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続木善夫 / 私の科学的有機農業論
     土壌改良剤  (最終更新日 : 2009/08/06)
土壌改良剤 ー高度技術

土壌改良剤 ー高度技術 (2009/08/06) 3.土壌改良剤 ‐高度技術 その2
(1)腐植酸資材テンポロンとリブミン
 熱帯、亜熱帯では、土壌中の腐植の消耗が極めて早く、この腐植の消耗は地力の低下に直結している。1954~1959年頃、サンパウロ州奥地の砂土~砂壌土(粘土含量5~10%)の農業地帯にはまだ原始林が20%ほど残されており、私が住んでいたプレシデンテ・ルデンテ 地方には、原始林開墾後耕作0~40年とさまざまな耕作年数の農地が点在していた。当時私はコチア農協の技術指導員として、約300家族の営農指導を担当していたが、地力によるあまりにも大きな収量差に驚き、最初に着手したのが土壌分析室の設立であった。代表的な作物の棉では、原始林開墾後10年は無肥料、その後の20年は燐酸肥料のみ、30年目頃から、3要素の肥料が必要になる。40年を過ぎると、化学肥料だけでは赤字になるほど収量が低下してしまう。栽培年数と土中の腐植の関係を調べた結果、原始林には5%前後あるのが、20年立つと1.5%に低下し、30年で1.0 ~1.2%、40年では0.6~0.8% に落ちることも分かった。これら三者の関係から、この地帯の腐植含量0.7%前後の砂土では、どんなに化学肥料を上手に使っても、収量の低下からくる赤字経営をカヴァ-することはできない。経営がかろうじて成り立つ限界の最低腐植含量が1.2%、適正量の化学肥料をつかって儲かる生産のできる限界が1.5%という結論を得た。
 また、ある限度以下に地力が落ちると、多くの病気や害虫の発生が始まることも分かった。そして技術の中心は、化学肥料と農薬ではなく地力維持と回復である、ということを確信した。
 そのためにはブラジルのような広大な農地では輪作と緑肥栽培が主体となるが、堆厩肥の20~40倍の効果があると言われていた濃縮堆肥ともいうべき土壌改良剤も必要ではないかと考えていた。
1973年頃、世界では土壌改良剤の研究が一番進んでいた日本の文献や製品を調べ、対象を最終的に腐植酸酸系に絞り、ブラジルでの国産化を進めることにした。
 当時世界では70種類以上の土壌改良剤が販売されていたが、結局生き残って効果が認められ、大量生産されるようなったのが、日本の腐植酸酸系の土壌改良剤であった。
 最も大量に製造されていたのは、ニトロフミン酸系であるが、原料となる褐炭はブラジル産は質が悪く、断念せざるを得なかった。もう一つのリグニンフミン酸は、原料の草炭がブラジルの各地に散在することが分かった。日本ではテンポロンの名前で三菱系の販売会社菱商農材(株)が販売しており、製造会社北炭化成(株)の創立者でテンポロンの発明者でもあり、石炭化学の権威者であった阿倍良之助氏に教えを乞うことにした。同氏は私の持参したサンプルを分析して試作され、ライ麦のポット栽培でも栽培試験をされ、きわめて良質の草炭であることを証明された。日本の北海道の製造現場を視察して、製造許可の交渉をした時、現製造法はすでに特許切れであるが、別のフミン酸濃縮技術の特許があるがと提示されたので、ただちに特許契約をした。しかし、この濃縮技術は農業用の場合必要とせず、未使用で今にいたっている。
亜熱帯の草炭には生成条件によってさまざまな品質のものがあるが、現在弊社Technes Agricola 社が使っているものは、北海道産よりも良質の草炭である。寒冷地産との差は、草が年中生育するため、掘りとったあとの再生期間が短いことと、生きた植物の硬い根が少ないことである。欠点としては炭化が進みやすく、大部分のブラジル草炭は腐植酸含量の少ないものとなっている。最高品質のものは、草の根がほとんど無く、腐植酸の含量が高く、土壌改良剤の原料としては世界でも類を見ない優れた品質と思う。
