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宇江木リカルド作品集
     詩集「反転の幻想」  (最終更新日 : 2003/05/23)
肯定派詩人への問い

肯定派詩人への問い (2003/05/23) では いちおう
彼らを容認するとして
人を欺き富を築き
人を殺めて利を貪り
美辞を弄して名を成し
口を拭って慈善を為した
彼らを必要悪として
肯定しなければならないのか

では いちおう
情勢を受諾するとして
宗教の名において戦争をつづけ
正義を振りかざして殺戮をつづけ
己れの主張を通すために人を傷つけ
肌の色で人間の価値を決め付ける
それを現実だとみて
肯定しなければならないのか

緑したたる野に立って
薄ぎぬ色の風のなかで
くれない染むる花を愛で
青い小鳥の歌に聞き惚れ
黄金の波打つ麥の穂波に
土にひざまずいて祈りを捧げる
古い額縁のなかの繪のような
生活をしているあなたなら
肯定しなければならないでしょう

そんな恵まれた環境のなかに住まない
愚かな人間どもの造った建物の襞で
蠢いているものたちは
歪曲されて元に戻らない現実社会を
どういうふうに肯定するのか

汚穢に満ちた路地の行き止まりで
いま口にする食物もなく
泣いている子に
着せ掛ける襤褸もなく
段ボールのなかで震えている人たちも
弱肉強食は自然の習慣と
なお超然として
肯定するしかないとあなたはいうのか

すべてをあるがままに
這いつくばって
拾い集めた言葉のひとつひとつを
肯定的に繕うとしても
どういうふうに並べていいのか
懐疑派の私はしらない


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