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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2022年の日記  (最終更新日 : 2023/01/01)
2月の日記 総集編 30年の停滞ないし逆行

2月の日記 総集編 30年の停滞ないし逆行 (2022/02/02) 本稿も昨年末にピークに達した東大問題の告発を含んでいます。
それがご不快の方はお読みにならないでください。
こうした警告はお互い煩わしいでしょうから、これを最後にします。


2月1日(火)の記 平安座島の旧正月
ブラジルにて


これまで撮影をしてそのままにしていて、気にかかっている映像というのは少なくない。
そのひとつが、沖縄の平安座(へんざ)島の旧正月に撮った映像だ。

何年前になるか…
6年前か。
沖縄のシンパが二日間にわたって那覇で僕の上映会を開いてくれることになった。
その際、311を契機に東京から沖縄に移住した友人がこの島の旧正月行事の見学に行くことになったのでご一緒しないかと誘ってくれた。
島といっても今では海中道路と呼ばれる長さ5.2キロメートルの道路で沖縄本島と結ばれている。
お誘いをお受けしてそれを彼女が現地に伝えると、僕のなりわいを知った先方がどうぞ撮影してください、場所も用意しますのでと言ってくれたとのこと。

よくわからないまま、せっかくなので撮影機材も準備して東京の実家から訪沖した。
旧暦元旦に行なわれる行事、ということしか事前にわからないまま友人の運転で渡島した。
神屋と呼ばれる小さな集会場のようなところに男衆が集まり、演奏と舞いがあった。

一般の参加者は少し離れた一段低い広場に立ったまま。
僕は建物のすぐ外から撮影。
終了後、ほとんどの人が島の会館での新年会に向かった。
神屋には霊能力者で南米ゆかりという女性が残って自分の体験を話し、10数人残った人たちがそれを拝聴。
これまたわけがわからないが、撮影はしておいた次第。

僕を誘ってくれた友人が数日前、パソコンで勝手に「平安座島」という文字が入力されてしまった、とSNSに書いていて、来たか!と思った次第。

あの時は…2016年2月8日。
この日が旧暦元旦だった。

今年は…
なんと2月1日が旧暦元旦ではないか。
お泊りから帰宅して、ブラジルの暦が旧暦元旦のうちにまとめることにする。
とりあえずYouTubeに限定公開。

『どうして僕はこんなところに』。
チャトウインの著書の邦訳タイトルをオマージュを込めてインポーズ。


2月2日(水)の記 嗚呼春節
ブラジルにて


ブラジルのコロナも数字が急上昇中。
昨日一日で死者数767人、新規感染者17万人以上。

…イベント参加や閉じて人の多い場所は控えねば。
今日は午後イチで東洋人街の歯科医へ。

3人で仕事をしている歯科技工士がコロナの影響らしくひとりでやっているとのことで、今日も新しい差し歯の完成挿入には至らず。

さて。
行きは東洋人街の中心のメトロのリベルダージ駅より一つ手前のサンジョアキン駅で下車。
ふだんなら帰りはリベルダージ駅まで歩いて、チャイニーズ系の食材店などで買い物をする。

今日はなぜかその気にならず、反転。
ブラジル生まれのコリアンの若い女性が経営するカフェで麦茶をいただいて帰る。
…思えば昨日が春節、旧正月。
東洋人街のチャイニーズが盛り上がったことだろう。
リベルダージ駅方面に行けば、その残滓が見れたかもしれない。

ま、先週28日のカトリックの「縁日」も見合わせた。
無難に行きましょう。


2月3日(木)の記 180度のくるい
ブラジルにて


ここのところ、ひたすら雨が続いた。
どうやら今日の午後は、もちそうだ。

買いものの用事をつくって、しばらく歩いていないあたりへ。
主眼は、グラフィティ。

お。
うむ。
スマホでスナップ撮り。
かなり遠回りになるが、もう少しくだってみるか…
スマホで万歩計は見ても、地図は見ないで。

イピランガ水系の谷をのぼりくだりして、まわりこんでみる。
おや、この小径は…?

これはたまげた、180度、方位感がくるってしまった。
たしかに道は曲がりくねっていたが、ここまでくるうか!
そのことがまた楽し。

久しぶりに寄ろうとしたカフェは複数の客で盛り上がっているようで、パス。
もうすこし戻って、通りに面してなんの覆いもない店にする。

さてインスタにどのグラフィティを上げようか。
マジックマッシュルーム系にしようと思っていたが、この顔にしよう。
https://www.instagram.com/p/CZhvumtP7We/

元旦以来、わが集合住宅の敷地内のウオーキングで徒歩数を稼いできたけど。
実際のフィールドは格別だな。


2月4日(金)の記 アンケートのアンケート
ブラジルにて


…で、「アンケート」って何語よ、もとは?
ふむ、フランス語か。
それぐらいわかるって?
じゃあ、スペってみてよ。

これ以上、いける人はそう多くはないだろう。
enquête。
日本語のウィキによると、歴史的には18世紀終わりのアメリカの人口センサスが嚆矢をなすらしい。
それなのに、なぜ日本には おフランス語が入ってきたのか?
ちょろちょろっとした検索では、そこまでわからない。

ちなみにポルトガル語では questionário。
「アンケート」をポ語風にハチオンしても混乱を招くだけかと。

僕はこんな風に思考をすすめていくのだが、この調子で日本のさる大学に依頼されたものを書きあげて、担当とやりあっているところ。
納得のいかないことは譲らず。

さて、先週土曜に実施した上智大学ポルトガル語科同窓会主催のオンライン上映会の「アンケート」。
返しをくれた人たちへの御礼のメールを今日でようやく送り終えた。

最近は個人情報とかで、アンケート記入者が誰だかわからないようにするのが日本の主流のようだ。
匿名にするかどうかは記入者に委ねる方が僕はいいと思う。
お上智の担当はこれを理解して応じてくれた。
これでこそ、フィードバックが可能というもの。

相手は、ウン十名。
今回はコピペなしで全部ひとつひとつ相手に合わせてしたためた。
ま、僕はこころをこめる作業に効率を求めないので。
とはいえ、そうラクではないけれども。

