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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2016年8月号

2016年8月号 (2016/08/19) 俳句 (選者=樋口玄海児)


飼うものも飼われるものも寒かりし
満開の梅にあまたの蜂集う
大根里芋の白のひとりの夕飼かな
戸を開ける毎に梅の香運ぶ風
甘み増すみかんに暖炉なつかしき
【寺田雪恵】
(評:一句目ブラジルの冬をよく現している句だと思います。今年は冬の厳しさがひどいようですね。飼い猫、飼い犬ブラジルに馴れたる生き物は寒さを嫌がっていることでしょう。二句目これもブラジル的であると思います。日本で冬の蜂が梅の花に来るとは思いません。作者は早や五十年ぐらいブラジルに生活された方でしょう。なるべくブラジルの句を作りましょう。)

気立て良く飾らぬ娘お茶の花
三寒のクリームスープの滑らかに
移民史に父と仰がれ瓢骨忌
酒愛し移民を愛せし瓢骨忌
縦書きの文化消えゆく移民祭
【鈴木文子】
(評:お茶の花の季題をよく捉えている。お茶の花は日の当たらない花。その上、冬の空に白色である。多く咲かないようだ。二句目、クリームのスープ、まだ食べた事がないが、上品な味のようで、私のような田舎者には合わないでしょう。)

モコトスープ当地の味よ煮凝れる
モコトスープ冷めて煮凝又旨き
治安調べバイアに行くと冬休み
町寒波歩けばさほどでもなくて
【畠山てるえ】
(評:寒い時にアツアツのモコトを食べたらやめられない。まして私はピンガと飲んだらあきない食べ物である。どうやって作るのでしょうか? 牛のアキレス腱だそうだが、うまいものである。)

祭壇に珈琲も供え移民祭
移民祭尺八の音も嫋々と
移民船パナマ運河を恙なく
蔓サンジョン行商も兼ねホ句の旅
【香山和栄】

伯人も楽しみに待つ移住祭
牧枯るる子等の乳母牛も売られゆく
茶の花壇見学においでと言ふ誘い
【猪野ミツエ】

参道の落葉ごっそり誰が掃く
黍団子買ふ列長し日本祭
もう一人来れば始まる寒の句座
寒の見舞持参のブドウ酒空けて行き
【田中保子】

サンパウロ冬の訪れ早かりし
幼な孫寒さ知らずに駆けまわり
焚火祭ケントンの香に誘われて
子供等はピポカのふくろ手に冬休み
寒去りてブラジル桜咲き満ちて
【矢島みどり】

渡り鳥声サントスは夜明け前
移民の日卒寿の自分史祝われて
冬の海高波赤道をたたき打つ
卒寿書く出版宴冬温し
【清水もと子】

百姓の句にドラマが多し花コーヒ
蘇鉄の実食べる鳥来る庭のあり
マンゴウの花咲く国に移民住む
移住地に残る師の句や移民の句
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


ラジオ体操一万人大会
一年に一度各クラブ集合し今年はおよそ八百余人
広大なチエテ競技場整備され日曜の朝九時十六度
天気良しカンポは緑あざやかに白のユニホーム朝陽に輝く
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:年を重ねて体操大会にも参加され、短歌も作られ、立派ですね。大会の様子がよく分かります。)

冬日和ホームの友を訪ねれば皆着ぶくれて日向ぼこして
孫等寄りスキヤキ会や寒の夜夫ありし日が懐かしかりき
寒き夜を忘れるような冬日和久しき日本へ便りしたたむ
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:寒い夜が続きますがお体を大切にお暮し下さいませ。)

愛知県桜見物岩倉にさくら満開見事なもので
愛知岐阜三重県堺皆一ツ大花園で驚くばかり
三県で作った花園木曽川の河口にあり広大なもの
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:お元気で遠い日本に旅され、広大な花園に驚かれたこと、色々な所があるのですね。)

寒い日はいくら洋服来てもだめ芋虫のようにふくれてしまう
二年目に咲いた小さな桃色の鉢にサーラが明るくなった
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:今年は寒波が早く大変ですね。楽しい歌です。)

