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宇江木リカルド作品集
     詩集「反転の幻想」  (最終更新日 : 2003/05/23)
老詩人からの書翰

老詩人からの書翰 (2003/05/22) 「人間社会は事を歪めて教える習わしがあって、
 ほんとうのことはなかなかわかりません。
 ほんとうのことを識るために詩を書くのです。
 無限大の一瞬を生きる生命現象を
 本質の一部を成しているもの
 それが詩です」
老いてなお若い詩人が
深い霧の農園のなかから手を突きだして
土の匂いのする手紙をくれた

彼はスザノという地球の究極の中心に立って
宇宙の運行を読みながら
とつぜん地球の引力から解放されて
銀河系の彼方
未知の方角
無限の限界に向かって
遊泳に出かける詩人

私はまだ翼を持たないから
大気圏外に飛翔できずに
地球の狭間で
尾鰭がやっと手足になったぶざまな格好のまま
「事を歪めて教える」という人間社会に向かって
黄色い牙を剥いて
ばかみたいに吠え立てる

人間社会が歪めてものを教えるのなら
私は逆立ちして首をねじ曲げ
蝙蝠を真似て逆さにぶらさがったまま
喚きたてればいいと思う
たとえ財を成しても
名を成しても
すべてが無限大の一瞬ならば
狂ってがなり立てるのも
また無限のなかの一瞬のこと
虚しいことを承知のうえでする

ぶらさがっている干し肉にも等しいけれど
残酷に切り刻まれ
干されていても
いまだに血を滴らせて
のたうちまわっている私
借りたフォークで無慚に突き刺して
自分自身の肉片をにたにたしながら喰らうのも
詩人のひとつの生き方だろう

こんな生意気な
返事を書こうかと思いながら
老詩人の書翰を封筒に納める


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