表面の凹凸がなくなり、形が良くなるだけでなく、表皮が滑らかになりつやがでる。   
穀類(大豆、いんげん豆、小麦)も粒揃いがよくなる。小豆、いんげん豆では煮えムラがなくなる。
21-病虫害が減る。

生理活性剤アミノンは、そのあらわれかたが三つある。
 その一つは、糖度(Brix)を高め、色つきや香味を良くしたり、品質ムラ(ばらつき)を少なくする。果物では、さらに収穫期を早める効果もある。
 二つ目は、天候不順の年にはその害を軽減する。穀物では、旱魃で三割減収が散布区では1割減収に留まる。天候不順の年には効果が大きいが、順調な年には効果が少ない。イネ、コムギ、ダイズなどの穀物では、平均8~10%の増収効果があるが、天候が順調な年には、散布区の増収効果は3~5%と少なくなる。
しかし天候不順の年の減収率の差は15~20%ときわめて大きいのである。
 
 三つ目は、病虫害の軽減である。これは天候に関係なく、筆者は病虫害防除の決め手と考えている。病虫害防除の基本技術の中でも、もっとも顕著にあらわれるものである。以下、拙著「病虫害の生理的防除」の一部を紹介する。 病虫害はなぜ発生するか
 自然を観察して気づくことは、自然林や原野には病虫害が無いということである。葉や土中には驚くほど多くの微生物や土壌生物がいるが、多数且つ多種類の生物が均衡を保ちつつ生きている。あるアメリカの研究者はアマゾンの原始林の土中には、1feet2 (3.28feet=1m)あたり15,000匹のトビ虫その他の土壌昆虫、ダニ類、ミミズなどが生息すると発表している。これら多数の土壌生物は、地上の動植物の遺体を分解し、さらに土中の微生物によって植物の根で吸収されるまでに分解され、植物の養分となる。動物、植物、微生物がお互いに補い合い助け合いながら、環境や生命を維持している自然生態系を観察すると、そこに「平均と調和」という大きな法則が働いているのが分かる。自然の原野や森林には、栽培畑で起こるような病虫害は存在しない。生命力のなくなったものから昆虫に食害され、微生物に分解され、地上から消え去っていく。
 栽培畑では前述の植物生育の6条件の1つないしいくつかが不適な状態にあると、それらが植物にはストレスとなり、代謝系が狂って生命力が低下する。ここで、生命力の低いものは滅びるべきである、という自然の法則がはたらき、それを助ける昆虫や微生物の登場となるのである。
 昆虫がなぜ害虫に変身するのかを証明したのは、フランスのパスト-ル研究所の植物生理学者フランシス・シャブス-である。同氏はトウモロコシのシンクイ虫の抵抗性品種になぜ虫がつかないかを研究し、その差が遊離アミノ酸の含有量にあることをつきとめた。そこで抵抗性品種に多量のアミノ酸を与え、その結果抵抗性がなくなることを確認した。また施肥のあやまりでいろいろな作物の代謝系が狂い、アミノ酸が蓄積して病害虫発生の原因になることを証明し、トロフォビオ-ゼ理論と命名した。チッソの代謝は、根から吸われた無機態チッソがアミノ酸に合成され、さらに蛋白になるが、この水溶性の遊離アミノ酸が絶好の餌なのである。代謝系が正しく働いていると蛋白合成が速やかに進むため、汁液中に無機態チッソや餌である遊離アミノ酸が少ないが、狂っていると遊離アミノ酸が増え、病原菌や害虫が増えるのである。
以上のように遊離アミノ酸が増え病虫害増大の原因となることは、栄養のアンバランスだけでなく、農薬散布によっても起こることをシャブス-氏は証明したが、私はその原因となる要因は、「生理的防除の理論と実際」で説明したように大きくわけても6要因はあると思う。1例を上げると、10ア-ルのブロッコリ-の畑に数本だけビッシリと数100~1,000匹/株のアブラムシに覆われることがある。その周辺の株には少しいるが、数メ-トル離れると1匹もいない。このような株を抜いてみると、根際を農機具で傷つけたり、根に障害があるなど、必ずといってよいほど、代謝系を狂わす原因が見つかるのである。桃園を中耕して細根を切ったため、その場所だけにハダニが大発生したなど、種々のストレスのため遊離アミノ酸が増え、虫害を招いてしまった実例が数え切れないほどある。
 第二の理由は、ストレスによる生命力の低下により、植物が本来持っている防御システムが働らかなくなるためである。病原菌に対する防御システムは、奥八郎氏がその著「病原性とは何か」の中で、静的抵抗性と動的抵抗性として詳しく述べられている。昆虫に対しても忌避物質や有毒成分などの生理活性物質の存在が知られている。

 私は20年近くの体験から、病害虫の餌を減らし、防御システムの機能を高めるには、光合成を促進して生体エネルギ-のレベルを高めるのが一番効果的と見ている。そのために開発されたのがアミノンである。すでに病害虫に侵されている畑に散布してその回復状況を観察すると実に良く分かる

