10、「…それが幸せな国かい?」 (2003/05/23)
― 最後に、ブラジルへ来られた動機という意味でお聞きしますけど、東京農大には農業拓殖学科というのがあったんですね(※現在の国際農業開発学科)。
それはね、海外に行き先を作らなきゃいけないって発想のもと、満拓時代とかで活躍した人が先生になったり、ね。
― やっぱり何か国策的な意味があったんですか?
それと、創始者が榎本武揚。彼も、函館の五稜郭で本当は切腹するところを人材として助けられて、士族の就職先を北海道開拓で作って。それからメキシコに移民を送ったり、そうやって海外に出て行った。それが農大の前身なんですよ。だから学校としてはそういう風潮があるわけ。
― ああ、そうなんですか。それで農大卒の人がブラジルで多く活躍されているわけですね。
で、拓殖学科原論ってのはね、そこに住む人の生活環境をいかに良くするかってのがテーマなんですよ。それを、日本から出ているわれわれ海外にいる人間からは、日本は生活環境良くしたほうがいいんじゃないかって国に見えるから俺らが乗り込んでいく。逆になってんです。
― (笑)逆輸入。
逆なんです。これなんだよ、なぜ今ブラジルにわざわざ行った人が日本をそう見るかって。
― 日本を拓殖してやろうかって。(笑)
不幸だもの、あそこの国。すごい不幸だもの。
― 不幸ですよ。
ね。不幸だよね。俺どれだけ、幸せだって言える人間が住んでるかと思ってよ。自殺者で3万人出てる、これ脅威だよ、数字的に見てよ。
― 今、国民の総人口からみた自殺者の割合が一番多いのは日本らしいですよ。
だってさ、自殺願望者まで入れてみなよ。どれだけいるか?
― う~ん、何10万か、何100万か…
それが幸せな国かい?おかしいよな。 これ一席ぶたなきゃいけないとこだよ、ね。「あんたが住んでる国、そういう国だぜ。外から見たら脅威だよ」って。
― ブラジルって、どうやって生活できてんだろ?って思うような貧乏子だくさんの連中でも、土日に家族や仲間で集まってワイワイやってる。めっちゃ楽しそうじゃないですか。生活苦しいはずなのに毎日ニコニコしてるし。
生きることに精一杯楽しんでるよね。余計なこと考えない。見栄もクソもねえし。これっきゃできねえんだもの。 ブラジル人の発想が、宵越しの金は持たない国民性だから。できる時にパーっとやっちゃう、こんな豪勢な話ないですよ。 だけど人生ってのはそうだと思う。 いつ死ぬかなんていう保証どこにもないんですよ。やれるうちにやっとかなかったら、あとは後悔しかないんです。これ皆さん考えなさいよ、って一言言わなきゃいけないですよ。何かあったら転ばぬ先の杖、かも知れないけど、なる時はなるようになってんだから、世の中は。"無い"で生きてる連中いくらでもいるぜ、きょうも生きてるぜ、みんな。ね、俺だってそうだよおい、ウチ来てみなよ、銀行通帳なんてハナからないけどさ(笑)。で、この先どうすんのって聞かれたって、そんなこと答えようがねえだろう、なってみなきゃわかんねえ、って。そんなこといちいち心配して生きてられるか、って。
― 日本でも、あれしたかった、これやりたかった、って言う人はいくらでもいますよ。例えば「ああ俺も外国に行きたかった」なんて。じゃあやればいいのにと思うんですけど、先のこと考えちゃうんですよね、みんな。今の仕事辞めたら収入源がなくなる、再就職先がない、女房子供抱えて今さらできるわけがない、って。
あきらめられるぐらいだったら大したことないんだよ。
― 本当にしたいんだったら、やっちゃえばいいんですけどね。
やるしかないよね。それじゃなきゃ自分満足しないんだから。自分が満足するの何なのかってオプションあって、一番強力なオプションがこれだったら、やるしかないわけで。 誰の人生やってんだかよ~く考えて下さいって、みんなに言いたいよ、ほんと。 あんた幸せですか?って聞かれてごらん、俺なんか即答だよ、「ビンビンですよ」って。子供はスクスク育ってくれるしさ。手間掛けないでも育つぜ。まあ手間掛けないからいいんだけどさ。
― (笑)水耕栽培、ネギと一緒じゃないですか。
そっ(笑)。無理がないから続くんだよ。
― (笑) …それでは長々とインタビューに付き合って頂いて、今日はどうもありがとうございました。
じゃあこれで仕事終わりだね♪
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