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宇江木リカルド作品集
     詩集「引き裂いた風景画」  (最終更新日 : 2003/05/21)
アマゾーナス州

アマゾーナス州 (2003/05/21) アマゾン大河


滔々たる流れがあるのだろうか
恐怖を覚える量感がありながら
悠遥たる停滞を思わせる
アマゾン大河は
とほうもない錯覚を押しつける

思惟は天空の音叉となる

マンカインド・インセクト
ヒトと昆虫との差異をもとめて
なんの意味があろうか
ましてや猿との関連について おいておや

密林のなかに築かれたマナウスの繁栄
それは錯誤の産物
自然の片隅にデフォルメされた
ブラジルの豊かさは
狭小な日本人には理解のそと

思考は密林に白濁する

マンカインド・インセクト
もう四角四面な考察などよそう
無責任に放縦にヒトという動物への回帰あるのみ

おお ブラジルの大地に跋扈する
なんとちっぽけな政治家たちよ
ひ弱な軍人たちよ
利にさとい牧師たちよ
理を説く事業家たちよ
そして ブラジルの大地より
さらに大きな顔をした小役人たちよ

彼らが毟り合い貪り合う
美しい悪徳と
醜い善行と
歯軋りする愉楽と
悦びあふれる残酷さ

世紀末に生きる寓話

悠揚迫らぬアマゾン大河と
無尽蔵な資源のなかの放逸

どうして偉大なる政治家などの必要があろうか
後進国に甘んじて
先進国から借り倒して
歳費の帳尻は茫洋として
アマゾンを観てくれと嘯こう

茫漠たるアマゾン大河があり
千古不滅の密林がある

その大自然が有限だからこそ価値がある

几帳面な日本より
懶惰なブラジルのおもしろさがここにある
わたしはブラジルを愛する
愛するがゆえに無視する

誰が何を善となし
誰が何を惡となすのか
地球が崩壊してもなお結論のない議論はよそう

バナナの葉蔭で悠然と惰眠を貪り
アマゾン大河の流動に揺られて
永遠にあるはずのない明日を待とう
一切の期待もなく



マナウスで


通り一辺の観光旅行で
アマゾンのすべてを語ることなど
とうていできないから
点描するしかない

アマゾン大河がどうのこうの
ジャングルの恐怖をああだこうだ
知ったかぶりして話せる人は幸せだと言いながら

ピラニアという街角に立つ女を目の端で見たり
マナウスのグァラナ水の味が
サンパウロのものとは違うなあと
呆けた声をだし
黒い河と赤い河が合流して
何キロもまじわらずに流れるさまを観て
つまらぬ歎声を発し
マナウス劇場のファッサードが
ネオ・クラシックとネオ・ゴシックの
どっちつかずのふたつの顔をしているのは
ブラジル人のいい加減な生き方の象徴ですと
自らも知ったかぶりして話せる人になり
通り一辺の観光旅行の辻褄をあわせる

そして
「なにか安いものがありましたか」
と頓珍漢な問いに
「はぁ?」
と視線を外して
マナウスの印象をぼやけさせる



鳥の巣に


おお 鳥たちよ
すばらしいデザイナーたちよ

思わず少女趣味な感嘆を発するほどに見事な
アマゾン河中の枯れ木の列に飾られた
鳥の巣の展示会

枯れ木はマネキン
マネキンは枯れ木
本能の創作
作品は本能の
創作発表会

失礼ながら
パリのデザイナーたちも顔色をなくすだろう
彼らの作品はすべて鳥たちの模倣にすぎない

神の気紛れ
太陽の飛び火
月のしたたり
大河の飛沫
そして白い砂の


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