害虫に対する効果
 アミノンは殺虫剤ではないが、虫の餌を無くして餓死させるので、殺虫剤と同じかまたはそれ以上の効果のある場合が多い。ハダニが特定害虫である作物、たとえば棉畑を数100haもダニ剤なしに栽培するのは不可能といってよいが、アミノン散布では簡単にできている。

例1:私の最初の体験は棉農場であった。その農場は150haあり、その中の約13 haに生育後期にハダニが大発生し、殺ダニ剤で防ぎ切れず、放棄せざるを得なくなっていた。この畑にアミノンを散布し、10日後に調べると、1葉平均300匹以上いたのが5~15匹に減り、再び新芽が伸び始めた。
 TECHNES社の関係農場には、ハダニ防除にダニ剤を散布する農場はない。
 棉は生育初期より、ハダニ以外にリップス、アブラムシ、カメムシ、シャクトリムシ、その他防除の困難な数種の特定害虫(蛾)があり、7~10回の殺虫剤の散布が普通である。有名な400 haの大農場では、毎年アミノンの5回散布で殺虫剤の散布は0~1回となり、収量も従来よりも20%の増収が続いている。農薬では大面積ほど防除が困難であるが、アミノンでは大面積ほど効果が高いという良い一例である。
 ある農場の棉畑にシャクトリムシが大発生した。アミノン-25を1回散布した畑では、葉にポツポツと小さな穴があく程度の被害(収量には影響が無い)であったが、同じ畑で散布液がなくなり散布できなかった畝では、葉脈しか残らないほど食い尽くされてしまった。

例2:新植1年後のコ-ヒ-。ネカイガラムシが大繁殖して生長が止まり、特効薬と言われる浸透性の殺虫剤を使っても全く効果が無い。アミノンを土壌潅注し、葉にも散布した結果、2週間でほとんどいなくなって生長を始め、後日完全に回復した。

例3:ブラジルのバイア州ポスト・ダ・マッタからテイシェイラ・デ・フレイタスにかけてのパパイヤ大栽培地域では、アミノンは殺ダニ剤として理解され、10年以上継続して散布されている。

例4:イチゴはほとんどの畑で殺ダニ剤なしに収穫できるが、発生した場合でも栽培末期のみである。1ヶ月収穫期間が伸びるために相当な増収となる。ミナス州南部の栽培地帯では、毎週の散布が定着している。

例5:約500 haのオレンジの大農場。ヤノネ、コナ、マルカイガラムシなど数種のかいがら虫が発生し、特にヤノネカイガラムシはどの葉にも10数匹以上いる高密度であった。アミノン-25の20日置き2回の散布で、2ヶ月後には農薬散布の必要がないほどに減少した。

例6:コ-ヒ-の特定害虫に大型のハモグリ蛾がある。この害虫に使う殺虫剤の販売利益はコ-ヒ-生産者組合の重要な財源になっているほどであるが、高品質と増収のためにアミノン-25を定期散布している農園では、誰も殺虫剤を散布していない。

例7:野菜の絵描き虫と言われるハモグリガやハモグリバエなど、散布を始めた時期よりあとに生育した葉は食害されない。
           アミノン-25で防除できない害虫もある。それは果実吸峨類と地中海ミバエである。あまりにも害虫の餌となるアミノ酸が多すぎ、餓死に追い込めないからではないかと考えられる。
 細胞分裂を繰り返し、常に餌である遊離アミノ酸が送られてくる生長点(新芽、花蕾、肥大中の果実)に住むホコリダニ、サビダニ、スリップス、などにも効果が低い。菊のハウス栽培では、スリップスを殺虫剤なしに、被害ゼロとなるのに2年を要した経験がある。
 また、落葉果樹の収穫後では、光合成の役目を終えた古い葉から、梢、幹、根に蛋白の転流する時期がある。この時期には、古い葉の中の蛋白が再び水溶性の遊離アミノ酸に戻り、虫のエサが増えるので、ハダニをはじめ、昆虫の食害や病班が増える。これは、役目を終えた生命体を消し去り、他の生命体を育む自然の摂理と思われる。この場合アミノン25を収穫前に数回散布していれば、落葉を15日~1ヶ月伸ばすことができる。

