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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2007年8月号

2007年8月号 (2007/08/24) 俳句 (選者=栢野桂山)


木の葉髪は女の勲章移民妻
思ひ出を手繰り頬寄す時雨窓
【矢野恵美子】

評: 男と同様に畑に出て働きつつ、炊事洗濯をしつつ子育てをしてきた移民妻。その苦労の象徴とも言える白い木の葉髪は、正に移民妻の勲章ではないかと胸を張る女性。


母の日や支えて呉れる子も白髪
母植えし山茶花の門出る柩
【名越つぎ代】

評: 母の日を祝ってくれる長男は、長年大勢の家族を支えてくれた結果か、母の自分と同じように白い木の葉髪が目立ってきた。これは孝行の証しであると思う母の日の母親。前句の木の葉髪と並べてみると、同じ移民の句として胸を打つ。


すがりつく母の乳房にポンチョの子
マクンバの残せし跡の焚火かな
【岡村静子】

評: マクンバはアフリカ伝来の黒人の原始宗教儀礼の一つで、ローソクを灯し焚火をして、死者と対話できると信じたり、不仲の人を呪ったりする。その焚火の跡を街の辻で見かけたりする。焚火の句として珍しい。


時雨止み街騒窓にもどりゐし
冬耕の天地返しに蒸気立つ
【畠山てるえ】

評: 畑土を深耕して底の土壌を上に粗起しするのを天地返しと言い、昔から勤勉な百姓が行った農法である。昔は手鍬で行ったが、今はトラトールで深耕するので容易に作物の収量があがるようになった。


道の辺に咲いて灯らぬほたる草
居眠りを咎むるものもなき小春
【佐藤孝子】

評: ほたる草は露草とも月草とも呼ばれ、藍色の花を咲かせる。ほたる草という名があるのに、この花は何故ほたるのように灯らず明滅しないのは何故か?とちょっと訝ってみたところ。


煌々と灯り枯園人見えず
真白き尻並べて蕪積み上げて
【木村都由子】

評: 蕪には白赤紫色などあるが、誰もが「かぶら」と言えばすぐに真白きものが眼にうかぶ。朝市や野菜屋の店先などで積み上げている蕪が、みな同じ真白い尻を並べているのを見ると、古い俳人はこういう一句をものにしたくなる。


