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宇江木リカルド作品集
     詩集「反転の幻想」  (最終更新日 : 2003/05/23)
極彩色の讃歌

極彩色の讃歌 (2003/05/22) 黄濁した心のコレステロールは
やっきになって洗っても洗い落とせるものではない
いっそ切り取って捨てるしかない
どうせ人間の
鼻持ちならない悪臭がこびりついたものだ
犬もそっぽを向くだろう
ロボットじゃあるまいし
内臓の取り替えはできないから
切り捨てた以上は死ぬしかない
強靭な三島由紀夫も死ぬしかなかった
薄弱な思想の行き着くところは

ああ、インジラガンジーが死んでから
馬鹿も気違いも見境なく子を生んで
地球が超満員
押せ押せの押しくら饅頭
行き着くところが地球の果ての断崖絶壁でも
立ち止まるわけにはいかないんだ
式に古いものから消えてくれ

女も疊も家も大地も古いものは醜悪なだけ
古くていいのは男だけ
しかし、絶対ではないんだぞ
思い上がらずに自らを鍛え抜け
赤い太陽が日々に新しいのは
男たちのためだけではない
もう女たちもボデービルをはじめている

おお、黒々として深い宇宙の中間に
銀色に流れる銀河を仰いで
センチメンタルな涙に濡れて合掌しても
しょせんあなた方は紫色に痩せた驢馬の集団
停滞した群青の湿気のなかから
這い出したバクテリアと大差のない生きもの
青い顏して深刻ぶっても
自虐趣味には白けるだけ

いっそ 真っ赤な嘘でもいい
華やかに花火を揚げて
金色の盃を高く掲げて
乾杯だ 乾杯
たとえ百年が千年長生きしたからって
地球の寿命には及ばないし
ましてや宇宙の寿命には

ばからしく輝くばら色の明日があると惟うのか
まるで小児病的な幼稚さで
執拗に追い求める明日は幻影でしかないのに
色褪せた戯言がいつまでも通用する
通行証のように振りかざして
君らはいったいどこへ行こうというのか
緑色の愛があれば世界共通の身分証明と
勘違いしているらしいが
桃色の愛のほうが世界共通の誑かしとして
使用可能かもしれないけれど
希望という名の星の下に存在するのは錯覚だけ

擦り切れてしまった前世紀までは
たしかに存在したらしいが
いくら掘り返しても掘り出せるものは
白けてしまった藤色の少女趣味な化石
その黴臭い骨董品も
ひょっとしたら踏絵となって
在りし日の面影だけは留めているかもしれないが

まあ 皆さん
どうせ退屈を持て余しているのなら
色のない時のまを背景にして
せいぜい悲しい愉楽に耽るのも一興
そのうちどこかの惑星からきた
巨人が起重機のような指の爪で
捻り潰してくれるだろう
どうせいつかは死ぬために生まれてきたんだ

万物は殺戮し合うためにこそある
互いに穢い牙を剥きだし
残酷に殺し合おう
己れ一人が生き延びるためには
あくまで冷酷無残に叩きのめし
あくまで薄情に人間讃歌を合唱しつつ

ああ 人間社会ほど辛辣な連帯意識を掲げて
とってつけた友情と
剥出しにした敵意と
吐き気する慈愛と
いとおしい無関心と
色とりどりな手と手を繋いで
笑いの輪のなかで破壊を企てている生きものは
ほかにはいない
その徹底的な悪意に賛辞を捧げる

極彩色の輪のそとで
わたしだけは白々しく立ち尽くし
人類の最後を見届けたいと祈りつづける
幸いにも私は食み出し者
愚昧なる狂人
古代の横穴に蟄居して
その日を待つ
そらぞしい洞穴に
いまも反響している
極彩色の人間讃歌が


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