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宇江木リカルド作品集
     詩集「引き裂いた風景画」  (最終更新日 : 2003/05/21)
ゴヤス州

ゴヤス州 (2003/05/21) セラード地帯は


閉ざされた土地セラード
茨のおおい痩地セラード
ブラジルの中央に干涸びてゆく土地
低くひねくれた木が散漫に悲哀を託ち
引き抜いた根はちぢこまる
茫洋とした野放図な高原に
あるのは屈辱をおぼえる卑屈なひろがり

日本人とドイツ人が
果てしもない汗を注ぎ
膨大なる辛苦を加えて
白々しい無関心さで横たわるこの土地を
緑の地にするという
なんという虚しい勇気
もうすでに大地は自らの努力を捨てて
砂漠化への傾斜をころがり落ちているのに

トーチカに似た炭焼き窯が並列し
トーチカに似ない泥煉瓦の隙間から
青白い煙をたなびかせて
大地の緑を盗んだ昧い過程をくすぶらせる
改竄したくともできない地球の歴史の現実が
ちろちろと赤い舌を出す
まさに言い変えようもない感慨と苦笑

ゴヤスの高原は
むかし見たモンゴルの
天高きゴビの砂漠に
雄渾として湧き上がり
大地を卑屈にしていた積乱雲と相似する
風景をここに再現して見せる

たとえ地平の彼方までつづこうとも
セラードの痩地など
なにほどのことがあろうか
たとえ地球の中心まで掘り下げようとも
セラードに挑戦する人間の努力など
なにほどのことがあろうか

天高き雲を見よ



ブラジリアにて


未来都市だ 二十一世紀の都市だと騒がれた
ブラジリアの建築を観て
大いなる落胆を覚える
なんという貧弱な未来都市かと

せっかく広大なこの高原に
自由な線引きを任されたのに
地球の表面に爪で引っ掻いただけの都市設計
殺伐としたコンクリートの打っ放し
変哲もない現世紀的な建物の羅列

日本で観た二川幸夫の
さらには三木淳の
写真技術のみごとさに欺かれて
底知れぬ幽玄と途方もない四次元の夢を夢見て
来て観た落胆の大きさは測り知れない

飛行機嫌いのニーマイヤーが
「空から舞い下りてつくられた町」を
創造することの困難さがそこにある
姑息な政治屋どもが懐にした金の残りで何ができよう
しかり そこには夢も希望もあるはずはなかった
二十一世紀への晴れがましさもなく
宇宙的存在感を示す傲慢さもなく
超自然的な狂気もなく
あったのは即物的な失望だけ

「わたしはブラジルが好きでしてね
ブラジリアの高原に骨を埋めたいと思っています」
横浜の移民収容所で語った小林某は
偶然ブラジリアで再会したとき
「来ましたよ 来れましたよ」と
顏をほてらせ目を輝かせて握手したのに

あまりにも突然の死によって
あまりにも唐突に自らの希望を叶えてしまった
その妻が太平洋を越えてきて
あの高原に骨を埋めたという

ブラジリアの高原に未来の都市はなかったけれど
小林某の骨は未来永劫の夢を抱いて
窮まりない希求を永遠にした

政治的な建築物はすぐに煤けてゆくだろうが
ひとりの男に消えることのない未来をみる



クリスタリーナの町にきて


ブラジリアからおよそ100キロ
ブラジリア建設の駄賃のように
偶然発見されたクリスタルで
突然ラッシュを招いた町クリスタリーナ

高原を渡る風が
巻き上がった砂埃を連れ去ると
あとにクリスタルの透明感が
さわやかにかがやく町クリスタリーナ

いまはもうラッシュもすぎて
静けさがもどったあとは
町 町ってどこにあるのぉ と
探してもない小さな部落クリスタリーナ

それでもなお 
日本移民がコーヒーに夢を抱いてきたように
また突然の 一攫千金の夢の出現を待っている
21世紀の都市が100キロ先にあるのだから
未来に夢をかけてもいいクリスタリーナ

こんなに透明感のあるクリスタルが
とてつもない長い歴史を
大地のなかで眠っていたのだから
偶然に夢をかけてもいい町クリスタリーナ


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