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宇江木リカルド作品集
     詩集「引き裂いた風景画」  (最終更新日 : 2003/05/21)
ミナス州

ミナス州 (2003/05/21) 遥かにうねる大地を行く


ミナス州を南から北へ縦断すると
大地のうねりを実感できる
見遥かすかぎりにつづく波状を
車に乗っていても体験できる

連綿と重なる大地の波を
乗り越え乗り越えしているうちに
現代から遠ざかり古代へ遡って行く
錯覚に捉われてくる

殺伐とした高原のなかに
突如として聳り立つ山を
ピラミッドかと見紛う
そのころから緑が消え
砂漠への進化?を推し進めている大地の無残に
肌寒さを覚えるようになる

それは古代への誘惑なのか
未来からの脅迫なのか

荒々しい地殻の肌ざわりに
こころの旱魃を確認し
不気味なサボテンの棘の長さに
思惟の偏狭さを思い知らされる

それは現実の錯覚か
錯綜する過去の真実か

このまま生き続けることが
こころの枯渇への盲進であるのは確実だろう
浅い嘔吐感
深い痛恨
ざらつく自らへの嫌悪感
古い傷痕を抉られる快感

どうしても退化とは信じがたい砂漠への侵食が
ああ もうここまで来ていたのかと思い知った
恐怖と
悔恨と
そして
明日へ向かいつつ破滅してゆく愉悦に陶酔する

ミナス平原の大地のうねりは
臆面もなく
人間に諦観を強いるから



麦畑のかがやきに


サンゴタルド高原に
金色の風の吹きわたり
見遥かす麦の畑に
燦然として喜悦が流れる

昨日までの汗の苦さが
白濁した過去の幻影となり
遠い日々の痛みなどは
もう癒着してしまった化石になる

ほう ここにも日本人がいたんですか
ふしぎなことはありません
黒い男の子と白い女の子が
姉弟ということだってあるんですから

悲嘆に暮れた風の回廊を
ざわざわと麥の穗のさんざめき

地球の襞に取りすがって
生きとし生けるものすべて
ぎりぎりの忍耐に爪先立ち
死界との境界に背筋を寒くさせながら
エンシャーダの柄を頑なにさせ
フォイセの刃先を偏狭に光らせて
それぞれが滑稽な役割を演じる
明日への疑いもなく

素朴な誇りがざわざわと麥の穗の上を流れ
いくらかの羞恥心が麦畑のなかをくぐる

サンゴタルド高原に
金色の風が渡り
遥かなまばゆさの向こうへ
つまらない思惟を消す


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