本番篇 (2005/12/03)
(2005年11月19日(土) 晴れ)
午前8時半過ぎ、老ク連到着。午前10時からのビンゴ大会開始を前に、すでに10人前後の会員が来ている。お年寄りたちのビンゴにかける意気込みは、ハンパやおまへんで。 早速、事務局の上原さんたちの許可を得て、台所を使わせてもらう。しかし、すでに家で下準備はしてあるので、タコヤキの時よりも用意は楽チンだ。値段は1本1レアルに設定するが、会員からは「高いんじゃないの?」とクレームが入る。ソグラ(義母)がすかさず、「でも、○○県人会のダンゴは1本2・5レアルで売ってましたよ。高いことはないですよ」と、やんわり反論。この先制のジャブが功を奏してか、1本1レアルで販売することに。さすが、元プロ商売人は違う。
1号はダンゴの販売場所を事務局に聞き、サロン入り口でやらせてもらうことになった。ダンゴを焼くのと蜜を付けるのをソグラに任せ、出来上がったダンゴを1号と嫁はんとで売る。
同じ机の上で手作り品を販売するのは、老ク連にいつも饅頭(まんじゅう)、おこわ、赤飯などを持ってきては金藤さんら事務員に売ってもらっているというナカバヤシさん。常連で慣れており、机の上に敷く白い紙を持参しているなど、タダモノではない。こちらは新参者にもかかわらず、サロン側に近い机の右端を使わせてもらう。
用意をしているとドンドンと人が集り、なんだかんだで午前9時半頃には、会員でほぼ満員の状態。この日は約120人が出席した。
「ビンゴが始まったら、商売どころじゃないよ」とナカバヤシさんに促されて、人が集った今のうちに嫁はんと一緒に、会場内でダンゴを売ってまわる。しかし、皆さんまだお腹が空いていないのか、買う人は数人程度。
「まあ、まだ始まったばかりやし・・」と机のところに戻ってくると、ナカバヤシさんがダンゴを何本か売ってくれていた。「(机のところに)誰か居ないと、お年寄りは皆しっかりしているからね。ダンゴはタダだと思って持って行っちゃうよ」
「そうや!そうでした」―。前回の老ク連のビンゴ大会でも、スタッフの弁当のおかずを勝手に取っていったり、ソースが入ったプラスチックの入れ物をなぜかコッソリと持って帰ろうとしたオチャメなお年寄りがおられたのだった。まわりを淘汰して、今までの苦しい人生を生き残ってこられた移民を侮ってはいけないのだ。
午前10時過ぎとなり、さあ、いよいよ待望のビンゴ大会が始まった。賞品は役員や会員らが寄付した品物30点以上と、目玉は午前中最後の150レアルと午後最後に賭けられる200レアルの賞金。会員は15レアルを払うと、昼食用弁当とこれら賞金獲得権利付きのビンゴ券2枚がもらえる。それ以外のビンゴ券は2枚3レアルだが、飛ぶように売れる。お年寄りの皆さんも案外と(失礼!)、お金を持っておられるのだ。
ビンゴ機は、世話役のウチヤマさんが日本から購入してきたという最新式。番号の付いた球を針金でできたカゴに入れてクルクル回す従来のものと違って、瞬時に数字がデジタル表示されるという優れもの。
早速、第一回目のビンゴ開始。ざわめいていた会場が一瞬、シーンとなる。一人で2枚のビンゴ券を一度きに使っている人はザラにいる。中には、一回で4枚のビンゴ券に挑戦しているツワモノもチラホラ見える。皆、真剣そのものだ。「賞品はたくさんあります。慌てないように」と、ビンゴ読み上げ係りのウチヤマさんから注意があるが、会員の耳にはそんな忠告は聞こえていないかのように皆、目がギラつきだす。ナカバヤシさんが言っていた通り、とてもダンゴを売りにいく雰囲気ではない。
数字が読み上げられ、会場前方の大型表示板に数字が次々と貼り付けられていく。
「ビンゴォー!!」
誰かが叫ぶと、会場からはどよめきが響き渡る。当選者に対して羨望と嫉妬の眼差しが注がれる。笑い、怒り、残念がる。人間模様がモロに見え、会場は熱気が溢れる。「イヤハヤ、これはスゴイわ」と1号が感心してると、嫁はんに「ほら、何してんの。売りにまわるよ」と急かされる。
しかし、皆さん、次のビンゴ券を買うのに必死で、ダンゴどころの騒ぎではない。
これが数回繰り返されたあと、ビンゴの合間にダンゴを買ってくれる会員さんが少しずつ増えた。会場の盛り上がりとは対照的に、こちらは朝が早かったこともあり、睡魔が襲う。
そして、午前中のハイライト。150レアルの賞金が賭けられる。弁当を購入した我々ダンゴ3親子も、当然ながらこれに加わる(文字通り、ゲンキンですなー)。「今までのように1列だけを揃えるのではなく、全部の数字を埋めなければなりませんよ」―。興奮状態の会員に対して、ウチヤマさんから何度も同じ説明が入念に行われる。
ビンゴの結果、すでに帰っていた会員の券が当たり、会場はやや意気消沈ぎみに。「ヤレヤレ」といった感じで昼食タイムとなった。しかし、なぜか弁当が足りないというハプニングが発生。事務局は慌てて弁当屋に追加注文したが、時間がかかるのは否めない。このことが、我々親子にとって思わぬ幸運となった。弁当が後回しになった人々から、ダンゴの注文が相次いだのだった。
また、弁当を食べ終った人からも「ソブリメーザ(デザート)」としてダンゴの注文が入る。我々はここぞとばかりに売りまくった。
しかし、30分もすると、ビンゴ開始。ダンゴの売れ行きはあっという間にストップ。再び熱いバトルが会場で繰り広げられた。
1時間ほどして後、弁当屋が到着。ダンゴ3親子は台所で遅い昼食をいただく。
1号はこの日、午後2時から新聞用の取材が入っているため、一時的に会場を抜けた。午後3時過ぎに会場に戻ってくると、すでにビンゴは終了。会場は後片付けの状態に入っており、ダンゴも無事、150本が完売したという。老ク連の皆様、本当にありがとうございました。
後から嫁はんに聞いた話では、「(1号が)居なくなったから、無理してダンゴを売ることないよ」と、これまでビンゴなどやったことのないソグラを誘い、嫁はんが2枚3レアルのビンゴ券を購入。しかし、ダンゴ母子は博才が無く、会場内でこの日1度もビンゴに当っていない人ばかりを対象にしたビンゴでも当らず、最後にお情けでちょっとした景品をもらって帰ってきたという。
ビンゴ終了後に「パラ・ビアージェン(お持ち帰り)」で買って帰ろうと思っていた人からは、「えー?もう無いの」と言ってくださった方もおられたようだ。本当にすみません。しかし、売り切れとなることを予想して午前中にすでに、「パラ・ビアージェン」の注文をしていた「通(つう)」の方々もおられたのだった(さすが!)。
次回、ダンゴ3親子が再び依頼されるかどうかは今のところ定かでないが、「ダンゴもやり方によっては案外イケるで」と感じた今回の挑戦であった。ただ、家族からは「大した儲けにもならないのに、無理しなくてもいいよ」との声が飛んできそうではあるが・・・。(おしまい)
[今日の教訓] ビンゴ中はダンゴを販売しない(というより、出来ない)。ダンゴを焼くのは炭火でなくても、ガス火で充分。蜜はもう少し、塩を入れて甘さ加減を調整しても良かった。
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