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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2016年1月号

2016年1月号 (2016/01/12) 俳句 (選者=樋口玄海児)


五つ玉そろばん恋し文化の日
宿り蘭育ちて木肌ぬぐ大樹
ムラタめく肌もあらわにぬぐ大樹
ヘリ低空夏野に囚人探しとか
【猪野ミツエ】
(評:四句目。私のすぐ近くにブラジル一の獄舎があり、脱獄者が出た日は一日中ヘリコプターが獄舎の回りを探し、また林の上を飛んでいます。この句はそれをよく表しており、ブラジルらしい句だと思います。夏野の季がよく出ています。)

年惜しむ求めし本も読まぬまま
行く年や読まず仕舞ひの俳句集
バス停に良き蔭つくり百日紅
狸々花地蔵の顔を赤く染め
【森川玲子】
(評:一句、二句ともに年の暮れの句。誰でも好きな本なら町を歩いていたりすると欲しい本に気が付き買ってしまうが、そのうちに忘れてしまう。その本を見ながら求めた本を見ながら、その年の暮れが来て一年の早さが思い出される。)

夏野行く神父の裾は風孕み
椰子風も松籟も聴く墓参かな
文化の日教育テレビも充実し
門椰子は吉てふ夏野の家尋ね
【香山和榮】
(評:二句目。椰子のある野を風が気持ちよく吹いてくる中に松林もある。それに風が気持ちよく吹いている初夏に墓参した日の思い出。素直でよくできた句。ブラジルの墓参の日は十一月二日。)

もう少しゆっくり寝ててよ街サビア
旱牛干からびサボテン舐めており
アイスクリームマンガの切り実匙にのり
【清水もと子】

木藷とバナナあるブラジルは旨し国
卒寿爺少し高めの脚まくら
亡き畏友と高きに登る明け易し
【三原春風】

聖樹飾るポインセチアの赤映えて
蚋除けに草をいぶして草刈りす
年惜しむ若くして死し妹よ
【原口貴美子】

チラピヤを揚げて待ちおる子の夕餉
夫刻むパイナップルの香漂よひし
夏の雲遠くに行く子を見送りし
【村松ゆかり】

来年の花が楽しみ庭桜
刈り込みし芝生の青葉美しく
幼き日のボンボンダリヤなつかしき
【矢島みどり】

雨ありて彩鮮やかな七変化
水匂ふ風の匂いや夏のダム
夏霧のマンチケーラの岩浸みる
【青木駿浪】

血葉木の垣根に長し一山家
夏山にサビアチコチコ小鳥の名
アマゾンやピラニヤパクー魚の名
家どこに居てサビア声聞ゆ
接吻の花が一杯蜂群るる
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


吾子の奢五木ひろしの慈善ショー夫と共に連れられて行く
会場は老人多く満席で昔を思い胸あつくして
亡き父母に今日の日あらばと思いつつしばし昔の思いにひたる
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:ご夫婦でショーを子供さんの奢で堪能された様子、ブラジルの家庭の絆は強く、ありがたいことですね。)

大相撲観るほどおもしろくなり今では吾も相撲大ファン
早朝のアカシヤの散る散歩道白いくちなしその下に見る
【サンパウロ中央老壮会 武田倶仁子】
(評:本当に相撲はおもしろいですね。虜になります。)

ブラジルは火山津波はなけれども自然破壊の惨事を起こす
クリスマス近づくなれどブラジルの悪しき治安に心はいたむ
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:この国の治安が少しでも良くなりますように。)

今日の雨「紫陽花」のように変り来て降ったり止んだりせわしい一と日
雨上がりビルの向うは青空よニュースは流す南方水害
道ばたのタンポポ手折り十数本病夫の部屋に活けて満足
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:毎日の主婦の思いがよく歌われています。)

日光の東照宮は荘厳で徳川独裁伺い知れり
栃木県堤防決壊鬼怒川の温泉ホテルは岸壁にあり
夫婦して訪日の折鬼怒川の温泉ホテルに行ったことあり
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:思い出深い場所のこと、さぞ驚かれたことでしょう。)

海寄りのビルより沖を眺むれば豪華客船不夜城のごと
点々と無数の鈴舟灯をともし蛍のごとく帰り来る浜
一幅の画にも似ていし風の無き海おだやかに空に雲なき
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:海と船と浜の情景が手にとるように詠まれ美しいです。)

