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たこ焼きマンが行く
     たこ焼き「旅日記」  (最終更新日 : 2009/05/25)
05年忘年会(番外篇) [全画像を表示]

05年忘年会(番外篇) (2006/01/20) (2005年12月4日(日) 快晴)

 この時期の季節柄、「忘年会」と称してサンパウロ南部に在住するマエジマさんのご自宅に呼んでもらった。
 
 マエジマさんの友人で、元巨人軍の長島茂雄氏に顔がそっくりなアサムラさんから連絡があったのは、11月初旬頃だった。
 
 「マエジマさんが皆で忘年会をやろうと言っています。タコヤキをまた作ってほしいと言っていますが、どうでしょうか?」―。

 実は、その数年前に初めてタコヤキをマエジマさんに披露し、大いに気に入ってもらっていた経験があった。その時は、お2人の共通の友人であるマウロさんが所有する、サントスから数十キロ離れたイタニャエンという別荘でタコヤキを回した。

 「タコは高いので今回、具はイカにしようと思います。イカはマウロ君が新鮮なモノを仕入れて持ってきてくれるそうです」とアサムラさん。嬉しい心遣いに素直な1号はすぐに飛びつき、「ハイハイ、どこにでも行きますよ」として、実行の運びとなった。

 この日、嫁はんとソグラは用事があり、1号1人だけが出動。「いつも1人でいい思いばかりしてぇー・・」とグチる嫁はんを、往年のモハメド・アリのように巧みにかわしながら、地下鉄サン・ジューダス駅で待ち合わせたアサムラさんの車に便乗したのだった。

 1号が持参したのは、家庭用タコヤキ機器1台、タコピン、油ひき、ソース、ネギ、紅ショウガなど安いものばかり(皆さん、すみません)。

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手際よく慣れた手つきでブリをさばくマウロさん
 それに引き換え、アサムラさんの車に乗ってきていたマウロさんは、新鮮なイカに加えて体長5、60センチもあるブリを買ってくれていた。

 正午前、マエジマさん宅に到着。同氏宅は日本式の風呂を作るため、数年前から改築工事を行なっている。風呂はまだ完成していなかったが、白を基調にした家屋の空間が広がっていた。開放感溢れる庭には屋外用の大型テーブルが置かれ、夏の陽射しが容赦なく照りつけている。

 「ヤアヤア、暑い中よく来たね。まあまあ、中に入ってとにかく冷たいヤツでもやってよ」とマエジマさんがキンキンに冷えたセルベージャ(ビール)を用意してくれていた。残念なことに肝心のマエジマさんは体調を崩して、現在アルコールは摂取できないという。

 「何や、我々だけ飲んで申し訳ないッスねえ」と全然申し訳なくない素振りで1号がコップを突き出す。優しいマエジマさんは「まあ、いいから、いいから。遠慮なく飲んでよ」と笑顔で注いでくれる。

 ふと見ると、マウロさんが早速、台所でブリをさばきだした。自分専用の刺身包丁を持参しており、手慣れたものだ。

 マウロさんは、イタニャエンからさらに海岸山脈をボートで入った場所で錦鯉を養殖している。サンパウロ近郊の自宅から養殖場までを一週間ごとに行き来する。普段から人里離れた暮しをし、サバイバル生活を苦ともしないタフガイだ。それでいて、現代の日本人が忘れてしまった「大和魂」を持っている、今どき珍しい日系2世だ。

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新鮮なイカソーメンが酒の肴
 こちらも酔っ払わないうちにタコヤキ機器を庭の隅にセット。鉄板に油をひいて沁み込ませる。次にアサムラさんが用意してくれたメリケン粉と玉子を溶いてタコヤキの素を作り、冷蔵庫に保管してもらった。

 タコヤキを依頼してくれる人のほとんどは、タコヤキそのものよりももっと立派なご馳走を振舞ってくれる。はっきり言わせてもらうと、1号自身は今回もタコヤキどころの騒ぎではなかったのだった。

 まず、タコヤキ(今回はイカヤキとでも言いましょうか)の具になるイカは、マウロさんがサンパウロに来る前から臓物を取り除き、冷凍して持ってきてくれた。それを半分解凍しながら湯にブチ込み、茹で上がったイカを大きめにブツ切りにしていく。

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脂の乗ったブリ。タコヤキどころではない。
 イカは冷凍しているもののかなりの新鮮さがあった。もったいないので全部をイカヤキの具にせず、マウロさんに頼んで生イカの三分の一ほどを「イカソーメン」にしてもらった。
早速、わさび醤油に付けていただく。イカのシコシコ感が何とも言えない。

 ブリの刺身も出来上がった。脂身が乗って歯ごたえがあり、メッチャ旨い。その横では主(あるじ)のマエジマさんが、「オンシーニャ(小豹)」という商標のカシャッサ(ピンガ:ブラジル焼酎)でカイピリーニャ(カクテル風)を作ってくれる。至れり尽くせりの接待に、1号は完全に舞い上がってしまったのだった。 

 アレヨアレヨという間に刺身はなくなるが、その合間にもマエジマさんの奥さん手作りのイカ出汁スープやおにぎりなどもジャンジャン出て、飲み食いするのに忙しい。

 腹が充分に満たされ、落ち着いた夕方近くにようやく、タコヤキ、否、イカヤキを披露することに。しかし、充分に飲み食いさせてもらった1号はすでにイイ気分。最初のうちはほろ酔いでタコヤキを回していたが、その後の記憶が飛んであまり覚えていない。

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一応、イカヤキ?も焼かせてもらいました。
 「わずかばかりの意識の中で~、君は何を考えたのかあぁぁ~」とアリスの名曲「チャンピオン」の歌の文句ではないが、1号は何も考えてはいなかった。

 薄れゆく記憶の隅にあったのは、その後マエジマさんの娘さんや息子さんが帰宅し、タコヤキを食べてくれていたことだった。持ち帰ったカメラには、マエジマさん夫妻をはじめ、アサムラさん、マウロさんが一緒に入った写真や、マウロさんが一生懸命にタコヤキを焼く姿が収められてあったが、それをどうやって撮ったのかは、1号の記憶にはほとんど残っていない。案の定、タコピンなどを忘れて帰り、後日マエジマさんに東洋街付近のビルまで持ってきてもらったのだった(本当にご迷惑かけました)。まさに忘年会と言うべきか。

 ただ間違いないのは、この日の1号はまさに「酒池肉林(この場合の『肉』は魚肉ですので、ご注意のほどを)」の世界に陶酔したということだった。チャンチャン。

 マエジマ家の皆さん、アサムラさん、マウロさん本当にありがとうございました。次回もぜひ、お誘いいただければ幸いです。(おわり)
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皆さん、本当にありがとうございました。


[今日の教訓]
 セルベージャとカイピリーニャを混ぜて飲まない。人の話はキチンと覚えておくこと。


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