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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2021年の日記  (最終更新日 : 2022/01/02)
12月の日記 総集編 ウルトラJ チャンネル岡村淳 開局

12月の日記 総集編 ウルトラJ チャンネル岡村淳 開局 (2021/12/05) 12月1日(水)の記 タマラ
ブラジルにて


今日も。
来たる土曜のオンライン上映会へのモチヴェーションを高めるために。
イビラプエラ公園内のアフロブラジル美術館まで歩く。

「狂乱の大地」展。
知り合いの写真みたいな世界だなと思って、目についた組写真のキャプションを見る。
なんと、彼の写真だった。

このミュージアムだけで、ざっと見ただけでヘロヘロになる。
同じ公園内で開かれているサンパウロビエンナーレがまもなく閉催…
思い切って、ハシゴ。
こちらは三層にわたって、各フロアとも相当な展示量。
へろへろへろへろ。

帰りも…
歩くか。
ひとつの狙いは、最近こりだした自然発酵パンの購入。
帰路に発掘した店が3軒はある。

最後に行って、カフェから炭酸水までふるまってもらった店を目指すが…
進路を間違えてしまった。
足はふらふらふら。
これからの帰路の至近の店にしよう。

…いろいろなのがあって迷う。
今日は、タマラというフルーツらしきものが入っているのにする。
帰宅後、調べるとナツメヤシだった。
明日の朝食が楽しみ。


12月2日(木)の記 マリゲーラ
ブラジルにて


カルロス・マリゲーラ。
その名前を知ったのは、学生時代だったろうか。
彼の『都市ゲリラ教程』のガリ版刷りのものを、新宿のそっち系の書店で見たような記憶がある。
僕がフルネームを覚えた最初のブラジル人かもしれない。

その彼の伝記映画『マリゲーラ』を見に行く。
ミニシアターだが、パンデミック以降、サンパウロで外で映画を見るのは初めて。
日本でも公開された『バクラウ』と同様、グローボフィルムが製作した大作だ。
この映画を12月4日のオンラインイベントの直前にもかかわらず見ることにしたのは、イベントのテーマである富山妙子さんと重なるものがあるかもしれない、という思いもあってである。

マリゲーラは西暦1911年、ブラジルのサルヴァドール生まれ。
富山さんより10歳、年上だ。
サンパウロで警官隊にハチの巣にされたのは1969年。
富山さんがラテンアメリカの旅、アジア各地の旅を経て韓国に向かう直前だ。

ブラジルの軍政とゲリラの時代。
息苦しい物語を商業映画としてつくりあげているのがすごい。
1960年代のブラジル各地を設定にしていて、その再現された光景だけでも面白い。
サンパウロのシーンもかなり占めるが、日系人らしいのが出てこないのも一興。
…船戸与一さんの『山猫の夏』でたしかマリゲーラについて言及されていたな。

むむ、わが家には相当量の船戸さんの文庫本があるが、肝心な『山猫の夏』がない!
これはまず単行本を買い、のちに文庫本も買って、さらにマンガ化されたのも見つけて買っていたのだが。

いっぽう1974年にブラジルを訪れた上野英信は、マリゲーラや都市ゲリラについていっさい書いていないのではないか。
関心がなかったか、行き届かなかったか、あるいはあえて書かなかったのか。


12月3日(金)の記 この期におよんで
ブラジルにて


まったく、この期におよんで…
どこまで内部事情を披露していいものか…
明日に迫ったオンラインイベントの主催者は、公私ともに超多忙だとは承知しているつもりだ。
その方のまさしく土壇場、ギリになってからの集中力、そして本番での発信力の見事さは、目を見張るほど。

しかしそれにつきあわされて、こっちもギリになってから翻弄されるのはかなわない。
こちらはイベントでのトーク内容の練り練りに専心したいところ。
ところがそれどころではなくなってしまった。

これまで主催の研究所の主催者、先方のサポーター、および僕の三者(僕は在ブラジルで、仮にもゲストの作家。)で問題の多い上映方法について改善するよう努めてきた。
僕は複数の日本の友人知人にどうしたらよいものか教えを乞い、さらにこれを主催者サポーターに手配してもらってきた。
ところがこの期におよんで主催者が自分はまるで理解できていなかった、わかるように説明してほしいとの連絡。

僕はそもそもパンデミック以降もZoomなどのオンラインシステムを嫌って避けてきたのだが。
昨年末からそうもいっていられなくなり、ほそぼそとたしなんでいる程度。
先方はそれを授業で使い慣れているはずの大学教員。
ようやく農耕の真似事をし始めた旧石器時代人に、パソコンを教えてくれと頼むようなものだ。
こっちが教えてほしい。

さらにここにきて、こんなことを…
さすがにこれはここに書くのを控えよう。
イベント開始はこちら時間の明朝7時。
6時前にはセッティングを開始せねば。
少しは眠れる時間があるかな。

ふつうのゲストに帰りたい…


12月4日(土)の記 土曜日のマルタ
ブラジルにて


こちら時間で午前7時からオンラインイベント。
6時前から準備。
午前3時半まで、ほんらい主催者側がやるべきことで奔走。

2時間ほど横になる。
ここに来ての、主催者のちゃぶ台返し。
あくまでも僕はゲスト、作品提供者の立場だ。
しかし権限はホストに委ねたまま、ホストのすべき仕事をこの期におよんでもしなければならない。