亡き夫が笑っているだろ天国で老いて歌詠むわが姿見て
県人会忘年会の食事後のたのしいビンゴに歓声あがる
せみが鳴きほたる飛び交う夕ぐれは吾れ住みし村アリアンサ恋う
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:三首ともよい歌ですね。亡きご主人も天国で笑っていることでしょう。)

暑い日は窓を吹きぬけさっと通る涼しい風を心待ちする
まだ産毛ぬけ切れてない鳥一羽親はどこかと捜しているかに
十二月ツリーを出して飾りつけ電球つければナタールらしく
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:毎月細かい観察をしていますね。よい歌になりました。)

年金にボーナス貰い安堵する二人幸せ外の国に老ゆ
棚掛けてニガウリ沢山実を付けた日々見守るや老の楽しみ
ニガウリは友達つなぎ手みやげに上げるも気楽貰うも気楽
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:ニガウリの歌いいですね。私も頂きたくなりました。)

雨上がり緑の丘をコンテナの赤青交じる長き貨車行く
暁を皓々と照る満月はトカンチンスの河面に動かず
石楠花のあふれきたる今年の樹給いし君に見せたく思う
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:気持ちの落ち着く良い詠みです。)

老い夫は愛犬かたえに坐らせて子に言うごとく話しかけおり
犬は老夫の言葉きき分けて顔を見上げて尻尾ふりふり
老い二人テレビを見つつ故里を語るもたのし共に旅せり
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:優しい気持ちがし、ほのぼのとします。)

悲しくさえなってくる吾のもの忘れ彼岸日の狐ばな染む
カラオケにあわせて吾も歌いゆく若き日のこと思い出しつつ
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:カラオケでおおいに若き日を歌って下さい。)

何ひとつまともに出来ぬ老いの身も師走ときけば心忙しも
惚けゆくきざしに追い打ちかけるごと気候異変に吾はとまどう
物さがし一日かけても見当たらず夜半の目覚めにふと思い出す
【スザノ福栄会 原君子】
(評:心に火を灯してお元気でお暮らし下さい。)

娘が近くに住みいて幸せ手のかかる夫のシャワーもまかせきりにし
短歌の師ボーロにファッカ入れている半世紀前の写真に見入る
シャワーしてもらい昼寝の夫のどか八十路越えたる幸せにおり
【スザノ福栄会 青柳ます】

調べものする娘にポ語をたずぬれば片手によこす伯語の辞典
しお砂糖摂るなと言われ長生きも楽じゃないぞ死にたくもなし
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:ユーモアがあり楽しいです。)

み仏に供えて三日デコポンを留学帰りの孫に与える
友がくれし大きなデコポン掌にのせて重量感をわれは楽しむ
キタンダにデコポン出ており値が高く見るだけにして買わずに帰る
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:デコポンの大きさ重さ値段の高さまでわかり、これまた楽しい歌です。)

世界ではテロ戦争、我が家では経済戦争どれも苦しい
年寄は乱暴のバスに命がけ油断けがせぬように
逢いたいナでも戻れない楽しかった子供の頃の友達たちに
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:独特の歌でおもしろいです。)

師走月御世話になりし皆様に今年も歳暮選びおりけり
来年で渡伯してより三十年やっと慣れたりこのブラジルに
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:慣れるまで時間がかかりますが愛しくなるのは早いですよ。)

オリンピック移民せし国に決まりしを忘れもしないあの喜ろこびを
キリスト像厳しき顔で見下ろせる世紀の祭典祈る成功
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


健康が自慢の友が又一人
盛装し心身共に芯が出来
洞察の深さ川柳味が出来
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:川柳をよく知ることは社会をよく知ることであり、人心を正しく洞察することである。私達が生きている世界の事物を目で見、耳で聴きそれぞれの知恵を言葉で表現する。だから新鮮そのもの。作品とともに若々しさが感じられる。)

年金を貰って感謝の国に住む
夢を見る人生明日へ続く道
年の瀬へ多忙かかえた人の波
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:不況と言われる中でも年末ともなるとそれなりの人の動きで街はごった返す。)

不景気も東洋祭りに影潜め
ばあちゃんの顔が綻ぶ孫の声
テロ多発海外旅行も命がけ
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:案外、あなたの座席の隣の人がテロリストかも知れない。同時多発テロにアラーの神も絶句しているかも――。)

