11月の日記・総集編 宮本常一ごっこ (2006/12/04)
11/1記 雨天決行
ブラジルにて 朝、家族を送っていく時に、雨。 久しぶりに、この町の排水能力を超える豪雨。 朝にこれは珍しい。 先回の旅で車に被ったリオ州の泥がだいぶ落ちるだろう。 夕方、子供の迎えの際に、また強烈な雨。 浸水多発地区に大雨のなか、突入。 マンホールの蓋は路上に転がり、マンホールの穴からはアマゾンのポロロッカのように泥水が逆流。 帰路は大渋滞で、もうヘロヘロ。 晩飯はピザの出前と決定。 こうして、サンパウロに洪水の夏は来ぬ。
11/2記 宮本常一ごっこ
ブラジルにて 今日は拙作「アマゾンの読経」でご紹介した「ブラジルのお盆」で休日。 座右の書である二宮書店の地図帳が見当たらない。 捨てられることはないだろうが、こちらの留守の間に思わぬところに置かれてしまうことしばしば。 陋アパートのあちこちを探していて、これまた意外なところで「宮本常一 旅する民俗学者」(河出書房新社)を発見。 日本で買ったことも忘れていた。 ついつい読み耽る。 傍線用のエンピツを置いて。 「僕はブラジルで、ビデオを使って宮本常一ごっこをやってるようなもんですよ」。 宮本の名を知る人にそんな言い方をすることがある。 これからも姿勢を正してこのセリフを言おう。
11/3記 飽和状態
ブラジルにて 夜、子供らと大衆シュラスカリアへ。 ユニークな家族なのか、ガルソン(ボーイ)がいかにもこちらを覚えているという感じでオーダーを取る。 「カイピリーニャ、砂糖抜きで、ピンガで…」と父親はオーダー。 子供たちのリフレ(清涼飲料)に遅れることしばし、届いたカイピには… レモン色の海底に、厚さ5ミリもの純白の層が。 客も混み合ってきた。 クレームをつけてこの人のよさそうなガルソンがとっちめられるのも気の毒。 ブラジル大衆相手のガルソンだ、こちらも最低3回は「砂糖抜き」としつこく繰り返すべきだった。 底を撹拌せずに口にしてみる。 飽和状態の砂糖溶液。 大航海時代以前のヨーロッパでの砂糖の価値に思いを馳せてみる。 それでもアマスギ。 今日はマインド的には2杯はいきたかったが、体の方は1杯も飲むなと告げている。 カイピ1杯、あとはトニックウオーターでいってみよう。 キニーネの苦味が肝臓に心地よい。 後で調べてみると… 日本ではキニーネが薬物・劇薬に指定されているため、日本のトニック・ウオーターにはキニーネが含まれていないと知る! そもそもトニック・ウオーターは、イギリス人が熱帯の植民地で暑気あたりやマラリア防止のために編み出した飲み物というではないか。 こりゃあブラジルで飲みだめしとかないと。 かつて熱帯植民地経営に乗り出した祖国・大日本帝国は、こうした耐久力のある文化を創造して、そして残しだだろうか。
11/4記 「鈍いから」
ブラジルにて 家族の連休・4日間の3日目。 宮本常一本発見の次のドジョウを探す。 まだ空にしていないスーツケースのなかを探る。 これこれ、森達也著「世界が完全に思考停止する前に」(角川文庫)。 (前略)僕の一連の作品の被写体には、確かにテレビ的にはタブーと見なされる素材が多い。実際によく質問を受ける。どうやって彼らに撮影を承諾させたのかと。答えは全部共通している。
「撮って良いですか?」と僕は訊ね、「撮って良いよ」と彼らは答えたのだ。
緻密な戦略や高邁な目的意識など僕には縁がない。能動性も低いし持続力もない。何よりも映像における技術やセンスは水準以下のディレクターだ。謙遜ではない。事実だ。でもならばなぜ、僕はこれらの作品を作ることができたのか?