 このような良質の原料をもとにして、テンポロンの製法を基にして弊社で工夫改善を加へて製造したのがリブミンである。リブミンという名前は阿倍氏の命名である。
 日本には1996から輸出を始め、結果は期待どおり好評を得ているが、日本では最初に高橋郁郎氏(当時のミカン栽培の権威者で果実日本誌の顧問)がテンポロンの効果を果実日本誌に、6年間にわたって観察した結果を発表されている。全文は果実日本23巻第1号別冊(昭43、1月)、25巻第5号別冊に(土壌改良剤)と題して掲載されているが、かなりの長文なのでここではその要点のみを紹介する。
(2) 果樹の品質改善と旱寒害に対するテンポロンの効果
   (土壌改良剤-腐植の補給と肥料の節減と品質の改善と旱寒害に対するテンポロンの  
    効果)より抜粋     
①腐植の理論と質の問題
 農林省茶業試験場の河井、池谷両氏は、腐植の価値は量ではなく質で、その質はメトオキシフル基(リグニン中の含量5.21%)の含量が高く、それは示差吸光曲線に表れる特殊の波長が、リグニン的性質を示すことこによって検定されることを明らかにした。さらに同氏等の調査は、テンポロンのメトオキシフル含量は2.08%で、示差吸光曲線にリグニン的性質を強く示した。他のニトロフミン酸系改良剤はメトオキシフル基0.66%を含んでいるが、示差吸光曲線にリグニン的性質を示さなかった、と報告している(土・肥雑誌1964-6)。この研究はとくにテンポロンの価値を確認したことになる。
➁腐植の耐久性
  多くの土壌改良剤中、テンポロンの特性の一つは、土中の分解消耗の遅いことである。北大石塚研究室の調査は、テンポロンの真正腐植13%、一年の消耗2.7%で、有効持続年数を5年と計算している。農林省農業技術研究所で、テンポロン、アズミン、フミゾ-ル、テルナイト(後3種はニトロフミン酸系)の4種についての試験は、テンポロンの消耗が最も少なくAの1/9、FおよびTの1/5となっている。       
  テンポロンは堆肥の20倍の効果が認められ、第1年の施用量10ア-ルあたり100キロであるが、第2年以降はその1/2としているのは、強い耐久性のためである。この耐久性の為に、次第に下層に浸透して、深層の改良に特効が認められている。
➂団粒の大きさと質
  土壌物理性の改善に、土の粒子の団粒化の必要は周知のことであるが、団粒の大きさは重要な意義を持つものではなく、必要なのはその構造で、大小各種の空隙を持つ海綿状団粒を形成し、小孔隙に水を大孔隙に空気を保つ構造が、逆な保水力と通気性を持つ土壌を作るとされ((江川、御園)、テンポロンのコロイドは粘土コロイドと極性結合の反応を示し、それらが無数に起こり、相互に繋がって海綿状団粒を作り、それによる養分イオンの吸着力の増大が保肥力を強化すると説明している(阿倍)
④窒素の損耗の防止
  農林省農業技術研究所で、地表にベッチ、ワラ、コンポスト、テンポロンを敷き、その上に尿素、過燐酸石灰および硫酸カリを散布して、アンモニアガスの発散量を調査した成績は、テンポロン区の発散甚だ少なく、ベッチ区はその6倍、コンポストおよびワラ区は3倍以上の損失をみている。
⑤リン酸の効果の増進
 土壌の下層に移動すると阿倍氏は説明しているが、農林省農業技術研究所の試験は、テンポロンによる燐酸吸収係数の低下を示し、富山試験場(小幡氏)の試験はリン酸の50%の吸収の増加を報じている。また静岡県庵原農協の15園の調査は、平均636の燐酸吸収係数が、6カ月後に平均443に低下した。
⑥根の生長に及ぼす影響
 庵原農協の宮川早生ミカン2年生苗の試験では、テンポロンの施用量の多いほど苗の成長を増し、葉色濃く葉肉厚く、新根の発育良好で甚だ太く、苗の全重量に対する根の比率を増した。テンポロンの効果は、むしろ第2年以後で大きい。
 赤平広太郎(青森県専門技術員)のリンゴ紅玉4年生苗の試験では、第4年に堀り取り調査した成績で、標準区(NPKのみ施用)に比べてその差は顕著、根の比率は対照区のおよそ6,5倍に達し、40倍以上の堆肥施用に勝っている。