これがウン百人相手なら考え直すだろうけど。

先日、メッセンジャーで日本の知らないでもないドキュメンタリー映画監督からクラウドファウンディングのお願いが届いた。

…このブラジルの、今のオレにカネを出せって?
内容は、コピペそのものだ。
コピペもけっこうだが、相手に合わせて最初に相手の名前を入れるとか、最後にひと言、書き添えてもよさそうなもの。

ブラジルのコロナはどうですか、とか、東大の件、けしからんですね、とか。
まあ、相手は僕よりひとケタ以上は多い人を対象にしているんだろうけど。

ちなみにアンケートは英語では survey になるそうな。
あんた、それをサーベ?、とこれはポルトガル語の移民オヤジギャグ。


2月5日(土)の記 沖縄二部作
ブラジルにて


こちらの深夜に関係各位にOKをいただいた。
YouTubeに沖縄関連の2作目を限定公開する。
こちらが本命だ。
長年の課題を済ませた思い。

富山妙子さんという大義があったとはいえ…
ここ数年来にわたって無償どころか持ち出しの奉仕を続けたものの、マウントどりどころか非道の限りを尽くしてくれたT大教授を昨年末にカットして。
以降、すこぶる快調。

が、好事魔多し。
今度はフェイスブックで自分では日本のカトリックのサラブレッドのつもりらしいのが絡んできた。
こちらの素朴な質問には答えず、人のフンドシでマウントを取りたいのか常軌を逸した量を公開の場に書き込んでくる。
こちらが非難をするとご自分を十字架で処刑されたイエスに重ねてますます自己陶酔を書き込んでくる。

日本のキリスト教信者数は人口の1パーセントにも満たない。
だがハタ迷惑でしかない自称クリスチャンの存在は、自分の周囲から見てひとケタ以上、多い気がする。

あのT大教授も自称クリスチャンだ。
彼女は、ありもしない悪意に満ちた在日コリアンの発言を捏造して、しかもそれを岡村に責任をなすりつけて公の場で在日コリアン批判を展開された。
こんなことが、ゆるされていいのだろうか?
神の名で嘆きたくなる。

クリスチャンの名にふさわしい人たちにとってはさらに迷惑なことだろう。

さて今日の件名にちなむと…
これまで沖縄のカトリック教会数か所のミサにあずかっているが、いずれも異なった発見があったなあ。


2月6日(日)の記 日曜はシャッターチャンス
ブラジルにて


クルマで日曜朝のおつとめに行く際も、グラフィティを物色している。
お。
新作か、今まで見逃していたか、遠目にも悪くないシャッターに描かれたグラフィティを反対車線側に発見。

後で、ここまで歩いてくるか。
商店のシャッターに描かれたグラフィティを撮るにはほとんどの店が閉まっている日曜の日中が「シャッターチャンス」だ。

いったん家に戻って、路上市買い出しモードに切り替えて再外出。
件の物件は、メトロにしてひと駅南の距離。

あ。
これでいくか。
途中の脇道の別のシャッター画。
ひかりの加減も悪くない。
https://www.instagram.com/p/CZpSpwTO2mB/
JAPA はこちらで日系人に対する俗称。
蔑称のニュアンスを含むこともある。
BIKE はブラジルでは自転車だ。

ブラジルで自転車屋を営んだ日本人は少なくない。
放送された岡村作品で最多登場の故・溝部富雄さんしかり。

時折り日本語のメディアに登場する勝ち組テロ殺人犯も、釈放後は自転車屋をしていたと読んだ覚えがある。
環境活動家の故・原後雄太さんはアマゾン奥地で元大日本帝国戦車隊長の自転車屋さんに会ったと教えてくれた。
原後さんはその人の口真似まで披露したな。

原後さんはイスタンブールで逝ってしまった。


2月7日(月)の記 青い獅子を見たか
ブラジルにて


昨日、路上市でシシトウを買った、つもりだった。
が、そもそも原産地の大陸にいながらにして、シシトウとアオトウガラシの区別が僕にはついていなかった。

あるいは覚えては忘れ、か。
改めて検索すると、両方とも植物学的には同じナス科トウガラシ属。
辛いのがアオトウガラシ、辛くないのがシシトウ、ということになるようだ。

昨日買ったのは今晩、鉄板で焼いてみたが…
カライ!
口がまがる!!

ちなみに、今日は断食を一日延ばしにした。
よって、晩酌もいただく。

これは昨日、試飲済みだが…
自家製ブラッディメリーにこのシシトウかと思ったアオトウガラシのスライスを投入。
これがよろしい。

ブラディメリーにはおろしにんにくを入れるか、ウスターソースを入れるか、タバスコを落とすか胡椒を削るか、あるいはそれらのミックスにするか悩ましいところ。
いずれにしろアオトウガラシのスライスは青くさい辛みがマッチ。
色味もトマトの赤のなかに映えて、サクサクいける感じ。

とはいえ、これだけではそう多量には消費でけんな。
さあ考えよう。


2月8日(火)の記 30年の停滞ないし逆行
ブラジルにて


日本時間の1月29日のTBS『報道特集』でアマゾンの水銀汚染と先住民の問題が放送されたらしい。
畏友の印鑰(いんやく)智哉さんがフェイスブックで取り上げ、僕のかつての仕事にも言及してくれていた。
日本の知人友人、そして未知の人からもこの番組についての問い合わせをいただいた。

肝心な番組を見ないでとやかく論評できるような器用なことを僕はできない。
…それで押し切ろうと思ったが、さっそくこの番組をYouTubeにあげている人がいた。
もちろん、懸念をし続けている問題である。
YouTubeで見れるうちに見ておくか。