さて、ゲストとしてのトークはカットするか「ひとことで」とホストにクギを刺されている。
どのひと言に絞り込むか…

今回のイベントでの拙作の上映方法に著しい問題があるので、それの応答に追われっぱなし。
本来は僕と対談するというはずの、もうひとりのゲストの発言も耳に入らない。

いっぽう、ホスト側からこちらの尊厳を損なう、聞き捨てならない発言がされたことはしっかりと聞いた。

この連続イベントは、もう一回が残されている。
ホスト側のこの発言の真意の確認とそれに応じた毅然とした態度、および新たに生じてしまった技術問題に対処したい。


12月5日(日)の記 日曜日のマルタ
ブラジルにて


今日はホントのマルタ役となった。

昨日の上映の後始末を始めつつ…

キリスト教的教養がほとんど伴わない日本の方々には「マルタ役」の意味が取れないことだろう。
このマルタは『新約聖書』に登場する女性。

ベタニアにあるマルタとマリアの家に、イエス・キリストが訪れた。
いろいろな人たちがその家に入り込み、イエスの話に聞き入っていた。
姉のマルタは客人たちのもてなしのために台所仕事に奔走し、イエスの話を聞く間もない。
妹のマリアは姉を手伝わず、イエスのそばで話に聞き入るばかり。

マルタは、イエスに「妹に少しは手伝うように言ってください」と愚痴をこぼす。
さてイエスはどう答えたか。
気になる方は聖書をあたってみてください。
ちなみにこれは今、原典に当たらず僕の覚えている形で書いてみたので、勘違いがあるかもしれない。

今日はわが家に知人が来ることになった。
日本食を好む非日系人。

路上市で脂ノリノリのアジを買ってきた。
昼は豚リブと、ついでにアジのアラも加えて出汁をとった醤油ラーメン、
夜は、ちらしずし。

誰にこぼすこともなく、自分もおいしくいただく。


12月6日(月)の記 月曜日のマルタ
ブラジルにて


この度、発生した事態に対処するため、がぜん世話しなくなってきた。

しかりこちらのファミリーの事情もある。
18日に予定しているオンライン上映の素材の再編集作業もある…

さてさて。
「総合的に判断して」今日は午後から連れ合いの実家に泊まりでうかがうことにする。
向こうで、マルタ役だ。

今日の夕餉は…
お、ご飯はもう電気釜に仕掛けてあった。
あとは、持参した自家製漬物類のほかに…
昨日今日とわが屋で天日干ししたアジの切り身。
オカラ。
日本ホウレンソウ(こっちではセイヨウホウレンソウが一般的)と油揚げの味噌汁…
おっと、大根をおろさないと。

何冊か本を持参したけど。
でれでれと今後の対策を練ることにする。

こういう時に限って、な、なんなんだよと思わせてくれるメールがしきりに。


12月7日(火)の記 火曜日の発掘
ブラジルにて


連れ合いの実家でのマルタ役の時は、お泊りをして翌日の昼食の準備と片付けまでするのが通常。
わが家に帰って、さっそくわが家の夕食の準備に入るというパターン。

今回は自分の方のするべき作業が猫の手も借りたいほど。
朝食の後片付けまでで失礼する。

この時間は道が混み合うこと…
とにかく午前中に帰宅。

まずは今月18日オンライン上映予定作品の件。
素材の確認。
改訂版作成のため、関係者の意向でこれまでカットしていた部分の確認。
さらに、もとの撮影映像を確認。

…いやはや忘れていた強烈なシーンもあった!
うー、どうしよう。

封印を解くか。
これはスゴいことになってきたかも。

さあお楽しみ!
僕自身が楽しみなんだから。


12月8日(水)の記 フジモリの碑銘
ブラジルにて


12月4 日のイベントで発生した問題について、いろいろ考えたうえでフェイスブックに部分的な略報をアップする決意をした。
さっそくの反響。
ダイレクトのメッセージも多い。

そもそも昨日、発掘した映像を含めての新たな作品編集も行なわなければならない。
おおわらわ。

いっぽうサンパウロでの主夫業もある。
昼のミッションを終えた後、家族に評判のいい自然発酵パンを買い出しに行く。
健脚向き徒歩圏にある3軒の店を発掘済み。
今日はいちばん遠く、いちばんの穴場へ。

帰路にある教会前の広場に差し掛かったところで、スマホにメッセージの着信音。
日本のたいせつなシンパからだった。
ちょうどいい、広場のベンチでいっぷくしよう。
まずは簡単な返信。

さて、そろそろ。
お、近くの木に金属板のプレートが打ち込まれている。
木の俗名と学名だろう。
…と思って近づくと、FUJIMORI と読める。
え?