静岡県庵原のミカン園において、テンポロン施用後も、2年くらいは効果の識別は困難であるが、3年、4年と経過するに従い、土壌の膨軟化と根の生長量の差は明らかになり、しかも新根は太く白く、樹勢の著しい強化がみられる。
➆初期の効果の観察
 テンポロンを施用しても、成園では効果の認められるのが遅い。苗の定植に際して、テンポロンを施用したものは、第1年の秋にはその効果がみられるが、成木園では第3年にならなければ、明らかな変化は認められない。しかし施用後、雨があれば2~3カ月後に10~20センチの土を取って無施用区と比較すれば、全土粒がテンポロンのコロイドに包まれていることが認められ、同一状態のもとで乾燥が遅く、保水力の強化がみられる。また時日の経過とともに雨後の水溜りもなくなり、浸透性の増大を示し、1年を経過すれば棒をさしこんで土の膨軟化が感じられる。
さらに興味あることは、施用園の葉をとって無施用園の同一状態の葉とを、同じ状態のもとに乾かせば、施用園の葉は萎凋が遅く、樹の健全化が証明される。果樹に比べて野菜や花には効果が早い。
➇施肥量の減少
 昭和37~42年頃、ミカン園、ナシ園では、10アール当り30~37kg施用されていたが、山口県吉井氏のミカン園や長野県吉川恒雄氏の二十世紀ナシ園 その他の観察から、テンポロン施用によって、土壌が改良された園のチッソの施用量は、多くの場合にミカン、ナシは15~20キロ、リンゴは10~15キロで足り、特別の土壌を除いて、それ以上の必要はないものと考えられる。
⑨果実の品質に対する影響
 テンポロン施用園の果実の品質に対する影響は、必ずしも一様ではなく、また対照区との正しい資料のあるものは少ない。
広島農試のブドウのマスカット・ベリ-Aに、三種の土壌改良剤と堆肥の比較試験(表9)は、テンポロン区の収量が第1位で、対照区の2倍を超え、糖度もまた最高を示した。アズミン、ゼオライト区も糖度は高いが、収量は相当落ちた。テンポロンにゼオライトを併用した区は、収量、糖度ともに最低、元来テンポロンに他の改良剤の併用は禁ずべきものである。この試験における糖度の上昇は、他の試験以上であるが、それは施用量が基準量の2倍に達していることにも原因があろうか。北海道池田ブドウ園のテンポロンの試験も、3品種を平均して、対照区の糖度12.9%に対して13.46%となっている。
 
 以上あげた成績と異なり、ミカンのテンポロン施用園が、果実は大きく収量は増し、隔年結果はなくなったが、果実の着色がおくれたり、糖度の低下をみた実例がある。しかしその多くは、施肥量を減じないための、窒素の効きすぎにあるように思われる。
 表8~11(省略)の成績を総合すると、テンポロンは果実の成分の濃度を高めて、品質向上の効果のあることが推定される。しかしいずれの場合も、とくに酸を減少する事実は認められない。この果実における成分濃度の上昇は、テンポロン施用のポテトの澱粉含量の増加とともに、同じ生理機構によるものであろう。
➉旱害、寒害に対する影響
 土壌が深層まで改良され、根が深くなり強化されれば、旱害にも低温にも被害を減ずるのは当然である。
 香川県のタバコ耕作地の春の地温を2度あげた報告がある。
 昭和40年、筆者がみた山口県平生の水田対照区転換のミカン園は、テンポロン施用2年で堆肥区地表50 cmの硬い粘土層を膨軟化し、細根 は70cmの深さまで伸びていたが、隣の同園主の対照区の土は硬く、根は45cmに制限されていた。そのテンポロン施用区は、前年の旱害に灌水することなく、十分に灌水された対照区と同等以上の樹勢を保っていた。
 寒害防止に顕著な実例は、昭和38年1月の寒波の時、山口県屋代農協のミカンの苗圃で、半分のテンポロンを施したところは、被害軽く、多くの緑葉を残し、その春の定植に用いられたが、無施用の部分は葉が枯れ、さらに1年の培養を要した。