鈍いからだ。
さらに読みたい方は原著を購入されたい。 税別514円。 優れた映像人は、書くものも面白く、ためになる。 しかも持ち味は千差万別。 好例がひとつ増えた。
11/5記 「燃やしつくす日々」から
ブラジルにて 朝日の記事を見た日本の知人から、オカムラサンは上野英信について連載などでも書いてないのでは、とご指摘。 そりゃあ思想も戦略もないメディアに大・上野英信の名前はふさわしくない。 しかも上野英信自身が書かなかったこと・書けなかったことについては、僕あたりはその意味を吟味して関係者に語るのみ。 日本の知人からいただいた全集を発掘する。 上野英信集3「燃やしつくす日々」(径書房)から。 欲は言わない。ほんの少しでよい、楽しいことも書ける世の中にならないものだろうか。 (「あとがき」より) 1985年、亡くなる2年前の筆である。 この頃、僕は、あなたは、何をしていただろう? 同じ巻の、鎌田慧さんの「解説」から。 (前略)彼のペンは記録を志すものの生き方をも照しだしているのである。
11/6記 先生と私
ブラジルにて 日中の予定を調整して、橋本梧郎先生を訪問。 お見舞いと言ったほうがいいか。 先生との今後の計画について大まかな打ち合わせ。 93歳、いろいろとお体の疾患も出てくるものだ。 もしここで先生に逝かれたら、取材を口実に先生の資料類をかっぱらって横流しをはかったNHKの悪人などを喜ばせるばかり。 NHKよ、この件は先生の他にも若い証人がいるぞ。 こんな悪事をごまかせると思ったら大間違いだ。
11/7記 宇江木さん逝く
ブラジルにて 在ブラジルの日本人作家・宇江木リカルドさんが亡くなった。 美代賢志さんのサイトで知る。 先週末、拙作「アマゾンの読経」改訂版のこちらの業者でのダビングがあがった。 改訂版制作にあたってご協力いただいた方々と宇江木さんにのみ謹呈する限定版だった。 手作りの製本による「花の碑」を14巻まで送っていただいていた。 ここのところ読むのが追いつかず、この5日にようやく11巻を読み終えたばかり。 コメントをビデオテープと一緒にカードで書いて送るか、あるいはメールにするかと思案していたら… 若輩の忌憚ないコメントにも心を開いてくださり、「オンライン版はすぐに訂正できますから」とさっそく修正されたことも。 まさしくブラジル日本移民のなかの異色、傑物である。 俗物どもによる毀誉褒貶をはるかに超えた存在だった。 もうご本人にいじっていただくことはかなわない。 しかしその巨大な仕事のある程度までにオンライン上でアクセスできる。 http://www.100nen.com.br/ja/ueki/ これも畏友・櫻田博さんの業績だ。 このなかでは僕は「白い炎」に特に心を打たれた。 宇江木さんのこと、宇江木さんとのことを想い続ける。
11/8記 寒さの夏
ブラジルにて 今日、思ったことをそのまま公表すると、さすがに少し差し障りがあるだろう。 こういう時は、当たり障りのない時候のことでも。 朝、妻子を車で送り出した時のサンパウロの街の気温は15度。 5日から夏時間が始まったんだが。 午後、外出するが、季節は夏なんだからと半袖で。 そのまま夜の催し物に行くが、参加者の半袖率は数パーセント。 寒い。 夜の街は14度。 イッパイ飲める友が恋しい。
11/9記 気分はネアンデルタール
ブラジルにて 9月のブラジルの新聞を整理していて、ロイターとAP配信の考古学記事が目に付く。 新発見により、ネアンデルタール人の生存時期が通説より数千年延びるという。 2万4千年前ぐらいまで、ヨーロッパのイベリア半島南部で生存していたとのこと。 ホモ・サピエンスとの共存時期も、それだけ延びたということになる。 ヒトのこのスケベな性(さが)を考慮すると、当然交雑もあったことだろう。 我が屋の冷蔵庫に、ブラジル名「アルカパハ」と呼ばれる食材が残っていた。 サーモンのマリネなどに使う、あの緑の実のようなやつ。 日本語でなんというのだろう。 グーグってみて、アルカパラ→ケッパーと呼ばれていると知る。 地中海沿岸原生の、フウチョウソウ科の低木の花のつぼみの塩漬けとのこと。 実だと思っていたが、花のつぼみとは。 