八十歳を目前に
末っ子の波乱無き人生恙なく八十路の階段すぐ目前に
八十になれば現役去るつもりあまりに早きその時期到来
八十になれば辞表ださねばと職場の窓際のこる日思う
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:八十歳まで現役でお仕事をされ、ご立派ですね。お誕生日おめでとうございます。)

短日や何なすもなく着ぶくれて老の一と日はアッと言う間に
冬空に夕暮れ迫る裏通り遊ぶ子もいず街燈点る
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:三十一文字がしっかりしていて二首目の夕暮れの情景がよく描写されています。)

与那覇先生の送別会
ご家族の美しい歌残し帰国想い出うれし与那覇先生
ジュニナ祭晴れた夜空で焚火して婆は芋焼き孫らは花火
ジュニナ祭親族だんらん持寄りで最後はビンゴで大さわぎの夜
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:ジュニナ祭の焼芋おいしいでしょうね。ビンゴもいいですね。)

久しぶり本格的な冬が来て道の桜に足止まりたり
桜の木いつも通るこの道にピンクの花見て今さら気付く
【サンパウロ中央老 尾身千枝子】
(評:桜の花はどこで見ても祖国の花ですね。気づいた時は嬉しかったことでしょう。)

足摺の灯台建てしは兄なりと誇りいし人も逝きて久しき
六十年守りつづけし村の寺閉じる法要に粛然とおり
声を出す手段であれば平然と息を盗めとご詠歌の師は
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:六十年守りつづけた村の寺の様子が伝わって来ます。)
スザノ福栄会 杉本鶴代
昨年の水の不足を教訓に今年は井戸掘るアパートの庭
足弱り二人でかかるフィジオテラピア若くて優しい日系女性
忙しい時もなくなり吾ら二人今の静かな暮らしが不思議
【】
(評:忙しいのがいいのか静かなのがいいのか考えてしまいますね。人生でしょうか。)

週三日あずかる曾孫の来ない日は部屋のおもちゃも静かに休む
先生に従きゆく園児らはしゃぎつつ列を乱さず行儀よく行く
もたもたとしている老いを後にして月日は過ぎる早一年を
【スザノ福栄会 原君子】
(評:幼児と比べ月日は早々と過ぎ驚いている様子がよく分かります。)

余生の見納めなりと妻とわれ杖をたよりに古刹をめぐる
リハビリの為に小さき鶴を折る卒寿のわれの楽しみごとに
大好きなカレー作りて孫を待つ心弾むもいつまでのこと
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:おいしいカレーでしょうね。お孫さんも幸せですね。)

鰯焼く八十路の夫とふたり分秋となりたる夕餉の卓に
手をのばし吾にだっこをねだりたる曾孫を抱くイペー咲く庭
お金より二人元気でおられるが何より幸せ八十路に思う
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:本当にその通りと思います。)

車輌止めのカラコンおきて住宅街週に三たびのフェイラ賑わう
手巻寿司はやればパーティー盛り上がる好みの具材卓をいろどる
母の日の一両日に近づけばゴボーの値段いつもの三倍
【サンパウロ 野村康】
(評:近くの朝市〔フェイラ〕の様子がよく分かって楽しいです。)

塀越えて赤きアロエの咲ける見ゆ六月昼日冬日ぬくとし
煩わしき家族のきずなを友は断ち独りぐらしとなり若返る
旧き駅こわして建てしスザノ市の近代的な朝の雑踏
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:赤いアロエと冬ぬくしがよく効いてお上手です。)

郷土祭冬晴れの中ゾロゾロと仰いだ空にこいのぼりあり
餅つけば数多の人が集い寄り日本の伝統見せて満足
出来立ての餅をまるめて粉まみれ一同そろって励みし祭
【スザノ福栄会 藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


父の日に集うてくれる子に感謝
締め切りが迫り句作の灯が揺らぐ
追従の心明るい世が開け
譲歩する事で浮世の勝ちいくさ
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:「負けるが勝ち」と言われる所以ですね。)