茨城木県の早生温州における泉正六氏の試験は、昭和38年1月の寒害に対して、テンポロンの多用樹(標準の3倍量)は被害を減じ、テンポロン100kgにカリ、燐酸を増施したものが、完全にその被害を免れたことを報告している。
11 病虫被害との関係
 テンポロンには殺菌、殺虫の成分を含まないが、ミカンのネカイガラおよびリンゴの粗皮病に著効を奏している。
リンゴの粗皮病にテンポロンの試験を最初に行なったのは、北海道庁石狩支所の佐藤吉太郎氏で、昭和37年7月、祖皮病の発生したスタ-キング8年生にテンポロンを施用、100kg/10a以上の施用地は、1年後には粗皮病の痕跡を認めない程度に治癒した。また同時にフラン病の発生を防止したことを報告している(果実日本)。
 先年、山口県の甘夏カン栽培家の中に、テンポロン施用園が、ハダニの発生の少ないとの観察を持つ者もあると聞いたときは、偶然の現象と思ってそれを無視していたが、長野県飯田の二十世紀ナシ栽培家の中に、同じ経験を持つ者のあることを知った。そこの吉川氏はテンポロン施用4年後に、ハダニの発生の少ないことに注目し、ダニ剤の散布回数は、その後半減している。
さらに興味ある問題はナシのユズハダ果との関係である。長野県下伊那園協組合員の大半はテンポロンを採用しているが、少なくともその中の5人はユズハダ果の減少を認め、5~6年の連用園では、ユズハダ果がないものもある。窒素の減施にも関係するか?その外リンゴのたんそ病、リンゴ、ミカンの白紋羽病、ブドウの晩腐病、かっぱん病に対してテンポロンの効果の報告もある。水稲、野菜等の一年生作物の病虫については、あい似た実験が10以上あり、効果顕著と見るものもある。

(3)ブラジルでのリブミンによる栽培年数延長効果
 以上は、日本での1967(昭42)年までの果樹専門家による報告であるが、その後多くの試験成績や実績があることと思われる。
 ブラジルでは1980年初頭に、世界でも類を見ない腐植酸含量の高い良質の草炭原料をもとに、テンポロンの製法に改良を加え、リブミンの名で製造販売を始めることができた。
 20年近くの観察では、果樹についてはテンポロンとほぼ同様あるいはそれ以上の効果が認められているが、ブラジルでは落葉果樹が少なく、リブミンの施用面積はオレンジやコ-ヒ-、果菜類に比べると非常に少ない。
 これら果樹類で例外なく認められているのは、栽培年数の延長である。
普通コ-ヒ-は4~8年が生産のピ-クで、それ以後は徐々に収量が低下し、12~15年で赤字になるほど収量品質が低下してしまう。前兆としては、小枝が細くなりサビ病やハモグリ蛾が増え、小枝が枯れはじめる。乾燥期の落葉が多くなり、12~15年経てば落葉樹のように裸の木になってしまう。これらのコ-ヒ-園にリブミンを100g/m2散布すると1~2年で回復し、経済寿命が50%以上も延長できる。効果は抜群であるが思ったように普及しないのは、つぎのような理由によると考えられる。
 世界のコ-ヒ-生産国を見て言えることは、コ-ヒ-は生産者が儲かるものではなく、中間業者や流通業者、加工業者など、それに携わる多数の人々を支えるための農産物だということである。コ-ヒ-1カップ分15gが生産者価格で3~4円、慢性的な生産過剰で、利益が出るか出ないかの接点にある農産物といってよい。そのため、最低限必要な肥料や農薬を買うのがやっとで、土壌改良剤や生理活性剤を買う余裕などまったくないといってよい。リブミンを施用する農場は、経済的に余裕があり、高度技術に関心の高い極く一部の農園に限られてしまうが、最近は長期安値が続く中で着実な販売増加が続いている。
 例1:ブラジルのパラナ州でも有名なI農園。数千haの農場内に約90 haのコ-ヒ-園がある。高地にある10 haはいつも収量が低く赤字になるので、廃園にしたいとの相談を受けた。筆者はその10 haにリブミンの施用(1ton/ha)を勧めた結果,たった一度の施用で、3年以後施用園が最も平均収量の高い園となり、とくに長期旱魃と寒波の年には、他の園と大差をつけた。