しかもラスト・ネアンデルタールたちと地域も重なる。 このケッパー、よく吟味すると花の味わいがあるという記述も。 ちょぴっとかじって内部を見ると、ズバリ花の作り。 花とも知れぬつぼみのまま、むさぼり食べていたとは。 ネアンデルタールは仲間の埋葬にあたって大量の花を手向けていたことが知られている。 花のつぼみも食んでみただろうな。 先日、アーティチョークの出来損ないをいただいた時は熱帯林から地表に降りた猿人の気分だった。 アーティチョークも原生種の分布といい、かなりネアンデルタールチック。 ネアンデルタールとは、花をいただく文化か。
11/10記 裏街道から
ブラジルにて 日本で大宅壮一「世界の裏街道を行く・南北アメリカ篇」を入手してきた。 著者が1953年にブラジル各地の都市と日系人居住地を訪ねたリポートが書かれている。 痛快。 キャプションのサワリからだけでも察していただけるだろう。 「拙劣な日本紹介の数々」 「事大主義の日本人たち」 「出稼ぎの宗教団体」 「移民を食い物にした男」 等々。 相変わらず日本からブンカジンだかユーシキシャだかが来ては、皮相的でリップサービスそのもののブラジル日本移民賛歌をおとしていく。 語り手と聞き手のマスターベーションはその場で消えていく。 大宅壮一の鋭いペンは、半世紀以上立っても錆びるどころか輝きを増している。 確かな辛口。 僕は僕の味付けを守ろう、と力づけてもらう。
11/11記 発酵か腐敗か
ブラジルにて 今回、日本から担いできたマンガ本で最大の収穫は「もやしもん」(石川雅之著)。 菌が見えてしまうという農大生が主人公。 ためになるウンチクも多い。 「発酵と腐敗は 基本は同じ 微生物の活動による現象だ」 「平たく言えば それが人にとって 有用なら「発酵」 それ以外なら「腐敗」 と呼ぶ」(前提書1巻より) なるほど。 つまり個人や文化によってそれを発酵とするか腐敗とするか解釈が異なる、ということでもあるわけだ。 今日は我が家で妻と解釈の違いが。 こんな本にひかれる夫は前者に賭けてみるが… 体調以外の思わぬ被害が。 きつい教訓を得る。
11/12記 お見舞い
ブラジルにて 日本の友人の体調が、またよろしくないことを知る。 お見舞いのメールを送り、良質の姫マツタケとプロポリスを勧めておく。 妻に病名を言ってアドバイスを求める。 ホメオパシーで一人の患者に膨大な時間をかけているだけに、いい加減なことは言わない。 とりあえず、こんなことしかできない…
11/13記 いい日断食
ブラジルにて 今日も一日断食を決意。 「また?」と、そもそも断食を勧めた家人が言う。 体内に蓄積した有害物質の排除。 ここのところ、おかげさまで自分の本業の方は皆さんの尊い善意の連鎖でつつがなく細々とさせていただいている。 いっぽうここに書くにも値しない下劣なことがあるので、邪気払いも兼ねて、ということで。 日本では2泊3日ぐらいの断食コースがちょいとしたブームとか。 リゾート地で、温泉や岩盤浴も好きなだけオッケー。 ズワイガニ・海鮮鍋食べ放題・ドリンク飲み放題、というのはもちろん断食だからウソ。 リゾートに行って飲み食いできなくなってしまわないためにも、おうちで断食。
11/14記 チャチャチャ
ブラジルにて 台所の戸棚に、未開封の緑茶がいくつかある。 いずれも日本でいただいて、担いできたもの。 戸棚を整理してみると、あるわ、あるわ。 さらに冷蔵庫と冷凍庫にもある。 妻の勧めもあり、またサンパウロにいる時は自宅作業も多いので、液体はけっこういただく方だ。 それでもその他、紅茶やマテ茶、中国茶、和漢洋のハーブティーにコーヒー、カプチーノにココア等々とあるので、緑茶ばかりとはいかない。 けっきょく緑茶がたまる一方。 緑茶の意外な活用法をチェックしてみた。 ほうじ茶にする。 これは以前からやっている。 茶がゆや調味料に。 これもやってみたが、微々たる消費量で、続かない。 緑茶を家庭で紅茶に変換するというような錬金術はないものか。 冷蔵庫の消臭剤に。 これはさすがにモッタイナイ気が。 さらに再利用はできないものか。 消臭剤に用いた茶葉を、招かれざる客にサーブする、なんてのは?