…イヤハヤこれは。
番組そのものに何重もの問題があるではないか。

主だったところでも、
1.コロナ問題の削除
ブラジルは世界第二のコロナウイルスによる死者数を出すコロナ大国だ。
特にアマゾンの先住民に関して現政権は対応が疎かで、被害拡散を歓迎しているような疑いすら感じてしまうほどだ。
ブラジル内外の識者から現政権の対応は「先住民の虐殺行為」と非難されている。
そのことに、少なくとも僕の見た版では触れられていない。
それどころか、取材当時はオミクロン感染爆発状態だったはずのニューヨーク支局の日本人記者がブラジルに渡って、現地で堂々とノーマスクで映像に登場している。
取材スタッフがコロナ侵入防止に万全の対策を取るべき先住民保護区に立ち入るにあたってどのようなケアをしたかの情報はまったくない。
2. 別の地域の映像の使用
この取材はアマゾン川の支流タパジョス川とその流域に保護区のあるムンドゥルクという先住民たちを脅かす水銀汚染を告発している。
水銀は金採集者たちが砂金を付着させるのに用いるのだ。
さて川に群がる砂金採掘船の映像が映し出されるが、これはタパジョス川ではなく、地図の直線距離でも300キロ以上は西に離れたマデイラ川という別のアマゾン川の支流のものである。
日本で言えば、水俣湾と広島湾ぐらいに離れた別の水系の映像がごちゃまぜなのだ。
これはこの問題に関心を持つ人が見ればわかるが、映像をごちゃまぜにしたことへのことわりは番組にはない。
3.先住民に特化
タパジョス川流域の人口からすれば、水銀汚染の被害をこうむる人たちの数は圧倒的に非先住民の一般ブラジル人たちの方が多いといえる。
この報道では被害者は先住民に特化している観がある。
4.水俣病とは
この報道陣は水俣病にたいしてどこまでの理解をもち、視聴者に訴えようとしているのかが疑問だ。
日本の水俣病は、工場がメチル水銀を排水として水俣湾にばらまいたことに起因する有機水銀中毒だ。
アマゾンで金採掘者が使用しているのは金属の水銀である。
金とのアマルガムを加熱して水銀を飛ばす際の水銀ガスによる無機水銀中毒と有機水銀中毒は別物である。
そもそもアマゾンの支流とはいえ膨大な水量のあるタパジョス川で水銀は蓄積するのか、自然環境のなかで水銀が有機するのかといった検討はまったくなされていない。
そもそも被害が生じるとしても先住民地区より下流域の「一般」ブラジル市民の方が深刻ではないだろうか。
番組は水銀汚染被害の実情より、アマゾン先住民というウリを狙ったと言ってもよさそうだ。
5.アマゾンのゴールドラッシュを調べれば
1980年代にまさに白熱化するアマゾンのゴールドラッシュがなぜ生じたかを丁寧に調べれば、日本企業が確信犯的に金採掘の機械化大型化に拍車をかけたことにたどり着く。
日本は水俣病の経験があるから現地に貢献を、どころかそれを知りながら他国でこうした環境犯罪を促進した責任があるのだ。

日本の企業もマスコミも、スゴ過ぎはしないか?

1980年代にこの問題を知ってしまった僕は、現地を繰り返して訪ねて調べ、日本のマスコミにも働きかけたが相手にもされなかった。
いくつかの紙メディアに書き、1992年からようやくCS放送の番組で3年にわたって現地のリポートを発表した。

それを目先の用事が済んだら関心のある人に発信するつもりでいた。
大局的に見て、一刻を争わないと判断している。

が、別のものを探していて日本の雑誌にこの問題を書いた適当な記事が見つかった。
これの画像をまずは今日、フェイスブックにアップする。
さっそくのリアクションが続く。
やれやれ。
続報は、後日に。


2月9日(水)の記 たいこもちのかなしみ
ブラジルにて


昨日から日本の畏友・新川哲弥さんの太鼓のワークショップを撮った映像をYouTubeにあげるべく作業中。

ちょうど6年前だ。
僕の訪日時、わが故郷目黒での流浪堂さん主催の上映会に合わせて新川さんに京都から「上京」してもらってのイベント。
せっかくなので撮影させてもらったのだが、撮影しながらでもなかなかによろしいワークショップと実感した。

こういうのにYouTubeは恰好かと思う。
長さは1時間と2分。
ちょびっと手を加える。

さて大半が太鼓のナマ演奏。
おもしろいのだが、繰り返しているうちになにかこちらの聴覚に異変か?

長時間の作業でもあり、音量調整がわけがわからなくなってきた。
イヤハヤ、何度も素材入力からやり直し。

これは今日中には終わらないな。


2月10日(木)の記 町内のティエラ・インコグニダ
ブラジルにて


「ティエラ・インコグニダ」(スペイン語で「未知の土地」:地図上の空白地帯)という言葉は、なき古城泰学兄に教わった。
古城さんはカンボジアとベトナムの国境地帯の「空白地帯」で未確認生物についての情報をつかんだとブラジルの僕に手紙で伝えてくれた。
古城さんは西暦2000年にナゾの死を遂げたため、その詳細はわからなくなった。

今日は午後から歩く。
めったに行かない、メトロにすると二駅南の公園あたりまで思い切って行って見ようかと思う。
途中にわが家の女子たちからは「歩いて通っちゃダメ」と言われているちょっとヤバい橋がある。

平日の日中だし、それにビビったわけではないが、橋の手前でその左下方面の道の先まで行ったことがないのに気づいた。
そっちにすっか。
そのまままっすぐ行けば幹線道路にぶつかる。

おや。
幹線道路の路肩の部分が広場となっていて、意外と整備されている。
こうした場所は路上生活者のベースキャンプになりやすく、一般市民は近寄りがたいのが常なのだが。

行政と地区住民が一緒にがんばったのだろう。
やればできるのだな。
https://www.instagram.com/p/CZzzBjvPN-t/

グラフィティの方はイマイチだったが、ここの存在を知っただけでも大きい。


2月11日(金)の記 太鼓の哲人とブラジルオレオレ
ブラジルにて


こちらのWi-Fiだと、10時間がかり。
ようやくアップロード終了寸前の昨晩、ケアレスミスに気付いて…
やり直し。

して『太鼓の哲人』のYouTube配信開始は今日の午前7時にずれ込む。
https://www.youtube.com/watch?v=eARvi1vtVJ0

さすがに、これにはギョギョギョである。
太鼓で魚魚魚。
ちょうど6年前のまさにこの時刻、日本時間の2月11日午後7時にこのイベントを開始したのだ。
だからどーなのよ、と言われれば、その人とはこの話題はおしまい。