「満腹」の言葉が嬉しいおさんどん
迫り来る五輪に不安がつきまとう
いつの間にか一人暮らしの友が増え
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:一人暮らしの友を浮かべながら思い遣る作者。痛感させられた一句でした。)

大揺れのEU離脱難破船
日本祭りどっさり買い込む食いしん坊
年金を握りいそいそ日本祭
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:兼ねてから楽しみにしていた日本祭。存分に食べて買い込んでいそいそとした動作が見えるようです。)

趣味の友逝って淋しくなる集い
外っ国に住めど日本の諸事憂う
過ぎし日の恋を熱唱カラオケで
【なつメロ倶楽部 坂口清子】
(評:なつメロに青春時代を浮かべながら感情をこめて――。)

早起きは年金暮らし相撲観る
七月はわが古里の名古屋場所
おもてなし日本文化の極みなり
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:日本独特の奥床しいおもてなし、大事にしたいですね。)

日本祭り人、人、人のにぎわしさ
女三人よればほんとに姦しい
【セントロ桜会 中山実】
(評:全く文字通りといったところですね。)

一人っ子親の苦労を信じない
仏言う苦は楽の種まだ芽みぬ
天災が生と死の線引いていく
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:死の線から脱し切れなかった多くの被災者のご冥福を祈りましょう。)

苦労した人ほど強くて優しくて
言い勝って老いを見せたくない背中
苦労するプライドと言う同居人
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:心の中について回るプライドが負担となる事もある。プライドを遠ざける事で心身共に軽くなるものです。)

苦労して築いた城で過ごす幸
気苦労は払いのけてもついてくる
苦労話に花を咲かせる老い仲間
【サンパウロ 渡辺文子】
(評:花を咲かせる苦労話に生き甲斐があるのです。)

悲しみと安堵わが子の難病死
小言じゃない躾だよと言い聞かせ
間違いもあって人生おもしろい
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:人生を達観された作者。流石です。)

川柳誌読んで昼寝忘れてた
年とれば競う心もうすれ勝ち
政治家は金が魅力で立候補
【サントス伯寿会 大矢のぶ子】
(評:政治家の汚職が絶えないのもその証です。)

吾が容姿(かお)他人の容姿も気にしない
読書する日々が楽しみ我が余生
母さんの小言今も生きている
【サンパウロ 彭鄭美智】
(評:事あるごとに母さんの言った小言が思い出される。)

支払ってほっと郵箱次の付け
追従に慣れた驕りの肩そびえ
悪趣味とそしりながらも眼は覗き
【マウアー市 斉藤白愛】
(評:良くない事と思いながらつい覗いて見たくなるもの。)

夏披露緩和していく通り雨
犬の耳遠い音も聞き分ける
人生路曲がりくねりが生き甲斐と
【オザスコ市 井上風車】

咲く花に種蒔く季節教えられ
人生の甘辛知っても進むボケ
薬づけ一日薬にしばられる
【オザスコ市 斉藤晃伯】

暦見て種袋出して雨を待つ
こぼれ種朝顔きれいに咲いて見せ
不況風年金頼りにつつましく
【オザスコ市 林久美】

いつか来る君も人なり吾も人
地球儀を回して教える親の国
望郷の心を癒す蕗の味
【オザスコ市 おちば光子】

親しい仲恩も礼儀も忘れがち
物事を頼む言葉に心こめ
辛いことやってみてこそ味が出る
【スザノ市 飛松信雄】

◎席題「膝枕」(笑出題)
夫婦愛天下泰平膝枕【博】
夢うつつやってみたいな膝枕【博】
膝枕されて悦ぶ色男【清子】
なつかしい温かい母の膝枕【清子】
膝枕男本音をポロと出し【ふみ】
膝枕させた昔が懐かしい【ふみ】
膝枕許してくれる熱い仲【笑】
膝枕させてゆっくり耳掃除【笑】


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