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宇江木リカルド作品集
     詩集「反転の幻想」  (最終更新日 : 2003/05/23)
今日の新聞から

今日の新聞から (2003/05/22) 貸した金を何に遣ったかなどと
日本人はなんとエチケットを識らないものよと
日本の首相を蔑み嗤った
ブラジルの大蔵大臣
何々のための借款と銘打っても
それは名目上のこと
何に遣おうが大きなお世話
私のために遣ったのだとは
おっしゃらなかったけれど
はじめから踏み倒すつもりの借金なんだから

ジバングは黄金の国だとは
偉大なる預言者の言葉だったのか
極東の島国日本が経済大国になって
すべての矜恃から解放されて
金の褥で
東大教授が昼下がりの情事としゃれ
松竹専務は女と裸で写真に納まり
欲張り爺が五億円を詐取されて
やくざな日本は総花爛漫
白けた新人類は活字を投げ捨て
わけのわからぬ未来語とやらをしゃべる


道徳なんぞの陳腐な文字は
植字係も探すのに苦労するくらい
活字盤の底で圧殺されている
それならいっそ道学者の石頭かち割って
鼻血で日の丸描かせよう
乱れ汚れて悪臭放つ
祖国日本でブラジル二世の娘一人が
あっぱれ武士道に勵むのは
漫画というしかない

資源豊かなブラジルで
貧しき民が大地に平伏し
旱魃で干涸びた眼を天に向かって剥出し
洪水に水浸しになった瞳を天へ泳がせ
エルニーニョこそ悪天候のせいだと
すべての責任を天に転嫁させても
エイズまで擦り付けるわけにもゆかず
恍惚の果ての海で溺れ死ぬのは
地球の終末にふさわしい死に方だと
新興宗教の教組に騙されて
死ぬ日を待つがいい
そう! 死ぬ日まで
セックスだけに全精力を傾けて
愉楽のなかで死ぬのがいい
たったひとつの生き甲斐
たったひとつの生きざま
たったひとつの死に様
俺はそう思う


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