IOSHITANE FUJIMORI
その後に生年月日と没年月日らしきもの。
その後に『ナショナルヒーロー」とあり。

その後の言葉は…
「立ったまま死んだとしても
 ひざまづいて生きることはしまい」。

強烈だ。

先日、街を歩いていて日系人の女性の名を冠した広場に行き当たった。
そこにその女性の業績や写真を掲げた大きなプレートもあった。
…読んでみても、ここにこうして掲げるべき理由がよくわからない。
どうやらその息子らしき人の発願・出費によるものとみた。

このフジモリ氏はどうだろう。
また座り直して、スマホで検索してみた。
イッパツでポルトガル語のウイキにあたった!
サンパウロ州内陸の出身の都市ゲリラだった。
日系二世らしい。
先週、伝記映画を見たばかりの日本でも知られるブラジル人のゲリラ、マリゲーラとならぶ著名なカルロス・ラマルカとともに活動した、とある。

西暦1970年、ヨシタネさん36歳。
この広場で当局に銃撃されて、まもなく絶命した。

この広場は目前のカトリック教会の名前をいただき、聖リタ教会広場と言うそうだ。
…教会で祈ろう。
今日は2度目だ。
入り口にいた物乞いのおじさんにもコインを喜捨。
「ありがとう、アミーゴ」と言われる。

帰りに教会の事務所に並べられた売りものらしき本を見る。
すすめられていたが、探しあぐねていた本があった!
事務所では現金ではお釣りがないという。
カード支払いにするが、支払機が充電していない。

「じゃあその間、お祈りしてますから」。
お祈りはそこそこ、クリスマス飾りのプレゼピオをながめる。
充電をしたが、今度は電波が不良。
「お釣りは教会に寄付しますよ」。

といっても、出した札は20レイアス札、邦貨にして約400円。

フジモリさん本人のこと。
そして家族の想いは、いかばかりだったろう。
アルゼンチンの軍政時代の日系の犠牲者については近年、日本でも紹介されているけど。
東京でその上映とトークの会に行って、思わぬ富山妙子さんの大作の原画実物に出会った。
その時の話者とは、メキシコで再会したっけ。
そのメキシコミッションの成果は、18日上映予定の拙作に盛り込んでいる。


12月9日(木)の記 ヘルツォークとイタコ
ブラジルにて


日中、富山妙子さんの映像と向かい続け。
『ラテンアメリカとの出会い』第一部の『種まく画家』ディレクターズカット版作成作業。
ラテンアメリカ研究者の高際裕哉さんが富山さんを訪ねていろいろとお話を聞く。
それ以上でもそれ以下でもないのだが、何度見直してもけっこう面白い。

そして今回、トンデモなシーンがラストに加わった。
たいへんな起爆力だと思う。

今回の岡村の「たたかい」をうながし支える言葉の数々を、あらためて富山さんからいただく。
そうか、おたがいヴィジュアルアーティストだ。
僕は記録映像作家と称しているが、ジャーナリストと言われるよりアーティストと呼ばれる方がうれしい。
僕は、僕の作品を紡いでいるのだ。

富山さんだけにとらわれない眼福の補給も必要だ。
今日は夕方から、珍品映画を見に行くことにした。

こんな映画があったのか!
あの、ヴェルナー・ヘルツォーク監督が全編日本ロケの作品をつくっていたとは。
邦題は『Family Romance,LLC』か。
西暦2019年の製作だが、どうやら日本では未公開!

撮影もヘルツォークだというのに驚いた。
彼の西暦2010年の『忘れられた夢の記憶』は現場に入れる人数の限られる洞窟が舞台だったので、ヘルツォーク自身の撮影だというのは納得がいったのだが。
それにこの日本ロケの作品では、彼は70代半ばである。

なんとも奇妙な作品だった。
顧客の希望に応じて、様々な人間の役を演じるという実在の仕事を、その本人が演じるのだ。
「ガイジン」好みの日本の描写が面白い。
恐山のイタコのシーンは絶妙だった。

こんな映画もありうるのか。
70代半ばでも異国で監督も撮影もできる。

これまでの呪縛からおさらば使用としている僕を大いに励ましてくれた。


12月10日(金)の記 富山妙子さんとの対話
ブラジルにて


自慢をするというのは僕の流儀ではない。
亡くなった画家の富山妙子さんの著書の題『解放の美学』にちなむなら、自分の美学にそぐわない。

しかし、いちフリーランスの「自分が自分であるため」の、自衛のための自負は欠かせない。
さもなくば「強い側」に魂まで奴隷化を強いられてしまうことになると今回、痛感した。

これは、まさしく自慢するつもりもない。
ただ、今この世で最も生前の富山妙子さんの言葉:肉声に向き合っているのは僕だろう。
晩年の富山さんのところに足しげく通い、その言葉を、まなざしを、ため息を記録した。
その映像を繰り返し繰り返し、日に何時間も向き合っているのだから当然である。

そのことで高みに立つつもりなどは毛頭ない。
いっそう自分が低みに、謙虚になって富山さんからいただいた「福音」を求める人たちにきちんとお届けしなければならない責任がある。

