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宇江木リカルド作品集
     詩集「引き裂いた風景画」  (最終更新日 : 2003/05/21)
ペルナンブコ州

ペルナンブコ州 (2003/05/21) カブロボーで


カブロボーは
サンフランシスコ河の
粗野な流れが片寄せた
土くれの町

ここで生まれて他郷をしらない人たちは
とつぜんにやってきた日本人を見る目が
遠い宇宙からきた異星人を見る目になる

素朴さの裏にある猜疑心
人懐こさの陰から覗く狡猾さ
頑固さと従順さと計算高さが
綯い交ぜになって
なにかを期待しながら
怠惰を装う

イエス・クリストの血を信じてはいない
信仰は義務のない権利の主張
牧師の説教は生活の装い

何千キロを尋ねてきたのに
人殺しを平気でする男は
人妻を寝取って
女の亭主の
弾を喰らって
あっけなく昇天したという

おお、メウ・デウス

早々と神への支払いを済ませた男へ
捧げるのは苦笑を束ねた花束だけ



カブロボーで見た少年


カブロボーの町の中央広場は
まだ陽が斜めに射す早朝から賑わう
近くの農家からそれぞれの収穫物を運んできて
露天市場がひらかれる

昨日もきていた少年が
今日もきていて
なにをするでもなく佇んでいる

少年の視線の先に
少女がいた
少年の瞳が熱く揺れ
少女の小麦色の頬がかがやく
少女のほころびた口元から
少女の白い歯並みがこぼれる
少女の周囲を蝶が舞う
少年の視野がぼやける
少年の悲哀がかすめる

昨日少年の父親が
近いうちにサンパウロへ出ると言っていた
昨日少年は白い雌鶏の脚を縛って
肩に担いで買い手のくるのを待っていた

今日少年の父親は黒い山羊の首に結わえた縄を
引き引き買い手のくるのを待っている
「これが最後の財産なんだ」と
笑った顏がゆがむ
めえ と山羊も笑っている

昨日買われていった雌鶏は
売られることの悲しみより
売らねばならない辛さのほうが痛むだろうと
言わんばかりの目をしていたが
めえ と山羊は
売られることをさもうれしそうに笑っている
少年の父親は目をいっぱいに赤くして
値を釣り上げたいと思っている

少年は目をいっぱいに見開いて
少女の小麦色の頬ばかり見つめている
薄いワンピース一枚の少女の
さわやかな腕の
すこやかに伸びた脚の
芳しい小麦色の
その辺りにだけ蝶が舞う
そして真っ青な空は
ブリキ板を張りつけたように
ぎらぎらとして


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