午後から一族の用事で、クルマを運転。
ショートカットでサンパウロ大学のキャンパス内を通過。
スマホの電話が2度なるが、相手の声は聞こえず。

その後でわが子の写真を使ったポルトガル語の怪メッセージ。
本人に確認するが、自分ではないという。
日本でいうオレオレ詐欺だ。

わが子がさっそく関係者に警報発信。
とりあえず、とくに大事には至らず。


2月12日(土)の記 むすびのいちばん
ブラジルにて


飾らなくていい。
おいしくにぎろうなんて思わなくていい。
素でにぎれば万事うまくいくのです。
そのときの、自分らしいおむすびをにぎること。
それがいまの最良ですから。
『おむすびのにぎりかた』
(文・宮本しば子 ミシマ社)


この本の価格は1500yen+税。
僕にとっては決して安くなかった。
思わぬブラジルの知人の握るおむすびのことが一章、もうけられていて買ってしまった。
ようやく読むが、ごちそうさま、のひとこと。

引用部分は「おわりに」からだが、ずばり僕のドキュメンタリーづくりと重なるではないか。

そもそも食べるのはともかく、おにぎりをつくるのが苦手だった。
うまく握れないし、相当の米粒を散乱させてしまう。

この本は、そんな僕に握ってみようかという気にさせたのだから大したものだ。

まずは一昨日の昼にわが家で挑戦。
わが子の指導を受けながら…
まーなんとかなった。

今日は出先で挑戦。
先方も日本人だから、「おにぎり」を話題に出すと「こぼれ話」がいろいろと出てくる。
意外なおにぎりへのトラウマを聞かされてしまった。

…生涯のうちに、亡母にどれだけ握ってもらったことか。
ありがたくも申し訳ない。

さあ、またにぎろう。


2月13日(日)の記 サバの読みかた
ブラジルにて


路上市で…
サバを買うか。

先日、サバをわが家で干物にしたのだが。
どうもハラワタの味がする。
そしてマグロであたった時のヒスタミン中毒のような軽い吐き気。

もうサバも控えなければいけないのかと思ったが。
が、考えてみると、丸ごと買ってきて、その日のうちにハラを抜いていなかった。

…ネットで調べると、サカナはその日のうちに処理するのが必須とある。
冷蔵庫に入れてあるし、今日はめんどくさいから…というのはご法度だと恥ずかしながら今さら思い知る。

こちらでサバはキロ400円もしない。
1キロで3尾程度、小ぶりのサバだ。
店でもサバいてくれるのだが、時間がかかる。

今日は空いているのでサバいてもらうことにした。
アタマは?
と聞かれ、断頭をお願いする。

さばき担当のおばちゃんは会話を楽しみながらエビの皮をむいている。
こりゃ、ちょっとかかるな。
他の買い物をしておくのもおっくうで、スマホいじり。

おばちゃんがどうサバくのか見届けたかったが、気づかぬうちにサバきは終わっていた。
いつのまに。

帰ってチェック。
これは驚き。
僕の知る日本式の半身にするサバきではなかった。
断頭部からハラワタの部分だけをすっぽりと抜き取ってある。
こんなことが可能なのか。

新大阪の駅弁で親しんだ「サバめし」にトライしよう。


この日の日記にも、東大東文研問題を責任者の個人名も出して告発しています。
そうした記載を不快とされる方は、どうぞわがウエブサイトの閲覧をこの場で金輪際やめてください。
僕は今後もさらにあらたな告発を続ける所存です。
こうした注意書きは煩瑣なだけですので、今後は控えます。


2月14日(月)の記 堂守フェイスブック語り
ブラジルにて


さて今日の課題は…
横浜の大道焼肉師にして彫刻家、漆アート作家、はたまた伊豆大島富士見観音堂守のガウジイこと伊藤修さん。
あ、最近は金港入道と称しているようだ。

その伊藤さんから先週、メッセージをいただいた。
フェイスブックの「過去の思い出」機能で出てきたのだろう、ちょうど2年前の日本はギャラリー古藤さんでの拙作特集上映に参加した時のレビューを改めて送ってくれた。

その時の僕は東大の真鍋教授の言うような「科研費」による渡航費のサポートなどはなく自費で訪日した。
にもかかわらず真鍋教授の懇願により、画家の富山妙子さんの取材に韓国からやってくる取材班の富山邸での取材の諸々のお手伝いを手弁当で引き受けていた。
仮にも僕は記録映像作家だが、その時の僕の業務内容は事前に寿司系の弁当を手配してピックアップ、取材班到着とともにお茶や茶菓子食事の手配、お片付け等々…
あ、一同の記念写真の撮影は頼まれたな。
オカムラさんもご一緒にぜひ一枚、とは誰も言わなかった。
その程度の分際の便利屋である。
敬愛する富山さんによかれ、と思ってご奉仕したのだが。
取材本番前後の富山邸での力仕事、そして富山さんのお相手等々は、さらにはかりしれず。
こうしたことを粛々と自腹を切って続けていたので、あのようにナメられるに至ったわけである。
便利屋どころか在日コリアンの人たちへの捏造誹謗中傷発言の無責任な発言者にまでされてしまった。

さて、こうした時期だったので、当時の伊藤さんのフェイスブックの記載に僕は気が付かなかったのかもしれない。
伊藤さんはすでに見ている岡村の『消えた炭鉱離職者を追って サンパウロ編』をもう一度じっくり見たいと思い、神奈川でのアルバイトを休んで江古田のギャラリー古藤さんまで足を運んでくれた。

奇しくもこの作品がきっかけで、今からちょうど60年前に炭鉱離職者を追って南米までやってきた富山妙子さんと出会うことになった。
音楽家の伊東乾さんのご尽力のおかげだ。

自身がアマゾン移民だった伊藤修さんは現地での数奇な出会いを契機に、独自の岡村作品論を展開する。
オカムラという原木を、彫刻師伊藤さんが円空仏のようにナタで粗削りしていく。

伊藤さんほど顕現と岡村作品を触媒として変化(へんげ)した人を、僕は他にすぐには思い浮かばない。
「触媒」。
触媒の専門家に聞くと、ほんらい触媒は他者を反応させるものの自身は変化しないとされているが、実際には繰り返しているうちにぼろぼろになるという。