11/15記 問合せ
ブラジルにて 在ブラジルの日本国代表機関のことで、はてなと疑問に思うことが。 さっそくご紹介しようか、と。 先方に回答を要求してからに、と考え直す。 いずれまた。
11/16記 観音閉じ
ブラジルにて リンク先の「住めばブラジル」用に書いた原稿、1度はボツということになったが、ひと月置いてアップされることになった。 http://www.univer.net/1_nanbei/0611.html まあボツになるような内容かどうかも含めてご一読を。 ちょうど3年間続いた連載は、これでハッピーエンド。 観音の話でおしまいだから、観音閉じ。 最初の先方からの契約は、連載期間は半年6回、最長でも1年12回とする、とあった。 それが3年も続いたのはひとえに皆さんのクリック数の多さ、そしてそれをきちんとつかんだ編集事務所の担当女性の功績といえる。 彼女はおそらく他にたくさんの仕事を抱えているにもかかわらず、誠意と熱意を示してくれた。 誠意というのは、多分に自分自身の問題だと思う。 それを人に言うことは下品だし、偽善になる。 ましてや人に押し付けるとなると、はもはや悪意同様だ。 最近、そんな日本のテレビ屋どもに迷惑をこうむっているので、ここで自戒するとしよう。
11/17記 小泉さんを訪ねて
ブラジルにて ちょっとここのところ気になっていた。 昨日、電話をして、今日の午後、小泉照男さんのお宅を訪問することにした。 電話は時折かけるのだが、先方も出歩かなくなり、しばらくお会いしていない。 古くからの岡村作品ウオッチャーには懐かしい名前だろう。 岡村の移民モノの嚆矢である「すばらしい世界旅行」1988年放送の「シネマこそわが人生 活弁ブラジルを行く」「旅芝居こそ我が人生 ビバ!ブラジル移民」の2本。 さらに1994年の「フリーゾーン2000」の「お涙ちょうだい! ブラジル移民のひとり芝居」。 数ある岡村作品のなかで3本、主役を張っている人は少ない。 この9月、日本のプチ上映会でこの3本を上映した。 酒類も手伝ってか参加した女性の一人が「あたし、小泉さんを日本に呼ぶ!」と豪語していた。 アルコールと共にその思いも抜けたようだが、それぐらいの気にさせるものを持った人である。 小泉さんとは移民80年の年からだから、18年のお付き合いだ。 我が家からはちょっとややこしいところにお住まいで、自分で車を運転していくのは初めて。 いくつかの難関を突破して。 ようやくサンパウロ市境の団地群へ。 居住者に確認しないと門番がゲートを開けてくれない。 ゲートで待機しているという小泉さんも見当たらず。 部屋は誰も応答しないとのこと。 そもそもこういうケースの時に車を待機させておくスペースがない。 門番と押し問答をしていると、 「そういえば昼過ぎ、救急車で病院に運ばれていったな」。 心もとない門番に土産を託して引き下がる――― 心配。
11/18記 豊橋経由で
ブラジルにて 小泉照男さんのことが心配。 お宅に電話をしてみるが、誰も出ない。 同じ団地内に住んでいるはずの長女の電話番号はわからない。 日本の愛知にいる三女の電話番号を聞いていたのを思い出し、探し出す。 思い切ってかけてみる。 「パパイが入院したって言うの!?聞いてないわよ!」 どうやら最悪の事態はなさそうだ。 彼女はもう日本に7年とのこと。 長女のお宅は電話に出ず、また心配になるが、次女と話すことができた。 「パパイは腰が痛くて病院に行ったのよ。家に帰ったけど、起き上がれないのよ」 まあ安心する。 三女は名古屋の近くかと思っていたら、豊橋とのこと。 地図で見ると、名古屋より浜松に近い。 来年、浜松で上映会ができたら声をかけてみるか。