今日も又熟連サロンの花が咲く
今年又持ちつ持たれつ暮れて行く
ドタキャンの伯国外交情ない
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:政治的、経済的な混乱で伯国の信用がランク下げされる中で、ジウマ大統領の突然の訪日中止はそれに一段と拍車をかけた。)

県連の忘年ツアー大繁盛
ブジオの浜BB像の乳光る
ブジオにて大海原の日の出見ゆ
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:大海原の日の出を見た作者の感動が伝わってくる。)

ダンス教室ジルバ踊るジジとババ
当たるまで金が続かぬ宝くじ
静かですみんなメールで話してる
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:世はIT時代。聞こえるのはキーの音だけ。パソコンに乏しい高齢者には淋しい世の中になりました。)

ピカドン恐怖七〇年経ってもよみがえる
どこにいても恐いテロの人殺し
【セントロ桜会 中山実】
(評:テロはどこにもいるとの自覚を持って要注意。)

解釈を変えてうそぶく平和主義
老いるとは淋しいものよ友が減る
無気力と丸くなったは大違い
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:前者は惰性?後者は悟りの違い。その差は大きい。)

季節感なしで味わう冬西瓜
子育ては鬼と仏の二面相
移民妻知識は仕舞い知恵で生き
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:おおかたの移民妻が辿った道でした。今は亡き私の母もその中の一人でした。)

大家族互いに育つ助け合い
聴いている振りして欠伸かみ殺し
つまづいたけれど転ばずほっとする
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:老人になると転び易い。転倒が原因で五体のいずれかを失調する人が多い。)

顔だけじゃ人の性格分からない
物言いも角さえ取れば丸くなる
思わない言葉が友を傷つける
【スザノ市 飛松信雄】
(評:言葉遣いには充分に心したいもの。)

親子四人今は老親二人だけ
まだ元気朝の日課に迷いなし
人不足空席目立つ川柳会
【オザスコ市 井上風車】
(評:会員の減少はいずこも同じ。だんだん淋しくなっていく。)

もてなして自慢の料理皿に盛る
手習いで作る愚作のゴミの山
出たくない会議は仮病で席を欠く
【オザスコ市 斉藤晃伯】

徳な人なる程どこか違ってる
骨折りのくたびれもうけでみな担ぐ
【オザスコ市 藤重昌子】

盛り付けで素材を活かしおもてなし
骨董品静かに眠る倉の中
【オザスコ市 太田孝江】

長生きの遺伝子残し去る人よ
そっくりな偽札つかみ出る吐息
光り射し渡ってみたい虹の橋
【サンパウロ市 市田イツ子】

◎「年頭吟」
移り来て八十五回の初日の出【博柳】
老齢は数えず新春迎える日【博柳】
二八回の亡母の申年めぐり来る【博】
今年こそ何度誓ったこの言葉【博】
世界平和に近づく年であって欲し【ふみ】
今年こそしっかり聞いて見て言おう【ふみ】
来る年の猿の写真に願いこめ【清子】
新年にあれこれ願い事多し【清子】
地平線朝日しずしず顔を出す【笑】
元日をカイピリニャで屠蘇きげん【笑】
新暦まだ見ぬ明日の夢を盛り【さだ子】
お猿さん知恵を貸してね支えてね【さだ子】


シルバー川柳 ㊤


老いるとはふえる薬と減る記憶
【黄昏迫子★(女性/愛知県/68歳/主婦)】
マイナンバー ナンマイダーと聴き違え
【沢登清一郎(男性/山梨県/67歳/自営業)】
徘徊もタスキかければパトロール
【橋本澄子(女性/大分県/59歳/会社員)】
年賀状出さずにいたら死亡説
【角森玲子(女性/島根県/47歳/自営業)】
長生きをほめる世間に子は疲れ
【裏山子だぬき連合★(女性/愛媛県/63歳/子ども英会話教室講師)】
上向いて歩こう今では下見よう
【らくちゃん★(男性/埼玉県/69歳/自営業)】
想い出が身辺整理の邪魔をする
【はなみづき★(女性/神奈川県/92歳/無職)】
壁ドンでズボンの履き換えやっとでき
【伊藤敏晴(男性/福井県/69歳/無職)】
老人会みんな名医に早変り
【井上栄二(男性/千葉県/82歳/無職)】
三度目は聞こえたふりの半笑い
【広瀬昌晴(男性/大阪府/69歳/無職)】

★はペンネーム
第十五回入選作品 (社)全国有料老人ホーム協会ホームページより


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