そして、孤高にたたかい続け、ご自身そのものを生きた富山さんに恥じない自分であるべきだと肝に銘じている。


12月11日(土)の記 手マスクの老女
ブラジルにて


夕方、近所の安売りスーパーへ。
入り口で。

僕の前にいた女性が女性スタッフに注意された。
「セニョーラ、マスクなしでは入れません。」

女性の背を見ていたのでわからなかった。
歳の頃70代ぐらい、白人系でメガネ着用の女性。
マスクは着用していなかった。

女性はがちゃがちゃとまくしたてる。
「こうしてればいいでしょ?」
と片手で口のところを覆った。

「ダメです」とスタッフが言ってもずかずかと店内に入り込んでいく。
右手のパン売り場の店員に「マスクはないの?」ともちろん口を覆わずに尋ねる。
「ありません。」
こんな安売りのスーパーでタダでマスクを配っていたら商売は成り立たないだろう。
レジ袋さえ有料のご時世である。
何人もの店のスタッフが「マスクなしでは入れません」と口をそろえる。

女性はもちろん口を覆わず、罵り言葉を発しながら店を出て行った。

僕の見る限り、ブラジルはこのようにしっかりしている。
店側もマスクなしの客の入店が当局に発覚したら破格の罰金を支払うことになるため、ということもあろう。

がんばれブラジル、いやさいっしょにがんばろう。

…そういえば、手ブラなんて言葉もあったな。


12月12日(日)の記 グアダルーペ
ブラジルにて


いやはや、いろいろな「偶然」に背中を押してもらって、なんとかやってる感じ。
今朝は近くのカトリック教会のミサにあずかって…

今日はグアダルーペの聖母の祝日。
グアダルーペの聖母はメキシコの守護聖母だが、ラテンアメリカの守護聖母でもあるというではないか!

西暦1531年。
日本の元号は享禄、なじみのない元号だ。
種子島へのポルトガル人漂着の12年前。
メキシコの先住民フアン・ディエゴに聖母マリアが出現したことにちなむ。

西暦2019年の僕のメキシコ訪問の際。
グアダルーペの大聖堂は訪ねたいところのひとつだった。
メキシコ大学院大学の招待による訪問だった。
期日を伸ばしたが、その間は富山妙子さん関連の取材に当てた。

テオティワカン遺跡訪問の帰りに、無理して寄ろうと考えていた。
しかし遺跡でひどく雨に濡れて、そもそも前日からひどい下痢をしていたので大事をとって見合わせた。

そして現在、18日にオンライン上映予定の『ラテンアメリカとの出会い』全2部ののディレクターズカット版の編集作業中。
これからまさに、後編の『メキシコの いのり』の作業に入ろうとしているところなのだ。

明日からの作業と考えていたが、今日、始めよう。


12月13日(月)の記 巾着ショルダーバッグか
ブラジルにて


今日は諸々の検査のために午後から病院へ。
メトロの駅から病院まで5分ぐらいか。
だが、いきなりすごいスコール到来。

天気予報は雨とあったが、こんな強烈なのが来るとは思っていなかった。
途中の店の軒先で雨宿りをしているうちに時間は経ち、じわじわと道路も冠水してくる。
少し余裕をもって出てきたのだが…

けっきょくひどい濡れネズミとなる。
今日、ぶら下げていた布製バッグをどう呼ぶのだろうか…

検索。
ううむ、巾着かも。
口の部分を紐で締めて、そのヒモを肩にかけるやつ。
ちょいとした外出の供にしているが、厳密にポルトガル語でも日本語でもなんと呼ぶのかがわからない…

どうやら、巾着ショルダーバッグ。
ウイキの画像を見ていくと…
おー、水着入れ、なつかしー。
これは「水泳道具を運ぶための巾着バッグ」と呼ぶのか。

さて、パンデミック以降、外出時の書籍の携帯を見合わせていた。
今日は病院での待ち時間が多そうだ。
探しあぐねていて、ようやく見つけた武谷三男先生の『安全性の考え方』(岩波新書)を持っていこう。

!!
見事に濡らしてしまった。
うー、透明袋のひとつも入れておくべきだった!
まさに、「安全性の考え方」をきちんとしないと。

上着もずぶ濡れ…
日本の病院なら、乾いたタオルぐらい出してくれそう。
こっちの病院スタッフや看護師は「あ、雨降ったんですか」ぐらいのところ。
僕はこうした事態でもなかなかカゼはひきにくいのだが、用心せんと。

病院時間、けっこうルーズでキチキチして失敗。
傘も持たずに失敗。
足もともずぶ濡れ。


12月14日(火)の記 病院アート
ブラジルにて


どうも「病院」という言葉に抵抗がある。
それは「病」に対する僕の偏見なのだろうか。

医療機関、医療施設というのもなんだかまどろっこしい。
ホテルという言葉は日本語化しているが、ホスピタルはなぜそうならなかったのだろう?

さて、二日にわたる病院通い。
こういうのはある程度、勝手がわかってきた時におさらばとなることがしばしば。
東大東文研の連続上映しかりか。

サンパウロ市内の日系の医療機関二つを最近、訪ねている。
センスのよさ、快適さは昨日今日と通っているアラブ系の創始者のこの病院の方が数段、上。
こっちでもニホンは自画自賛ばかり。

この病院は院内各所に配されているアートだけ見ていても面白い。
それぞれ、これ見よがしのナリキン趣味とは程遠く、モデストな展示。
他にアートに見とれているような人もいなく、楽チン。
それでもこうしたセンスのいいアートの存在で、空間にここちよい気品をもたらしていると思う。
この病院のアートのキュレーションはどうなっているのだろう?