留守居せし夜の長さよ虎落笛
戦後五十年の吾等や移民の日
【黒木ふく】

歳時記にはさみし桜葉色あせず
夫卒寿吾八十の移民の日
【杉本鶴代】

三、四世のヨサコイソーラン移民の日
移民の日父母も先駆者黙祷す
【野村康】

寒波来て節々痛む老ひたる身
老人ホーム祭りコーラス合唱す
【三上治子】

望月の笠を被りて冬ぬくし
バイアの海冬日に光り弧を描き
【花土淳子】

枯園にきりりとスイナン紅きこと
膝まづき老婆口付け神の旗
【矢島みどり】

勿忘草帝通ひし野辺の径
日向ぼこ楽爪苦髪とはまこと
【香山和栄】

何か煮る匂ひ懐かし冬ぬくし
老ひて尚健啖ぶりやかぶら漬
【伊津野静】

その下に一草もなし冬大樹
待ち人は来ず蘭香る間を置いて
【伊津野朝民】

硯洗ふ伝統俳句守るべし
水葬の移民にまたたく十字星
【菅原岩山】

湯豆腐は眠りの薬酒副えて
栄光の蔭に悲話あり百年祭
【大岩和男】

この三日空蒼々と底冷ゆる
日当りの良き場へ移る懐手
【伊藤桂花】

汚れなき幼児の瞳冬帽子
着ぶくれて動作ますますにぶる老
【近岡忠子】

利かぬ掌を労はり呉るる日向ぼこ
切干のひなびて旨き母の味
【藤井梢】

誘われて旅を楽しむ冬日和
切干を煮たる日向の匂ひして
【矢萩秀子】

切干や一時の日射したのみとす
六月や焚火祭りの火の粉とぶ
【小野浮雲生】

見のこしのミカンが一つ枝先に
飛行場かすむ涙の夜の別れ
【玉置四十華】

茣蓙敷いて一樹の蔭に帰省の子
水郷のお鮨祭りに風の日々
【中川操】

パイネイラ返り咲きして試歩の道
枝の巣の玉子落ちそう青嵐
【林田てる女】

子や孫の千羽鶴折る終戦日
八十路越え呆けず生きよう日向ぼこ
【重松公子】

蜩や子等に日暮を急くごとく
婆ちゃんの手漬け沢庵美味いこと
【前橋光子】

居眠りの子等に苦笑す夜学の師
新婚の想い出秘めて古毛布
【上坊寺青雲】

冬将軍来たりて売れる店のもの
住み馴れし家のぬくもり冬陽射し
【彭鄭美智】

何処までも大牧みどり牛群れて
父と見し思い出の海夕千鳥
【井出香哉】

山茶花やまわり道してゆく処
麦の芽の風に遊べる萌黄かな
【佐藤美恵子】

鈴蘭燈黄色くルアのおでん店
耳飾りに男楽しや冬日和
【軽部孝子】

干し竿を夜具が埋めて冬日和
濃緑の冬菜を買わむ手頃の値
【杉本良江】

冬日和武者凧揚げて文化祭
夫好む一献つけんおでん鍋
【遠藤皖子】

晩学の句作に励む時雨るる夜
有機農水路整備し冬耕す
【高井節子】

土の香を袋に閉じて冬菜買う
譲られぬ話となりておでん冷え
【星野耕太】

移住祭入植の地を守り通す
幸うすき後姿や木の葉髪
【纐纈喜月】

出稼ぎをもどり農継ぎ冬耕す
時雨バス傘あることにほっとして
【吉崎貞子】

並木道行くかろやかに木の葉踏み
時雨の夜深閑として詩をつづる
【山田富子】

一人居の友の訃報を聞く時雨
夜寒の灯消して一人の楽を聞く
【原口貴美子】

残り蚊の頬にささやく夜更かな
水仙に真直き雨の日もすがら
【風間慧一郎】

客ある日なき日の渡舟柳散る
尾を引いて流星一つビルの谷
【中川千江子】

秋深む頼り頼られ老夫婦
補聴器の調子良好露の宿
【青木駿浪】

老ゆ母の肩抱く腕あたたかし
ジュニナ祭仮装の曾孫のシュツペッタ
【岡本朝子】

空港に法度の迷ひ灯風船
朽ちて行く板橋支へ蒲枯るる
瘤穴を小蟻噴き出る榾を焚く
手花火や従姉妹は姉妹よりも似て
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


弱りゆく老躯に鞭をうちながらなおし挑まん白寿へ向けて
【サンパウロ 岡本利一】

出稼ぎの息子(こ)よりのメール届きたりパイネーラ咲き空も明るし
【スザノ福栄会 青柳房治】

十二度の寒さにかじかみいる朝一際するどきベンチビーの声
【スザノ福栄会 原君子】

わが短歌を褒めたり貶したりする夫と趣味を共にし三十九年
【スザノ福栄会 青柳ます】

この苗を給いし人はいずこにやピタンガの花けむるがに咲く
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

テレビに写る横綱白鵬とミスユニバース共に優勝思わず拍手す
【スザノ福栄会 黒木ふく】

昨日に変わる身に沁む寒さ雨音さみし冬に入りゆく
【セントロ桜会 野村康】

世の流れ写して進む近代化郊外電車も年毎変わる
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

苦手なる留守の電話のポ語にはしどろもどろで不在を告げる
【セントロ桜会 上田幸音】

季節感うすき南国の都市(まち)暮し柿の葉の赤きに秋をしらさる
【セントロ桜会 鳥越歌子】

雲低く寒き日続きようやくに陽の射しくれば息ふかく吸う
【セントロ桜会 富樫苓子】

母の日の孫たちからの贈り物シューバデオーロ未だ鮮やか
【セントロ桜会 井本司都子】

降り止まぬ雨のひと日の夕暮れはわびしさの増す独り居なれば
【セントロ桜会 上岡寿美子】

早朝に若き女性とすれちがうタバコと香水、強烈な匂いす
【セントロ桜会 大志田良子】

とつぜんの義弟の訃報を涙して妹が電話にて知らせてきたり
【セントロ桜会 板谷幸子】

山脈は夜の帳に包まれて都会生活の華やぎ偲ぶ
喜々としてプールで泳ぐ孫ら見て我も泳げたら泳ぎたき日々
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:二首とも若干の添削あり。情景鮮明で佳作)

小雨降る暁の街頭サビア鳴く雨晴れゆくを知らせるごとく
静かなるこの夕暮にサビア鳴く母在りし日を想い出させる
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】
(評:地方ならではの作品で素材良好)

カタカナの文字多くして戸惑えリ時代の流れにとり残されて
休日の新聞配達の少年は働く笑顔のこして行けり
【中央老壮会(バストス在住) 信太千恵子】
(評:少年の働く笑顔、良いですね。さわやかです。)