富山プロジェクトでオカムラのおいしいところ取りだけして捏造発言の濡れ衣まで浴びせて、作家としての僕をぼろぼろにしようという動きは、繰り返して告発してきた通り。

両イトウをはじめとする仲間の激励が触媒映像師を次のステージに招いてくれる。

伊藤さんのその時の「メモ」を拙ウエブサイトの「岡村淳アーカイヴス」のなかに収録しました。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000051/20220214016493.cfm?j=1

金港入道こと伊藤修さんの石漆展が2月22日から27日まで横浜石川町のギャラリーで開催されます。
https://galleryfu.com/


2月15日(火)の記 オラプロノビス
ブラジルにて


在サンパウロの日本人の知人から連絡をいただいた。
この人は「コロニアかあさんの知恵」だったかな、そんなタイトルのレシピ系の連載をこちらの日本語雑誌でされていたこともある人。

「オラプロノビス」という植物を使ったものをいくつかつくってみたので、味をきいてもらいたい、といううれしい依頼。

今日の午前中にリベルダージ駅で待ち合わせ。
オラプロノビス。
ピテカントロプスの近縁か。
ラテン語名だろうな。

さて彼女からはこれの葉っぱそのものと葉を使った佃煮、そしてブラジル産キクラゲのおつまみをいただいた。
オラ…の葉は柑橘類の葉っぱっぽい。
この葉を食用にして、ナマでいただいてもよろしい由。
刻むとねばりが出るという。
ブラジルのミナスジェライス州で好まれ、現地では「貧乏人の肉」と呼ばれるほど親しまれているとか。

帰宅後、さっそく検索。
ora-pro-nóbisか。
学名ではなく、ポルトガル語だった。
その学名から、ダメモトで和名があるか調べてみる。
あった。
モクキリンか。
杢麒麟、の由。
なぜこんな和名かは、とりあえず立ち寄らないでおく。
コロニアかあさんは「サボテンのなかまらしい」と言っていたが、それはホントだった。
日本ではもっぱら観賞用のようだ。

さて。
かあさん手製のこれの佃煮をいただいてみる。
ふむ。
ちょっと青くさいが、よくもここまで海苔の佃煮に食感を似せられたものだ。

粘りがあるとのことで…
「山形のだし」に使ってみよう。
さっそく夜、挑戦。
細切り昆布も使うので、どこまでがモクキリンのねばりかわからないが、すくなくともわるさはしないようだ。

豆腐の味噌汁に相性がいいとも聞いた。
ブラジル産オキナワ豆腐を買ってきて、ヤッコのうえに乗せてみる。
ううむ、冷ややっこの薬味には、ちと青臭さが強すぎるかな。

ほかにもトライしてみよう。
橋本梧郎先生とこの植物の話をしたかったな。


2月16日(水)の記 紫煙かウイルスか
ブラジルにて


早めの昼食を終えて、外回りに出る。
まずは週イチのオルガニック農産物市へ。

13時前で、そろそろ片付けに入っている。
…これといったもの、なし。

グラフィティを探しがてら、自然発酵のベーカリーのある方面に歩く。
…お目当ての店は、開いてはいるが誰も見当たらない。
そうか、ここは14時からか。
明日の朝食は、肉まんにでもするかな。

帰路にある日系食材店で、小さめのイタリアンパセリの苗を買う。
邦貨にして50円。
うまく育てば、切り売りのパセリよりもオトクかも。
…たいがい枯らしちゃうけど。

下のカフェに寄る。
吹きっさらしの店の外ぎりぎりの定位置で、換気はバツグン。
しかし、隣の丸テーブルでは…
坐っている客のほかに、店の外側に立っている男が耳鼻咽喉科の吸引薬のようなものを吸い込んでは吐き出している。
(のちに調べてみるが、携帯用の水パイプといったもののようだ。)
もうひとりはズバリ煙草。

マスクを取り、カフェで一服中の僕の鼻腔に、あの不快な煙が。
こういうのがいる時は、この店の利用は見合わせよう。

タバコ系の毒煙はマスクをしていても感知できる。
ところがコロナウイルスはそうはいかない…
コロナウイルスよ、毒煙に取りついておくれ。


2月17日(木)の記 ヤフーとは「ならず者」と知る
ブラジルにて


これは驚き!
日本のYahoo!ニュース国際欄に僕がYouTubeのチャンネルを開局したニュースが掲載されているではないか。
https://news.yahoo.co.jp/articles/54818c3b4820ecd4ec86fe2bcdf20fbc0b8d4c82?fbclid=IwAR2YHc0cRIBsp29mBX7jluwqdepqxM19UpjJbjESxwg3Y4ByQBf6WzZsgZE

今年になって創刊されたブラジルの新しい日本語新聞『ブラジル日報』に掲載されたものの転載だ。
取材を受けてからそこそこ日数が経っていて、なにという話でもないのでボツになったかも、と思っていたところだった。

さっそくフェイスブックやツイッターでシェア。
さすが日本最大のネットニュースだけあって、寄せられる反響がうれしい。

こんなことは、めったにないだろうな…
あ、あった。
西暦2005年のNHKによるパクリ事件だ。
あの時もYahoo!ニュース掲載が大きかったかと。
あの時はたいへんだったな。
被害者である僕が、報道されたことでさらに見ず知らずの連中から誹謗中傷を受けて。

今回の記事ではガウジイかつ金港入道こと、大道焼肉屋にして漆工芸家、伊豆大島富士見観音堂の堂守・伊藤修さんの写真も掲載されているのがうれしい。
タイムリーなことに伊藤さんはこの22日から横浜石川町のギャラリーで「石漆」というのの展示会を始められる。

共存共栄がなにより。


2月18日(金)の記 サンパウロのころびキリシタン
ブラジルにて


午前中に市内のミネラルウオーター源泉に給水に行く。
しめて、65リットル。
車のトランクに詰め込んで。
車は駐車場に置いたまま、付近を歩くことにする。

大通りを横断。
中央分離帯の部分がバス停にもなっている。
そこで、すってんころりん!