病害とその防除
 まず、病原性とは何か、について考えると、非生物性病原と生物性病原に分けられる。非生物性病原とは、下記のような因子が原因となって、色々な生理病を引き起こす。
1-生育に不適な土壌条件:温度(土中)、湿度、酸度、通気性、硬度、有害物質、養分のアンバランス、など。
2-生育に不適な気象条件:光、気温、空中湿度、風雨、雹、など。
3-物理的障害:主として農作業による斷根、その他。
4-薬害、公害。
5-施肥のアンバランスと過不足。
これらの生理病や生理障害は、アミノンの散布によって回復することが多い。事前に散布してあれば、低温障害や軽い霜害は予防できるし、雹害や薬害などの事後撒布でも回復が極めて早い。
 また、1~4のストレスによって新陳代謝に狂いを生じた場合、生理病や生理障害の症状が出てなくとも、ただの虫が害虫に変身し、ただの微生物が病原菌に変身することが多い。なかには、ある作物には必ずといってよいほど発病するので、本来は特定病害ではないのに、特定病害とされ、防除暦に組み込まれているものも無数にある。これらはほとんど全部が条件的寄生菌(普段は腐植に養分を求めているが、条件によっては生きた植物を侵す菌を言う。抵抗力の弱い幼苗を侵す土壌病原菌には条件的寄生菌が多く、一般に宿主範囲は広い;奥八郎)であり、1~4のストレスをなくするだけでも条件的寄生菌による病害は激減し、アミノン散布の追加によって無農薬または超減農薬栽培を実現できる(「生理的防除の理論と実際」)場合が多い。
 本来、昔から特定病害とされているものでも、上述の条件的寄生菌や、殺生菌(宿主細胞を強力な毒素や酵素で殺して腐生的に栄養を摂取する)は1~4のストレスをなくした好適な栽培条件では、病原菌の種類により、無機銅剤か硫黄剤とアミノンの混用定期散布だけで、高価な浸透性あるいは選択性殺菌剤など使わなくとも効果的な防除ができる。

 ヴィルス病や土壌病害を除いて、最も防除困難な絶対寄生菌(生きた細胞のみに寄生する)による、うどんこ病、べと病、さび病菌、なども、好適な栽培条件下では、高度技術1,2,3,及び4を実施すれば、高価な浸透性もしくは選択性の殺菌剤を使わずとも、銅剤及び硫黄剤とアミノンの混用定期散布で充分防除できる。
 絶対寄生菌のなかでも、荳科、禾本科、コ-ヒ-のさび病は完全無農薬で防除できる。これは、「生理的防除理論」の正当性を裏づける1例と言える。

 要するに、好適な栽培条件下(特に、土壌管理と施肥の技術は病害発生と重要な関係があるので後述する)では、たいていの作物はアミノンと微量要素の数回の定期散布で、土壌病害を除いて無農薬で防除できる。ヴィルス病の場合も発病以前からからの予防的撒布で症状の発現を軽減した事例が多い。特定病害の多いトマトやキュウリなどでも、銅剤か硫黄剤の混用定期散布で極めて効果的に防除できるのである。またこれら無機殺菌剤の使用量は慣行農法に比べて30~80%減量してもよい。この場合は撒布回数は減らさず、薬剤の濃度を下げる。
 世界有機農業連盟(IFOAM)始め世界の先進国は、無機の銅剤と硫黄剤は、使用しても無農薬栽培の表示をしてもよいことになっているので、生産物の販売も有利になる。

土壌病害に対する効果
 土壌病害に対しては、生理活性剤アミノン-25の効果はあまり期待できないと思われるが、劇的な効果の出る、しかも再現性が高くて実用化されている実例を紹介する。

例1.いんげん荳(ブラジル)苗立ち枯れ病:ブラジルで常食とされている日本のアズキに似たフェイジョンという荳がある。これに苗立ち枯れ病がある。病原菌は、Fusarium spp.とされており、発芽直後から2週間前後までに発病する。幼植物の根が表面から侵されるため、本葉1~3枚で萎れ(中には着蕾期まで発病)、枯死するか、生き延びても50%以上の減収となる。
 この病害での体験と病害回復の大きな効果は19頁「植物の治る力-生命エネルギー」で詳述したので一読されたい。、
 その後この病害は、栽培環境が悪く、除草剤散布の農場では一般化するほどになったが、アミノン-25で回復できることが分かった。
 面白いことに、一時萎凋-アミノンで回復、の経過を辿ると、大抵の場合増収するのである。これは、育苗の初期に軽い水ストレス、チッソ欠乏を与えた方がその後の生育が正常で増収するのと似ている。
例2:ヴァ-チシリュウム萎凋病:ナス、トマト発病後アミノン-10(植物性濃縮アミノ酸)を土壌潅注すると、病状の進行が止まり、新根が発生する。ナスでは、新根発生後の生育が完全に回復し、潅注以前よりもよくなり増収した例がある。トマトの養液土耕栽培でも、病状の進行が止まるだけではなく、無病無潅注よりも増収となることが多い。
例3:コ-ヒ-苗立ち枯れ病(Damping-off):慣行農法では、育苗期間中殺菌剤を定期散布するが、アミノン-25+Microfolの混合散布のほうが、効果が高い。殺菌剤で完全防除はむつかしいが、後述のリブミンとの総合防除で、完全に発病を押さえることができる。殺菌剤で防除が難しい理由は、1-多数の菌の複合感染 2-環境不良因子(土壌水分、温度、湿度などの)に打ち勝つ力の不足、 と考えられる。アミノン-25は光合成を高め、幼苗の生命力(エネルギ-)を飛躍的に高めるので、植物の病原菌や害虫に対する抵抗力を増し、殺菌剤以上の効果が上がるのではないかと思われる(この場合、必ずといってよいほど発現する絵描き虫の被害も同時に完全に防除できる)。        
           


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