 例2:バイア州のG農園。40 haのコ-ヒ-園に落葉が始まり、収量が低下し始めた。園主は最初数株のみに施用してその効果に驚き、翌年全園に施用して以前の優良園に戻すことができた。この農園主は後にリブミンとアミノンを販売するための販売店を起こし、順調な生長を続け、現在では同地方随一の農業資材販売店となっている。
 オレンジにもコ-ヒ-と似たような、若返りと寿命を延長する効果が顕著である。
 一例を上げると、ブラジルでも最も有名な生産地リメイラ市の近くに2,000haのオレンジ単作の著名な大農園があった。1985年のある日、同農場の技術担当技師が筆者を訪ね、収量が低下し始めたので、柑橘専門試験場や数人の専門家にも指導を仰いで色々な手段を講じたが、ついに、20ton/haまで落ちていた平均収量を回復することは出来なかった。どうすればよいかという相談である。結論として筆者は、➀除草は、除草剤ランドアップをやめ、草生栽培に切り替え、トラクタ-によるロ-タリ-草刈機による除草とする。➁リブミン600kg/haと、生理活性剤アミノンの2 lts/haの5回/年の葉面散布。➂微量要素の土壌施用と葉面散布(施用量は土壌分析と葉の定期分析により決定)。④収量と土壌分析に基づく適正施肥(これは正しく行われていた)、の4点の実施を提案した。この改善案を実施した結果、収量は2年後40ton/ha に回復し、すでに採用されていた害虫密度による総合防除法での農薬使用量も、一挙に1/3以下に減ってしまった。その後、この農場主は好況時、莫大な利益で大型ショッピングセンタ-の建設をはじめたが、その後のミカンの大暴落のため資金が続かず、借入金の利子が膨大な金額となり、残念ながら破産に追い込まれてしまった。 
 落葉果樹では生食用ブドウをのぞいて施用例が少ないが、亜熱帯下の気候のせいか、ブドウやモモでは施用1年後には顕著な効果が認められている。エッセイ「植物の生命力」のようにモモの樹脂病は1年で70~80%回復し、2年でほぼ完治している。収量と品質も施用後1年目に大きく改善され(100kg/10a)、モモの場合は1回の施用でもその効果が3年間続いており、以後収量が落ち始めている。

(4)ブラジルでのリブミンによる連用効果 
 ブラジル最大のオレンジ生産郡サンパウロ州Mogiguaçu郡の周辺では、リブミンが年間1千トン以上施用されている。この地帯での顕著なリブミンの効果としては、3~5年連用すると初期効果とは別の効果が確認された。一農園では毎年11ton/há+化学肥料のみ(堆厩肥無施用)の施用で、7年連用後の成績は同地帯のNPK施肥量180-90-180/háを大きく下回る60-30-60kg/haで、収量は同地帯の平均収量をはるかに上回る35ton/ha を収穫している。この超低施肥量はすでに3年以上続いており、糖度や外観など品質も極めてすぐれたものである。
 コーヒーの生産地帯でもほぼ同様の連用効果で、コーヒーでは無農薬栽培技術の一翼を担っている。
(5)リブミンの堆肥代替効果
 ブドウやオレンジ、野菜などの栽培で、リブミンが堆肥の代わりにならないかという要望が高く、生産者の間で数多く試されてきた。その結果をまとめると、オレンジやブドウ類では、完熟堆肥+化学肥料よりも、リブミン+化学肥料の方が、ほとんどの場合根量と生体重で優れた結果を生み出しているが、これは日本の果実日本に掲載された高橋郁郎氏の報告と一致するものであり、除々に普及するものと考えられる。

高橋郁郎氏はテンポロンと病虫抑制の相関関係が分からず、病虫に対する効果を認めるのに躊躇されていたが、当時としては無理もないことと思う。病虫害発生の原因は、拙著「病虫害はなぜ発生するか」で述べたように代謝系の狂いにあるといえるが、この場合は土壌環境の改善が細根や毛細根の活性化につながり、それが代謝系の正常化に大きく貢献していると考えられえる。テンポロンあるいはリブミン単体の施用によって農薬の散布を大きく減らすことはできないが、高品質高収量無農薬を目標とする技術パッケ-ジの土台であり、また土壌と根の老化による生理病の治療や予防に大きな力を発揮するのは間違いない。