あっちこっちの病院を訪ねたくなるではないか。


12月15日(水)の記 緑便のかおり
ブラジルにて


18日に迫った東大東文研岡村淳ファイナルオンライン上映会。
あらたなディレクターズカット版の素材づくり・送りの作業、そしてこれまでの由々しい問題の告発も終盤を迎えた。

夕方、外仕事から帰ってきた家人が門番のところに届いていた小包を持ってきた。
「緑便」だ! ヤッホー!!

日本で発酵、じゃなかった発行されているガリ版刷りミニコミ誌『あめつうしん』が船便で届いたのだ。
「中野本町五」の今年9月15日の消印。
発行人の田上正子さんのご厚意だ。

パンデミック以降、日本から岡村にものを送りたい、というお申し出を複数の方からいただいてきた。
しかし日本郵便はブラジル宛は船便しか受け付けない、とお伝えすると、田上さん以外の人はあきらめられたようだ。
もっとも先月、あらたにブラジルに船便でも送りたいと郵便局に行った人は「船便もダメ」と言われたという。

民間業者のAMAZONやDHLなどはスムースに国際間を動いているのに。
郵便というのは公共性と人道に基づき、戦時も機能する国際的な、そして人の権利だと思っていたのだが。
SNS類をたしなまないお年寄りや情報弱者の方々が気の毒でならない。

さて「緑便」。
田上さんがいつも緑色の紙でパッキングしてくれるので。
「りょくべん」という言葉に引っ掛けたのだが、「りょくべん」だとワードは変換しない…
検索しても上位に出てこず、僕の長年の勘違いかと思っていたが…
あった、りょくべん。

あちこち横道にそれてしまう。
肝心な船便の緑便は、もううれしくてすばらしくて、なにから開けようか読もうか、なにからご紹介しようかと迷うばかり。

いちばん気になっていた、日本の畏友の蔀(しとみ)さんが寄稿したという記事を探して読んでみた。
「ことばを彫る 益子町『朝霞館』で僕が出会ったことば 聞いたことば」。
ここのことは、なにかで読んで知っていたが、よくはわからなかった。
蔀さんの報告でより具体的にわかり、行ってみたくなる。

「緑便」はこれからじっくり楽しもう。
明日のタイトルは「オカミュラと呼んで」かな。


12月16日(木)の記 オカミュラくん
ブラジルにて


厳しい状況のなかで。
本題から少し離れた読書が、大きな気づきを与えてくれることに驚く。

昨日、落手した『緑便』の中身に…
差出人の田上さんはミニコミ通信『あめつうしん』の編集長。
船便で『あめつうしん』を送ってくれる際、欲しい本などあったらご遠慮なく、とおっしゃっていただいた。

ご厚意に甘えて…
カミュの『ペスト』の文庫版をお願いした。
こちらで入手できるポルトガル語版では読みこなすのが大変なので。

冒頭を読み始めてみる。
…なかなか、とっつきにくい…
それを乗り切ると、がぜん面白くなってきた。

お、この言葉には付箋も貼ろう。
「自分に関する限り不正と譲歩をこばむ決意をした人間の言葉である」
主人公の医師リウーの言葉。
東大闘争もこれを貫こう。

解説を先にチラ読みしてみて驚いた。
カミュは当時仏領だったアルジェリアで、1913年11月7日生まれ。
僕と誕生日が同じだ。
キュリー夫人もこの日。

画家の富山妙子さんは1921年11月6日生まれ。
連絡を取り合っている遺族の方がその翌日、僕と同じ誕生日だというのにも驚いた。

そう、異色にして気鋭、岡村の学兄、故・古城泰さんもカミュより40年後のこの日。


12月17日(金)の記 あらしのまえに
ブラジルにて


皆さんのお力を借りないと改善はむずかしいと判断して、公表に踏み切った東大東文研オンラインイベントを巡る諸問題。
いよいよ明日が最終回当日だ。

返り血を浴びるのは、覚悟のうえ。
こんなオカムラから、どんどん人は引いていくのももちろん覚悟。

ところが、どっこい。
この問題を知る人、まるで知らない人、両方の側からいくつもの今後のオファーが入ってきた!!

