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宇江木リカルド作品集
     掌編小説  (最終更新日 : 2003/10/01)
アンチ・カルチャー・ショック

アンチ・カルチャー・ショック (2003/10/01) 事務所に通ってくる掃除婦が、「ドットーラ、こんにちは」と声を掛けた。「ドットーラ」といえば「博士」というブラジルで使用されているポルトガル語だから、博士と呼ばれるようなわたしではなかったから、わたしは誰に挨拶をしているのかと思って周囲を見回したが、わたし以外に人影はなかった。彼女はわたしに向かって挨拶をしたのだ、とわかって慌てて挨拶を返した。
まだ日本から赴任してきた新支店長のわたしは、彼女からすれば「エライサン」なのだから、たとえわたしが新制中学校出でしかなくても実力で勝ち得た支店長の座に対して「ドットーラ」と敬意を表したのだろう。
ブラジルでは大学出はみなドットールと呼ばれているだけではなく、何かの間違いで大学を出たとしか思えない男が、電話で話すのを聴いていると、「ドットールxxだ」とみずからのことを言っている。
植民地社会では、そういうふうに自分自身を売り込まなければならないのだ、とわかって、そのアホらしさを思ったけれど、郷に入れば郷に従へということもあるのだから、わたしも空を仰いで、ドットーラになりすますことにした。


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