11/19記 ドキュメンタリーの生まれるとき
ブラジルにて 友人とのメールのやり取りで。 じゃあ、一緒にドキュメンタリー、作っちゃいましょうか? いたく乗っていただけたようだ。 これを思いついて、相手が乗ってくれた段階で、もう何か大きなものができた感じ。 あとは、なるように。 デマカセくさい仮題をかましてみたが、これがなかなか。 いまはナイショ。 気分はシャーマニスティック。
11/20記 家族
ブラジルにて 家族について考える。 なんていうのは、どうみてもオカムラのガラじゃない。 実はさる方からの依頼で。 ブラジル奥地の、日系人の集いで日本語で講演をお願いしたい、とのこと。 しかも時間は1時間。 いかさまドキュメンタリー談義やブラジルよた話なら、1時間ぐらいかませるんだが。 家族となるとねえ。 しかも聞き手は愚生などよりはるかにまっとうに生きてこられたお年寄りたち。 うかつなことはいえない。 何とかお題をデマカセで自分のフィールドに引きずり込まなければ。 それでも1時間は長い。 ふだんの3分の1の速度でしゃべろうか。
11/21記 いちご酒書
ブラジルにて 「安かったから」。 妻がイチゴを4パックも買ってきた。 アベニーダに停まったトラックで、ひとつ1レアル(約55円)。 けっこう甘いが傷んでいるものもチラホラ。 夕食の支度をしながら。 今日は酒抜きのつもりでいた。 イチゴを早く消費しないと。 ウオッカの飲みかけがある。 バチーダ・デ・モランゴという手も。 モランゴはイチゴ。 バチーダは果物ベースのカクテル。 コンデンス・ミルクは、なしでいってみる。 砂糖の代わりにステビアにしてみるか。 たしかイチゴは南米起源では。 調べてみるとちょっとややこしいが、新大陸起源だ。 ステビアも南米起源、それにブラジル国産のウオッカだ。 むむ、悪くない。 おいしいうちが、花。
11/22記 レンズの守り神
ブラジルにて 牛乳瓶の底、といっても若い人たちにはリアリティがないかも。 ド近眼の厚いメガネを言う。 夜、お招きを受けてリベルダーデでごっつぁんになる。 手元不如意でメガネを飛ばしてしまった。 こんなことは何年ぶりか。 それが、割れていなかった! ありがたや。 数年前までメガネヒモを常用していたが、だいぶ汚れてしまったので外した。 その後、これといったヒモに出会わないため、ヒモなし生活に慣れてしまった。 新宿時代、かの御大にはたかれてメガネが飛んだことがある。 それ以来のヒモ使用だった― マスターに少し握ってもらう。 この店は、映像記録の豊臣靖大先輩がサンパウロ滞在中、深夜に立ち寄っていたとこのマスターから聞いていた。 今日、ブラジルに我あるのも、豊臣さんのおかげも多い。 生前、2度しかお会いしなかったが。 奇跡的に無傷の牛乳瓶の底をなぜつつ、「大アマゾン」シリーズの豊臣さんを想う。
11/23記 ミキシング
ブラジルにて 前世紀というより、もう前世の頃の知人。 まさしく意外な人と、これまた意外な人を介して、オンライン上で旧交を温めた。 その方のお招きにより、昨日よりmixiに入れてもらう。 まず自分の写真の容量が大きくてアップできず、いったんめげる。 今日いろいろやってみて、その問題はクリアー。 まだよく勝手はわからないけど。 そのうち飽きるだろう。 なんだかこの世界、キューブリックの遺作に出てくる仮面何とか会みたいだなあ。 人はいくつかの自分を演じてみたくなるのかしらね。 そういえば僕を招いてくれたのは、ズバリ役者さんだ。 こっちは、相変わらず素顔・本名・直球で。 この日記サイトと同じことを書いてもしょうがない。 写真のアップの仕方を覚えたので、ポストプロを始めた「あもーる あもれいら」情報を未発表写真と共に少しずつ書き込んでいくことにしてみよう。