まず最初は、日本のさる大学関係からのオンライン上映のご希望。
日取りは来年1月になる予定。
…来年と言っても、もう来月ではないか。

リクエスト作品は、まだデータをオンライン化していない。
このことが、このどたばたのなかでも気がかりだった。
なにせ前世紀に制作した作品。

かつてお世話になった日本の技術サポーターにいくつかのデータをHDDに入れてもらい、たしかそれにあったはず。
僕が最初に手にしたHDDだ。

…チェックしよう。
うう、通電はするが読み込まない!!
このHDDを最後にいじったのは…
少なくともパンデミック前だろう、もう数年経過か!
うろたえながら「こんなときには」を調べる。

上映希望の人にも「進行状況」を伝え、デジタル化したこの作品を持っている可能性のある人たちにも問合せ。

いやはや…
手もとには、この作品のVHS…

さて、おかげさまでなんとかこちらの手元で「苦肉の策」にて乗り切れそうな見通しがついた。

さあ、明日のイベントのトーク内容等をねりねりしよう。
主催者がこちらの肝心な質問に答えてこないので、まことにやりにくい。


12月18日(土)の記 サイアクの上映イベント
ブラジルにて


関係者の尽力によって、再編集した拙作のオンライン上映イベントの上映そのもののクオリティはようやく最終回にして「ふつう」まで達するに至った。

しかしここまで作者の僕がばかにされ、おとしめられた上映会は前代未聞である。

終了後、多くの参加者から主催者への怒りと嫌悪の思いが続々と電送されてくる。

また書くのも気色悪い。
この日の問題をいくつか、別稿に書いてみたので興味のある方はご参照あれ。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000051/20211219016393.cfm?j=1


12月19日(日)の記 TERRA AUSTRALIS
ブラジルにて


昨日の岡村史上、サイアクの上映会問題であちこちとやりとり。
これまさしく自衛のための闘いを展開せねば。

そんななか午後から、以前より予定していたこっちでの生イベントへ向かう。
場所はサンパウロ市内のコミックショップ。

いたく衝撃を受けたコミック『TERRA AUSTRALIS』の作者・日系アルゼンチン人 AGUSTÍN GRAHAM NAKAMURA さんのトーク。
彼はパタゴニアに生まれ育ち、この作品の舞台もパタゴニアだ。
現地で起きた事件の調査にブエノスアイレスからやってきた男女の刑事が、とんでもない事件に巻き込まれていく。
このコミックをサイエンスフィクションとする評論家もあるが、まさしくその展開。
これはスゴかった。

アグスチンさんは現在はサンパウロを拠点に活動している。
本人と話す機会があった。
谷口ジローの作風に似ていると話すと、作品は知っているが自分では特に影響を感じない由。

僕がパタゴニアを老日本人移民植物学者と踏査して、それをまとめたドキュメンタリーを制作したと言うと、かなり興味を示してくれた。
…たしかまだDVDの在庫があったはず。
見つけたら謹呈しよう。

おー、パタゴニアと言えば、なんといってもブルース・チャトウイン。
チャトウインの影響も聞いてみたかったが、イベントが始まると、もう一人でいくつも質問を続けるブラジル人がいて。

老兵は、消え去るのみ。


12月20日(月)の記 師走の一時停車
ブラジルにて


「事件」から二日が経っても、いまだに僕のところに主催者に対する怒り、嫌悪を伝えるメッセージが続々。
ふつうにあのZoomイベントに参加していて、あるいは事情がまるでよくわからなくても、主催者が自ら禁じ手と反則を重ねて延々と続けた独演を見てしまった場合の、ふつうの反応のようだ。

「独談」か「毒弾」か。
一般市民にそれだけの影響をもたらす破壊力を、なにか錬金術でポジティブに活用できないものか。

しかしこれも先方が「良識的に」用いることを託されている権力の乱用、そしてそのあとにまた「信頼できる」岡村の話がまだあるのではという参加者の期待があるから、あれだけの人数が視聴したということに本人に気づく回路がなければ、注進する取り巻きもいないようだ。

岡村さんには悪いが耐えきれずに退室した、あの女の話の時は音をミュートにした、という報告も少なくない。

さて、これらの「善処」の合間に。

ファミリーの用件で運転。
うー、ブラジルの師走、普段以上に渋滞。

帰路、最近見つけたグラフィティ集中地区の向かいで車を止める。
このあたりはほどほどの車の通行はあっても、人通りはまばら。
思わぬところに路上生活者がまさしく潜んでいる。

路上生活者も穏やかそうな人もいれば、これはヤバイとこっちが感じる人もいる。
このあたりは、後者。

グラフィティのスナップ撮りには、中央分離帯を渡って、反対車線まで行かねばならない。
いかにもあたりを物色して歩いている若者ふたり。
車を停車した僕の方をしきりにうかがっている。
ヤバい。

お、散歩中らしい若い父親だろう男と幼児登場。
若者二人の間隙を縫って道を渡り、早撮り。
このあたりは視界のきかないカーブからいきなり車が現れるので、それもアブナい。

なんとか撮るけど…
https://www.instagram.com/p/CXt6p33Jsvo/
とりあえず無事でよかった。


12月21日(火)の記 A Midsummer Night's YouTube
ブラジルにて


ブラジルは今日が夏至。
…今日から日が短くなるのか。

朝から日系の医療機関に。
そのあと、取り寄せを頼んでおいた中心街のキリスト教専門書店へ。
この近くの角のカフェに入ってみたが、これがナイス。

…YouTubeに自前のチャンネルを開けてみようかと思いつく。
まずはどの自作をアップするか。

まさか、こんなことをこのオカムラが思いつくとは。
アップ候補作品について、関連者に連絡をとろう。

さあどうなるか。


12月22日(水)の記 一陽来復
ブラジルにて


ブラジルは、昨日が夏至。
祖国は今日が冬至か。

この作品の編集作業にふさわしい日だ。
https://www.youtube.com/watch?v=apYvmGSr2OU&t=7s
最後に、字幕を数枚、加える。