 リブミンの土壌物理性と化学性の改善についてはテンポロンとほぼ同じであるが、団粒構造に差がみられるようである。江川、御園、阿倍氏のいわれる海綿状団粒はブラジルの土壌では生成しないが、これはラテライト系土壌では粘土が1:1型のベントナイトが主体であるためと考えられる。生成する団粒は一次団粒が大部分であるが、短時日で靴底に土がつきにくくなり、スプリンクラ-灌水で透水性の著しい改善が観察される。また保水力も高まり、数ヶ月後対照区と比べて30%以上節水できたというデ-タ-もある。
 ブラジルでの研究では、メリクロン培養でリブミンを培養基に添加すると、発芽率発根率が著しく向上したという報告がある。
 最近野菜の苗作りはバ-ク堆肥を主とする軽量培養土が主体となっているが、これにリブミン10%を添加すると根の張った驚くほど立派な苗ができるので脚光を浴びている。
 野菜栽培では、フザリウムやヴァ-チシリウム、青枯れ病菌を除く多数の土壌病害、特に露地での苗床で発病することの多い苗立ち枯れ病や、連作と肥料の過剰障害でおこる各種土壌病害には効果が高い。
 サンパウロ近郊のレタス地帯の代表的生産者F氏。レタスの連作のため塩濃度障害がでて病害が多発し、ついにまともに収穫できる株はわずか30%に減ってしまった。弊社技術員の指示で施肥をゼロとし、リブミンのみの施用で病害が減り、その後弊社の技術パッケ-ジを実施した結果、近辺で最も病害が少なくて多収、しかも品質のよいものを生産できるようになった。  
 
 ここでリブミンの効果をまとめてみると次のようになる。
リブミンの土壌改良効果
 1-土壌の通気、保水、透水性を高める。
 2-粘土を凝集させるので、土がサラッとして、靴底や農機具につきにくくな 
   る。
 3-下層土の有効燐酸及び石灰、苦土など陽イオンの含量を増加させる。
 4-下層土の物理性化学性を改善し、有効土層を深くする。
 5-塩濃度障害、その他有害物質の害を軽減する。
 6-有効微生物を増やし、病害菌を減らす。
 7-連用するほど効果が高くなる。
結果的に作物は、
 1-根張りがよくなる。
2-吸水力、吸肥力が高まるので、灌水量、施肥量が減る。
3-吸収されにくい Ca,Mg,微量要素などの養分が良く吸収されるので、ブ
  ドウのトラ葉やトマトの尻腐れ病が無くなる。
4-葉は厚くなり、光沢を増し、バランスの取れた草姿となる。樹皮は若返り、
  蘚苔類が無くなる。
5-寒害、旱害に強くなる。
 6-病虫害に抵抗力を増す。
7-収量、品質共に向上する。
8-隔年結果が少なくなる。
 9-永年作物の寿命が延びる。
リブミンの使用法
 施用法はきわめて簡単である。
 施肥量の標準は、100 kg/10aで表面に均一に散布し、ただちに浅く表土と攪拌するか、スプリンクラ-灌水する。
 寒冷地では降雪前に散布しておくと、雪解け時、多量の水とともに下層に到達するので下層土の改良が早く進む。
 培養土や鉢土には5~10%混合する。

                *

 リブミンが発売されてから30年以上になるが、その間草炭と石灰を混合した類似品が数多く出回り、生産者や技術者の間で混乱を来たしている。その原因は石灰と草炭の混合物が腐植酸石灰であるという誤った認識の違いである。単なる混合物では、土壌に施用した場合、石灰は粘土粒子と化学結合し、腐植酸は微生物に食われて、分解してしまう。そのため、施用初期はほぼ同様の効果を示すことが多いが、1~3年経つとその効果は歴然としており、上記のような連用効果は見られないのである。


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続木善夫 (岡村淳) :  
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