11/24記 異色
ブラジルにて 今年、日本で岡村の上映会に参加したという人からメールをいただいた。 いま、サンパウロに来ていると言う。 名前と文面からではどんな人か思い出せない。 日曜にはリオに行くとのこと。 今日は日中、急な撮影が入ってしまった。 我が家近くのメトロの駅まで来ていただけるなら近くでカフェでも、ということに。 彼は上映の後、岡村と少し話したという。 キーワードで思い出した。 その後、上映の主催者に岡村宛転送メールを頼んだという。 残念ながらそれは未着だった。 まあメールごときが届かなくても、つながる人とは、つながる。 岡村と正反対の、おとなしい人。 限りある時間のなか、男二人が黙してカフェをすすっていてもシャレにならない。 少しは彼の興味を引くかもしれないような話をいろいろかましてみる。 なかなか動じた気配なし。 さらにかましつづける。 意外な言葉で、彼のなかに電流が流れた感じ。 ツボがわかれば、そこを押しまくるのみ。 それにしても、実にユニークな関心からブラジルに入った人だ。 橋本梧郎先生風に言えば「これは知らんかった」。 ご承知のように、とんでもないのが日本からやってくる。 例えば、こんなのとか。 http://www.hoshinot.jp/okamura/tamago1.html 今日の彼氏は、なかなかかも。
11/25記 コミュニティ誕生
ブラジルにて mixi効果で、自分で写真を加工してアップするのを覚えた。 で、さっそく本サイトのトップの写真も変えてみました。 最近、トップをすっぽかして即「2006年の日記」にアクセスしている人が多いみたいで。 トップレスもいいけど、たまには如何? mixiについていろいろ考えることがあるが、なにせ進行が早い。 本日、さっそく有志の方が岡村作品をめぐるコミュニティを作ってくださった。 草創期のダイナミズムが面白い。 それにしてもこのmixi、うんざりてんこ盛りの迷惑メールの入ってくるアウトルックエクスプレスや、迷惑メールが素通りで肝心メールの落ちることもあるホットメールより、なんともさわやか。 ユースホステルの使用について、みたいな注意書きがウザいが、慣れちゃえばね。
11/26記 岡村講
ブラジルにて mixiの方で有志に立ち上げていただいた岡村作品ウオッチャーのコミュニティを「岡村講」と命名することに。 この言葉は言霊師・星野智幸さんが最近の岡村作品の自主上映会のムーブメントを称して、くださったもの。 ついついサービスして、今まで発表していないエピソードを二つほど講内でさっそく披露してしまった。 とりあえず昨年のNHK事件のような、悪意のある連中にのぞかれていないようなので、こりゃあ弾むわな。 さあこっちの日記とどう使い分けていくか。
11/27記 自然淘汰