関連各位に確認いただいて、アップしよう。


12月23日(木)の記 ウルトラJ チャンネル岡村淳 開局
ブラジルにて


本人が、一番驚いている。
あの、人生最大の屈辱の東大東文研オンライン上映会から、まだ一週間もたっていない。

映像界オンライン業界で「旧石器時代人」といわれていたオカムラが…
YouTubeのチャンネルを開けるとは!!

https://www.youtube.com/channel/UCoi76qjBFhyhpPkndSdV3GQ

今日という日のことを調べて、驚いた。
東京タワー落成の日だった。
僕の生まれた年の出来事。

日本のテレビ界の巨人・牛山純一に仕え…
フリーとなってブラジルに移住…
NHKのドキュメンタリー番組の主役を張り、別件でNHKと全面闘争…
して、余生は東大と闘うとは。

午後、出かける前に
日本の仲間が、小説家の星野智幸さんが今回の事件についての声明を発表していると教えてくれた。

読む。
涙腺、決壊。
声をあげて泣く。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000051/20211224016400.cfm?j=1


12月24日(金)の記 はじめにプロレスありき
ブラジルにて


およそ半世紀前の僕は、プロレスファンだった。
久しいブランクのあとで…

これをYouTubeにアップした。
https://www.youtube.com/watch?v=hbPeprIHvMQ&t=46s

今宵、誕生前夜を祝うイエス・キリストは当時の庶民にわかりやすいたとえ話が得意だった。
当時の農作業と農作物、労働形態、通貨単位などなど…

尾籠な話で恐縮だが、今回の東大闘争の「一面」はプロレスにたとえるとわかりやすいなと思っている。

悪徳興行主が、地味な戦いを続けているがそれなりのファンの支援のあるレスラー・アントニオ岡村を招待した。
さてアントニオがリングに上がると、この興行主ほんにんが悪役で知られる対戦相手で、しかもレフェリーも兼ねていた!!
試合前から目に余る、言語道断人道無視のキタナイ反則のテンコ盛り!

アントニオの試合が見たいと集まった観客たちが、それを見てどう反応するかが興行主にはおわかりにならない。

サワリを想い出しても吐き気がする。

『国防プロレス大作戦』でお口直しを!


12月25日(土)の記 サマークリスマスの朝に
ブラジルにて


クリスマスの朝。
近くのカトリック教会の朝7時のミサに出向く。
クルマを走らせるが、街はがらがらもいいとこ。

広い聖堂内は、ゆったり気味で何より。
ミサが始まる。
…今度の「闘争」対策の言葉が、アイデアが湧いてくる。

けっこうこういうのは後で忘れてしまう。
メモ帳にキーワードを書き留める。

ぎゃ。
ちょうど一週間前は、あのわが人生最低最悪のオンライン上映会の開始時刻ではないか。
開始前から、すでに公表した問題以外にも…
まことに不審な対応、そして主催者側の不手際ばかりだったな。

さあ、あまり手の内は明かさないでおきましょう。
しつこさでは、定評をいただいている。
「お楽しみはこれからだ。」


12月26日(日)の記 聖家族の主日
ブラジルにて


早朝。
ビデオ素材のあるあたりのタヌキ掘りを始める。
目的の探しものは見当たらず…

気になる別の素材を取り出してみる。
ふーむ、7年前の撮影、編集か。

再生してみて驚いた。
とってもいいのだ。
これは、親しくしていた家族への贈り物のつもりで撮影して編集。
DVDに焼いて謹呈していた。

…今日はカトリックの「聖家族」の記念日だった。
聖家族。


12月27日(月)の記 シスター堂園を偲ぶ
ブラジルにて


今年は自分の人生で深くかかわった人を、何人もなくしてしまった。

画家の富山妙子さん。
日本映像記録センター時代の上司。
そして拙作『あもーるあもれいら』シリーズのシスターヴィンセンチア堂園。

…三人ともSNSをたしまれなかった。
パンデミック以降、日本とブラジルは航空郵便が中止されたまま。
富山さん、そして元上司とは何度か電話で話したが…

ブラジルから日本に戻ったシスター堂園の訃報は先月、日本のカトリック系のメディアで働く友人が教えてくれた。

今日は在サンパウロで、シスター堂園を知る友人夫妻のお宅で拙作『あもーるあもれいら 第一部・イニシエーション』をDVD試写。
西暦2005年に撮影した作品だ。

僕も驚いたが、友人夫妻もその画面の鮮明さに目を見張った。
青の、立つ世界。
生前のシスター堂園が、青は聖母マリアさまの色。
だからアモレイラの保育園は青を基調にしている、と教えてくれた。