特に走ったわけでも、段差があったわけでもバナナの皮があったわけでもないのだが…
全身、前のめり。
眼鏡は飛ばずに、割れずに済んだようだ。
スマホも無事か。

右の掌をすりむき、血が出始めた。
ウイルス対策のアルコールジェルを携帯しているので、まず消毒。

大通りはこの時間は走行車も少なく、バス停も含めて通行人はいない。
恥をさらさずに、なによりも走行車に轢かれずに済んだというもの。

左ひざなど、他にもいたむところあり。

後に腕時計のガラスをだいぶいためたことに気づく。
ジーンズの右ひざも2か所やぶれていた。

身代わりになってくれた。
慎重を心がけよう。

先週、連れ合いの知人の夫が自転車で転び、折しも酔っ払い運転の自動車が通ってひき殺されたと聞いたばかり。


2月19日(土)の記 限定公開
ブラジルにて


いやはや、30年前か。
アマゾン川流域での水銀汚染問題をこの1月に日本の報道番組が取り上げて、それについての問い合わせが僕にも続いた。

その番組を視聴してみたが、番組そのものに深刻な問題がいくつもあった。
SNSでそれをまとめて発表し、当時、日本の雑誌に寄稿した記事の画像をアップしておいた。

この問題については「アマゾン水銀汚染3部作」と自分で位置づけているものを1990年代に日本のテレビで発表している。
その第一作が、これ。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000061/20060105001689.cfm?j=1
この作品を契機に、テレビ番組ディレクターから、記録映像作家:ドキュメンタリスト と肩書を改めることにした。

これらはDVDに焼いて、日本での上映会などに供してきた。
事態を考えると、それ以外の方法も早急に求められている。
今回、ファイル化を図って、ようやく完成。

テレビ放送したものなので、YouTubeに公開アップができないのが残念。
僕の活動を快く思わず、悪意を持って誹謗中傷や妨害行為を行なうムキは、最近のあの彼女だけにとどまらないの。
義のための行動のつもりだが、慎重さを要する。
まずは問い合わせがあった人たちに動画ファイルのリンクを伝える。


2月20日(日)の記 ブラジル大衆のささやかなしあわせ
ブラジルにて


昨晩は家に残ったわが子と二人で、隣駅近くの大衆シュラスカリア(ブラジル風バーベキューレストラン)へ。
ここは近くにコムニダージ(ファヴェーラ:スラム)があり、そこの人たちが奮発してきている感じがある。
客も店員もお高くとまっているような店よりずっと僕には心地がいい。

飲み物は…
まずはショッピ(生ビール)。
ついでカイピリーニャをいただく。

カイピリーニャはブラジルのナショナルカクテル。
カシャッサやピンガと呼ばれるサトウキビの蒸留酒をライムなどのフルーツと氷でいただく。
これの外飲みは金額がばかにならないが、ま、イッパイだけ…

ふむ、邦貨にしていっぱい400円弱。
写真はバックに人が入るまで待って。
https://www.facebook.com/photo?fbid=10225326611567284&set=a.3410845544903
まー日本なら値段は軽くこの倍はいくだろうし、量もこうはいかないだろう。

さてこの写真をフェイスブックに上げると、意外に好評。
日本のブラジルシンパ、サケ好きにいかにカイピリーニャが希求されているかを思い知る。

そんなこともあり、今日は野外市でちょっと変わったライムを買ってきた。
学名でいくと種名が Citrus × limonia となるハイブリッド種。
原産はインドとのことだが、ブラジルに渡ってからの「俗名」は…

limão-rosa, limão-cavalo, limão-egua, limão-francês, limão-capeta, limão-china, limão-vinagre,limão tambaqui…

なんなんだ、この呼称の豊かさは!
日本にも入っているかもしれないが、こっちに来た方が早いかも。

ふつうのライムよりずっとジューシーで、以前も書いたが味の方はどう表現したらいいのか。
これも飲んでもらった方が早そう。

こういうのが日本の方々にうらやましがられるとはありがたい。
こっちからは、例えば…、

日本の銭湯、温泉がうらやましー。


2月21日(月)の記 ウクライナの距離
ブラジルにて


今日は急きょ僕が連れ合いの実家に泊まりに行くことになった。
道中の盗難のリスクもあるので、ノートPCは持ち運べない。

長めのテキストをしたためるべき用事は、その前にピッチを上げてすませて送っておく。

場所は、サンパウロ大学学園都市もよりの高層住宅群。
夕食ミッションを終えてから、敷地内を少し歩く。
住民層は経済ランクにして、うちあたりよりいくつか上。

夕食前のスポーツや遊びに興じている若者が多い。
「あずまや」のなかのテーブルに集う、日本で言うと小学校高学年ぐらいの年の男子グループの声が聞こえてくる。

特にトランプなどのツールは見当たらない。
ひとりの少年が「ウクライナ」と言ったのに驚いた。
別の少年の「ヴェネズエラ」も聞こえたので、どうやら国名を言い合うゲームのようだ。

それにしても、日本のこれぐらいの歳の子供が仲間同士で「ウクライナ」の語を出すことがあるだろうか。
大学生でも。

日本という「井」を出て、ブラジル以外の世界も身近になった。


2月22日(火)の記 麻婆二昧
ブラジルにて


わが家に戻ったら、夜は麻婆豆腐をつくるつもりだった。
豆腐ののこりと解凍にかかったひき肉がある。

が、出先のここでも昼は麻婆豆腐がいい、とのリクエストが。
こっちにも冷蔵庫に豆腐があり、冷凍のひき肉があったので。

さて、チキンコンソメないし中華出汁が見当たらない。
この高層住宅は宇宙ステーションみたいなところで、ちょいとした買い物に苦労するのだ。

「ひちこく」冷蔵庫や食料棚を物色…
あった。
おや、ピメンタホーザも少しあるではないか。
日本語直訳だと、バラコショウ。
ローズ色のコショウだ。
これ、日本語で何といったっけな…

豆腐が絹ごしだったのでだいぶ崩れたが、悪くはない出来かと。
麻婆豆腐に山椒をきかせることがあるが、このバラコショウ、色味もよろしいし、味も山椒テイスト。

帰宅後、調べると日本ではピンクペッパーか。
これのなる植物名は、ずばりサンショウモドキ。
ブラジリアンペッパーの名もあるが、植物学的にはこのサンショウモドキはウルシ科、アマゾンにコショウ成金を生んだ方のコショウはコショウ科コショウ属。