枝移る小鳥の声も静まりて明日も晴るるらしながき夕映え
小鳥らの声もいつしかおさまりて森の静けさに心溶けゆく
【グァイーラ 金子三郎】
(評:一首目三句、二首目初句言葉を変えてみました。静かな詩になりました。)

育てたる九人の子供のそれぞれが他の子にはなき良さを持ちおり
そよ風にゆらゆら揺れる隣家の石榴は熟し人目を奪う
【ツッパン寿会 林ヨシエ】
(評:二首共若干の添削あり。子供の成長を見ると親は至福の至り。一首目は前回の分です。)

自然資源無限に使い温暖化便利さに慣れ無駄使いする
呆け防止下手な絵を画き時忘れ独り身なればわびしき食事す
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:素材は良好。但しリズムを整える事に留意しましょう。三十一文字を大切に。)

参院選尊き一票祖国にと在外投票の列に並びぬ
暦では冬というのに家外を行き交う人は上衣手に持ち
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:二首目添削しました。祖国を思っての在外投票感心致しました。)
アベニーダ夕陽を浴びて次々とバス乗降の人外套を着て
【サンパウロ玉芙蓉会 前田ミサオ】
(評:少し言葉を変えました。すんなりと詠まれ佳。)

五年振りに揺られて走る嬉しさは孫と遊びし想い出の海
背(せな)支え打ち寄す波に身を任せ強き息子の両手信じて
【ピエダーデ 中易照子】
(評:家族との海浜の休日、良い想い出になります。)

帽子に杖と身繕いして散歩せるに帰途に気付きし部屋ばき草履
【セントロ桜会 藤田あや子】

マイリポランの土地売りてより十四年いまだに浮かぶコッポデ・レイテの花
【セントロ桜会 井本司都子】

半年前意識不明の姉はいまリハビリに専念し徐々に回復
【セントロ桜会 富樫苓子】

百歳を生きて矍鑠民謡をうたわれし翁まれのことなり
【セントロ桜会 鳥越歌子】

亡き義姉(あね)に頂きし靴履きおれば義姉のありし日目に浮かぶ
【セントロ桜会 上田幸音】

寒き夜は電気毛布にくるまりて身体の芯まで暖めており
【セントロ桜会 上岡寿美子】


川柳


万歳の雄叫び移民の百年歳
手拍子も移民百年気が揃い
日の丸は移民の胸で百年歳
心眼を開けると尊い浮世風
燃える夢移民感謝の百年祭
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

一本橋後戻りせで前に行け
心正し書けど書体の曲る癖
国策で移り来しとは云いながら
一族の長老などに成り果てし
中越は又も地震にさいなまれ
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

愛嬌はいくらまいても減らぬもの
百周年苦労せし事口にせず
長寿者の増え行く世界幸多し
僧の説く事柄すべて掛値なし
み仏は安心立命説き給ふ
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

未だ生きて居るよと友の笑い顔
早く来い亡夫の呼ぶ声夢だった
知らぬ間に来て知らぬまに去る青い鳥
思い出を追いかけ生くもまた楽し
姥桜咲くも散らすも風次第
【セントロ桜会 矢野恵美子】

冬月に幸福貴方に届けよう
踊り撮る菩薩の顔の揃いたる
希望持ち心豊かに病なし
百周年移民魂見せどころ
大いなる記念碑欲しや百周年
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

花魁の入れ墨腕にせし女
姉妹で心なごます桜観て
書道には集中力が肝腎と
山吹きのやさしき色を散しける
山の香を放つ桜の中に居て
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

年寄りの冷水プールで往生す
張り切って浮れ旅あとご入院
米寿までもちそうもない歩けない
淑やかな方ドラム缶風呂の昔あり
その昔カミナリ族とはたれが知ろ
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】

好きな服着ても似合わぬ六等身
人待たず行き去るバスに腹を立て
汚職気にしては政治家つとまらず
戦いは続き平和にほど遠し
放屁して仏に詫びて独り住む
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

貧富の差などなく呆けは襲いくる
空港にシネマ写せとマルタ云い
代議士は給料上げてモラル下げ
人格を軽く見られし贈り物
【サンパウロ 森川玲子】





「心の色」

人を妬むとき
私の心は黒く波立つ

人が哀れに見えるとき
私の心は灰色の雨が降る

人が友に見えるとき
私の心は空色になごむ

人をいとしいと思うとき
私の心は赤く燃え立つ

いつか心の色が白くなったとき
私は人々にさよならを云おう
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】


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