自分は…
小柳ルミ子、さだまさしと同じ歳だとも教えてくれた。

若すぎる。
日本に戻ったシスターの無念さについて、共通の知人が教えてくれた。

シスター。
シスターが体をはって僕に伝えてくれた福音伝道を、僕も伝えます。


12月28日(火)の記 よみがえる予告篇
ブラジルにて


23日に開局して、すでに短編2作品を公開中のYouTube チャンネル岡村淳。
これに『岡村淳自主制作作品予告集』を加えたい。

これは西暦2010年7月に横浜のシネマ ジャック&ベテイで一週間にわたって開催された岡村淳作品特集上映にちなんで、僕が作成したもの。
https://www.hamakei.com/headline/5249/

「名刺代わり」に重宝なので、何枚もDVDに焼いて上映会の際に流したり、これはという方に謹呈するなどしてきた。
これを作成した編集機はオシャカになった。
miniDVテープにダビングしてマスターとしてきたが、ノイズがひどくなった。
今回もだましだまし再生をこころみるが、さらに劣化したようだ。

むむ。
そうだ、J&Bさんにまだ素材があるかもしれない。
連絡してさっそく返信をいただくが、すでに処分した由。
ムムム…
そうだ、フェイスブックで呼びかけて、件のDVDを所有している人がいたらデータ化して送ってもらおう…!

これまたさっそくリアクションあり。
データ化してもらうが、これが「あかん」…

在日本のビデオおたすけドクターにS.O.S。
彼女に仲介してもらうが、まだ「あきまへん」…
と、思わぬ人からデータ化して持っているとの吉報。

しかしこれはふたつにわかれていて、作業してみるが1-2フレームの欠損あり。
「東大東文研クオリティ」では認識もされない程度の問題。
だが作家にして職人としては、善処したい。

そうこうしているうちに、おたすけドクターの方で再トライしてもらったデータが「あけましておめでとうございます」!

冒頭にこの予告篇作成の経緯と手法の特徴を解説字幕で明かすことに。
仲間たちの協力と連携で、この難関も乗り切れたぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=ZTlpwILof0s&t=121s


12月29日(水)の記 排日の道
ブラジルにて


年内に、人間関係の整理。

これまでこちらの免疫と耐性により、耐えに耐えてきた病巣。
悪性の度数が測定値をはるかにオーバーした。
これは、すっぱりと除去。

疎遠になっていた仲間との旧交回復にも努める。
日本、そしてブラジルで。

先日、待ち合わせたものの勘違いで会えなかった友人と再トライ。
今度は僕が場所を勘違いしたが、なんとか会えた。

中心街の、目についたカフェに入ってみる。
これは、あたり。
つい話し込んで次の予定に遅れたのは、一昨日のこと。

レジに置いてあった店のチラシを持ち帰る。
帰宅後、どこに置いたかわからなくなっていたが、こんなところに。
眺めてみる。
店の地図もあり。

エッ!?
店の住所にギョッとする。
Rua Doutor Miguel Couto。

ミゲール・コート博士は、1930年に医師としての優生学の観点から日本人排斥を唱えた人物だ。
こうして、サンパウロの中心街の道の名前にもなっていたのか。
ブラジルへの日本人移民は、まさしく危機一髪で中止されるところだったことは、忘れまじ。

排日コーヒー。
苦いか、酸っぱいか。


12月30日(木)の記 年の瀬の圧
ブラジルにて


今年中に片付けておきたいことがいくつもある。
そんななか…

在サンパウロの友人が、みていても深刻な病のようだ。
それを家族に話すと、いい薬があるという。

この友人はネットで独自の治療を調べているようだ。
この薬のことを伝えると、欲しいとのこと。
いかにも具合が悪そうなので、彼の住まいの近くで待ち合わせすることに。

彼は薬を受け取ったが、その薬について日本語で調べると評判が悪いという。
ホメオパシーの日本での評判の悪さは、日本的病巣をよく現わしているかもしれない。

年末の東洋人街、とくに日本食材店のごった返しは、コロナどこ吹くカゼ、といったところ。
とにかく必須の餃子の皮だけは確保。

帰宅後、餃子の餡をつくりながら…

家人が、あの薬を渡してどうだった?と聞いてくる。
先方がよくは言っていなかったことを控えめに伝える。
すると、なにが問題なのかと僕に食ってかかってくる。

プチきれ。
よかれと思っての行動だったが、ばかばかしくなってきた。
今回の東大紛争も「被抑圧者の情け」につけこまれたといっていい。
お人よしも、それによって自分が不快な思いまでして続けることはないだろう。

大事な本業に差し障る。
どっと疲れが出て、餃子のあとは家族に任せて、寝る。


12月31日(金)の記 今年のうちに
ブラジルにて


2021年のうちに仕上げたいこと、いくつかあり。
昨晩は夕食準備までして疲れ切って床に就いた。

深夜に覚醒して、まずこれの執筆に着手。
ブラジル移民史からみる記録映像作家・岡村淳の画家・富山妙子シリーズ
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000051/20211231016413.cfm?j=1
これは2022年初頭にサプライズを書き足せるかもしれない。

もうひとつは短編『佐々木治夫神父の死者の日のミサ』のYouTubeアップ。
https://www.youtube.com/watch?v=3yyZWMLOeNk&t=75s
年末年始に死者の話かよ?
という向きもあろうが、岡村は確信犯である。





 


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