午後、わが家に戻って…
別の献立も考えるが、こっちの豆腐もそろそろ使い切るべきだし、ひき肉も解凍中だ。
夜もマーボー。

そうあきるものではなく、日本の飯屋の片栗粉どろどろのナミのものより、わが口にはあう。

そもそもこれのレシピとヴァラエティーも相当なものだし。
昼も夜も、長ネギに加えてポロネギも加えた。


2月23日(水)の記 神立ちぬ
ブラジルにて


ここのところ、YouTubeがらみの作業がかなりのウエイトを占めるようになってきた。
自主制作のものは公開設定に、テレビ放送したものは限定公開の設定にして、ほぼ交互にアップしている。

順番が、なやましいところ。
YouTube公開にする作品は、被写体および関係者の方々との共存共栄、そしてエール送りが主眼だ。

今日は『未来のアミーゴたち』をYouTube公開用に編集する作業に着手。
関係者たちから、YouTube公開の照会に快諾をいただいた。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000044/20180812013876.cfm?j=1

久しぶりに見直して、目頭が熱くなる。
さて、どんな反響が新たにあるだろうか。

ちなみに、今日のタイトルは「かみたちぬ」と読む。
『未来のアミーゴたち』の舞台の茨城県神立(かんだつ)と『風立ちぬ』などをかけた。
想えばあの近くに地域最大の前方後円墳があったな。
オカムラは時空のバグか、PARCゼミの踏査で縄文土器を表採してしまったけれど。


2月24日(木)の記 ウクライナ侵略はじまる
ブラジルにて


慎重を期して、まずはYouTube限定公開にしてある拙作『未来のアミーゴたち』の関係者の確認試写とその通知を待つ。

深夜、床でスマホを開くとそのOKの通知とともにロシアのウクライナ侵攻が始まったとの速報。
起きて、テレビとノートPCをつなぐ。

三日前のウエブ日記にウクライナのことを書いたときは、実際に戦争までには至らないだろうと、恥ずかしながらたかをくくっていた。

ロシアは自国に隣接するウクライナ東部のみならず、全土に攻撃を仕掛けているとの報。
国内4地域、15基の原発を抱えるウクライナに。

無力感、非力感と絶望。

拙作の公開をSNSで告知しようとしたが、この非常時に、という思い。

朝のブラジルの地上波のニュースで、リポーターがブラジルのウクライナコミュニティーについてのデータを伝えようとしている時に…、
あらたにロシアの軍用ヘリコプターの攻撃の映像が流れてきて、中断。

自分でざっと調べる。

・ブラジルは100万人以上、ラテンアメリカ最大のウクライナ系住民を有している。
・ウクライナ外の世界のウクライナ系住民の人口ではロシア、アメリカ合衆国、カナダに次いでブラジルが第4位。
・多くはブラジルの穀倉地帯である南部のパラナ州で農業に従事している。

そうか…
いろいろ、思い当たることあり。
『未来のアミーゴたち』に登場するブラジルをはじめとする中南米系の在日児童たちにも、ウクライナの血を引く子供がいそうだ。
世界は、つながっている。

https://www.youtube.com/watch?v=lwrTthVMWfs

もうすこし調べてみよう。


2月25日(金)の記 岡村ヒコクミン認定シリーズ第2弾
ブラジルにて


これまた気になっていたこの作品をまずデータ化して、オンライン限定公開までこぎつける。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000061/20060315000584.cfm?j=1

先日、アップしたアマゾン水銀汚染シリーズに続き、岡村ヒコクミン認定シリーズ第2弾といったところ。
これは日本のブラジルで展開する「国策」にハテナを呈したもの。
ブラジル側からも日本側からも、僕に圧力と誹謗中傷が繰り広げられてきた。

畏友・印鑰智哉さんとの友情の産物。
この問題に対して、日本人が、ブラジルの日本人移民が疑問を投げかけることができたのは、記憶されてもいいかもしれない。

こうした体験を経ているから、ふつうの常識があれば不快で怒りをそそるばかりである東大の女のご乱行などは噴飯ものである。
先方がこちらに突きつけようとしたカケンヒの刃がご自身をさばいてくれることだろう。

このユーカリ問題でも日本の御用学者が暗躍した。
このような番組を制作したオカムラは日本のマスコミの悪の象徴、との称号までたまわった。
こうした日本の国策からNHKにまでタテつくオカムラという輩は出入り禁止にすべし、と唱えた権力ある研究者のおわしたラテンアメリカ研究をたしなむ「私立」大学もあったというのも微笑ましい。


2月26日(土)の記 木賃宿で『大草原』を聴くまで
ブラジルにて


今日からブラジルはカルナヴァルの連休、ということになる。
実際のカルナヴァルのパレード等はコロナ問題で延期されたところが多い。

家人を車でサンパウロ州内陸の町まで連れていくことになる。
本日の走行、約400キロ。

僕は近くの気になっていた場所で一泊することに。
ネットで格安の宿も見つけられた。

サンパウロの内陸は暑い。
安宿は天井に扇風機がついているだけ。
これは寝苦しいぞ。

日本の畏友・音楽家の伊東乾さんからメッセージが入っていた。
『岡村淳のための映画音楽:大草原』というのを新たに作曲して演奏し、動画のリンクを送ってくれた。
https://www.youtube.com/watch?v=VSz92SlXZP4

伊東さんには拙作『緑の砂漠か緑の再生か ブラジルのユーカリ植林と日本』をご覧いただいたばかり。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000061/20060315000584.cfm?j=1
たぶんこれも踏まえての作品だろう。

うーむ、大草原か。
何度か聴き返す。

上記の拙作は、ブラジルのミナスジェライス州で繰り広げられる日本資本による紙パルプの原料の大規模なユーカリ植林地帯の話だ。
企業側は、もともと荒れた「牧野」だったのを植林化してさまざまな貢献をしていると自画自賛する。
ところが成長と回転の速い植林と伐採の繰り返して地域の水場は枯れ、もともとの農民たちは難民化している、という訴えがある。

