6・4 息子と映画 (2008/06/05)
「どう、元気、今サンパウロに来ているんだけど・・・・」 低いトーンの、深みのある声が携帯から流れでて僕の耳骨を震わした。弓場農場の勝重さん( http://www.100nen.com.br/ja/qq/000017/20030411000098.cfm )だ。 ちょうど昼飯の用意をしようと思っていたときだった。 「安くておいしい中華料理屋を見つけたので、昼飯を一緒に食べませんか」 「いいわよ、じゃあ1時ごろね」 勝重さんは、サンパウロにでてくる度に電話をくれる。僕より随分と年上の方であるが、彼女のみずみずしい感性に僕はいつも大きな刺激を受ける。歌、踊り、絵、オブジェ、どれも時間を越え広がり続ける彼女の感性から生まれ出る。彼女の感性に触れるたびに僕の萎みかけた感性は息を吹き返し、やる気を起こさせてくれる。そんなわけでいつも彼女に会うのを楽しみにしている。用意をして、さあ、でかけようというときに電話がなった。 「着いたよ」息子からだった。 もし、宿題がなかったら、昨日か今日、映画に連れていくという約束をしていたのだ。昨日は電話もかけてこないし、掛けると宿題があるという返事だったので、もう今日もいかないだろうと勝手に思っていた。 「今日は今から人に会うから、もし早く帰ったら電話を掛けるから」というと「わかった」とちょっと気落ちした声が返ってきた。 今日の勝重さんは何故か、いまいち、元気がなかった。話がのってくると時折いつものエネルギー一杯の輝くような笑顔をみせたが、ふとしたときに表情が翳った。疲れているのかもしれない。それでも、話はすっかり弾み、結局3時間も話し込んでしまい帰ったのは4時半を過ぎていた。 家に電話を掛けると、誰も出なかった。映画の時間を調べるともうそろそろ限界である。今日はダメだな、と思っていると電話があった。 「私に電話した。今日は、わざわざ私が迎えに行って(普段はスクールバスで帰ってくるので、帰りは遅くなる)早く帰ってきてたのよ。エドアルドは4時半までずっと貴方が帰ってくるのを待っていたのよ。でも、もう遅いし、試験が近いから勉強もしなけりゃならないから、今日はもうダメよ」 電話を切った2,3分後に息子から電話があった。 「今から行くから」どうやら母親を説き伏せたようだ。 時計を見ると5時50分、今の時間は,メトロは帰宅ラッシュで大混雑である。サイトで調べると、家の近くのショッピングセンターでお目当てのインディジョーンズがかかっていた。開演時間は6時半である。ギリギリ間に合いそうである。 なんとか時間前に着き、キップを購入し、急いでポップコーンとファンタオレンジを買ってやり、映写室に入ると客はガラガラであった。 見終わって「面白かった?」と聞くと面白かったと満足そうに息子がうなずいた。期待していたほどでもなかったので、僕はちょっとがっかりであったが息子が満足してくれていたので、無理をして来たかいが十分あった。
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