あつい、あつい (2003/10/01)
早朝に母のところに出かけ、母の具合が心配したほどのこともなかったから、昼と夜の食事の支度をしておいて、年金生活を読書三昧に耽っている父に、母の具合が悪くなったらすぐ電話してよと言い残し、昼飯食っていかんのか、と言う父に、ほかに用事があるからと実家を出る。 別に用事などなかったのだけれど、なぜかしら虫の報せというのだろう、気持ちがざわざわするから、カンカン照りのなかを、暑い暑いとぼやきながら自宅に帰った。 家には、離婚して実家に帰らず、夜の仕事場に近いから同居させてくれといって住み着いた姉がいて、失業中の夫がいて、それが胸騒ぎのせいだし、虫が報せたことだったが、案の定、姉に与えた部屋で、ふたりが熱い熱いと喘ぎながら絡み合っていたのだ。 ぎゅっと胸を締めつけられたけれど、それは嫉妬ではなかった。夫に愛想を尽かしていたのはずっと前からだし、姉のだらしないのも承知の上だったから。 この現場を掴んだのを勿怪の幸いにして、夫を姉に譲り、わたしは、いま日本に出稼ぎに行っていて、義姉さんずっと好きだったよ、もしもその気があったら、日本に来ないか、と手紙をよこした義弟のところに飛んで行って、この熱い厚い情念の塊をぶつけてやろうと思った。
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