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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
4・29 運動会 [画像を表示]

4・29 運動会 (2007/04/30)  知人に誘われ、サンパウロ近郊の町イタペリカ・デ・セーラの運動会に参加した。息子は1週間前から、この日を今か今かと楽しみ待っていた。
 もうこの運動会は72回を数えるそうで、この辺では最大かつ有名な運動とのことであった。長年積み重ねてこられた経験から、運動会の進行は整然とスムーズに行われ、途切れることなく進められていった。
 息子が参加できる6歳から15歳の部は、5,6個あり、まず最初は50m走。慣れないせいかスタートの合図を聞き逃し、ほとんどビリから走り始め、なんとか中盤においついたと思ったら、足をとられ、2回転びそうになり、後ろから5,6番目になってしまった。あれだけ楽しみにして、はりきっていたからもう少し、速く走れるかと思っていた。僕も少しがっかりしてしまった。少々残念そうな顔をして参加賞の小さなビスケットをもらって帰ってきた。この運動会では、参加賞としてお菓子や日用品がたくさん出される。そのことは、周囲に住む人々にも有名で、毎年たくさんのブラジル人の子供が参加する。この辺は別荘が多く、そこで下働きや管理する家族がたくさん住んでいる。その子供たちは、普段この辺で駆け回り、日焼けし、見るからに敏捷である。一方、息子は毎日狭いアパートの中での暮らしである。さらに、ブラジル人たちは、めったに買ってもらえないお菓子などの賞品獲得のために燃えに燃えている。どう見ても、肉体的にも精神的にも息子彼には勝ち目はなかった。
 少し気落ちしている息子に「残念だったね、スタートの合図は注意してないとダメだよ」と軽くアドバイスをした。
 そして、次は飴くい競争。途中におかれたメリケン粉の中に隠された飴を探し出してゴールに走しる競技である。今度は出遅れることもなく走ったが彼は、一番左端からスターgした。飴が置かれているのは、右端である。何故できるだけ右端から走らないのか! 気転の利かない彼に、あきれてしまった。結局、またビリから数えて数番目。口の周りを真っ白にして「粉がおいしくない」とぶつぶついいながら帰ってきた。本当は「お前はバカか、何故右端から走らない」といいたかったが、繊細でプライドが高い彼は、僕がそんなことをいうと落ち込むことが分かっていたから何も言わないで見ていた。
 そして3回目、魚釣り競争。スタートもよく紙で作った魚を釣り上げる場所まで3位ほどで着いたが、釣竿を取るのに他の子供にもまれてしまった。やっと手にしたと思ったら、すでに釣り場所には子供たちが一杯で入ることもできない。後ろでうろうろしながら、待っているのである。思わず顔を覆いたくなった。「なんてトロイ奴なんだ! 何故押しのけて入っていかない」見ている僕がはがゆくなった。一人っ子でのほほんと育ってきたせいか、ほとんど競争をしたことがない。人を押しのけてまで、入れないのだ。そしてほとんどビリ。
「息子さんより、お父さんが、イライラしていましたね」と誘って頂いた方に言われてしまった。「でも、息子さんは、品があるからいいですよ」と慰めてくれてが、僕としては納得がいかない。
 後で考えて見ると、僕自身競争が嫌いだし、人を蹴落としても自分が進んで行こう何なんてしたくもないから、僕が彼の立場だったら僕も人を押しのけてまでは入らなかったかもしれない。そう思うと、僕は自分にない部分を彼に求めようとしているのかもしれない 、ということに気づいた。亡くなった父は僕のすることに対して、小言をいうことはあったが、まともに就職をしなかったことも、ブラジルに来ることも、僕の好きなようにやらせてくれた。そんな父に感謝している。ただ、ブラジルで、たいしたこともせずに生きている僕に随分がっかりしていたようだが・・・。僕も、息子には過度の期待をせずに、彼の持っている良い部分を延ばしてやろう。もし、それが「やさしさ」だったらそれを失わないように見守ってあげようと思う。

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後ろの方で覗き込んでいるのが息子。そのときは、「あ~あ、情けない」と思ったが、後で考えると、僕も小さいときはこんな感じだったかもしれない。


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