ブラジルにて 日本でHotmailを使用している皆さん、27日月曜の夜、何時間かつながらなかったのでは? 現在、サマータイムで日本と11時間の時差のある当地。 午前中、Hotmail不通でメール作業ができず。 ところが先週から「恥ずかしながら」始めたミクシィは問題なく機能するので、ミクシィ加盟の方にはそのなかのメッセージ機能を使って連絡をしておく。 まったくちょくちょくHotmailはこれがある。 しかも小生、ロハではなく些少なりともカネを出しているHotmail plus使用なのだが。 かたやミクシィはタダ。 アウトルックなぞ、大量のくそメール受信のためにつながっているような状態。 NHKのハレンチ事件以来、不特定多数からの匿名の悪意満ち満ち誹謗中傷メールはちょうだいするし。 まあミクシィというツールはいろいろ考えさせてくれるよ。
11/28記 mixi砂漠
ブラジルにて この本チャン公式日記、mixi岡村淳の日記、mixi岡村講の書き込みと、どれが山手線で京浜東北で埼京線だったかホームで混乱。 お客様にはご迷惑をおかけしました。 ま、今日がピークでしょ。 日本の仲間をmixiに誘ってみる。 するとすでに登録している、とmixiネームをメールで伝えてくれた。 アルファベット4文字の、簡単な英単語。 それで検索してみると… 300件ばかりヒット。 ままよ、としらみつぶしに各ページにアクセス。 だんだん背筋が寒くなってくる。 ほとんど顔写真もなく、デタラメでまかせの短いプロフィールがあるだけ。 mixi人口570万人と聞いたが。 おそらく誰かに紹介されて加盟してそのままってとこか。 そのほかヤリタイ系、ボッタクリ系と思しきものもあり、うかつにクリックできない。 実際の人口はどんなもんだろ。
11/29記 「紙女」
ブラジルにて 畏友・星野智幸さんが手ずから送ってくれた最新刊「われら猫の子」(講談社)が到着。 まずそのカバーに仰天。 星野さん始めての短編集。 旅の前に、最初の一編「紙女」だけ読むことにする。 たまげる。
(前略)オタク文化やネット文化でも、誰もが成りすます。けれど私がそこに感じるのは、誰も本気で何にも成ろうとしない、というより、成りたいものがない、何に成りたいかわからないという現象だ。本気で何かに成ろうと努力したことのない人間には、何かに成り代わるのは不可能なのだという不幸の意識は体感できない。万策尽き、もはやなす術のない不幸の意識を持ったことのない人間には、他人の不幸への想像力は働かない。(後略)
そして、ド肝を抜く物語が始まるのだが… ラテン的前衛な設定でありながら、和漢の古典の味わいと奥行きがある、とでもいおうか。 これが小説だぜ、という迫力がある。 星野さんは時間軸的には今そのものと近未来にある人だが、その人となりは、「任侠」とか「正義」とかちょっと文字にすると本人もこちらも恥ずかしくなるようなクラシックな美徳を修められている。 いやはやとんでもない人とご縁をいただいたものだ。 あなかしこ。
11/30記 「緑の野帳」より
ブラジルにて ミクシィのコミュニティ「岡村講」のトピック、「岡村淳・緑の野帳」より。
「あもーる あもれいら」の仕上げに並行、ないしはその後に手がけようと思っている企画が4本ある。 そのうち、ひとつぐらい実現できればいいセンだろう。 いずれもカネの見通しはないが、「オカムラこそ」「オカムラしか」の世界っぽい。 うち3本のアイデアは今月(ブラジルはまだ11月)、湧き上がったもの。 昨日今日でぐんぐんと実現に近づいた話がある。 さっそく来週からクランク・インの予定。 さあ、にわか勉強の要あり。 旅先に厚くて重い本を持っていこう。
野帳は緑に決まってるわな、なんて言わないでね。 何年か前から、茶色の防水野帳があるしょ。 小生はやっぱし紙の方がいいな。
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