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宇江木リカルド作品集
     詩集「反転の幻想」  (最終更新日 : 2003/05/23)
人を恋うる

人を恋うる (2003/05/23) 世の中を拗ねて
精神的な隠遁生活をしていても
実生活が周囲の煩雑な都会のなかだから
ついつい人を恋しくなる
むかしの言葉がわかり
むかしの季節を感じ
むかしの情緒に浸り
むかしの生活のわかる人を

懐古趣味で泣き言を言っているのではない
また熱い恋に
身を焦がしたいと思っているのでもない
あまりにも遠い異国の
言葉の通じ合わない人たちとは
こころを通わせ合えないから
躰が冷えてきたせいだと思う
血が流れにくくなってきたからだと思う
腦が干涸びてきたからだと思う

むかしの人を恋うるのではない
こころにゆとりのある人と
未来について語り合いたい
この歳になっても
まだ地球の最後などあるはずはないと思うし
人類が滅びる日がくるなどと信じたくないし
どこかに血の通っている人がいると思うから

いまでも恋を恋する人がいるはず
いまでも真理を知りたい人がいるはず
いまでも暖かい心をもった人がいるはず
いまでも俗事に関心のない人がいるはず

そんなことをゆっくり時間をかけて
語り合える人を私は恋うる


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