そもそもこの地域は熱帯林地帯だったのが開発がおよび、農作物の生産にも適さなくなると「牧野」とされてきたわけだ。
いまではアマゾン地方がこの流れとなっている。

さて今日、僕が疾走したサンパウロ州内陸地帯も本来はアトランチカ森林と呼ばれる熱帯林だった。
まさしく20世紀初め以来の日本人移民はこの自然林の伐採と焼却、そして略奪農の展開に大きな「貢献」をしてきたのだ。
そしていまや「牧野」かサトウキビの大プランテーション、またはユーカリ植林である。
ああ、農薬と遺伝子組み換えの大草原。

そうした流れは拙ウエブサイトにも収録している小説家の松井太郎さんの作品群からもうかがうことができる。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000182/index2.cfm?j=1

僕は植物学者の橋本梧郎先生に寄り添いながら、そのもうひとつの日本人移民スゴイの流れを記録してきた。

伊東乾さんの「血」の記憶と直感が、このあたりにまで沈潜していってこの曲をつむいでくれたと思う。


2月27日(日)の記 2400年の若返り
ブラジルにて


旅の宿。
安宿なれど、朝食は充実。

出がけに。
あれ、あれは…
絶品のグラフィティを発見。
https://www.instagram.com/p/Cafv9VgvAaP/

昨晩そこそこ歩いて、この町はグラフィティがなさすぎ、と思っていたが。
教会の広場にある壁画を再訪して、その写真で今日のインスタグラムのお茶を濁そうと思っていたけど。
呼ばれたか。

さて、いよいよヴァスヌンガ州立公園へ。
故・橋本梧郎先生と26年前に訪ねたジェキチバ・ローザの巨木を再訪するのが目的。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000061/20060501000545.cfm?j=1
当時はこの木の近くまで自動車でアクセスできたが、その後、これがかなわなくなった。

数年前、家族でこの地方に来た時にぜひこの樹を見せたかった。
が、公園管理事務所で現在は山道を1時間は歩くことになる、この時間からはむずかしいと言われてあきらめた。

おや、今度は。
日に3回、決まった時間に公園管理人と訪問、事前予約が必要と現地で言われる。
しかし現場のスタッフがていねいにスマホでの申し込み方法を教えてくれた。
すでに10時30分の部は満員だが、キャンセルがあれば、とのこと。
申込みフォームにアクセスすると、最後のひとりでオッケーとなった。

この管理事務所からそれぞれの車で州道の反対側に渡り、そこから往復1.5キロぐらいのウオーキングの由。
蚊がすごいとは宿の人に聞いていたが、大型の蚊がさっそく吸血にかかってくる。
公園内のいっさいの持ち出しはご法度だが、蚊の殺傷は例外とのこと。

50人近い参加者となったが、総じてこういうのに参加する人はレベルも高く、挙動にも教養がうかがえてここちよい。
案内人もこちらの質問に快く答えてくれる。

ああ、40メートルを超えるあの樹と再会。
樹そのものへの立ち寄りも不可かと思いきや、そのあたりは問題なし。

根元から見上げていると、樹そのものが宇宙と感ず。

26年前に訪ねた時は、樹齢3000年とされていた。
が、その後の研究で樹齢数百年程度とされたとはなにかで読んでいた。

今日では公園側は600年としている。
より正確な樹齢はこの樹が倒れなければわからない、とのこと。

帰宅後、検索してみると近年のウエブサイトでも樹齢3000年以上としているものが少なくない。

そのデータ差がなにによるのかを書いたものが見つからない。
まあ、3000年でも600年でもヒトの一生の時間の何倍にもなることには変わらず。
データがどちらでも誰かに実害がおよぶこともなさそうだ。

樹との別れ際に、一頭の蝶が僕の右腕にとまって離れなくなった。
僕の汗のミネラル分を吸収しているようだ。

ゆっくり駐車地点まで戻ると、他の車はすでに立ち去っていた。
ナビをみると、思わぬ方向を示すが、さして疑わずに走り…
意味不明の大迂回路だった。

そのおかげで、こんなモニュメントに会えた。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10225387170761226&set=a.3410845544903&type=3 ¬if_id=1646223482312552¬if_t=feedback_reaction_generic&ref=notif


2月28日(月)の記 パソッカ割り
ブラジルにて


土日の走行距離はしめて約700キロ。
いまいち疲れが抜けない。

午後の運転の用事、買い物を終えて、さあまず家飲みだ。
土曜に泊まった町の宿の近くに格好のバーがあった。

イタリア移民の開いた町でもあり、ニョッキを頼んでみる。
うー、これはわが家の近くの方がずっとおいしい。

ドリンクは、まずは…
生ビールのグロゼリアシロップ割りというのに手を出してみる。
グロゼリアはヨーロッパ原産のベリーで、和名はフサスグリとな。
ほう、青森や長野で栽培もしているのか。

お味は…
ナマはナマのみで味わうべきだった。

え、パソッカのカクテルがある。
パソッカはピーナツを砕いて黒砂糖と固めたブラジルの田舎風菓子。
聞くと、さして甘くはない由。
これが妙味だった。

わが家でこれを再現。
うむ、いいセンだ。
日本でお好きな方たちに披露いたしましょう。

パソッカについて調べてみる。
ふむ、先住民トゥピーの「粉砕する」という語から来た由。
それをさらにアルコールで割る喜び。

そもそも僕は決してピーナツを好む方ではなかった。
柿の種でも、できればピーがない方がいいぐらい。
だが、鹿児島でいただいた殻ごと蒸した南京豆はよろしかった。

日本のピーナツバターに発がん性物質が含まれているとか、ピーナツの食べ過ぎは鼻血ブーになるとかインプットされているが…

あらたに風評を広める前に調べてみよう。

ちなみに日本で40年以上前に刷り込まれたピーナツバターの発がん性物質については、輸入食品から検出されたアラフトキシンという猛毒のカビに起因するようだ。
ざっと検索すると、とにかくピーナッツのカビは危ないようだ。
わが家でテキトーに茹でピーナッツをつくっていた時もあり、ゾッとする。

とはいえ、南米原産のピーナッツの歩みはグローバルかつダイナミックで面白いぞ。
「この豆、おろかには食わぬぞ。」








  


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